17 / 34
第二章 前世と神と
第17話 恋仲
しおりを挟む
なんとなく感じていた雰囲気とは違った。
占いをやる場所って、予想的に室内が暗くって白い煙がモヤモヤと広がっているそんなとこだと思っていたのに、オフィスみたいな部屋だった。
「さ。上がって、君が奈美ちゃんね。玲奈からいつも聞いてるわ」
母が奈美をひと目見るなり、微笑んだ。温かく歓迎するなり、オフィスの座席に誘導する。ゆったりと深いクッションだ。
母と対面する形で奈美と雪くんが腰掛ける。なんだか、いよいよな雰囲気になったなぁ。
「さて。前世の診断ね。占いというより催眠術とかだけどね」
母が手軽にお茶を用意し、そう言った。お茶を机に置き、微笑する。いつも家では凛とした姿を見せるけど、依頼者にたいしてはそんな笑みを浮かべるんだ。初めて知った。
なんだか、その笑みの中に悟っているような空気が交えてある。そうして、始まった前世診断。
生年月日や幼少期の思い出を尋問する母。あぁ、この姿が嫌いなんだよなぁ。遠目からその光景を見ていると、チョイチョイと肩を突かれた。振り向くと、斗馬が手招きする。
「何?」
「長そうだからさ、お茶しない?」
あたしは迷いなくのった。
ビルから去り、商店街の大広場で待つ。商店街の道路は色鮮やかなレンガだ。普段のコンクリートじゃない。
赤色や青色、茶色のレンガで組み立てたレンガの道だ。商店街から抜けるとすぐにコンクリート道に戻る。この鮮やかなレンガ道を何度も見ると、心がうっとりとしてしまう。昔はこの道を何度も母と渡ったな。
お買い物とか、よく手を繋いで歩いたっけ。占い家系じゃなかったら普通の一般家庭だ。
大広場とは何も店が建っていない休憩場所だ。商店街の門があるとすれば、この大広場はゴールの門。
樹木と椅子だけの空間。壁には映画のポスターや商店街の案内。
人は疎らで椅子に座っているのはあたしと斗馬だけだ。静かすぎて小鳥の囀りが聞こえてくる。あぁ、のどかなだなぁ。
あたしは不意に聞いてみた。
「ねぇ、取り壊された神社、覚えてる?」
「覚えてるよ」
斗馬は携帯電話を弄くりながら応える。あたしはびっくりして思わず顔を見上げた。斗馬は変わらず、淡々と携帯電話を弄くり言った。
「森の泉神社。恋が叶うジンクスがある神社」
「お、覚えてたんだ」
「そりゃあね」
斗馬と話しは途切れ、奈美の診断が終わるのを今か今かと思う。
すると、ビルからあの二人が出てきた。あたしは二人の元に急いで駆け寄る。けど、なんだか雰囲気が違う。
今まで気まずそうに距離を置いていた二人がピッタリとくっつき合い腕を組んでいる。
「え、なに、どうしたの?」
訊ねると奈美はフフと笑った。
まるで、全身の肉がとろりと溶けたようにたるんだ笑み。青い瞳がキラキラと輝いてる。
「ありがとう。玲奈!」
「え? 何が?」
訊ねると雪くんが喋りだした。こいつも頬の肉がたるんでる。
「今から付き合うことになるんです。僕たち」
「……はっ!?」
まったくもって意味がわからない。あれからどうなって今なぜそうなる。口をパクパクするあたしに奈美が穏やかに言った。
「奈美たち、前世では生涯の壁を壊した仲なんだって。つまり、夫婦だったのです!」
「へ、へぇ」
若干、腰を引くあたし。
あの母がこんな診断結果をやったの。何か間違っている。絶対。でも、この二人の仲睦まじい姿を見ると反対意見なんて言えない。
前世なんて、この前まで興味のなかったから、こんなに人を変えるものなんて思いもしなかった。あぁ、これが占いの果ての力か。
人を信じさせ、変える、そんなやり方にゾッと恐怖がめばえた。でも、占いで頼る人が世の中に大勢いる。そんな人のために占いがあるんだ。
あたしは遠くからビルの2階を見上げた。胡散臭い看板はあとにして、母が窓から覗いてないか目を凝らして見上げてみる。でも、2階の窓を見るなり母の姿は見当たらない。少し母を見直してしまった。
占いをやる場所って、予想的に室内が暗くって白い煙がモヤモヤと広がっているそんなとこだと思っていたのに、オフィスみたいな部屋だった。
「さ。上がって、君が奈美ちゃんね。玲奈からいつも聞いてるわ」
母が奈美をひと目見るなり、微笑んだ。温かく歓迎するなり、オフィスの座席に誘導する。ゆったりと深いクッションだ。
母と対面する形で奈美と雪くんが腰掛ける。なんだか、いよいよな雰囲気になったなぁ。
「さて。前世の診断ね。占いというより催眠術とかだけどね」
母が手軽にお茶を用意し、そう言った。お茶を机に置き、微笑する。いつも家では凛とした姿を見せるけど、依頼者にたいしてはそんな笑みを浮かべるんだ。初めて知った。
なんだか、その笑みの中に悟っているような空気が交えてある。そうして、始まった前世診断。
生年月日や幼少期の思い出を尋問する母。あぁ、この姿が嫌いなんだよなぁ。遠目からその光景を見ていると、チョイチョイと肩を突かれた。振り向くと、斗馬が手招きする。
「何?」
「長そうだからさ、お茶しない?」
あたしは迷いなくのった。
ビルから去り、商店街の大広場で待つ。商店街の道路は色鮮やかなレンガだ。普段のコンクリートじゃない。
赤色や青色、茶色のレンガで組み立てたレンガの道だ。商店街から抜けるとすぐにコンクリート道に戻る。この鮮やかなレンガ道を何度も見ると、心がうっとりとしてしまう。昔はこの道を何度も母と渡ったな。
お買い物とか、よく手を繋いで歩いたっけ。占い家系じゃなかったら普通の一般家庭だ。
大広場とは何も店が建っていない休憩場所だ。商店街の門があるとすれば、この大広場はゴールの門。
樹木と椅子だけの空間。壁には映画のポスターや商店街の案内。
人は疎らで椅子に座っているのはあたしと斗馬だけだ。静かすぎて小鳥の囀りが聞こえてくる。あぁ、のどかなだなぁ。
あたしは不意に聞いてみた。
「ねぇ、取り壊された神社、覚えてる?」
「覚えてるよ」
斗馬は携帯電話を弄くりながら応える。あたしはびっくりして思わず顔を見上げた。斗馬は変わらず、淡々と携帯電話を弄くり言った。
「森の泉神社。恋が叶うジンクスがある神社」
「お、覚えてたんだ」
「そりゃあね」
斗馬と話しは途切れ、奈美の診断が終わるのを今か今かと思う。
すると、ビルからあの二人が出てきた。あたしは二人の元に急いで駆け寄る。けど、なんだか雰囲気が違う。
今まで気まずそうに距離を置いていた二人がピッタリとくっつき合い腕を組んでいる。
「え、なに、どうしたの?」
訊ねると奈美はフフと笑った。
まるで、全身の肉がとろりと溶けたようにたるんだ笑み。青い瞳がキラキラと輝いてる。
「ありがとう。玲奈!」
「え? 何が?」
訊ねると雪くんが喋りだした。こいつも頬の肉がたるんでる。
「今から付き合うことになるんです。僕たち」
「……はっ!?」
まったくもって意味がわからない。あれからどうなって今なぜそうなる。口をパクパクするあたしに奈美が穏やかに言った。
「奈美たち、前世では生涯の壁を壊した仲なんだって。つまり、夫婦だったのです!」
「へ、へぇ」
若干、腰を引くあたし。
あの母がこんな診断結果をやったの。何か間違っている。絶対。でも、この二人の仲睦まじい姿を見ると反対意見なんて言えない。
前世なんて、この前まで興味のなかったから、こんなに人を変えるものなんて思いもしなかった。あぁ、これが占いの果ての力か。
人を信じさせ、変える、そんなやり方にゾッと恐怖がめばえた。でも、占いで頼る人が世の中に大勢いる。そんな人のために占いがあるんだ。
あたしは遠くからビルの2階を見上げた。胡散臭い看板はあとにして、母が窓から覗いてないか目を凝らして見上げてみる。でも、2階の窓を見るなり母の姿は見当たらない。少し母を見直してしまった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】ツインクロス
龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

虹恋、オカルテット(わけありな男子高校生と美少女たちの青春がオカルトすぎない?)
虹うた🌈
青春
☆あらすじ☆
訳アリな男子高校生が入部することになったオカルト研究部。しかしそこで彼を待ち受けていたのは、三人の美少女たちと過ごすオカルトすぎる青春の日々だった。な~んてラブコメみたいなノリであらすじを紹介してしまいましたが、結構怖い青春ラブストーリーです。四人の主人公たち(男の子一人、女の子三人)を中心に、恋愛や青春を描いていく物語ですが、彼らを取り巻く環境は本当にホラーなんです(苦笑)
恋愛青春作品やホラー作品が好きな人、集まれ~!!と、いうことでこの作品は、幽霊、化物、人怖、異能力バトル有りのオカルト青春ラブストーリーです。
※この作品は、他のサイトで「カラフル!」という名前で公開していた私の作品を、改めて書き直した作品です。(現在は公開されていません) 文章は大きく書き直しましたが、あらすじは変わっていません。
旧作者名:星野そうた 旧作品名:カラフル! 公開していたサイト名:小説家になろう
このサイトに公開するにあたり作品名、作者名を変更致しましたので、ご報告させていただきます。

I’m 無乳首少女。
緩街◦璃名
青春
地に垂直な胸と三段腹が特徴的な女子高生‘’部稜 痴舞美”(べそば ちまみ)は、ことごとく純情だった。その平らな胸の内には、ある男への復讐心がふつふつと燃え続けていた。
ちょっと見して…。…。
やっぱりあいつに…食われたのね!!
そう、彼女には片乳首が無いのである。
少女が好きになった男は、"逐西 七麻"(ちくにし びちお)。彼は端正な顔立ちから、数多の女が彼の腕中で鳴いたという。
だが彼には、乳首を食らうことが好きな
異常性癖の持ち主で━━!?
乳首を巡る復讐×青春の究極アタオカ・ラブストーリー!

男だと思っていた年上の幼馴染がギャルになってた
朝日はじめ
青春
宮田晴彦は不登校児になってしまった。
このまま引き籠っているのはまずいと思い、晴彦はリハビリを兼ねた外出でゲームセンターへと足を運んだ。
そこには年上のギャルがいて――
短編です。完結しました。

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
初恋旅行に出かけます
松丹子
青春
いたって普通の女子学生の、家族と進路と部活と友情と、そしてちょっとだけ恋の話。
(番外編にしようか悩みましたが、単体で公開します)
エセ福岡弁が出てきます。
*関連作品『モテ男とデキ女の奥手な恋』
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる