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2 爪

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 友達がネイルサロンで、あたしは暇があったら、その友達の技術で爪を綺麗にしていた。

 その暇なときってのは、休みが2日か3日ぐらいのとき。休みの日は、介護士さんだって何してもいいでしょ。

 けど、今回その考えが甘かった。

 急に一人休んで、休日だったあたしが急遽出勤命令が出た。

 上司の野郎、くそぉ。覚えておけよ。

 もう爪には、キラキラなネイルが貼っており、利用者さんの肌に触るのは極力やめておこう。

「綺麗ねぇ。美智子ちゃんの爪」

 安室さん家のおばあちゃんがあたしの爪を見て、にこやかに言った。

「あ、ほんとですか? ありがとう」

 あたしも笑顔で答えた。安室さん家のおばあちゃんは、普段お孫さんの話しかしない人。

 こっちが話しかけても、話題をそらして何百回も聞いたお孫さんの話をするわけ。そんな人が、初めてあたしの爪に、感心を持って話しかけてくれた。

 あたしは嬉しくなって、おばあちゃんに爪を見せた。

「まぁ。本当に綺麗ね。もぎ取りたいほど」

「へへへ。おばあちゃんの爪こそ、綺麗だよ」

 そういうと、おばあちゃんは急に顔色が変わった。

「そうかい。こんな黒い爪を……嘘言ってんじゃないよ!!」

 あたしの指先から真っ赤な血が吹き出た。血管をブチブチ言わせ、肉ごと爪を剥がされた。

 あたしの爪が、おばあちゃんの爪の上に被さる。

 血しぶきが壁やら床やらに広がり、返り血を浴びたおばあちゃんは、爪を見て、この世の幸福を手に入れた笑みだった。
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