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第二章 前世と神と
第22話 明かされる秘密
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東が駆け回り、一位をキープしたままあたしにバトンを渡した。それが合図だったように足を跳ね、コース上を走った。
必死に走っているのに、どんどん抜かれてしまう。せっかく、東が一位を取ってキープしていたのに。歓声が少し穏やかになった。
いいや、それまであったあたしへの期待が裏切られ応援しなくなったのだ。小学校から体育とか好きじゃなかったし、運動もできない。
今さらそれを悔やむ必要はないけど、なんだか頑張っているのに応援されないのは寂しい。
「れっちゃんっ!! 頑張れぇぇ!!」
美穂が叫弾のように応援してきた。それだけで、自然と勇気が湧いてきた。
一位になれなかったけど、三位をキープしてバトンを渡した。
「れっちゃん! 頑張ったね!!」
膝に手を置くあたしに急いで駆け寄ってきたのは美穂。日だまりのような暖かな笑顔を向けて。疲れたあたしの心を癒やしてくれる。
「みっちゃん、ごめん……」
「全然! あとは私に任せてっ!!」
凛々しい笑顔でそう言い切った。美穂が言うと〝必ず〟実現してしまいそう。本当に実現してしまった。
三位だったあたしたちのクラスはアンカーになるや、途端に一位に輝いた。ぐんぐんとまるで、草原に走るチータのように追い抜いていく美穂。
「あんれま、凄いや」
東が関心して、一人で美穂を凝視する。自分が言われてもいないのに、自然と笑顔になった。
「でしょ!! みっちゃんは凄いでしょ!」
「うん。凄い……揺れてる」
東がズビシと走り終えた美穂を指差した。首より低めの体を指差す。
「乳が」
「うん」
やっぱりそこ見るよね。あたしも見た。女のあたしでさえも凝視する乳の揺れ方だったもん。いつも、思うのが大きいくせになんで運動神経抜群なんだろ。普通は肩こったりしてトロいはずなのになんでだろ。
リレーにて優勝したあたしたちは、旗を持って帰り、そそくさと退場した。
「お疲れ様。凄いわね(おっぱいが)」
東がわざわざ美穂の隣に行き、嫌味のように言った。
「ありがとう。昔からなんだ(走ること)」
天然なのか、美穂がはにかんだ。
「そう……」
嫌がらせに失敗したようにそそくさと東はあたしに寄る。
「どうしよう。自慢された」
「話しの主語言ってないからじゃない?」
退場して間もなく、観客側のほうを見ていた奈美が甲高い声をあげた。ぴょんぴょんと大きくジャンプして手を振る。
奈美の顔見て、ちょっと訊ねてみたくなった。泉森神社が壊された理由を。
「どうしたの?」
訊ねると奈美は今でもそこに走り去るような勢いで観客側を指差した。ミジンコみたいにウヨウヨいる観客たち。団のテントにいるので、一人一人の顔は分からない。
両目とも視力0.1なのに。奈美を筆頭に観客席のいるテントに向かう。このあと、当分は出番がないので応援か休暇なので普通に出歩ける。
奈美が指差していた方向へと向かうと、顔見知りの男がこちらを手招く。
「やっほい! 見てたよ」
ひらひらと手を陽気に振ってくる斗馬。茶等の隣にいるのは、一際目立つ色白肌の雪。学年も同じ専門も同じでも、性格が違うゆえ並ぶと本当に対象的だ。
「雪くん。来てたのですか」
奈美が今まで見せたことのない純真無垢な笑顔で雪に寄る。こうして並ぶと本当にお似合いだなぁ。
「うん。奈美ちゃん走ってたね」
「へへへ。遅かったですけど、頑張りましたです」
壊していけないリア充だな。見ているだけで心がポカポカする。
「朝練帰り?」
美穂が斗馬に話しかけた。今日は確か休日の日曜日だ。学校はあり得ない。なのに二人は学校指定の制服とバックを持っている。
「そう。帰りに寄ったらやってて良かったよ」
チャラチャラした男が美穂の前では縮んで穏やかな姿勢になっている。その眼差しも熱がこもったように見つめている。
誰が見ても好きなサインを送っているのに、美穂は全く理解していない。
そうしているうちに休憩。ご飯は屋上で六人固まって食べた。部外者が見つからないように美穂が提案したのだ。
屋上で輪になってそれぞれのお弁当を前にする。
「体育祭だから手にのりを塗って多めに作っちゃた」
懐からでかでかとした重箱を取り出す美穂。三つ箱ある重箱を並べ、拳ほどのおにぎりを頬張る。リスのように頬肉が膨らんでいる。
「これが至福の一時」
そう言って、二つめのおにぎりを手にする。美穂は昔から暴食だ。細い体にしてはいろいろと食べるのだ。しかも、憎たらしいことに食べても食べても太らない体型らしい。とごにそんなのを吸収しているのか。
「なるほど、栄誉そこに溜まってんのね」
東が興味津々に言ってみせた。はちきれそうな乳房を睨んでいる。
ふとそんな時、屋上から見える景色に目がいった。フェンスを通り、運動場を抜け一般の道路を潜ると鬱蒼と生い茂る木々たち。そこはヘベが守護していた神社が建っていた場所。今は昼でも暗い雰囲気引き立つ森となっている。
まるで、誰にも見つからないように隠れた場所。
その森に何台も停めてある車。体育祭のため来た観客たちの車だろう。そうか、思い出した。神社をこわした同時に学校を建てたんだ。この学校の為に壊された。
なんだか、ここにいるあたしは居心地悪いな。
次は選抜線リレー。
一年生が代表して出るのは美穂。やっぱり人気者だ。この競技は体育祭最後を飾る競技だ。
昼間よりも少し減った観客たち、だんだん炎天下だった気温がさがり冷たい風がふいている。
まず、一年生から走り次に二年生三年生へとバトンを繋ぐ。しかし、ここで要注意人物を見つけた。違う団に美穂を上回る身体能力者がいた。
「なにあのかっこいい人!」
東がテントから顔を出し、普段冷静な目をキラキラと輝かせてる。
「あ、響矢先輩も出るんですか」
奈美が悠長に言った。響矢先輩とは奈美が付属する部、オカルズの部長さんだ。
「えぇえ!! あの、かっこいい人があんな陰気臭い部の部長ぉ!?」
「失礼な。オカルズ部は怪しい部でも陰気臭い部でもないです!」
二人は睨み、互いの意見をズケズケと言う。その間、貫くようにピストルが鳴った。
必死に走っているのに、どんどん抜かれてしまう。せっかく、東が一位を取ってキープしていたのに。歓声が少し穏やかになった。
いいや、それまであったあたしへの期待が裏切られ応援しなくなったのだ。小学校から体育とか好きじゃなかったし、運動もできない。
今さらそれを悔やむ必要はないけど、なんだか頑張っているのに応援されないのは寂しい。
「れっちゃんっ!! 頑張れぇぇ!!」
美穂が叫弾のように応援してきた。それだけで、自然と勇気が湧いてきた。
一位になれなかったけど、三位をキープしてバトンを渡した。
「れっちゃん! 頑張ったね!!」
膝に手を置くあたしに急いで駆け寄ってきたのは美穂。日だまりのような暖かな笑顔を向けて。疲れたあたしの心を癒やしてくれる。
「みっちゃん、ごめん……」
「全然! あとは私に任せてっ!!」
凛々しい笑顔でそう言い切った。美穂が言うと〝必ず〟実現してしまいそう。本当に実現してしまった。
三位だったあたしたちのクラスはアンカーになるや、途端に一位に輝いた。ぐんぐんとまるで、草原に走るチータのように追い抜いていく美穂。
「あんれま、凄いや」
東が関心して、一人で美穂を凝視する。自分が言われてもいないのに、自然と笑顔になった。
「でしょ!! みっちゃんは凄いでしょ!」
「うん。凄い……揺れてる」
東がズビシと走り終えた美穂を指差した。首より低めの体を指差す。
「乳が」
「うん」
やっぱりそこ見るよね。あたしも見た。女のあたしでさえも凝視する乳の揺れ方だったもん。いつも、思うのが大きいくせになんで運動神経抜群なんだろ。普通は肩こったりしてトロいはずなのになんでだろ。
リレーにて優勝したあたしたちは、旗を持って帰り、そそくさと退場した。
「お疲れ様。凄いわね(おっぱいが)」
東がわざわざ美穂の隣に行き、嫌味のように言った。
「ありがとう。昔からなんだ(走ること)」
天然なのか、美穂がはにかんだ。
「そう……」
嫌がらせに失敗したようにそそくさと東はあたしに寄る。
「どうしよう。自慢された」
「話しの主語言ってないからじゃない?」
退場して間もなく、観客側のほうを見ていた奈美が甲高い声をあげた。ぴょんぴょんと大きくジャンプして手を振る。
奈美の顔見て、ちょっと訊ねてみたくなった。泉森神社が壊された理由を。
「どうしたの?」
訊ねると奈美は今でもそこに走り去るような勢いで観客側を指差した。ミジンコみたいにウヨウヨいる観客たち。団のテントにいるので、一人一人の顔は分からない。
両目とも視力0.1なのに。奈美を筆頭に観客席のいるテントに向かう。このあと、当分は出番がないので応援か休暇なので普通に出歩ける。
奈美が指差していた方向へと向かうと、顔見知りの男がこちらを手招く。
「やっほい! 見てたよ」
ひらひらと手を陽気に振ってくる斗馬。茶等の隣にいるのは、一際目立つ色白肌の雪。学年も同じ専門も同じでも、性格が違うゆえ並ぶと本当に対象的だ。
「雪くん。来てたのですか」
奈美が今まで見せたことのない純真無垢な笑顔で雪に寄る。こうして並ぶと本当にお似合いだなぁ。
「うん。奈美ちゃん走ってたね」
「へへへ。遅かったですけど、頑張りましたです」
壊していけないリア充だな。見ているだけで心がポカポカする。
「朝練帰り?」
美穂が斗馬に話しかけた。今日は確か休日の日曜日だ。学校はあり得ない。なのに二人は学校指定の制服とバックを持っている。
「そう。帰りに寄ったらやってて良かったよ」
チャラチャラした男が美穂の前では縮んで穏やかな姿勢になっている。その眼差しも熱がこもったように見つめている。
誰が見ても好きなサインを送っているのに、美穂は全く理解していない。
そうしているうちに休憩。ご飯は屋上で六人固まって食べた。部外者が見つからないように美穂が提案したのだ。
屋上で輪になってそれぞれのお弁当を前にする。
「体育祭だから手にのりを塗って多めに作っちゃた」
懐からでかでかとした重箱を取り出す美穂。三つ箱ある重箱を並べ、拳ほどのおにぎりを頬張る。リスのように頬肉が膨らんでいる。
「これが至福の一時」
そう言って、二つめのおにぎりを手にする。美穂は昔から暴食だ。細い体にしてはいろいろと食べるのだ。しかも、憎たらしいことに食べても食べても太らない体型らしい。とごにそんなのを吸収しているのか。
「なるほど、栄誉そこに溜まってんのね」
東が興味津々に言ってみせた。はちきれそうな乳房を睨んでいる。
ふとそんな時、屋上から見える景色に目がいった。フェンスを通り、運動場を抜け一般の道路を潜ると鬱蒼と生い茂る木々たち。そこはヘベが守護していた神社が建っていた場所。今は昼でも暗い雰囲気引き立つ森となっている。
まるで、誰にも見つからないように隠れた場所。
その森に何台も停めてある車。体育祭のため来た観客たちの車だろう。そうか、思い出した。神社をこわした同時に学校を建てたんだ。この学校の為に壊された。
なんだか、ここにいるあたしは居心地悪いな。
次は選抜線リレー。
一年生が代表して出るのは美穂。やっぱり人気者だ。この競技は体育祭最後を飾る競技だ。
昼間よりも少し減った観客たち、だんだん炎天下だった気温がさがり冷たい風がふいている。
まず、一年生から走り次に二年生三年生へとバトンを繋ぐ。しかし、ここで要注意人物を見つけた。違う団に美穂を上回る身体能力者がいた。
「なにあのかっこいい人!」
東がテントから顔を出し、普段冷静な目をキラキラと輝かせてる。
「あ、響矢先輩も出るんですか」
奈美が悠長に言った。響矢先輩とは奈美が付属する部、オカルズの部長さんだ。
「えぇえ!! あの、かっこいい人があんな陰気臭い部の部長ぉ!?」
「失礼な。オカルズ部は怪しい部でも陰気臭い部でもないです!」
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