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第三章 再び会うときまで
第33話 あたしの道
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ジェトコースターからの次はなんと、占いの舘だった。あたしは断然拒否った。でもなんだか断る理由が見つからない。言葉がなにをしても生まれなかった。
質素で大胆に占いで設けている母とは偉く違う謙遜とした舘だった。
舘に第一歩踏み入る。そこはなんと、一軒家のリビングルームだった。テレビやソファーなどある程度家具が置いてあるお家。
「いらっしゃい」
その店主の人らしき人物が奥から顔を覗かせた。占い師の人物のイメージは人それぞれでも誰もが、女性、黒い服を着ている、怪しげな水晶玉を持っている、などそんなイメージ持っているはずだ。
けど、ここの店主は違う。全部のイメージをひっくり返したもの。人が良さそうな男性、明るい服を着ている、どう見ても安物の透明玉。
「これ、インチキじゃ」
「しっ!」
美穂に耳打ちするも、美穂は相手に申し訳無いと思ったのか言葉を黙らせる。
隣にいる斗馬の顔を見上げると、斗馬も感ずいたのか苦笑い。
とうの店主の人はニッコリと営業スマイルでソファーを指差す。あたしたちはなす術もなく黙ってソファーに腰をおろした。
「あなた、インチキ商売は…――ぶっ」
あたしは凝りなく言うとその口を塞いだのは美穂。口だけじゃなく鼻まで手のひらで覆い被さって呼吸が苦しい。
「言わない、でしょ?」
美穂のドス黒い声色が耳元にした。
普段穏やかな口調する子が急にそんな黒い声色に変わるとびっくりする。
机を挟んで向かいあっている店主の人が小さく首を傾げた。
「なにか?」
「いいえいいえ。なんでもないんです!」
口を塞いでいる美穂のほうが必死に弁明する。そのあと、なぜか誕生日占いや結婚占いなど相談にも持ちかけてもいないのにペラペラと占う自称、詐欺師。
なんだか、腸がプツリプツリと裂けそうだ。こんな詐欺師の占いをこうも当たり前のように表に出ているなんて、占い師としてほっとけない。
こんな奴、母にかかれば一発で薙ぎ払うのに。
一五分間、相談を受けてくれるという条件で入ったあたしたち。まだ五分も経ってないのにソワソワと時計を見比べる。
一五分間もあたしはこの男に対し、腸をプツプツさせなきゃならんのか。気が遠くなる。
長い長い一五分を絶え、やっと出たあたしたちはあの地獄の一五分を埋めるようにして回覧車にのった。
「はぁ、あの占い師詐欺師だよね」
「でも遊園地で最高の占い師なんだって」
美穂が回覧車から見える占い舘を無機質に見下ろす。
あたしもなんとなく窓を覗くと、広い景色が広がっていた。大きな遊具や沢山の人の頭。遊園地の景色だけじゃなく、街の彼方の景色まで見える。なんだか壮大で息を呑んでしまった。
空のほうも気付けば茜色。太陽の光がオレンジ色に輝き、建物と人を熱くてらしている。
回覧車の中にいるあたしたちも茜色に染まり、黒い影が室内に伸びている。
「あ、れっちゃん家あそこ!」
美穂が無邪気に彼方の景色のほうを指差した。
あたしは目を凝らしてもなんとなく見える範囲だけど、美穂のやつ、五感まで優等生だったのか。
「家に……帰りたくないな」
ポツリと無意識に口が滑った。
それまで温かな空気だったのが、あたしのせいで風が吹く。
「あ、ごめん……」
「……小学校の将来の夢についての発表会、覚えてる?」
穏やかな笑みで質問を投げかけた。小学生のときの発表会、いやがいやでも覚えている。だって、親の前で自分の将来の夢告発したもん。でも、その内容は覚えてないや。
「私もあの発表会いやだったなぁ。だって親の前で私がコーポの跡取りになる、って言ったんだよ。あぁ、今でも恥ずかしいし撤回したい」
あたしは空いた口を防げなかった。だって、美穂は家の伝統的な家系を黙って受け継ぐような姿勢を持ったこだもん。
テストでいつも満点をとるのはその跡取りを継ぐためだとあたしは思っていた。けど、美穂はそうじゃなかったんだ。
「みっちゃんは普通にコーポのために勉強して継ぐんだと思ってた」
「え、継ぐつもりだけど?」
まんざらでもなくそう言う美穂。あたしと一緒だと感心したあたしの気持ちを返してほしい。
「え、なんで撤回したいの?」
「んーと、今では感謝してるけどその頃から勉強勉強ってうるさくって自由な時間なかったんだよね」
苦笑いで小さく笑う美穂。
昔の記憶を思いだすように遠い眼差しで窓の景色を見つめた。
「なんで、それでもその道を進んだの?」
訊くと美穂は視線を変えないで、はっきりとした口調でこう言った。
「憧れ、かな。おばあちゃんの研究ずっと奥で見てて凄かったの。この世を世界の色を塗り替えれる研究をやってるおばあちゃん見て私もこの道進んでおばあちゃんの隣に立ちたい、そう思ったからこの道進んだの」
聞いてあたしは遠い記憶がフラッシュバックのように思いだしてきた。
そうだ。あたしも美穂みたいに強い憧れを抱いてたんだ。母に。占い師をやっている母を昔は好きだった。
やって来たお客さんを占いで笑顔にする情景を一度や二度見たことある。
それで、あたしも思ったんだ。
あたしも占い師になるって。
『応えが決まったようだな』
ヘベの優しい声が脳裏にかけめぐった。
質素で大胆に占いで設けている母とは偉く違う謙遜とした舘だった。
舘に第一歩踏み入る。そこはなんと、一軒家のリビングルームだった。テレビやソファーなどある程度家具が置いてあるお家。
「いらっしゃい」
その店主の人らしき人物が奥から顔を覗かせた。占い師の人物のイメージは人それぞれでも誰もが、女性、黒い服を着ている、怪しげな水晶玉を持っている、などそんなイメージ持っているはずだ。
けど、ここの店主は違う。全部のイメージをひっくり返したもの。人が良さそうな男性、明るい服を着ている、どう見ても安物の透明玉。
「これ、インチキじゃ」
「しっ!」
美穂に耳打ちするも、美穂は相手に申し訳無いと思ったのか言葉を黙らせる。
隣にいる斗馬の顔を見上げると、斗馬も感ずいたのか苦笑い。
とうの店主の人はニッコリと営業スマイルでソファーを指差す。あたしたちはなす術もなく黙ってソファーに腰をおろした。
「あなた、インチキ商売は…――ぶっ」
あたしは凝りなく言うとその口を塞いだのは美穂。口だけじゃなく鼻まで手のひらで覆い被さって呼吸が苦しい。
「言わない、でしょ?」
美穂のドス黒い声色が耳元にした。
普段穏やかな口調する子が急にそんな黒い声色に変わるとびっくりする。
机を挟んで向かいあっている店主の人が小さく首を傾げた。
「なにか?」
「いいえいいえ。なんでもないんです!」
口を塞いでいる美穂のほうが必死に弁明する。そのあと、なぜか誕生日占いや結婚占いなど相談にも持ちかけてもいないのにペラペラと占う自称、詐欺師。
なんだか、腸がプツリプツリと裂けそうだ。こんな詐欺師の占いをこうも当たり前のように表に出ているなんて、占い師としてほっとけない。
こんな奴、母にかかれば一発で薙ぎ払うのに。
一五分間、相談を受けてくれるという条件で入ったあたしたち。まだ五分も経ってないのにソワソワと時計を見比べる。
一五分間もあたしはこの男に対し、腸をプツプツさせなきゃならんのか。気が遠くなる。
長い長い一五分を絶え、やっと出たあたしたちはあの地獄の一五分を埋めるようにして回覧車にのった。
「はぁ、あの占い師詐欺師だよね」
「でも遊園地で最高の占い師なんだって」
美穂が回覧車から見える占い舘を無機質に見下ろす。
あたしもなんとなく窓を覗くと、広い景色が広がっていた。大きな遊具や沢山の人の頭。遊園地の景色だけじゃなく、街の彼方の景色まで見える。なんだか壮大で息を呑んでしまった。
空のほうも気付けば茜色。太陽の光がオレンジ色に輝き、建物と人を熱くてらしている。
回覧車の中にいるあたしたちも茜色に染まり、黒い影が室内に伸びている。
「あ、れっちゃん家あそこ!」
美穂が無邪気に彼方の景色のほうを指差した。
あたしは目を凝らしてもなんとなく見える範囲だけど、美穂のやつ、五感まで優等生だったのか。
「家に……帰りたくないな」
ポツリと無意識に口が滑った。
それまで温かな空気だったのが、あたしのせいで風が吹く。
「あ、ごめん……」
「……小学校の将来の夢についての発表会、覚えてる?」
穏やかな笑みで質問を投げかけた。小学生のときの発表会、いやがいやでも覚えている。だって、親の前で自分の将来の夢告発したもん。でも、その内容は覚えてないや。
「私もあの発表会いやだったなぁ。だって親の前で私がコーポの跡取りになる、って言ったんだよ。あぁ、今でも恥ずかしいし撤回したい」
あたしは空いた口を防げなかった。だって、美穂は家の伝統的な家系を黙って受け継ぐような姿勢を持ったこだもん。
テストでいつも満点をとるのはその跡取りを継ぐためだとあたしは思っていた。けど、美穂はそうじゃなかったんだ。
「みっちゃんは普通にコーポのために勉強して継ぐんだと思ってた」
「え、継ぐつもりだけど?」
まんざらでもなくそう言う美穂。あたしと一緒だと感心したあたしの気持ちを返してほしい。
「え、なんで撤回したいの?」
「んーと、今では感謝してるけどその頃から勉強勉強ってうるさくって自由な時間なかったんだよね」
苦笑いで小さく笑う美穂。
昔の記憶を思いだすように遠い眼差しで窓の景色を見つめた。
「なんで、それでもその道を進んだの?」
訊くと美穂は視線を変えないで、はっきりとした口調でこう言った。
「憧れ、かな。おばあちゃんの研究ずっと奥で見てて凄かったの。この世を世界の色を塗り替えれる研究をやってるおばあちゃん見て私もこの道進んでおばあちゃんの隣に立ちたい、そう思ったからこの道進んだの」
聞いてあたしは遠い記憶がフラッシュバックのように思いだしてきた。
そうだ。あたしも美穂みたいに強い憧れを抱いてたんだ。母に。占い師をやっている母を昔は好きだった。
やって来たお客さんを占いで笑顔にする情景を一度や二度見たことある。
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