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第二章 前世と神と
第18話 ショッピングモール
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奈美の一件が無事落着し、その数日後、猫探しの依頼を心得てくれたお礼にと斗馬がショッピングモールに連れて行ってくれた。
斗馬の学校に近いショッピングモール。服や家具、本やCDまで売っている大きなモールだ。
放課後、電車で隣街まで向かうあたしと美穂。奈美はあの一件いらい、雪くんと恋仲の関係になり、今日は二人でデートらしい。だから、ここにいるのはあたし含む幼馴染の二人。
「わあ! ここって案外広いんだね!」
美穂がキョロキョロ辺りを見渡し、目を輝かせた。
「どこ行く?」
「うーん、服とか?」
あたしがそう提案すると、美穂は顔をしわくちゃにして笑いかけた。
「決定っ! いざ!」
あたしと斗馬の手を握り服屋のコーナーがある場所へと走った。握られた腕が温かい。ひだまりのようにポカポカする。こうやって、幼馴染どうしでどこかに行くの久しぶりだな。
服店のコーナーに辿り着いたあたしたち。
お洒落な服がいっぱい。女ものや男もの、ネックレスまで色々と揃ってある店。見たことない服がキラキラと店を輝かせている。
「キラキラしてる……!」
「ほんと!」
美穂はお洒落な服を一つ二つ選び、あたしのも選ぼうとしている。その姿は親と遊園地にやってきた幼い子どものよう。無邪気だ。
ふと、斗馬の顔を見上げた。声が全くしないから、死んだのかと思ったら違う。
頬がほんのりと紅色になっている。耳は真っ赤赤だ。さっき握られた手のひらをジッと見下ろしている。
「ねぇ、一度聞きたかったんだけど」
「え!? あ、なに?」
あのチャラ男が明らかに動揺している。不意を突かれ、間抜けな声。声をかけたことによほど驚いたのか、大きく目を見開いていた。
「みっちゃんのこと、いつから好きだったの?」
そう訊ねると斗馬は少し考えてから、顔を下に背けた。足元を見張っている。
「さあ、わからないな」
どこか、寂しい声色。あたしはふぅん、と興ざめした返事で返すと、また訊ねた。
「どこが好き?」
斗馬は照れ臭く、ハハと苦笑いを浮かべた。
「今日は苛めるねぇ」
「さっさと応えて!」
斗馬は頬を赤らめ、コホンと咳払いする。
「あえて言うなら……おっぱいかな」
「あぁ……(納得)」
そう喋っているうちに勝手に服を決められた。なんだか、ここにあるの全部お洒落だから仕方ないけど普段着たことない服だなぁ。
「試着しよ」
美穂があたしを試着室へと手を引っ張る。あたしはやや、強引に服を着た。美穂が選んだ甲斐あってか、なかなかに似合っている。自分で言ってもなんだか。こんな服を着るのは生まれて初めてだ。
コートの下に白シャツとケーブルニット、ギンガムチェックのスカート。膝辺りまであるスカート。
「かわいい! かわいい!」
美穂がぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。まるで、自分のことみたいに。スカートなんて、近所の人のおさがり以外着たことない。内心着てドキドキしてしまった。
「そ、そうかな?」
「うん! ピッタリ!! それじゃ次は…――」
奥の棚からまた一着の服を持ってくる。あたしは次から次へと持ってくる服を着こなした。まるで、着せ替え人形みたい。かわいいものやら大人のファション、ちょっと色気のある服まで。
「待って!」
また服を持ってくる美穂の動きを塞いだ。
「かわいいけどこんなに買えないし、何より、みっちゃん。みっちゃんなにも着てないじゃん」
「私はいいの! れっちゃんがかわいいのを着て見てるだけで満足っ!」
まったく、この子たら。あんたのコーデを見たい奴だっているの。近くに。
「あたしはもういい。さっ、次はみっちゃんだよ!」
あたしが着ていた服を今度は美穂に着させた。才色兼備の美穂ならなんだって似合うはず!
「どう?」
試着室の前で問う。分厚くつくられたカーテン越しから美穂の声は一切しない。暫く、様子見しているとカーテン越しから声を聞く。でも、なんだか震えてる。それに暗いし。
「うっ……やっぱり無理だよ」
「そんなことないよ」
「……無理。私、れっちゃんみたいに細くないもん」
ん。それはどういう意味だ。はっ! そういえば、美穂の奴乳の脂肪があるんだ。あたしみたいに細くないってあたしのまな板のこと言ってますか!?
「なぁ、帰ろ。いつまでここにいる気だよ」
興ざめした斗馬がコーナーにやってきた。そういえば、今までどこにいたんだろ。あたしたちだけ楽しんでいたからどこかで暇持て余してたのかな。
静かに壁にぶら下がった時計を見ると既に六時になっていた。放課後が終わったのは四時半。もう、一時間も過ぎていたのか。
呆気に思い、試着室のカーテンを思いっきり開けた。
「きゃあ!」
美穂の黄色い叫びが店内にこだまする。
試着室の中は薄暗いし狭い。あたしと美穂が入ると中はぎゅうぎゅうだ。試着室の中の美穂はギンガムチェックのスカートは着ているものの、どうやら、白シャツが着れないらしく上はマシュマロ乳を抑えてるブラジャー一枚だった。薄暗い試着室で、美穂の白い肌が青白く光っている。
「な、な、なにれっちゃん急に!」
「しぃ!」
暴れる美穂を抑えるなり、ドタバタ音をたてる。
「おいおい……何やってんだよ」
外でも響いてたらしく斗馬はやや、恥ずかしげ。
あたしは思いっきり、試着室のカーテンをシャと開けた。無論、裸同前だった美穂に服を着せてから。瞬間、斗馬は鼻から赤い血を噴き出した。美穂に着せたのは白シャツじゃなくってケーブルニット一枚。
「ど、どうかな? って大丈夫!?」
美穂は足をくねらせ、そう訊ねる。夏に吹く風のように透き通った声がこんな時だけ、猫みたいに甘い。
「ぜ、全然……大丈夫ハ、ハハ」
タラタラ鼻血を垂れ流す斗馬はあたしにグッと親指のサインを送る。美穂の格好は正直言って、エロい雰囲気丸出し。マシュマロ乳なんか突き出て、体の細いラインが丸見えだった。
「ヒュウ。あの女の子、おっぱいでけえ」
あ、野次馬。美穂の乳みて欲望丸出しの目だ。はぁ、ほんと男ってガキだな。さっと、美穂を隠すと斗馬が立ち上がり、その野次馬のとこに向かった。
「おい、どこに目ぇついてんだよ……」
「さぁ! 帰ろ帰ろ!」
あたしはここで、喧嘩になるとまずいと思い、半ば強制に二人の手を引き、コーナーから立ち去った。もちろん、服は買ったよ。美穂がね。店の全部を根こそぎ買ったらしい。
あぁ、なんだかほんとにこの関係はおもしろい。
斗馬の学校に近いショッピングモール。服や家具、本やCDまで売っている大きなモールだ。
放課後、電車で隣街まで向かうあたしと美穂。奈美はあの一件いらい、雪くんと恋仲の関係になり、今日は二人でデートらしい。だから、ここにいるのはあたし含む幼馴染の二人。
「わあ! ここって案外広いんだね!」
美穂がキョロキョロ辺りを見渡し、目を輝かせた。
「どこ行く?」
「うーん、服とか?」
あたしがそう提案すると、美穂は顔をしわくちゃにして笑いかけた。
「決定っ! いざ!」
あたしと斗馬の手を握り服屋のコーナーがある場所へと走った。握られた腕が温かい。ひだまりのようにポカポカする。こうやって、幼馴染どうしでどこかに行くの久しぶりだな。
服店のコーナーに辿り着いたあたしたち。
お洒落な服がいっぱい。女ものや男もの、ネックレスまで色々と揃ってある店。見たことない服がキラキラと店を輝かせている。
「キラキラしてる……!」
「ほんと!」
美穂はお洒落な服を一つ二つ選び、あたしのも選ぼうとしている。その姿は親と遊園地にやってきた幼い子どものよう。無邪気だ。
ふと、斗馬の顔を見上げた。声が全くしないから、死んだのかと思ったら違う。
頬がほんのりと紅色になっている。耳は真っ赤赤だ。さっき握られた手のひらをジッと見下ろしている。
「ねぇ、一度聞きたかったんだけど」
「え!? あ、なに?」
あのチャラ男が明らかに動揺している。不意を突かれ、間抜けな声。声をかけたことによほど驚いたのか、大きく目を見開いていた。
「みっちゃんのこと、いつから好きだったの?」
そう訊ねると斗馬は少し考えてから、顔を下に背けた。足元を見張っている。
「さあ、わからないな」
どこか、寂しい声色。あたしはふぅん、と興ざめした返事で返すと、また訊ねた。
「どこが好き?」
斗馬は照れ臭く、ハハと苦笑いを浮かべた。
「今日は苛めるねぇ」
「さっさと応えて!」
斗馬は頬を赤らめ、コホンと咳払いする。
「あえて言うなら……おっぱいかな」
「あぁ……(納得)」
そう喋っているうちに勝手に服を決められた。なんだか、ここにあるの全部お洒落だから仕方ないけど普段着たことない服だなぁ。
「試着しよ」
美穂があたしを試着室へと手を引っ張る。あたしはやや、強引に服を着た。美穂が選んだ甲斐あってか、なかなかに似合っている。自分で言ってもなんだか。こんな服を着るのは生まれて初めてだ。
コートの下に白シャツとケーブルニット、ギンガムチェックのスカート。膝辺りまであるスカート。
「かわいい! かわいい!」
美穂がぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。まるで、自分のことみたいに。スカートなんて、近所の人のおさがり以外着たことない。内心着てドキドキしてしまった。
「そ、そうかな?」
「うん! ピッタリ!! それじゃ次は…――」
奥の棚からまた一着の服を持ってくる。あたしは次から次へと持ってくる服を着こなした。まるで、着せ替え人形みたい。かわいいものやら大人のファション、ちょっと色気のある服まで。
「待って!」
また服を持ってくる美穂の動きを塞いだ。
「かわいいけどこんなに買えないし、何より、みっちゃん。みっちゃんなにも着てないじゃん」
「私はいいの! れっちゃんがかわいいのを着て見てるだけで満足っ!」
まったく、この子たら。あんたのコーデを見たい奴だっているの。近くに。
「あたしはもういい。さっ、次はみっちゃんだよ!」
あたしが着ていた服を今度は美穂に着させた。才色兼備の美穂ならなんだって似合うはず!
「どう?」
試着室の前で問う。分厚くつくられたカーテン越しから美穂の声は一切しない。暫く、様子見しているとカーテン越しから声を聞く。でも、なんだか震えてる。それに暗いし。
「うっ……やっぱり無理だよ」
「そんなことないよ」
「……無理。私、れっちゃんみたいに細くないもん」
ん。それはどういう意味だ。はっ! そういえば、美穂の奴乳の脂肪があるんだ。あたしみたいに細くないってあたしのまな板のこと言ってますか!?
「なぁ、帰ろ。いつまでここにいる気だよ」
興ざめした斗馬がコーナーにやってきた。そういえば、今までどこにいたんだろ。あたしたちだけ楽しんでいたからどこかで暇持て余してたのかな。
静かに壁にぶら下がった時計を見ると既に六時になっていた。放課後が終わったのは四時半。もう、一時間も過ぎていたのか。
呆気に思い、試着室のカーテンを思いっきり開けた。
「きゃあ!」
美穂の黄色い叫びが店内にこだまする。
試着室の中は薄暗いし狭い。あたしと美穂が入ると中はぎゅうぎゅうだ。試着室の中の美穂はギンガムチェックのスカートは着ているものの、どうやら、白シャツが着れないらしく上はマシュマロ乳を抑えてるブラジャー一枚だった。薄暗い試着室で、美穂の白い肌が青白く光っている。
「な、な、なにれっちゃん急に!」
「しぃ!」
暴れる美穂を抑えるなり、ドタバタ音をたてる。
「おいおい……何やってんだよ」
外でも響いてたらしく斗馬はやや、恥ずかしげ。
あたしは思いっきり、試着室のカーテンをシャと開けた。無論、裸同前だった美穂に服を着せてから。瞬間、斗馬は鼻から赤い血を噴き出した。美穂に着せたのは白シャツじゃなくってケーブルニット一枚。
「ど、どうかな? って大丈夫!?」
美穂は足をくねらせ、そう訊ねる。夏に吹く風のように透き通った声がこんな時だけ、猫みたいに甘い。
「ぜ、全然……大丈夫ハ、ハハ」
タラタラ鼻血を垂れ流す斗馬はあたしにグッと親指のサインを送る。美穂の格好は正直言って、エロい雰囲気丸出し。マシュマロ乳なんか突き出て、体の細いラインが丸見えだった。
「ヒュウ。あの女の子、おっぱいでけえ」
あ、野次馬。美穂の乳みて欲望丸出しの目だ。はぁ、ほんと男ってガキだな。さっと、美穂を隠すと斗馬が立ち上がり、その野次馬のとこに向かった。
「おい、どこに目ぇついてんだよ……」
「さぁ! 帰ろ帰ろ!」
あたしはここで、喧嘩になるとまずいと思い、半ば強制に二人の手を引き、コーナーから立ち去った。もちろん、服は買ったよ。美穂がね。店の全部を根こそぎ買ったらしい。
あぁ、なんだかほんとにこの関係はおもしろい。
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