上 下
3 / 10

3 散歩

しおりを挟む
 もう、辺りは暗い。
 愛犬のポチの散歩を忘れてた俺は、日が沈んだ時刻で散歩を始めた。

 散歩は、いつも、家族交代制でやっている。昨日は弟で、一昨日は母ちゃん。んで今日は俺。

「ごめんなぁ。ポチ、散歩忘れて」

 草むらをフンフン嗅ぐポチに、俺は軽く言った。

 ポチは家の中ではない外の新鮮な土の臭いをを嗅いで、俺の言葉など気づいていない。

 フンフンと嗅いで、楽しそうに尻尾振っていやがる。

 あぁ、そうかい。俺のことは無視かい。俺は暇になってスマホを見下ろした。

 掲示板は何ら変わらない。バカやっていたり、悪口だったり。それを見て、今日も密かにフッと笑う。

 気がつくともう、夕飯の時間だ。暗くなると冷えるな。肌を擦り、スマホを閉じた。

「おーい。ポチ、もう良いだろ? 行くぞ」

 さっきから、同じ草のところを何分も嗅いでいやがる。なんかあんのかよ。

 鼻をひくひくさせ、なにかを咀嚼している。飯時なのに、こいつは勝手に。

 でも、何だろう。好奇心にそれを見下ろした。
 ひっと叫びそうになった。
 草むらにあったのは、誰かの左腕。結婚指輪がはめられていた。
しおりを挟む

処理中です...