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第二章 前世と神と
第24話 櫛の対価
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月詠という少年はジリジリと距離を詰める。こうして、顔を間近で見ると、やけに顔のパーツが整っていて学校でいうと美少年に入るレベルだ。
そんな美少年に距離を詰められ、後退するしかないあたし。ついには、背中に木が当たり、行き場を失ってしまった。
「ちょっと……」
「なに顔を赤くしておる。さっさと櫛かせ」
え、顔赤くなってたの。美少年により詰められしかも、顔を凝視していたからかな。なんだか恥ずかしい。
そっと頬に触れると本当に熱い。なんだか恋したような温もりだった。
「こらこら、月詠。よしなさい」
また天照という超絶乳が生えてる神さまが助けてくれた。天照というわりにはなんだか、雰囲気が暗い。けど、手の温もりは温かかった。
「ごめんね。うちの月詠が」
「いえいえ」
って普通に会話しちゃった。
この人たちは本当にあの神話に出てくる天照大神と月詠なのだろうか。にわかに信じがたい。今すぐ、夢であることを証明するも、つねった頬がヒリヒリと痛みを感じる。本当に現実らしい。
『玲奈、大丈夫だ。こいつらは悪意をほのめかす輩じゃない。わたしの友だ』
あたしの思考は鏡が割れた衝撃をもらい、真っ白になった。ま、まさかあの神話に出てくるトンデモ神さまとヘベが『ともだち』なんて。聞き間違えだよね。絶対そうだ。
「相変わらず、お前の容姿は変わってないな」
聞き間違いじゃなかった。友達公認だよ。どうして天照と月詠と仲良いんだろ。ヘベはこの地方の小さい神社の守り神だよ。
知り合った経緯が知りたい。その前にどうしてここにトンデモ神さまがいるの。
『どうしてここに?』
「立て壊されたのかなり、あとから知ったから心配になって来ちゃったの。余計なお世話だったようね」
天照が頬肉を上にし、にこやかに笑った。
明るい瞳の奥にあたしが映している。対して月詠のほうはなにか文句があるのかムスッとしている。
仁王立ちで顎を引き、あたしを見下ろしている。身長が低いくせにあたしを見下ろすなんてそんなの出来ないのに正確には、見下ろしている真似。
「櫛、かせ」
懲りないなぁ。そんなに櫛が欲しいのかな。
「この櫛はあたしの!」
「貴様のじゃなかろう!」
向かい合って睨み合うあたしたち。その間にすかさず入ってきたのはヘベ。宥めるような優しい口調で月詠に言いかける。
「月詠、この少女は私にとって大切な人間だ。危害を加えないでくれ」
月詠はフンと仰け反る。
「その櫛はお前の人柱力だろ? ひと目で分かったぞ」
櫛、確かに。この櫛はヘベからもらったものだけどまさか、人柱力だったとは。というと、あたしは力が弱っているヘベの力を使っていたというの。
「本当なの?」
ヘベをまじまじと見つめるも顔を逸らされてしまった。この反応は本当、と判断すればいいのだろうか。
月詠は、何も知らずに過ごしてきたのか、と言いたげに口をすっぱくしている。
「あなたの無事が見れて一安心だわ。それじゃあ私たちはこれで帰るわね」
天照が胸の前で両手を合わせ、にこやかに笑った。かなり、あっさりとした様子で人間であるあたしとヘベの関係をとりもってくれている、のかな。月詠みたいになにか文句があるような態度じゃない。
天照がヘベみたいに宙に浮き、月詠の服の袖を無理やり引っ張る。月詠はジタバタと釣れた魚のように足をバタつかせる。
「人と神だ! そり合わない! そんな人の子なんてほっといて帰ってこい!」
最後の言葉がやまびこのようにこだましていく。あたしは天照と月詠が遥か彼方の空に消えるまで見送った。
その場はまるで、嵐が去ったような静けさだ。
「ヘベ、この櫛返すよ」
あたしはポケットから櫛を取り出し、胸の前で突きつけた。ヘベは丸々と瞳を押し上げ、次第に悲しい表情をした。
「嫌いになったのか?」
「違うよ。嫌いになるわけないじゃん」
ただ、ヘベの人柱力をなにも知らずに使っていたことがショックなだけ。だから、せめてものと思い返したいの。
ヘベは激しく首を横に振った。
「持っていてくれ。必要な時があるだろう」
あたしは無理やりヘベの手のひらの中に櫛を突っ込む。
「あたしが嫌なの!」
駄々っ子のようにそれを言うと、仕方なく折れたヘベは櫛を服の懐に潜ませた。
それを確認したあたしは一人、黙って頷く。これでいいんだ。ヘベのこと一番大事だもん。それより、あのトンデモ神はまた来るのかな。
面倒臭い。来たらほうきで追い払おう。
そんな美少年に距離を詰められ、後退するしかないあたし。ついには、背中に木が当たり、行き場を失ってしまった。
「ちょっと……」
「なに顔を赤くしておる。さっさと櫛かせ」
え、顔赤くなってたの。美少年により詰められしかも、顔を凝視していたからかな。なんだか恥ずかしい。
そっと頬に触れると本当に熱い。なんだか恋したような温もりだった。
「こらこら、月詠。よしなさい」
また天照という超絶乳が生えてる神さまが助けてくれた。天照というわりにはなんだか、雰囲気が暗い。けど、手の温もりは温かかった。
「ごめんね。うちの月詠が」
「いえいえ」
って普通に会話しちゃった。
この人たちは本当にあの神話に出てくる天照大神と月詠なのだろうか。にわかに信じがたい。今すぐ、夢であることを証明するも、つねった頬がヒリヒリと痛みを感じる。本当に現実らしい。
『玲奈、大丈夫だ。こいつらは悪意をほのめかす輩じゃない。わたしの友だ』
あたしの思考は鏡が割れた衝撃をもらい、真っ白になった。ま、まさかあの神話に出てくるトンデモ神さまとヘベが『ともだち』なんて。聞き間違えだよね。絶対そうだ。
「相変わらず、お前の容姿は変わってないな」
聞き間違いじゃなかった。友達公認だよ。どうして天照と月詠と仲良いんだろ。ヘベはこの地方の小さい神社の守り神だよ。
知り合った経緯が知りたい。その前にどうしてここにトンデモ神さまがいるの。
『どうしてここに?』
「立て壊されたのかなり、あとから知ったから心配になって来ちゃったの。余計なお世話だったようね」
天照が頬肉を上にし、にこやかに笑った。
明るい瞳の奥にあたしが映している。対して月詠のほうはなにか文句があるのかムスッとしている。
仁王立ちで顎を引き、あたしを見下ろしている。身長が低いくせにあたしを見下ろすなんてそんなの出来ないのに正確には、見下ろしている真似。
「櫛、かせ」
懲りないなぁ。そんなに櫛が欲しいのかな。
「この櫛はあたしの!」
「貴様のじゃなかろう!」
向かい合って睨み合うあたしたち。その間にすかさず入ってきたのはヘベ。宥めるような優しい口調で月詠に言いかける。
「月詠、この少女は私にとって大切な人間だ。危害を加えないでくれ」
月詠はフンと仰け反る。
「その櫛はお前の人柱力だろ? ひと目で分かったぞ」
櫛、確かに。この櫛はヘベからもらったものだけどまさか、人柱力だったとは。というと、あたしは力が弱っているヘベの力を使っていたというの。
「本当なの?」
ヘベをまじまじと見つめるも顔を逸らされてしまった。この反応は本当、と判断すればいいのだろうか。
月詠は、何も知らずに過ごしてきたのか、と言いたげに口をすっぱくしている。
「あなたの無事が見れて一安心だわ。それじゃあ私たちはこれで帰るわね」
天照が胸の前で両手を合わせ、にこやかに笑った。かなり、あっさりとした様子で人間であるあたしとヘベの関係をとりもってくれている、のかな。月詠みたいになにか文句があるような態度じゃない。
天照がヘベみたいに宙に浮き、月詠の服の袖を無理やり引っ張る。月詠はジタバタと釣れた魚のように足をバタつかせる。
「人と神だ! そり合わない! そんな人の子なんてほっといて帰ってこい!」
最後の言葉がやまびこのようにこだましていく。あたしは天照と月詠が遥か彼方の空に消えるまで見送った。
その場はまるで、嵐が去ったような静けさだ。
「ヘベ、この櫛返すよ」
あたしはポケットから櫛を取り出し、胸の前で突きつけた。ヘベは丸々と瞳を押し上げ、次第に悲しい表情をした。
「嫌いになったのか?」
「違うよ。嫌いになるわけないじゃん」
ただ、ヘベの人柱力をなにも知らずに使っていたことがショックなだけ。だから、せめてものと思い返したいの。
ヘベは激しく首を横に振った。
「持っていてくれ。必要な時があるだろう」
あたしは無理やりヘベの手のひらの中に櫛を突っ込む。
「あたしが嫌なの!」
駄々っ子のようにそれを言うと、仕方なく折れたヘベは櫛を服の懐に潜ませた。
それを確認したあたしは一人、黙って頷く。これでいいんだ。ヘベのこと一番大事だもん。それより、あのトンデモ神はまた来るのかな。
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