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Ⅲ 奪取の魔女 

第31話 反省

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 反省点をぶつぶつお経のように、言われた。
 スズカ先輩の言ってることは正しい。
 囲まれる前に、もっと考えて行動しろとか。相手に身を知らせる攻撃をしたら、すぐに位置を変えること。まず何を為してから行動しろ。とね。
 悔しいけど、全部当たってて言い返す言葉もない。シノも悔しそうに、唇をかんでいる。スズカ先輩のお経はまだまだ終わらない。ついには、戦闘中関係ない話まで入ってくる。
 生徒会の部屋とか、近頃の後輩の愚痴とか。わたしたちに言われても、と思う内容。
 見兼ねてマドカ先輩が止に入った。
「まぁまぁ、スズカさん。そのぐらいにして帰りましょう?」
 胸の前に手を合わせ、ニッコリ笑った。
 手を合わせたとき、たわわな胸がプルンプルン揺れた。
 マドカ先輩が言ったからなのか、スズカ先輩も妙に納得して、帰還。ゲートを守っていたもう一人の生徒会の人と合流。
 五人そろって無事帰還できた。


 スズカ先輩は、スレンダーな体型だ。腰回りもきゅと引き締まってて、お尻も引き締まっている。余分な肉もついていない。だからなのか、機敏の動きができる。おまけに判断力が早いから、ある意味この人のほうが強い。
 

 わたしとシノは、五年後、生徒会に入っている。理由は現生徒会長マドカ先輩の推薦らしい。ノルン討伐も学校一最下位だったわたしたちが、どうしてマドカ先輩の推薦枠に入ったのか、最下位だから目立っていたけれど、最下位の人間を最強と噂の、生徒会役員に簡単に入れない。未だに謎だ。
 わたしが庶務で、シノが会計。
 一つ年上のナズナ先輩が書記。
 そして、マドカ先輩が生徒会長を務める生徒会役員のひとたち。歴代最強と噂のマドカ先輩の後ろを守るスズカ先輩。ちょっと横暴なところあるけど、マドカ先輩の背後を守れるのはこの世でたった一人だけ。
 マドカ先輩は、わたしたちと同じ十二歳からノルン討伐の任命を任された。それから、一年も絶たずに、着々と討伐数をあげていき、ついにはこの学校を仕切る人間へ。そして、凄いのはノルン討伐数だけじゃない。かかった時間も恐れる。なんと、たったの五分でノルン討伐を成功したという偉業。
 これにて、マドカ先輩が歴代最強と噂される。 

 ゲートを通って、現実世界へと帰還。
 出迎えてくれたのは、バディたちだ。リュウとダイキが駆け寄ってく。二人とも、あれからだいぶ大人になっているような感じがする。
 ダイキとは、身長そんなに差がなかったのに中学にあがるにつれてどんどん越されてて、気づけば見上げていた。
 リュウもさらにかっこよくなってて、骨ばった体が筋肉質な体になって、なんだか、体が広くなって背中が厚く感じる。
「おかえり」
「おつかれ~」
 二人の顔を見て、ほっと安堵する。
 生きて帰って来れたんだ、とここで理解してほっとする。
 宇宙空間では、翼があったから立っていたけれど、現実世界に戻るとその効力はなくなり、車椅子に。
「そういえば、シノありがとね。助けてくれて」
 あのとき、一番に助けにきてくれたのはシノだった。スズカ先輩には怒られたけど、シノの行動でわたしは助かった。
 シノは、控えめに大人しく微笑んだ。何も言わないけど、この表情がたまんなくかわいい。女のわたしですら、ドキリとする。
「みなさん、大変お疲れ様でした」
 暫くして、締めのようにマドカ先輩が叫んだ。その声がキーンと響く。全員、マドカ先輩のほうを振り向く。
 マドカ先輩は、シノと同じ翼があった。そう。マドカ先輩もシノと同じ車椅子。その背後には、バディではなく副生徒会のスズカ先輩。この二人は、いつも一緒にいる。仲がいいのか分からないけど。
「生徒会の皆さんが、一眼となって討伐成功しました。皆さん、お疲れ様です。バディの皆さんもありがとう御座います。では、解散」
 落ち着いた風貌で穏やかに喋る。  
 こういうのは、普段ハヤミ先生が仕切る。けど、マドカ先輩がいるときはハヤミ先生が前に出なくて、マドカ先輩が仕切っている。
 マドカ先輩が解散を言うと、みんな、その通りにわらわら出口へと向かう。

 そして、非日常から日常へ。
『二人とも、凄いよね。あの生徒会に入れたのってきせきだよ』
 ナノカがフォークで刺したソーセージをパクっと口に頬張った。ここは食堂。今は昼休みである。
「そんなことないよ」
「生徒会の雑用係て感じよ」
 ナノカと対になって、並んで食べるわたしたち。ナノカは学年一位のノルン討伐数だ。そのナノカに言われると、少し複雑。
 ナノカとは今でも親友の仲だ。同じ生徒会の立場じゃないけど、こうして一緒に食べたり、話をしたり、五年前と全く変わらない。
『ふーん。ま、でも良かったかも。あたし入らなくて』
 フォークにソーセージを真ん中に刺した。油がジュワと出て、テロリと皿の上に広がる。大きく口を開けて、刺したソーセージを頬張った。
「どうして?」
 怪訝に訊いてみた。
 ナノカはやれやれと参ったように、手のひらを上に向かせるポーズをした。
『だって、副生徒会のスズカ先輩、横暴でわがままで、きっついじゃん。あの人と一緒の空気にいたら、変になりそう』
「ナノカ……」
 失礼だよ、て言う前にシノがそれを口にした。
「ナノカ、失礼よ。本人目の前にして」
「え?」
 わたしとナノカも一瞬、何を言われたのか分からなかった。頭を殴られた衝撃が走る。わたしとナノカは、恐る恐る振り向いた。
 離れていたけれど、わたしたちと同じ机に座っていた。スズカ先輩とその取り巻きのナズナ先輩とマナミ先輩。
 ヒュ、と喉が小さく鳴った。
 全身が氷漬けにされ、身動きとれない。金縛りにあっているようだ。噂していたスズカ先輩が、ギロリと殺意のような目で睨まれていらからに違いない。  
 本能が言ってる。「逃げろ」と。でも、金縛りにあっていて、動けません。

 いつの間にか、隣に座っていたシノがいない。一人だけ難を逃れるなんて。緊急事態に口を開いたのは、張本人のナノカ。
『う、うわぁ!! 奇遇ですね~。先輩たちが揃いもそろって食堂で食べているなんて』
「何? わたくしたち人間ですもの。食べるときは食べるに決まっているじゃない」
「おかしな子」
 スズカ先輩の取り巻き、ナズナ先輩とマナミ先輩がくすくす笑った。この二人はスズカ先輩と似て、お嬢様みたいな口調だ。
 意地悪そうな顔してて、下級生には上から目線な人たちだから、極力関わりたくない。 
 ナノカは、普段しないゴマすりを苦笑しながらやっていた。その姿は、いつも明るい楽観的なナノカじゃない。
 それに空気が、食堂全体の空気がおかしかった。周りがくすくす笑って、まるで、わたしたち二人が虐げられているような差別感。
「行こう。ナノカ」
 わたしはおぼんを持って、席を立った。ナノカは、困惑した表情で見上げる。席を立ったわたしにつられて、ナノカもおぼんを持って席を立った。

 わたしたちは、スズカ先輩たちに会釈してまだ食べかけのご飯を戻した。まだ半分しか食べていない、カレーライスとソーセージの山盛り。そしてここから去った。

 ここをでないと、あの空気に押しつぶされそうだ。あの空気は、嫌だ。あの孤立を招くあの空気は、吐き気がする。

 食堂を出た矢先、リュウとダイキとシノに合流。リュウとダイキたちは、今からお昼ご飯らしい。食堂から慌てて出てきたことに、二人とも、何か異変に気づく。
「お前、何かしたか?」
「何でわたし限定なの」
 リュウがさも当たり前みたいに、わたしを疑ってきた。
『うっゔっ、ごめんねぇユナああああ!! あたしのせいだあああああ』
 半泣き状態のナノカが、わたしに抱きついてきた。おっぱいの感触が腕に。ぎゅうぎゅうと押し付けてくる。わたしが男だったら興奮してたよ。絶対に。
 ナノカはさらにボンキュボンになった。瞼の裏で思い出せる、あのときの体型とは違う。さらに進化して、少女から女になっている。
 制服がはちきれんばかりの、巨乳だ。
「引っ付かないでよ。暑苦しい」
『殺生なっ!!』
 振り払おうにも、磁石みたいに引っ付いて、離れようともしない。そんなわたしたちをよそに、リュウとダイキは昼ご飯の相談をしていた。
 もちろん、バディたちも入れる食堂だ。だけど、あの空気に入れるかどうか。この二人は、ただでさえ生徒会役員の雑用係のバディとして、変な噂が流れてる。
 その二人が、あの異様な空気の中に入れるとは思えない。

「ご飯抜きとか、最悪だぜ」
 ドヨーンと暗い雰囲気になるダイキ。
 そうだよね。ただでさえ成長期の男の子なのに。リュウも頭を悩ませる。
 わたしのお腹がぐるぐる鳴った。そういえば、半分ぐらいしか食べれていないんだ。ナノカのほうも。
 これで、次の授業に出たらお腹がぐるぐるなって処刑だよ。嫌だ。リュウとダイキも食べられないのも、嫌だ。何か策を。
 わたしはあるモノを発見した。それが何なのかトントンと理解するのに、それほど時間はかからなかった。
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