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第一章 カイト側
第5話 キング
しおりを挟む久保 心也(20)犬飼 帝斗(23)牟田 ささ(17)
大迫 凪(16)
『こちら崩壊された国会議事堂前にいます、映ってますか?』
50代にみえる女性アナウンサーが瓦礫の山となった国会議事堂前を背景に映っている。表情がかなり雲っている。緊縛した雰囲気が声でも分かった。
『突如として大規模爆発が起きた事件から丸1 日が過ぎました。現在、分かっている情報ではこの大規模爆発は世界各国で同時刻に発生したといわれています』
アナウンサーの顔は黒い煤にやや、黒くなっている。その周りを忙しく走るカメラマンや救急隊員が駆け回っていた。
『現在、行方不明者や死者が多く現れてます。生存者の皆さんは地震や火災に充分に備えて…――』
プっと電源が落ちた。
ニュースで言ってた行方不明者はゲームを遂行してる最中。
上空に巨大な三角のピラミッド型した建物が浮いていた。一つは白色、もう一つは黒いピラミッド。白のピラミッドがカイト側。黒いピラミッドがナミ側。ふわふわと雲の上を浮いていた。
上空でその二つが浮いてある事に誰も知る由もない。ましてや、その中に行方不明者がいる事にまだ誰も知らない。
1日目
荒い呼吸と歓喜の喘ぎ声で目が覚めた。ベットが激しくキシム音も聞こえる。心也はいてもたってもいられずベッドから起きがった。音がするのは隣。隣は確か、帝斗だった筈。あの野郎、こんな朝っぱっから。
隣の壁に耳を当てた。決して、やましい気持ちなど持っていない。が、健全な男としてこれは我慢できん。
女の荒い息遣いと、リズミカルに動くベッドの音。間違いなく、周りにも聞こえている筈。
ハッと我に返った。隣の壁に耳をすましてる自分は傍から見たら変態だろうか。壁から離れ、身支度を整える。
部屋に全員集まったのはそれから20分を過ぎた時刻だった。
「おはよう、朝変な声聞こえなかった?」
朝一で話しかけて来たのは幸だ。
「変な声? さぁ?」
「そう……」
幸は頭にハテナマークをかしげながら皆の元に戻った。集まった皆の顔はほぼ疲れてる。朝のはずなのに。これが未だに現実だと直視できないのか。
茂みの森から銀杏のアジトに矢を放とうとしてる人影がいた。勿論、狙いはキングである心也。一本の矢が畳の上に刺さった。
ヒュンと空気を割る音とともに。どよめきが広がった。畳に刺さった矢から一斉に離れる。
「矢……一体何処から、わっ!」
「伏せて」
帝斗が後ろから俺の頭を持ち床に垂らした。顔面を思いっきり床につける。怪訝に帝斗を見上げた。窓の隙間を真面目な面で見つめてた。暫く、その状態が続き、やっと離れた。自分の目で再び窓の外を恐る恐る見るともう、誰もいない。
「キング! 作戦会議をしましょう!」
仲間の一人が言った。その声に次々と賛同する者も現れる。勿論、キングらしく、優しく頬の筋肉が破れそうな程、その会話に入った。偽キングが今や表にたっている。
昨日の起きたゲームではとことん、人を蹴飛ばした奴らが、今や助けあい、協力、という言葉を使っている。
反吐が出る。
このゲームをしていく中で、助けあいなんて絶対にない。助け合いという言葉を口から平気で言ってるこいつらにも腸が煮えくり返った。この状況で助け合おうだの言ってる奴を見てみたい。
まだ、話し合いが続く中、帝斗をチラと目を配った。皆から離れた壁により、ぐうすか寝てる。いびきをかく程、寝るんだったら、朝ぱっからやらなきゃいいのにと思う。そっと近づき肩を揺さぶってみる。
「んあ?」
半開きな目がこちらをみる。
「悪い、提案があるんだが」
眠い目を擦り、ファと欠伸をした。この場を聞かれたくないので耳元に近づき、耳打ちする。
「キングの顔、覚えてるか? 俺として狙いやすいのは杏子の女」
「はてはて、それはどういう?」
心也はもう一度、それぞれのキングの顔写真を脳裏に思い浮かべた。杏子の首は小さく、血管がうきて出た。対して、紅葉のキングも女だか、こっちは首が太く血管が全く見えなかった。こうみえても、医者の息子、どちらが切りやすいか人目で分かった。
「女だし、見るからに弱そうだったから」
そう言うと帝斗は目を細めジッと窺った。
「お前……まだ俺に隠してることあるな?」
一瞬、身体が硬直した。帝斗の目がいつもより細めになり、蛇のように睨んでる。まさか、こんな奴がこれ程の洞察力があるなんて。
帝斗に今だ隠してる事は俺が機械大学ではなく医療系大学に通ってる事だ。
すると、帝斗からプィと目を離し頭の後ろで手を組んだ。
「ま、いいよその話し乗った」
ニッと不敵に笑った。
聞いた途端、ホッと胸を撫で下ろした。帝斗なら、乗ってくれるだろうと思ってたからだ。
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