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Ⅱ 地球とエデンの革命
第13話 説得
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船が誰かに盗られてなくて安堵した。その束の間、僕らの天にも踊る喜びが冷たい地べたに落とされた。住民たちが僕らのあとをひっそり付いていて、気がついたら囲まれていた。
「懸賞金の女も、船もあって、逃げる気か?」
「女を置いてとっとと散れ」
「ふん。ガキが俺達舐めたら容赦しねぇぞ」
荒れ狂う者共のギラギラした瞳。眼光は鋭く。獲物を捕らえる肉食獣のように血気盛んで、今すぐにでも噛みつきそう。
迫りくる凶暴な奴らに僕らはたじろぐばかり。船があること。それに乗ること、このままじゃ何処までもついてきそうだ。
ガッシリした体型の良太が背負っているから明保野さんは隠れている。でもみんな、良太を狙って刃物を向けている。
「良太隠れてて!」
「は⁉ 何処に?」
僕は良太の肩をバシバシ叩いた。押されて良太は怪訝な表情。船の柱と柱に隠れる。
「隠れても無駄だぜ! もう正体は見えてんだ!」
「やっちまえ!」
野郎一人が指示出すと、わっとむらがってきた。せいらは慌てて良太と同じ場所に隠れる。
「どうすんだよこれ!」
嵐が切羽詰まってテンパった。
こんな展開誰も予想していなかった。だかこそ、こんな荒々しいのをどうすれば機転するか。そんなの、逃げるか戦うかのどちらかだ。選択肢は2つ。
「嵐、これ!」
「はぁ⁉ こんなの持ってまさか、戦う気かよ!」
僕は足元に無造作に捨ててあった椅子やハンマーを嵐に手渡した。嵐は戸惑いつつも受け取りこの状況を見て、戦う選択肢を選んだ。
僕らが戦う姿勢を見せたことにより彼らの士気も高まった。立ち向かう彼らを椅子で殴り付けたり、ハンマーを降ったりして船に寄せ付けないように戦うも、所詮は高校生の体で相手は大人。
バットやら刃物を持っている大人には勝てなかった。刃物があっちこっちに向かってくるせいで避けることも一苦労。腕や顔に掠ったときはそこからジンと痛みがかけめぐって思うように思考できない。
「やめて! 二人ともっ! 降参してっ‼」
せいらが叫ぶも、降参するわけにはいかない。
だって明保野さんには時間がない。医療機器もまともに持ち合わせていない地球で病にかかったら百%待っているのは死だ。人命したいがそれを持ち合わせているのはエデン。
エデンに行けば助かる。
明保野さんを助けるんだ。
誇りと血の匂いが充満し、喧嘩の空気に当てられ野郎共は誰も止まらない。せいらがいくら叫んでも男の喧嘩は止まらない。良太もいつしか加勢に加わりさらに血祭りに。
しかし、意外な人物がこの惨状を止めた。うちのおばあちゃんだ。
「やめぃっ‼ この若造共めが‼」
おばあちゃんの後ろには近所に住んでいる主婦や爺さんまで。せいらのおじさんもいる。荒々しい戦場に突如やってきた新参者はこの戦場を遥かに超える怒声。
「こんのアホンダラァ!」
おばあちゃんが叫ぶと大空が割れるように響いた。野獣のように高揚していた男たちが怯むほど。
「こんなときに子供をいじめている場合じゃないけろ!」
「監視ロボットがいない今だからこそやれるチャンスがあるのに、何をやっとん⁉」
主婦たちが野郎共にボカスカ正論をぶちまける。あれほど高揚していた野郎共が萎縮している。あの血気盛んな野獣だった姿はどこに。
女性たちが現れて形勢逆転。
野郎たちの尾はすっかり縮み、僕らに謝罪する。僕らはなぜかせいらに怒られた。
「もうっ‼ ばっかじゃないの⁉ こんなに傷だらけになっても勝てもしない戦いに挑むなんて、男子てほんと……ほんとバカ」
せいらは泣き崩れながら治療をしてくれた。頬や腕に赤い線がいっぱい。血は止まっているから深くはない。
「だって」
「だってもクソもヘもねぇんだよ」
「痛っ‼」
僕が明保野さんたちのために、と言う前にアルコール消毒液がジワリと傷口にグリグリと当たった。ナイフで掠ったときよりも痛いし大声を出して地面にのたうち回る。
嵐はその様子を見ててソォ、と逃げ出そうとしたがせいらに肩をポンと叩かれ余儀なく拷問とかいて治療を施された。
「いだだだだだ! 痛ってつぅの! 優しくしろ優しく!」
「これでも優しいコースですけどぉ? 傷が深いから丹念にしてますぅ。ちょっと暴れないで!」
嵐はジタバタと足を動かすも、せいらが胸グラを掴んでいるせいで無理やりそこに留まらせている。
嵐はナイフに深く刺さっており、ドクドクと血が出ている。せいらは目頭を赤くしながら時折鼻水をズズッと啜っている。
住民の殆どがここに集まり、僕らが船を用意していたこと、エデンに行くことを説明した。それからどうしてエデンから圧政されるのか、その理由を明保野さんを取り払って説明した。
「つまり、あんたたちはあのドローンを壊したからエデンはお怒りに?」
おばあちゃんは顎の下に手を添えた。
「悪気はなかったんだ」
「悪気なんかあったら御法度だ」
おばあちゃんは杖をトントンと地面に小さく打ち付けて、やれやれとため息ついた。ちらっと良太に抱えられている明保野さんを確認して本当の理由を察した。おばあちゃんは再度大きくため息をついて僕に顔を向けた。
「空、大きな怪我をしていなくて良かった。あたしゃ、帰るよ。帰りに白い像様を見ておくかね」
おばあちゃんはくるりと背を向けて、ひらひら手を振った。
「良太、明保野さんは大丈夫?」
「さっきの騒動で起きたがもう寝ている。ずっと『ごめんなさい』てうわ言のように呟いてたぜ」
良太は無表情で言った。
良太もさっきの騒動、そして鎮圧の光景を後ろから見ていて圧倒されている。明保野さんに怪我がなくてよかった。
「お前こそ大丈夫かよ」
良太は僕に話を振ってきた。
トントン、と自分の頬を指差す。僕はつられて腕を上げて頬を触るとジンと痛みがかけ巡った。浅いと思っていたが割と深かったみたい。ガーゼから血が染みている。良太には大丈夫だと言って、女性陣たちのところに向かった。女性陣たちは今後について話していた。流石女性、話はまとまって速い。
「エデンにロボットがいない今、やれるチャンスは一つ。エデンに行くこと。船がこんなにある。みんな、行きたがってたんだ。船を改造して茶々と行くよ!」
女性陣が指示出すと男性陣は動いた。この街の住民はみんな嫁に尻を敷かれている。女性たちにはうまく頭が上がらないのだ。
そして、この街の男性陣は機械など改造はお手の物だ。僕らが選んだ船はまだマシなもので、他の船は破損が激しい。なのに、その船を一時間で改良した。良太は目を丸くする。
どんどん船が改良していって女性陣たちは船の掃除を。せいらはその加勢に進む。
「ごめんね。うちの旦那がたいした怪我じゃなくて良かったよ」
おばさんが話しかけた。
「正直怖かったです。旦那さんたちよりも、武器を持って戦っているあの二人の姿を見て、二人を失うかもしれない、て怖かった。もしかしたら、何かあったとき自分じゃ止められないのかもしれない。そうなったら私……」
せいらは俯いてまたこぼれ落ちそうな涙を手ですくった。おばさんはそんなせいらの背中を優しくポンポンと撫でた。
船の改良、掃除もろもろ三時間足らずで終わった。三時間も監視ロボットが黙っているわけない。今頃エデンからまた新たにロボットが降りてくる。その前に船に乗り組む。
「夢みたいだエデンに行ける!」
「これで毎日食べるものに困らない!」
エデンに行く理由は人それぞれ。
その根底には他人を想いやる心。他人のために頑張っている人たち。頼もしい大人たちだ。持っていくものを持ち出すため、再び街へ。ロボットがいない静か。
昼間なのに夜のように静寂で人気がない。 ロボットがいないとこの街はこんな寂しくなるのか。音が消えた。道行く人たちは殆どいない。ロボットを壊したことにより震えて家の中に隠れているんだ。
音がない街中を歩いていく。病院の窓硝子は割れたまま。昨日大量に降ってきたビラが砂利道の外側にはけている。
まるで、時が止まったような情景だ。人がいなくなると街はその時のまんま。何も変わっていない。一旦家に帰ると母さんに呼び止められた。母さんもおばあちゃんから話を聞いていて、腕や顔のかすり傷を見て顔を青くした。
「大丈夫なの⁉」
「大丈夫だよ。ところで母さん僕らエデンに行くんだ。母さんも行こう」
母さんは口を閉ざした。
エデンに行ける。生まれて惨めな環境だった地球の民から言えばエデンは憧れであり、幻想郷なのだ。食うものも寝る場所にも困らない。ここと違って「個」の自由がある。みんな誰だって憧れの場所。行きたくない人なんていない。
母さんはだんまりを決め込めてやっとのことで口を開いた。
「母さんはおばあちゃんと一緒にここに残るわ」
「なんで⁉ 母さん!」
僕は身を乗り出した。母さんは苦笑した。すると、いつの間に帰っていたのやら奥からおばあちゃんが顔を出した。
「ミエさん。あたしゃのこと気にせんで行き。あたしゃここに残るがな」
「おばあちゃんもどうして地球に残るんだ」
そう聞くとおばあちゃんは見たことない穏やかな顔をした。
「懸賞金の女も、船もあって、逃げる気か?」
「女を置いてとっとと散れ」
「ふん。ガキが俺達舐めたら容赦しねぇぞ」
荒れ狂う者共のギラギラした瞳。眼光は鋭く。獲物を捕らえる肉食獣のように血気盛んで、今すぐにでも噛みつきそう。
迫りくる凶暴な奴らに僕らはたじろぐばかり。船があること。それに乗ること、このままじゃ何処までもついてきそうだ。
ガッシリした体型の良太が背負っているから明保野さんは隠れている。でもみんな、良太を狙って刃物を向けている。
「良太隠れてて!」
「は⁉ 何処に?」
僕は良太の肩をバシバシ叩いた。押されて良太は怪訝な表情。船の柱と柱に隠れる。
「隠れても無駄だぜ! もう正体は見えてんだ!」
「やっちまえ!」
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「嵐、これ!」
「はぁ⁉ こんなの持ってまさか、戦う気かよ!」
僕は足元に無造作に捨ててあった椅子やハンマーを嵐に手渡した。嵐は戸惑いつつも受け取りこの状況を見て、戦う選択肢を選んだ。
僕らが戦う姿勢を見せたことにより彼らの士気も高まった。立ち向かう彼らを椅子で殴り付けたり、ハンマーを降ったりして船に寄せ付けないように戦うも、所詮は高校生の体で相手は大人。
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「やめて! 二人ともっ! 降参してっ‼」
せいらが叫ぶも、降参するわけにはいかない。
だって明保野さんには時間がない。医療機器もまともに持ち合わせていない地球で病にかかったら百%待っているのは死だ。人命したいがそれを持ち合わせているのはエデン。
エデンに行けば助かる。
明保野さんを助けるんだ。
誇りと血の匂いが充満し、喧嘩の空気に当てられ野郎共は誰も止まらない。せいらがいくら叫んでも男の喧嘩は止まらない。良太もいつしか加勢に加わりさらに血祭りに。
しかし、意外な人物がこの惨状を止めた。うちのおばあちゃんだ。
「やめぃっ‼ この若造共めが‼」
おばあちゃんの後ろには近所に住んでいる主婦や爺さんまで。せいらのおじさんもいる。荒々しい戦場に突如やってきた新参者はこの戦場を遥かに超える怒声。
「こんのアホンダラァ!」
おばあちゃんが叫ぶと大空が割れるように響いた。野獣のように高揚していた男たちが怯むほど。
「こんなときに子供をいじめている場合じゃないけろ!」
「監視ロボットがいない今だからこそやれるチャンスがあるのに、何をやっとん⁉」
主婦たちが野郎共にボカスカ正論をぶちまける。あれほど高揚していた野郎共が萎縮している。あの血気盛んな野獣だった姿はどこに。
女性たちが現れて形勢逆転。
野郎たちの尾はすっかり縮み、僕らに謝罪する。僕らはなぜかせいらに怒られた。
「もうっ‼ ばっかじゃないの⁉ こんなに傷だらけになっても勝てもしない戦いに挑むなんて、男子てほんと……ほんとバカ」
せいらは泣き崩れながら治療をしてくれた。頬や腕に赤い線がいっぱい。血は止まっているから深くはない。
「だって」
「だってもクソもヘもねぇんだよ」
「痛っ‼」
僕が明保野さんたちのために、と言う前にアルコール消毒液がジワリと傷口にグリグリと当たった。ナイフで掠ったときよりも痛いし大声を出して地面にのたうち回る。
嵐はその様子を見ててソォ、と逃げ出そうとしたがせいらに肩をポンと叩かれ余儀なく拷問とかいて治療を施された。
「いだだだだだ! 痛ってつぅの! 優しくしろ優しく!」
「これでも優しいコースですけどぉ? 傷が深いから丹念にしてますぅ。ちょっと暴れないで!」
嵐はジタバタと足を動かすも、せいらが胸グラを掴んでいるせいで無理やりそこに留まらせている。
嵐はナイフに深く刺さっており、ドクドクと血が出ている。せいらは目頭を赤くしながら時折鼻水をズズッと啜っている。
住民の殆どがここに集まり、僕らが船を用意していたこと、エデンに行くことを説明した。それからどうしてエデンから圧政されるのか、その理由を明保野さんを取り払って説明した。
「つまり、あんたたちはあのドローンを壊したからエデンはお怒りに?」
おばあちゃんは顎の下に手を添えた。
「悪気はなかったんだ」
「悪気なんかあったら御法度だ」
おばあちゃんは杖をトントンと地面に小さく打ち付けて、やれやれとため息ついた。ちらっと良太に抱えられている明保野さんを確認して本当の理由を察した。おばあちゃんは再度大きくため息をついて僕に顔を向けた。
「空、大きな怪我をしていなくて良かった。あたしゃ、帰るよ。帰りに白い像様を見ておくかね」
おばあちゃんはくるりと背を向けて、ひらひら手を振った。
「良太、明保野さんは大丈夫?」
「さっきの騒動で起きたがもう寝ている。ずっと『ごめんなさい』てうわ言のように呟いてたぜ」
良太は無表情で言った。
良太もさっきの騒動、そして鎮圧の光景を後ろから見ていて圧倒されている。明保野さんに怪我がなくてよかった。
「お前こそ大丈夫かよ」
良太は僕に話を振ってきた。
トントン、と自分の頬を指差す。僕はつられて腕を上げて頬を触るとジンと痛みがかけ巡った。浅いと思っていたが割と深かったみたい。ガーゼから血が染みている。良太には大丈夫だと言って、女性陣たちのところに向かった。女性陣たちは今後について話していた。流石女性、話はまとまって速い。
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そして、この街の男性陣は機械など改造はお手の物だ。僕らが選んだ船はまだマシなもので、他の船は破損が激しい。なのに、その船を一時間で改良した。良太は目を丸くする。
どんどん船が改良していって女性陣たちは船の掃除を。せいらはその加勢に進む。
「ごめんね。うちの旦那がたいした怪我じゃなくて良かったよ」
おばさんが話しかけた。
「正直怖かったです。旦那さんたちよりも、武器を持って戦っているあの二人の姿を見て、二人を失うかもしれない、て怖かった。もしかしたら、何かあったとき自分じゃ止められないのかもしれない。そうなったら私……」
せいらは俯いてまたこぼれ落ちそうな涙を手ですくった。おばさんはそんなせいらの背中を優しくポンポンと撫でた。
船の改良、掃除もろもろ三時間足らずで終わった。三時間も監視ロボットが黙っているわけない。今頃エデンからまた新たにロボットが降りてくる。その前に船に乗り組む。
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昼間なのに夜のように静寂で人気がない。 ロボットがいないとこの街はこんな寂しくなるのか。音が消えた。道行く人たちは殆どいない。ロボットを壊したことにより震えて家の中に隠れているんだ。
音がない街中を歩いていく。病院の窓硝子は割れたまま。昨日大量に降ってきたビラが砂利道の外側にはけている。
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「大丈夫なの⁉」
「大丈夫だよ。ところで母さん僕らエデンに行くんだ。母さんも行こう」
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母さんはだんまりを決め込めてやっとのことで口を開いた。
「母さんはおばあちゃんと一緒にここに残るわ」
「なんで⁉ 母さん!」
僕は身を乗り出した。母さんは苦笑した。すると、いつの間に帰っていたのやら奥からおばあちゃんが顔を出した。
「ミエさん。あたしゃのこと気にせんで行き。あたしゃここに残るがな」
「おばあちゃんもどうして地球に残るんだ」
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