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Ⅱ 地球とエデンの革命
第9話 探索
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街中にこんなビラある巻かれた。白髪で小柄な女性を探している、と。写真はない。文字の羅列だけ。それだけで一体誰なのか分からない人もいるかもしれない。でも約半数知っている人がいる。
それは誰なのか。明保野さんだ。
それを知っているのは、学校の人たち。近所の人たち。それと僕ら。
ドローンが街中を駆けめぐって、ビラを巻いている。関心のなかった人たちまで目を向けた。この白髪女性を探した後には賞金が出る。
エデンから滅多に出ない賞金だ。金だ。これに目が眩んで明保野さんを探す人が増えていく。
「不味いな」
嵐が舌打ちした。
「賞金一万……花より安いよ」
僕はビラを拾って、はははと頭を抱えた。花より安い値段。それでも金欲しさに目が眩む人たち。それを見て頭を抱える。みんな貧相な暮らしにずっと堪えてきて、まずいパンを千切って食べていた。
堪えてたえて、ようやく天から美味しいパンが降り注いだ。それだけで気分浮上なんだ。エデンの住民に上手い具合に洗脳されている。
「あの女は?」
嵐が聞いた。
「あ、っと」
答えづらい。病院にいるのは確か。でも感染して近づいたらアウト。そもそも、嵐にそれが気づかれるのがまずい。
「なんだよ」
答えてくれないことに、嵐はむっとした。
ドローンが一体通り過ぎても僕らのことは関心しない。風のように通り過ぎていく。あんなに追いかけていたのに。やっぱりあれは偶々だ。
ドローンに会話の内容は聞こえない。偶に音声機能があるロボットがあるから、気をつけないと。会話は全部ロボットかろエデンに伝わっている。会話の内容を聞かれると明保野さんが危ない。
「明保野さんは……」
嵐も明保野さんを守りたいと思っている。それは確かだ。だからこそ、嵐にも言わなきゃいけない。もう隠しても無駄だ。
「明保野さんは、危険区域に入って……疫病にかかったんだ」
「はぁ⁉」
嵐の声はひときわ響いた。嵐は口を金魚みたいにパクパクしている。
「ちょっと待て! お前それ知ってて黙っていたのか⁉」
「ごめん」
「ごめんで警察もクソもねぇんだよ!」
バシ、と頭を叩かれた。嵐が怒っている理由は、自分にどうして話してくれなかったこと。よく考えれば、疫病にかかったことを街中に知らせるような性格じゃない。10年かん接してきてないせいで、嵐のこと勝手に疑っていた。
実際はそんな性格じゃない。明保野さんのこと心配してくれてる。
「せいらは?」
「多分知っていると思う。このビラばらまかれてるし」
僕は頭上を見上げた。
雪のように紙が降り注いでくる。地面に何枚も落っこちて泥になっている。こんなに使うならもっとマシなお金の使いかたをしてほしい。
嵐の提案で病院に行くことになった。その後ろをついて歩く影が……二人は知らない。
病院の近くまでいくと、その周辺を歩いている人影が。細身でスラリとした体型。あれで性格がガサツじゃなければモテてる。せいらは俺たちを見るや、顔を引きつかせた。
「何処でヤンチャしてきたの?」
せいらは僕らの顔や服についたススを見て、腹を抑えて爆笑した。せいらもビラについて知っている。手に持っていたから。ドローンが狙っているのは、明保野さん。
「側によりたいんだけど、一人になりたいって」
せいらは顔を伏せた。嵐は切羽詰まった様子で病院内に早足で駆け寄る。せいらは怒声をあげてその背を追う。僕も小走りで後を追った。
「嵐、待たんかい!」
せいらは嵐の服をしがみついて止めた。
「疫病になったんだろ? 今知った」
せいらは目を見開いて僕のほうに振り向いた。なんで喋ったの、という顔だった。僕は顔を逸らした。
「感染したばかりでステージはまだ下だろ? だったら話すだけでもできんだろ」
嵐は真剣な表情で言った。明保野さんは汗ばむ体を自分の腕で拭えないほど、病にかかっている。苦しそうで、あの苦笑した顔が瞼の奥に焼き付いて離れない。
「それは無理」
せいらが断言した。
「ステージが下だとか、上とか関係ない。あの体には、もう、毒素が入って侵されている。指先も黒く変色するようになった唇も青く……とても話せる状況じゃない。むしろ、その姿を見たいなら……どうぞ?」
せいらはしがみついていた腕を放した。嵐は瞳孔がかっと見開き、すぐに戻った。嵐はようやく歩を止めてその場で止まった。
せいらもドローンが探しているのは明保野さんだって分かっている。もしここにドローンが来たら大変なことになる。ドローンは家の中でも平気で入ってくる。監視ロボットもそうだから。直にここの病院も来るだろう。
「どうする?」
僕は病院の窓から外をうかがった。
ドローンは来ていない。ビラを巻いているせいで、砂道が真っ白になっている。紙の山だ。
「どうするって、ドローンについて?」
せいらが同じように窓の外を見上げる。床面に膝をつけて、外の景色を見渡した。
「ドローンを止める気か? 止めたらオレたち殺される。かといって、ドローンが入ってきてあの女が見つかれば……」
嵐が眉間にシワを寄せてチッと舌打ちした。嵐は明保野さんをエデンに行くための利用材用だと今でも思っている。だからエデンなんか行かせない。僕とせいらは、体調的に考えて明保野さんをエデンに行かせない。同じように守っている形だけど理由は違う。
「絶対にあーちゃん守るよ」
せいらの声はひときわ強くなった。その目は炎のように熱く燃えている。当の本人はエデンから刺客が来たことを知らない。伝えていない。
「伝えたらきっと……自分から名乗りだすから……」
せいらは言った。
すると、機械の音が近づいてきた。音でわかる。ドローンが近づいてきた。僕たちは身を隠した。風のように通り過ぎたのに、一機はこちらに振り返ってじっとこちらを見ている。
「おいおい、なんだよ。なんでみてんだ⁉」
「しっ!」
僕は唇に人差し指をかざす。
ドローンはまだ壁の奥にいる。目線を感じる。緊張の空気がピンと貼っている。まともに息できない。額に脂汗が浮きツゥと頬を伝った。
ドローンが再び動き出し、気配がなくなった。恐る恐る窓の外を確認すると、何もいない。ほっと安堵した。はぁ、と長いため息をついた。
脱力していると、僕はあることに気がついた。
「あそこのフロア、窓開いてる?」
明保野さんが寝ている一階の角、薄暗い場所。基本的に窓は閉めてある。それでも換気のため開けることがしばしば。せいらはさぁ、と顔を青くした。
今でもドローンが飛んでいるため、四つん這いで床を這う。ここからあのフロアまで向かった。
「大丈夫だろ」
嵐が憤怒混じりに言った。
「窓から侵入してくるかもしれないんだよ」
せいらはトコトコ早足。
「実際来たことあったろ?」
ロボットが平気で家の中に侵入してきたら、夜でも窓から遠隔操作で寝ているか、見張っている。行動の様々なものが監視されてて気持ち悪い。
フロアに行くとやはり、案の定窓は開いててせいらがその窓を閉めた。換気は五分でいい。その時間を余裕で越している。
「あーちゃん!」
せいらががらと扉を開く。
明保野さんは寝ていた。朝別れた光景とまんま。まるで時間が動いていないような。明保野さんはあれから、ピクリとも動いていない。朝より酷く汗をかいて、ベットが濡れている。
「大丈夫? ここにいるからね」
せいらはそっと、明保野さんの手を握る。それを扉の奥から眺めていた嵐がげぇ、と舌を出す。せいらたちには見られていない。
明保野さんはぐったりしまま、せいらを細目で眺める。
ロボットは来ていない様子。一安心した束の間、病室でここにいる誰でもない声がいきなり降り掛かった。
「へぇ。こんなところにいたのか」
重く低い声。聞き覚えのある声。
僕らが振り向いた先にいた人物は案の定知っている人間だった。
「り、良太?」
「どうしてここにいるの?」
良太は頭の後ろを荒くかいて、仁王立ち。ベットで倒れている明保野さんをじっと見て、ぎらりと眼差しが変わった。
「お前まさか!」
良太がここにいる理由を分かった嵐は、表情を変えて良太の腕を取った。良太は抜群の身体能力でそれを交して病室にドカドカと歩いてく。
それと同時に、いいや、良太が現れてきてから窓の外からドローンが顔を覗いてきて窓硝子を叩き割って侵入。
硝子の破片が病室まで飛んできた。キラキラした刺々しいものが顔や頬に当たる。ドローンが病室にいる明保野さんをロックオン。
ドローンの速さは目でも捉えぬ。あ、と思った瞬間に入ってきている。
「良太まさか、ドローンに教えたのか⁉」
わなわな震えて良太に詰め寄ると、良太はにっと笑った。元々悪顔がさらに欲を見出した悪顔になってゾッとする。
せいらが庇うように明保野さんを覆い隠した。嵐が近くにあった鉄パイプを手にとって、ドローン一機を破壊。
それは誰なのか。明保野さんだ。
それを知っているのは、学校の人たち。近所の人たち。それと僕ら。
ドローンが街中を駆けめぐって、ビラを巻いている。関心のなかった人たちまで目を向けた。この白髪女性を探した後には賞金が出る。
エデンから滅多に出ない賞金だ。金だ。これに目が眩んで明保野さんを探す人が増えていく。
「不味いな」
嵐が舌打ちした。
「賞金一万……花より安いよ」
僕はビラを拾って、はははと頭を抱えた。花より安い値段。それでも金欲しさに目が眩む人たち。それを見て頭を抱える。みんな貧相な暮らしにずっと堪えてきて、まずいパンを千切って食べていた。
堪えてたえて、ようやく天から美味しいパンが降り注いだ。それだけで気分浮上なんだ。エデンの住民に上手い具合に洗脳されている。
「あの女は?」
嵐が聞いた。
「あ、っと」
答えづらい。病院にいるのは確か。でも感染して近づいたらアウト。そもそも、嵐にそれが気づかれるのがまずい。
「なんだよ」
答えてくれないことに、嵐はむっとした。
ドローンが一体通り過ぎても僕らのことは関心しない。風のように通り過ぎていく。あんなに追いかけていたのに。やっぱりあれは偶々だ。
ドローンに会話の内容は聞こえない。偶に音声機能があるロボットがあるから、気をつけないと。会話は全部ロボットかろエデンに伝わっている。会話の内容を聞かれると明保野さんが危ない。
「明保野さんは……」
嵐も明保野さんを守りたいと思っている。それは確かだ。だからこそ、嵐にも言わなきゃいけない。もう隠しても無駄だ。
「明保野さんは、危険区域に入って……疫病にかかったんだ」
「はぁ⁉」
嵐の声はひときわ響いた。嵐は口を金魚みたいにパクパクしている。
「ちょっと待て! お前それ知ってて黙っていたのか⁉」
「ごめん」
「ごめんで警察もクソもねぇんだよ!」
バシ、と頭を叩かれた。嵐が怒っている理由は、自分にどうして話してくれなかったこと。よく考えれば、疫病にかかったことを街中に知らせるような性格じゃない。10年かん接してきてないせいで、嵐のこと勝手に疑っていた。
実際はそんな性格じゃない。明保野さんのこと心配してくれてる。
「せいらは?」
「多分知っていると思う。このビラばらまかれてるし」
僕は頭上を見上げた。
雪のように紙が降り注いでくる。地面に何枚も落っこちて泥になっている。こんなに使うならもっとマシなお金の使いかたをしてほしい。
嵐の提案で病院に行くことになった。その後ろをついて歩く影が……二人は知らない。
病院の近くまでいくと、その周辺を歩いている人影が。細身でスラリとした体型。あれで性格がガサツじゃなければモテてる。せいらは俺たちを見るや、顔を引きつかせた。
「何処でヤンチャしてきたの?」
せいらは僕らの顔や服についたススを見て、腹を抑えて爆笑した。せいらもビラについて知っている。手に持っていたから。ドローンが狙っているのは、明保野さん。
「側によりたいんだけど、一人になりたいって」
せいらは顔を伏せた。嵐は切羽詰まった様子で病院内に早足で駆け寄る。せいらは怒声をあげてその背を追う。僕も小走りで後を追った。
「嵐、待たんかい!」
せいらは嵐の服をしがみついて止めた。
「疫病になったんだろ? 今知った」
せいらは目を見開いて僕のほうに振り向いた。なんで喋ったの、という顔だった。僕は顔を逸らした。
「感染したばかりでステージはまだ下だろ? だったら話すだけでもできんだろ」
嵐は真剣な表情で言った。明保野さんは汗ばむ体を自分の腕で拭えないほど、病にかかっている。苦しそうで、あの苦笑した顔が瞼の奥に焼き付いて離れない。
「それは無理」
せいらが断言した。
「ステージが下だとか、上とか関係ない。あの体には、もう、毒素が入って侵されている。指先も黒く変色するようになった唇も青く……とても話せる状況じゃない。むしろ、その姿を見たいなら……どうぞ?」
せいらはしがみついていた腕を放した。嵐は瞳孔がかっと見開き、すぐに戻った。嵐はようやく歩を止めてその場で止まった。
せいらもドローンが探しているのは明保野さんだって分かっている。もしここにドローンが来たら大変なことになる。ドローンは家の中でも平気で入ってくる。監視ロボットもそうだから。直にここの病院も来るだろう。
「どうする?」
僕は病院の窓から外をうかがった。
ドローンは来ていない。ビラを巻いているせいで、砂道が真っ白になっている。紙の山だ。
「どうするって、ドローンについて?」
せいらが同じように窓の外を見上げる。床面に膝をつけて、外の景色を見渡した。
「ドローンを止める気か? 止めたらオレたち殺される。かといって、ドローンが入ってきてあの女が見つかれば……」
嵐が眉間にシワを寄せてチッと舌打ちした。嵐は明保野さんをエデンに行くための利用材用だと今でも思っている。だからエデンなんか行かせない。僕とせいらは、体調的に考えて明保野さんをエデンに行かせない。同じように守っている形だけど理由は違う。
「絶対にあーちゃん守るよ」
せいらの声はひときわ強くなった。その目は炎のように熱く燃えている。当の本人はエデンから刺客が来たことを知らない。伝えていない。
「伝えたらきっと……自分から名乗りだすから……」
せいらは言った。
すると、機械の音が近づいてきた。音でわかる。ドローンが近づいてきた。僕たちは身を隠した。風のように通り過ぎたのに、一機はこちらに振り返ってじっとこちらを見ている。
「おいおい、なんだよ。なんでみてんだ⁉」
「しっ!」
僕は唇に人差し指をかざす。
ドローンはまだ壁の奥にいる。目線を感じる。緊張の空気がピンと貼っている。まともに息できない。額に脂汗が浮きツゥと頬を伝った。
ドローンが再び動き出し、気配がなくなった。恐る恐る窓の外を確認すると、何もいない。ほっと安堵した。はぁ、と長いため息をついた。
脱力していると、僕はあることに気がついた。
「あそこのフロア、窓開いてる?」
明保野さんが寝ている一階の角、薄暗い場所。基本的に窓は閉めてある。それでも換気のため開けることがしばしば。せいらはさぁ、と顔を青くした。
今でもドローンが飛んでいるため、四つん這いで床を這う。ここからあのフロアまで向かった。
「大丈夫だろ」
嵐が憤怒混じりに言った。
「窓から侵入してくるかもしれないんだよ」
せいらはトコトコ早足。
「実際来たことあったろ?」
ロボットが平気で家の中に侵入してきたら、夜でも窓から遠隔操作で寝ているか、見張っている。行動の様々なものが監視されてて気持ち悪い。
フロアに行くとやはり、案の定窓は開いててせいらがその窓を閉めた。換気は五分でいい。その時間を余裕で越している。
「あーちゃん!」
せいらががらと扉を開く。
明保野さんは寝ていた。朝別れた光景とまんま。まるで時間が動いていないような。明保野さんはあれから、ピクリとも動いていない。朝より酷く汗をかいて、ベットが濡れている。
「大丈夫? ここにいるからね」
せいらはそっと、明保野さんの手を握る。それを扉の奥から眺めていた嵐がげぇ、と舌を出す。せいらたちには見られていない。
明保野さんはぐったりしまま、せいらを細目で眺める。
ロボットは来ていない様子。一安心した束の間、病室でここにいる誰でもない声がいきなり降り掛かった。
「へぇ。こんなところにいたのか」
重く低い声。聞き覚えのある声。
僕らが振り向いた先にいた人物は案の定知っている人間だった。
「り、良太?」
「どうしてここにいるの?」
良太は頭の後ろを荒くかいて、仁王立ち。ベットで倒れている明保野さんをじっと見て、ぎらりと眼差しが変わった。
「お前まさか!」
良太がここにいる理由を分かった嵐は、表情を変えて良太の腕を取った。良太は抜群の身体能力でそれを交して病室にドカドカと歩いてく。
それと同時に、いいや、良太が現れてきてから窓の外からドローンが顔を覗いてきて窓硝子を叩き割って侵入。
硝子の破片が病室まで飛んできた。キラキラした刺々しいものが顔や頬に当たる。ドローンが病室にいる明保野さんをロックオン。
ドローンの速さは目でも捉えぬ。あ、と思った瞬間に入ってきている。
「良太まさか、ドローンに教えたのか⁉」
わなわな震えて良太に詰め寄ると、良太はにっと笑った。元々悪顔がさらに欲を見出した悪顔になってゾッとする。
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