―ミオンを求めて―スピンオフ世界

ハコニワ

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第二章 ナミ側

第26話 こんなの絶対ありえない

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 晴天に眩しい太陽。
 冷たい風が少し吹いただけで体が傾く。片足をやっと乗せた小さいプレートの上に颯負は立っていた。しかも、空中に浮いている。
「は…は…!? な、浮いて…」
 待て、状況が読めん。何で、空中に浮いて…。
「いやあああっ! 浮いてる浮いてるっ!!」
「風が、風…」
 亜里と雪戸が小さいプレートの中でジタバタするのが見える。
「落ち着け! 暴れたら…」
 落ちると言いかけた直後、冷たい風が直視する。ヤバイ、足が…足がガクガクする。空中おとし、落ちるのがクリアなのか?

 下を見るとなんとも身の毛もよだつ。覗けば地上に吸い込まれそうになる。

 再度、辺りを窺った。
 雫、和奈、玲緒、明、矢野、伊糊、颯負、葵、雪戸、ナイト、亜里、南城、三月の順で中央の空洞を囲むように横に並んでいる。
 他にも空中にはプレートが浮いてるが、大股の距離だ。

 ドォンと突如雷鳴が堕ちた音が下から聞こえると、巨大な木の棒が空洞の下から現れた。木の棒には3つの積み木が差し込まれてる。何処かで見覚えがある模様。木の棒の天辺にナミが楽しげに目を細め見上げてた。

『皆、ダルマ落としって知っている?』
 知ってるもなにも日本の遊びだぞ。
『ダルマ落としってのはね、ダルマだけを残すゲームなんだよ!』
 積み木がカクカク動き出した。途端、一番上の積み木がハンマー、真ん中が肉切りハサミ、一番下がのこぎりとそれぞれ変化した。
『空中落としはダルマと同じ…ナミが飽きたら終了ね』
 まだ、状況が曖昧な中、一番上の積み木がカクカク動き出した。
 あ、動くと思った直後、ブンと円をかいて回ってきた。頭上にかなり近い。一番手の雫から順々に頭を低くする反射反応をおこなう。しかし、隣の伊糊だけはプレート内でアタフタしてる。
「伊糊、しゃがめ!」
 時既に遅し、ガァァァンと除夜の鐘を人間の頭で撃った鈍った音と砕ける骨の音が。そのまま、伊糊は足を踏み外し雲の下に落ちていった。

 ありえない、こんなのを空中でやるか!?

 落ちていった伊糊を見て、やっと状況を理解する。同じく、ゲームを理解したのがナイト。俺の代わりにポツリポツリと細かに詳細を言った。
「ダルマ落としは積み重なってる積み木を横から外しダルマを1体残せば勝ち…つまり…」

「1体はこの場で言うと一人になる…だろ?」
 明がナイトの言う言葉を先に喋った。どうやら、既に理解してる人もいるらしい。
「…これは一人を決める最終ステージなの?」
 雫が問いた。
「でも、確か…ナミが飽きたら終了って」
 雪戸はまだ、理解してないらしい。見兼ねた葵が冷たくあしらう目で言った。
「旗+旗ゲームであんなに荒れてたのに来なかったのよ? 飽きるわけないじゃん。もし飽きたとしてもそれは1時間後か、または…」
 一生かという言葉が全員の心に浮かび口噤む。そうこうしてる内にまた回ってきた。今度は一番下の積み木。これも、全員なんなく飛んでクリアした。

………
 来ては飛んで、来ては頭を低くし、それが中盤に差し掛かった時だ。全員の命は片足を乗せた一つのプレートにかかっている。
 皆の体力も思考も少しずつ、落ちていくように。颯負も肩で息をする程。そんな時、
「ちょっと雪戸っ! フラフラしないで、私も落ちるでしょ!?」
 葵が雪戸に一喝。空に何度も反響してる。
「チっ、うっせいな。こんな時に夫婦喧嘩はやめろや」
 明が爆弾とも言える発言を投下。途端、地獄耳なのか葵がキッと明を睨んだまま、雪戸を鋭く指さす。
「夫婦じゃない!! こいつ! 私が隣だと知って道連れにしようとしてる!!」
「そ、そんなんじゃ…」
「あー!! もう、やっぱり! フラフラして私を…!!」
「葵、うるさいちょっと黙って」
 葵が叫び雪戸が宥め、明が舌打ち、玲緒もそれに入る。それを黙って傍観し、あるいは苛々してる人も。空気が悪くなった。それまで、少しあった仲間意識がここで拗れる。
 判断力と思考が鈍り、身体が限界に達してる証拠。
「皆、少し落ち着け!」
 言ったものの声は届かない。拗れた直後、今まで回って来なかった真ん中が動いた。
「来るぞっ!!」
 一応、叫んでみた。しかし、届かない。身体の重心を下げ、腰あたりを曲げてやってのけた。なんなく交わしたが、ここで突風が吹き荒れる。
 すると、突風により体が軽い葵の身体がフワッと浮く。プレートからゆっくり足が離れる。
「しまっ…!!」
「葵!」
 雪戸が叫んで手を伸ばす。葵もその手を握ろうと手を伸ばしたがフッと空振りする。また、死なせてたまるか、ここで力を奮わないと…! 颯負の身体からまたモヤが浮き出た。

 片足にまたあの化物じみた力が出る。
 葵の身体がもう半分、空中に浮いてる。伸ばした手は誰も取れない。誰もが息を呑んだ。しかし、颯負は一瞬で葵の手を掴む。

「大丈夫か?」

「え? …あ…うん…」
 黒髪がだらりと垂直に伸びている。伸ばした手を引っ張り起こさせる。
「あ、葵…良かったよ…!」
 雪戸がうるうる涙目でせがんできた。
「私も…悪かった…」
 葵が途切れ途切れに言った言葉は雪戸の目がパァと輝くものだった。颯負はそれを横目に、来た道を見た。
 ここまで来れたのは伊糊のプレートがまだ残ってたからだ。
 今、踏んでるのは本来は伊糊の。颯負自身のプレートは既にない。一回踏んだら、消えるシステムになっているらしい。今回のゲームかなり、難関だ。

―――
「見たか? 同士よ」
「あぁ、勿論」
 明と矢野が小声で耳打ちしてるのをナイトには十分に聞こえた。二人は怪しげな表情を浮かべ葵のお尻部分を見つめてた。
「黒のレース…ラッキースケベってまさに、これだな」
「そやな~」

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