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第二章 前世と神と
第26話 壷探し
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さてと、帰る条件それは壷を一刻も早く探すこと。
天照は壷をどこでいつ気づいたのか、はっきりと覚えてたみたいで助かった。高天原の拠点、天照の座がある大きな宮殿にあたしたちは入った。
あたしは広い敷地内を一人で探索した。訳の分からない場所を一人で探索するのはもちろん怖いけど、一刻も早く壷を探して帰りたいからね。天照とふた手に別れて探索を始めた。
「なんか、凄いとこだな」
改まって、周囲を見渡すも人の気配も神さまの気配もない。天照とあたしだけがいるような宮殿だ。でも、油断禁物だよね。だってここ一応最高神の宮殿だもん。
気を許してたら、何かとんでもないものに引っかかりそう。
手当たりしだいに探しながら広い廊下を駆けると、ちょうど、曲がり角を曲がろうとしたとき誰かにぶつかった。その弾みで地べたに尻もちをつく。
「あいたた、た」
お尻をつき、見上げるとそこには全身白い服を見にまとった女性らしき人物が。顔の表情はよく読み取れない。顔まで深く帽子を被っているせいで。
「すいません……前をよく見てなかったです」
会釈しながらそう言うと相手の女性はスタスタと歩き去ってしまった。ちょっとちょっとこっち謝ってんのに無視かい。
どこのなんの者だい。こっちはあの最高神天照と仲良しなんだからね。言えばあんたなんかぎゃふんだよ。
ムスッとした面持ちをしていたのがバレたのか女性は足を止め、くるりと振り向いてきた。一瞬、ドキと心拍数が上がり、恐る恐る後退する。
「これ……あげる」
女性は手のひらから小さい飴玉を差し出してきた。意外にも、声は低くもなく高くもない中間あたり。あたしはびっくりした。
飴玉を差し出してきたこともだけど、その女性の血が通ってない真っ青な腕を見て飴玉よりも先に驚いた。
差し出されたものなんだからありがたくもらわなきゃ。恐る恐る近づき、飴玉をもらい受ける。
「あ、ありがとうございます」
ペコリと小さく会釈すると女性は満足したのかさっさと去ってしまった。あたしは廊下でただ一人、ポツンと飴玉を握っていた。
何が起きたのかさっぱり分からない。心の中はまるで、嵐が通り過ぎたようにゴチャゴチャしている。思わず、貰った飴玉をパクリと咥えた。こ、これは美味しい。怪しいものだけど美味。
一瞬にして怪しい女性から優しい女性というレッテルが貼られた。コロコロと口内の中で飴玉を咥え、また真広い宮殿内を探索。
幾つもの大きな門をくぐり、探索するも見つからない。諦めかけた直後、これまで大きな門を見たけどさらに大きな門が立ちはだかる。この門で最後。いかにも何かありますよ、という雰囲気バッチリ。
あたしはその門をゆっくり開いた。大きいだけに開けにも力がいる。数㌢開けたところで中の様子がうかがえる。
これまでにない広さ。日本ならではの和室が広がっていた。綺麗な畳敷きの上に人影が。しかも二つ。よぅく目を凝らしてみると天照とヘベ。
「ヘベ!」
あたしは叫び、やっとの力で部屋に入った。二人は飛び抜けたように振り向く。あたしはヘベのもとに駆け寄るとヘベはニッコリと笑いかけてきた。
「玲奈、こんなとこに居たのだな」
「ヘベこそ遅い!」
一括すると、ヘベは困った表情。
「ごめんな。どうも高天原の壁が厚くって」
横から天照が近づいてきた。あたしとヘベの間に仲介するように顔をだす。
「よく言うわ。どうせ来たくなかったのでしょう?」
ヘベが来たということは、三人よればなんとやら。さぁ、さっさと探すよ。駆けまわるもいっこうにその壺とやらは見つからない。
あたしは全力で諦めかけた直後、不意に白い服の人を見かけた。長い渡り廊下を歩いている最中、唐突に見えたそれは何者にも希望と見えた。
「あの、すいません!」
女性がゆっくりと振り向いた。さっき別れた見知らぬ神さま。
「壺探しているんです! どこかで見ていませんか?」
訊ねると女性は微かにゆっくりと腕をあげた。本当に催眠にかかったようにぎこちない。腕をあげ、指さした方向は宮殿内の真ん中、池のほとりだった。
匠に敷き詰められた石段、透明な水、和を箱に詰めたように日本ならではの池のほとり。
確かに、こんなとこにないだろうと思って探索しなかった場所だ。
「あ、ありがとうございます!!」
ペコリと深くお辞儀をし、早速向かう。すると、その女性がだしぬけに口を開いた。今まで途切れ途切れだった口調がガラリと一変する。
「右の通路、行かないでね……死ぬから」
最後にあたしはゾクリとした。
やっぱり気を許したらだめなんだ。気を許したから〝人間〟だってバレている。あたしは怖くなり、思わず尻もちをついてしまった。どんなに惨めな光景だったのか定かではない。
その女性は暫く、眺めているほど惨めだったのかも。
この女性と二人きっりは首を締められたように苦しかった。助けを呼ぼうにもこんな広い宮殿内だ。絶対声届かないし誰も来ない。
「え、えっと……初めまして?」
何を言っているんだあたしは! 混乱しすぎで挨拶。そこは逃げるための口実をつくらないと。
「えっと」
「あれ」
女性がまた、だしぬけに指差してきた。そこは、ちょうどあたしが尻もちついて左側の方向。思わず目を配ると、ギラギラ照りつける太陽の光に反射する物体が見えた。
天照は壷をどこでいつ気づいたのか、はっきりと覚えてたみたいで助かった。高天原の拠点、天照の座がある大きな宮殿にあたしたちは入った。
あたしは広い敷地内を一人で探索した。訳の分からない場所を一人で探索するのはもちろん怖いけど、一刻も早く壷を探して帰りたいからね。天照とふた手に別れて探索を始めた。
「なんか、凄いとこだな」
改まって、周囲を見渡すも人の気配も神さまの気配もない。天照とあたしだけがいるような宮殿だ。でも、油断禁物だよね。だってここ一応最高神の宮殿だもん。
気を許してたら、何かとんでもないものに引っかかりそう。
手当たりしだいに探しながら広い廊下を駆けると、ちょうど、曲がり角を曲がろうとしたとき誰かにぶつかった。その弾みで地べたに尻もちをつく。
「あいたた、た」
お尻をつき、見上げるとそこには全身白い服を見にまとった女性らしき人物が。顔の表情はよく読み取れない。顔まで深く帽子を被っているせいで。
「すいません……前をよく見てなかったです」
会釈しながらそう言うと相手の女性はスタスタと歩き去ってしまった。ちょっとちょっとこっち謝ってんのに無視かい。
どこのなんの者だい。こっちはあの最高神天照と仲良しなんだからね。言えばあんたなんかぎゃふんだよ。
ムスッとした面持ちをしていたのがバレたのか女性は足を止め、くるりと振り向いてきた。一瞬、ドキと心拍数が上がり、恐る恐る後退する。
「これ……あげる」
女性は手のひらから小さい飴玉を差し出してきた。意外にも、声は低くもなく高くもない中間あたり。あたしはびっくりした。
飴玉を差し出してきたこともだけど、その女性の血が通ってない真っ青な腕を見て飴玉よりも先に驚いた。
差し出されたものなんだからありがたくもらわなきゃ。恐る恐る近づき、飴玉をもらい受ける。
「あ、ありがとうございます」
ペコリと小さく会釈すると女性は満足したのかさっさと去ってしまった。あたしは廊下でただ一人、ポツンと飴玉を握っていた。
何が起きたのかさっぱり分からない。心の中はまるで、嵐が通り過ぎたようにゴチャゴチャしている。思わず、貰った飴玉をパクリと咥えた。こ、これは美味しい。怪しいものだけど美味。
一瞬にして怪しい女性から優しい女性というレッテルが貼られた。コロコロと口内の中で飴玉を咥え、また真広い宮殿内を探索。
幾つもの大きな門をくぐり、探索するも見つからない。諦めかけた直後、これまで大きな門を見たけどさらに大きな門が立ちはだかる。この門で最後。いかにも何かありますよ、という雰囲気バッチリ。
あたしはその門をゆっくり開いた。大きいだけに開けにも力がいる。数㌢開けたところで中の様子がうかがえる。
これまでにない広さ。日本ならではの和室が広がっていた。綺麗な畳敷きの上に人影が。しかも二つ。よぅく目を凝らしてみると天照とヘベ。
「ヘベ!」
あたしは叫び、やっとの力で部屋に入った。二人は飛び抜けたように振り向く。あたしはヘベのもとに駆け寄るとヘベはニッコリと笑いかけてきた。
「玲奈、こんなとこに居たのだな」
「ヘベこそ遅い!」
一括すると、ヘベは困った表情。
「ごめんな。どうも高天原の壁が厚くって」
横から天照が近づいてきた。あたしとヘベの間に仲介するように顔をだす。
「よく言うわ。どうせ来たくなかったのでしょう?」
ヘベが来たということは、三人よればなんとやら。さぁ、さっさと探すよ。駆けまわるもいっこうにその壺とやらは見つからない。
あたしは全力で諦めかけた直後、不意に白い服の人を見かけた。長い渡り廊下を歩いている最中、唐突に見えたそれは何者にも希望と見えた。
「あの、すいません!」
女性がゆっくりと振り向いた。さっき別れた見知らぬ神さま。
「壺探しているんです! どこかで見ていませんか?」
訊ねると女性は微かにゆっくりと腕をあげた。本当に催眠にかかったようにぎこちない。腕をあげ、指さした方向は宮殿内の真ん中、池のほとりだった。
匠に敷き詰められた石段、透明な水、和を箱に詰めたように日本ならではの池のほとり。
確かに、こんなとこにないだろうと思って探索しなかった場所だ。
「あ、ありがとうございます!!」
ペコリと深くお辞儀をし、早速向かう。すると、その女性がだしぬけに口を開いた。今まで途切れ途切れだった口調がガラリと一変する。
「右の通路、行かないでね……死ぬから」
最後にあたしはゾクリとした。
やっぱり気を許したらだめなんだ。気を許したから〝人間〟だってバレている。あたしは怖くなり、思わず尻もちをついてしまった。どんなに惨めな光景だったのか定かではない。
その女性は暫く、眺めているほど惨めだったのかも。
この女性と二人きっりは首を締められたように苦しかった。助けを呼ぼうにもこんな広い宮殿内だ。絶対声届かないし誰も来ない。
「え、えっと……初めまして?」
何を言っているんだあたしは! 混乱しすぎで挨拶。そこは逃げるための口実をつくらないと。
「えっと」
「あれ」
女性がまた、だしぬけに指差してきた。そこは、ちょうどあたしが尻もちついて左側の方向。思わず目を配ると、ギラギラ照りつける太陽の光に反射する物体が見えた。
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