―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第一章 カイト側

第1話 始まり

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久保 心也(20)牟田 ささ(17)犬飼 帝斗(23)
大迫  凪(16)浜田  幸(18)

 午前5時を過ぎたある日のこと、俺の日常が壊れた。
 俺は久保 心也くぼ しんや
医術専門大学に通う普通の大学生だった。親が医者をしてるからなのか俺もいずれは医者になるのだと思って、大学に入った。が、入ってみて理解した。俺以外全員、本気でそれを目指してる事に。俺が思っていたのはただの夢物語に過ぎなかったのだ。
それを実感したまま、約1年が経過している。
あぁ、今日も退屈が始まる。

 それは同時刻に始まった。退屈の日常が刺激的な毎日と化す。

 ベットで寝息をたてていた時刻、家に地鳴りと地震が突如として起きた。建物が下から押し上げる感覚に囚われた。
眠れない程の巨大地震に目がさめる。
 すると、何処からか、紛争地域しか聞かない爆発音が聞こえた。2階だった自室が1階に押し下げ、木材は荒れ、道路には亀裂が入っていた。今まで見た事がない景色に圧倒され、佇まる。

 ふと、気づいたら携帯が鳴っていた。枕元に携帯がある。確か、机に置いてあった筈。
「なんだよ……これ」
携帯に目を通した。

『あなたはどちらですか? ナミorカイト』

黒い液晶画面に白い文字でそう描かれてた。その後、携帯を閉じる事が出来ない。
絶対に選択しろとのことだ。心也は単純な思考で選択した。

『あなたはどちらですか? カイト』

 すると、携帯からグラリと視界が揺らいだ。瞬きした瞬間、自室から新たな場所へと移動させられる。心也の目の前に広がっている光景は荒れた街ではなく、白い円型のプレート。
 しかも、まだぼんやりと太陽がのぼっていない薄暗い空に浮いてる。
肌寒い風が肌を伝った。
「なんだよこれ!」
「浮いてる……爆発は!?」
 周りの面々が騒ぎ出した。
 一つのプレートに20人程、立っている。心也は何故か冷静だった。周りがうるさく声をあげるから冷静になれるのだ。
 空には無数のプレートが浮いている。そのプレートにもこちらと同じ、人が大勢立っている。
 その時、上空から映像が浮き出た。
 一斉に静かになる。
 映像から映ったのは10、11歳かの少年だった。日本人じゃない。黒がかかった茶髪に真紅の瞳。
『おっはよーございまーす! 皆さん、初めまして僕はカイトと申します、ここにいらっしゃる方々は僕を選んで下さった方々たちですね!』
 少年がハキハキと元気に言う。
わりには、目は笑っていない。周りは上空に映像が浮き出てる事にざわざわしている。
『出会ったばっかりに残念ですが、ゲームを行なってほしいです……レッスン1は』
 少年がいきなり、拳をあげた。
『レッスン1 は空中石垣! 制限時間は3時間です! それでは!』
 カイトという少年が指をパチンとならした。
円型のプレートの中央に一つの蔦がニョキニョキ生え、それが合図でその蔦は天高く伸びっていった。
 緑色した苔のような匂いが辺りに充満した。

 周りが呆然とする中、一人の男性がその蔦に登った。全身、ジャージを着こなしている男性は振り返りもせず、せっせと上に登ってく。
辺りを見ると、他のプレートも登ってる人がチラホラ。
 一斉に覚悟を決め、しがみつくようにその蔦に登った。
 イマイチ状況が読めない中、心也も助走をつけ、登ろうとした際、後ろから声をかけられた。
「待って、一緒に登ろう!」
 振り返るとそこには制服を着た女子高校生がいた。髪を金髪にそめ、首には派手なネックレスを巻いてる。ちょっと派手めな子。
「私、牟田 ささむた、足手まといじゃなかったら一緒に登ろう!」
 正直言って何を言われたのか理解しがたいが断る理由もないので引き受けた。
「俺は心也……機械大学に通ってる」
「へぇーそうなんだ」
 心也は初対面の女の子に優しい笑顔と息を吐くように嘘をついた。昔からこうだ。何かあると平気で嘘がつける。

 最初に登った男性を中心に心也たちは蔦を登っていく。しかも、しっかり捕まってないとツルツル滑る。
 突風が舞、風が身体を強く打ち痛い。
 すると、真上から悲鳴が聞こえた。
「心也くん、危ない!」
 ささが声をあげた。
 その反応につられ心也も上を見上げた。真上から人が落ちてきた。
「うぉっ!」
 心也は間一髪で避けたがその人は真っ逆さまに落ちていった。「助けて」という言葉が聞こえたが無情にも風でかき消される。
心也とささはその人が最後まで落ちていくのを見守った。一瞬たりとも、瞬きができなかった。
 落ちていった人はプレートに落ち、身体がありえない方向にねじ曲がっている。
「何……あれ」
 隣のささが小声で言った。顔が真っ青。対して心也の胸が高鳴っていた。
 決して、人の死を見て驚きで高鳴ってはいない。
「死んだ……のか?」
 戸惑いの演技を見せた。
隣のささを見ると、酷く怯えてる。にも関わらず俺は胸が高鳴り衝動にかられた。
「これって……落ちたら……死!!」
 ささが俺を置いて一目散と駆け上がった。俺はというと体力も身体能力もないのでささを眺めるように登った。

 徐々にゲームというのが理解してきた。このゲームは間違いなく「デスゲーム」だ。
 しかも、即死。こんなのはアニメか漫画でしか見た事がない。しかし、今、自分が体験してるのは非日常の中の非日常。
 ゲームをしていく中である人の死。耳を澄ませば荒々しい悲鳴が聞こえる。

 快感

 この1言しかない。

 今、俺はあの退屈から抜き出し、刺激的なゲームに参加してる。

 すると、また上空から映像が浮き出た。
『もしもし、生きてますか? 生きてるわなハハッ、あ、そのままの状態で聞いて下さい』


――

 空中でカイトが喋ってる最中、ある一人の男性が天辺まで登りきった。周りを見渡すと、蔦の天辺は雲の上。白い円型のプレート。冷たい風が肌をなびく。

――

『皆さん、不条理とか言わないで下さいね、これから順を追って説明するので、いいですか? 僕はカイトといって神様です!』

 いきなりチートかよ…。まともな会話しろ。

『皆さんは生き残ってある存在になってほしいのです。それは一人しか存在できません、このゲームはその存在を見極める為なのです!』

 バッと両手を広げながら、言った。
 頭、大丈夫かよと思ったが、目の前にはようやく、天辺が見えてきた。
 指先は冷たくカサカサで、すり傷だらけ。休む暇なく登った天辺は光のように眩しい。
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