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Ⅱ 勇気と偽愛情~14歳~
第12話 逆鱗に触れる
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ちょっとやり過ぎたかな、そう思ったとき既に遅く室内は失意と恐怖が渦巻いていた。女子は泣き叫び、あんなに傲慢ぶちてた子分もびくびくしている。
おいおい、まさかこれは俺のせいなのか。確かに爆発させたのは俺だけど、腹がたってぶちまけたけど、こんなになるとは思わなかった。
すると、今まで黙ってたリゼ先生がスタンリーに向かって一言二言喋った。
生徒の一人が落下したら即死の高さに釣り上げられてるのに、リゼ先生のやつ、分厚い本を抱えたまま独特に落ち着いた雰囲気を見せている。
刹那、辺りの空気が一変した。みな、氷漬けにされたように静まり返る。あんなに騒がしかったスタンリーも額に脂汗を浮かせ、若干の動揺がみえる。
静まり返った原因はリゼ先生が赤目に変わったから。澄み切った青空の瞳が不気味に赤く光っている。
「聞こえなかったか? 降ろせて言ってる」
それは俺の耳にもはっきりと聞こえた。リゼ先生っていつも、甘いマスクで穏やかな人だから、こんな低い声出せるんだ、呑気にそう思っていると、ゆっくりと体が地上に向かって降りていく。
スタンリーのやつも、これに懲りたのだろう。足がとん、と白い床に着地した。数分間地面に足を乗せていなかったせいか、足に力が入らない。むしろ、そうすると違和感がでる。
足がもつれて、尻もちつく。途端に鼻をくすぐるのが煙の臭い。
爆発によって若干黒くシミついた床は相当な火力だったと見える。クラスメイトの鋭い敵意を剥き出しにした眼差しが集中する。
スタンリーの奴だって暴れてたのに、俺だけこんな扱いかよ。真っ先に駆け寄ったのはジン、アカネ、ルイだった。
「カイくん、大丈夫!? 怪我はない?」
「まったく、喧嘩ふっかけたときはヒヤヒヤしたぜ」
無言で手を差し伸ばしたのはアカネ。手を伸ばしているものの、顔はそっぽを向いている。手の平をすくって握ると、グイと力任せに引き上げられた。
「みんな、落ち着いて! とりあえず席につこうか」
リゼ先生が穏やかに言った。
さっきの黒い影は見当たらない。普段どおりの穏やかな人間に戻っている。
リゼ先生の言うとおり、生徒たちは黙って席についた。訓練教室はいくつもの席が設置されてあるので、燃えたり、壊したり、あげくに消したりなどしても席がいっぱいある。
でも、黒く燃えた席は元には戻らない。クラスメイトの顔色はまだ不安と恐怖に渦巻いていた。
すると、大きな扉が開いた。顔をだしたのはAクラスの担任教師。何事かと不審の顔している。背が小さくてちょっとふくよかで横に体型が広がっている男性。
首を動かすと二重顎がプルンプルン揺れる。開いたドアから首まで出せるとリゼ先生をクイクイと手招きして、一言二言話す。たぶん、さっきの騒動の件だろう。
他教師と話すリゼ先生は頭の後ろに手を置き、苦笑して、応えている。
「さっきの騒動、さきに喧嘩ふっかけたのはあいつだろうが!」
スタンリーが性懲りもなく大声で怒鳴った。さっきの弱々しさはとっくに消え、威勢良く突っかかる。
話し合っていた先生たちが振り向く。リゼ先生の瞳がまた、炎のような真っ赤な色に変わった。ニッコリと笑い、人差し指を唇の前までかざす。
「うん。スタンリー君、その口一回閉じよっか」
途端、スタンリーの瞳がリゼ先生と同じ真っ赤に変わり、口を閉ざした。生気を失ったように光がない。
席にストンと座り、律儀に飼い主を待っているワン子のようにだんまり。だらしがなかった足癖を数分で直す性格でもないのに、キチンと席について、お人形のように座っている。
お物置き小屋に置いてある人形みたいだ。目も瞬きしないし、呼吸するただのガタイ体。微動だにしない。
とりあえず、話し合いが終わってAクラスの男性教師は面倒臭そうに出ていった。そのあとを追うようにリゼ先生が語りかける。
「呪怨テストはこのあと行います。そのままこの教室で待機しててください。それと、カイくんとスタンリーくんはこのあと職員室に」
胸の前に手を翳し、叩いた。そのまま、背を向けて教室を出て行った。
バタンと閉まった音はこの白い教室に何重も反響し、心の中にも突き刺さる音だ。
リゼ先生が手を叩いた瞬間、呪いが解き離れたようにスタンリーが膝から崩れ落ちた。過呼吸みたいに荒い呼吸。額から大粒の汗が滲み出し、白いシャツが脂汗のせいで水みたいに透けて褐色な肌を見せていた。
膝をうち、床に手をつく姿はいつも堂々として人を平気で利用する奴には見えない。スタンリーの周りにまた、子分の奴らが群がった。まるで、親にしがらみつくハイエナ。
スタンリーのことは一応、心配はした。人形みたいになったから頭のネジが数本取れたのかとヒヤヒヤしたけど、いつもの態度に戻った。
俺はなんとなく、教室にいても居心地が悪いのでスタンリーよりさきに職員室に向かった。
訓練教室からちょっと離れた場所にある。長い廊下をひたすら歩く。
「はぁ、やっちまったなぁ……あいつのせいで」
「それはこっちのセリフだ」
背後からドスのきいた声が。振り向くと、珍しく子分を後ろに従えないでテクテク歩いてくるスタンリーの姿が。
「だってそうだろ? お前が挑発しなきゃこんなことにはならなかったんだ」
「はっ」
鼻で笑い、酷く冷めた目で俺を見下ろした。身長はどちらかというとスタンリーのほうが二㌢ほど上だ。
でも、俺だって八年生平均身長を更新している。体育会系の体型したやつにはどうしても負けちまうが。俺とスタンリーの間に一切の会話はない。会話はあっても売り言葉に買い言葉だ。
長い廊下を野郎二人と一緒に職員室に向かうとは。しかも、状況的に叱られに行くとは。
こいつとは性格上根本合わない。二年前、降格を押されDクラスに入った途端、虐め差別し、除け者扱いしたのが真っ先にこいつだ。
おかげでクラスに馴染むのに苦労した。クラスを締めるリーダーポジションによって馴染むことはおろか、関係が日に日に悪化していく毎日だったが、それをある一日で逆転させた奴がいる。
我が幼馴染、ルイだ。ルイはDクラスに持っていない天使の美貌と優しさで男女を釘付けにし、一躍人気者となった。
ルイのおかげでようやく俺たちはクラスに馴染んだものだ。ルイがいなきゃ今でも干されてたな。
懐かしい記憶に浸っていると、いつの間にか職員室に辿りついた。前を歩いていたスタンリーが無造作に戸を開ける。
「センセー来やしたぜ」
悪役が言うセリフだな。無駄に響いているし。目立つなぁ。
「あ、こっちこっち」
声に気づいたリゼ先生が奥の部屋から顔をだし、俺らを手招きする。
Aクラス~Dクラス、中等部九年生~小等部一年生までの担任、副担任が集まっている職員室第一。
職員室第二は教科担任やその他もろもろの教師が集まっている。そして、学園最高峰のAAクラスの担任、副担任だけの職員室がここより離れにある。
ここまでくればもAAクラスとは別格の存在だと教師間でも認識される。
休み時間なのでいろんなクラスの先生たちがデスクとにらめっこしていた。お茶を飲んでたり、楽しそうに雑談をしている姿は希少だ。そんな光景は滅多にお目にかからないから。なんだか、先生たちのプライベートな部分を見つけてしまった気がして、どうも居心地が悪い。
職員室の中に入った途端、先生方の視線が集まった。物珍しい好奇な眼差しと嘲笑を含んだ軽率な眼差し。
二つに別れている。でも、どちらも歓迎されていないと経験値から考える。
おいおい、まさかこれは俺のせいなのか。確かに爆発させたのは俺だけど、腹がたってぶちまけたけど、こんなになるとは思わなかった。
すると、今まで黙ってたリゼ先生がスタンリーに向かって一言二言喋った。
生徒の一人が落下したら即死の高さに釣り上げられてるのに、リゼ先生のやつ、分厚い本を抱えたまま独特に落ち着いた雰囲気を見せている。
刹那、辺りの空気が一変した。みな、氷漬けにされたように静まり返る。あんなに騒がしかったスタンリーも額に脂汗を浮かせ、若干の動揺がみえる。
静まり返った原因はリゼ先生が赤目に変わったから。澄み切った青空の瞳が不気味に赤く光っている。
「聞こえなかったか? 降ろせて言ってる」
それは俺の耳にもはっきりと聞こえた。リゼ先生っていつも、甘いマスクで穏やかな人だから、こんな低い声出せるんだ、呑気にそう思っていると、ゆっくりと体が地上に向かって降りていく。
スタンリーのやつも、これに懲りたのだろう。足がとん、と白い床に着地した。数分間地面に足を乗せていなかったせいか、足に力が入らない。むしろ、そうすると違和感がでる。
足がもつれて、尻もちつく。途端に鼻をくすぐるのが煙の臭い。
爆発によって若干黒くシミついた床は相当な火力だったと見える。クラスメイトの鋭い敵意を剥き出しにした眼差しが集中する。
スタンリーの奴だって暴れてたのに、俺だけこんな扱いかよ。真っ先に駆け寄ったのはジン、アカネ、ルイだった。
「カイくん、大丈夫!? 怪我はない?」
「まったく、喧嘩ふっかけたときはヒヤヒヤしたぜ」
無言で手を差し伸ばしたのはアカネ。手を伸ばしているものの、顔はそっぽを向いている。手の平をすくって握ると、グイと力任せに引き上げられた。
「みんな、落ち着いて! とりあえず席につこうか」
リゼ先生が穏やかに言った。
さっきの黒い影は見当たらない。普段どおりの穏やかな人間に戻っている。
リゼ先生の言うとおり、生徒たちは黙って席についた。訓練教室はいくつもの席が設置されてあるので、燃えたり、壊したり、あげくに消したりなどしても席がいっぱいある。
でも、黒く燃えた席は元には戻らない。クラスメイトの顔色はまだ不安と恐怖に渦巻いていた。
すると、大きな扉が開いた。顔をだしたのはAクラスの担任教師。何事かと不審の顔している。背が小さくてちょっとふくよかで横に体型が広がっている男性。
首を動かすと二重顎がプルンプルン揺れる。開いたドアから首まで出せるとリゼ先生をクイクイと手招きして、一言二言話す。たぶん、さっきの騒動の件だろう。
他教師と話すリゼ先生は頭の後ろに手を置き、苦笑して、応えている。
「さっきの騒動、さきに喧嘩ふっかけたのはあいつだろうが!」
スタンリーが性懲りもなく大声で怒鳴った。さっきの弱々しさはとっくに消え、威勢良く突っかかる。
話し合っていた先生たちが振り向く。リゼ先生の瞳がまた、炎のような真っ赤な色に変わった。ニッコリと笑い、人差し指を唇の前までかざす。
「うん。スタンリー君、その口一回閉じよっか」
途端、スタンリーの瞳がリゼ先生と同じ真っ赤に変わり、口を閉ざした。生気を失ったように光がない。
席にストンと座り、律儀に飼い主を待っているワン子のようにだんまり。だらしがなかった足癖を数分で直す性格でもないのに、キチンと席について、お人形のように座っている。
お物置き小屋に置いてある人形みたいだ。目も瞬きしないし、呼吸するただのガタイ体。微動だにしない。
とりあえず、話し合いが終わってAクラスの男性教師は面倒臭そうに出ていった。そのあとを追うようにリゼ先生が語りかける。
「呪怨テストはこのあと行います。そのままこの教室で待機しててください。それと、カイくんとスタンリーくんはこのあと職員室に」
胸の前に手を翳し、叩いた。そのまま、背を向けて教室を出て行った。
バタンと閉まった音はこの白い教室に何重も反響し、心の中にも突き刺さる音だ。
リゼ先生が手を叩いた瞬間、呪いが解き離れたようにスタンリーが膝から崩れ落ちた。過呼吸みたいに荒い呼吸。額から大粒の汗が滲み出し、白いシャツが脂汗のせいで水みたいに透けて褐色な肌を見せていた。
膝をうち、床に手をつく姿はいつも堂々として人を平気で利用する奴には見えない。スタンリーの周りにまた、子分の奴らが群がった。まるで、親にしがらみつくハイエナ。
スタンリーのことは一応、心配はした。人形みたいになったから頭のネジが数本取れたのかとヒヤヒヤしたけど、いつもの態度に戻った。
俺はなんとなく、教室にいても居心地が悪いのでスタンリーよりさきに職員室に向かった。
訓練教室からちょっと離れた場所にある。長い廊下をひたすら歩く。
「はぁ、やっちまったなぁ……あいつのせいで」
「それはこっちのセリフだ」
背後からドスのきいた声が。振り向くと、珍しく子分を後ろに従えないでテクテク歩いてくるスタンリーの姿が。
「だってそうだろ? お前が挑発しなきゃこんなことにはならなかったんだ」
「はっ」
鼻で笑い、酷く冷めた目で俺を見下ろした。身長はどちらかというとスタンリーのほうが二㌢ほど上だ。
でも、俺だって八年生平均身長を更新している。体育会系の体型したやつにはどうしても負けちまうが。俺とスタンリーの間に一切の会話はない。会話はあっても売り言葉に買い言葉だ。
長い廊下を野郎二人と一緒に職員室に向かうとは。しかも、状況的に叱られに行くとは。
こいつとは性格上根本合わない。二年前、降格を押されDクラスに入った途端、虐め差別し、除け者扱いしたのが真っ先にこいつだ。
おかげでクラスに馴染むのに苦労した。クラスを締めるリーダーポジションによって馴染むことはおろか、関係が日に日に悪化していく毎日だったが、それをある一日で逆転させた奴がいる。
我が幼馴染、ルイだ。ルイはDクラスに持っていない天使の美貌と優しさで男女を釘付けにし、一躍人気者となった。
ルイのおかげでようやく俺たちはクラスに馴染んだものだ。ルイがいなきゃ今でも干されてたな。
懐かしい記憶に浸っていると、いつの間にか職員室に辿りついた。前を歩いていたスタンリーが無造作に戸を開ける。
「センセー来やしたぜ」
悪役が言うセリフだな。無駄に響いているし。目立つなぁ。
「あ、こっちこっち」
声に気づいたリゼ先生が奥の部屋から顔をだし、俺らを手招きする。
Aクラス~Dクラス、中等部九年生~小等部一年生までの担任、副担任が集まっている職員室第一。
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ここまでくればもAAクラスとは別格の存在だと教師間でも認識される。
休み時間なのでいろんなクラスの先生たちがデスクとにらめっこしていた。お茶を飲んでたり、楽しそうに雑談をしている姿は希少だ。そんな光景は滅多にお目にかからないから。なんだか、先生たちのプライベートな部分を見つけてしまった気がして、どうも居心地が悪い。
職員室の中に入った途端、先生方の視線が集まった。物珍しい好奇な眼差しと嘲笑を含んだ軽率な眼差し。
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