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再々
第70話 天地
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天空ちゃんこと、ソラちゃんが窓の外の天に向かって指差した。見上げれば青い空はどす黒い雲に分厚く覆われてピカピカ光っていた。
「うわ、降るなありゃ。天気予報晴れて言ったのに~」
有斗先輩がバタバタと外に向かった。
ソラちゃんは天に何かあるのかずっと指を指している。
「地に降りだし蛇よ。怒りに満ちる」
何かの呪文か、小さな声で呟いた。その隣に大地くんが不安げに窓の外を覗く。窓ガラスはポツポツ降り出した雨で次第に濡れてザァザァと音を立てて大地を濡らす。
快晴だった青空が嘘のように真っ暗だ。
「富美加、洗濯物大丈夫けろ?」
「大丈夫け! お兄ちゃんのパンツだけはちゃんと室内で干してる!」
「そこじゃないべ。え、今までそうしてたけ?」
「お兄ちゃんなぁんも知らん」
富美加は去ってソラちゃんの元へ寄る。2人は一言二言話すとこの部屋から出ていった。随分仲良くなったな。
「ふぅー。天気予報ガゼじゃん」
洗濯物を取り込んだ有斗先輩がバタバタと廊下を歩いてる。洗濯物を抱えながら。部屋を通り過ぎていく。その後ろから弟の進くんが洗濯物半分持って抱えていた。
「大雨ね。確か天気予報は先週から猛暑が続くて言ってたのに」
四葉さんはバックからスマホを取り出した。
スマホの画面の光がぼんやり光ってる。室内も暗くなってきた。元々暗い雰囲気が余計に風通しが悪い。雷が落ちたのか電気はつけられない。いくらスイッチを押しても照明のライトは答えてくれない。
「大規模な停電ですって」
スマホで情報を掴んだ四葉さんが言った。
窓の外は真っ暗闇だ。時間はまだ正午が過ぎた頃。まだ太陽は真上にあって昼で、夜ではない。にも関わらず闇が世界を包み込んだ。
大雨で光はない。まるで、誰かに閉じ込められた気分だ。こんな暗いと伊礼もそこまで遠くまで行かないだろうな。
とりあえず、スマホの電気を頼りにバックのなかに入ってた懐中電灯を取り出し、それを机の上に置きライトを照らす。持ってきてよかった。光を見ただけでホッとする。
「ふ、2人きりね」
急にピタリとくっついてきた。寂しいのか、寒いのか。
「大丈夫けろ? もしかして、怪我でもしたか?」
「ふふ、大丈夫。今はこうしていたい」
近くに頭が寄ってきてふわり、といい匂いが。急に体温が高くなる。落ち着け落ち着け落ち着くんだ自分! びっくりしたけど四葉さんだって怖くて寄ってきてんだ。もし、俺じゃなくても寄ってくるかも。
「なんだか、猫みたいすね」
「え?」
「あ、スリスリ寄ってくるの猫ぽいなって思って。もしかして不快すか? すいません」
「全然っ‼ 六路くんは猫好き?」
上目遣いで期待の眼差しを向けてきた。このとき、彼女の視線から目が離せなかった。
「犬と猫、どっちも好きっす」
「実家で飼ってるんだけ。わたしも、その、猫がいて今度、わたしの家でも……」
「いいっすね! 富美加をいれて!」
「うん。決まり。わたしとの約束、破らないで」
「もちろんっ!」
四葉さんはグリグリと頭を体を触ってきた。
スパン、と障子が勢い良く開いた。そこには、頬を膨らませた富美加が。
「お兄ちゃんから離れろ! この魔性女が!」
「こら富美加っ!」
「うげー、濡れた濡れた」
玄関から2人の声が。
2人はどうやら外に出ていて全身ビショビショで髪の毛からポタポタと水滴が滴り落ちていた。
「うわ! 上がんなよ。待ってろ」
その惨状を見た有斗先輩がすぐにタオルを2人に投げた。滝のような雨だ、と琉巧は愚痴る。外から聞こえる音は大きく、ガタガタ揺れている。外のものが飛ばされる音も。
「網戸もしないと」
げんなりと有斗先輩がため息つく。
「みんなのお家は平気? この雨だと、帰れるに帰れないね」
四葉さんが玄関に向かう。
「俺んち平気」「僕も」「富美加は帰れないな」「お兄ちゃんもじゃん」
俺はボロアパート心配だけど、窓の外子ら見えた闇を見て少しだけ不安になった。闇から何かが覗いているような気がして。
「とりあえず、一泊しとけ。2人はすぐに風呂! 進、風呂の準備してくれるか?」
有斗先輩がビシッと2人を指差す。進くんは言われた通り、風呂の準備をする。滝にも打たれたのか、伊礼は落ち着いていた。
2人が風呂に入り、有斗先輩は家中の網戸をして、その間、俺たちは食材の確認をした。冷蔵庫の中の食べ物は完全に駄目になっていた。
「持ってきたお菓子とあとは鯖缶かぁ」
気が遠くなる。
肩の力がどっと重く感じた。
「天から降りだし蛇よ。鎮たまえ」
「何言ってるの?」
「蛇がくる。ここにいたら危ない」
ソラちゃんは窓の外に向かって胸の前で拳を作って祈っている。
「ソラちゃんって、不思議ちゃんね。さっきのゲームも完全勝利だったし。超能力者? なんて」
あははと富美加が笑う。
「天空は超能力じゃなくて、予知能力なんだぜ。オレ様ほどでもねぇけど」
大地くんが自慢げに言った。
「予知能力⁉ すごーい!」
富美加が目をキラキラ輝く。
「逃げて。遠くに。ここは時期に危ない」
ソラちゃんは淡々と言うので危機感が沸かない。
「そうだよ。アル兄。オレも怖い」
大地くんが帰ってきた有斗先輩にしがみつく。
「うわ、降るなありゃ。天気予報晴れて言ったのに~」
有斗先輩がバタバタと外に向かった。
ソラちゃんは天に何かあるのかずっと指を指している。
「地に降りだし蛇よ。怒りに満ちる」
何かの呪文か、小さな声で呟いた。その隣に大地くんが不安げに窓の外を覗く。窓ガラスはポツポツ降り出した雨で次第に濡れてザァザァと音を立てて大地を濡らす。
快晴だった青空が嘘のように真っ暗だ。
「富美加、洗濯物大丈夫けろ?」
「大丈夫け! お兄ちゃんのパンツだけはちゃんと室内で干してる!」
「そこじゃないべ。え、今までそうしてたけ?」
「お兄ちゃんなぁんも知らん」
富美加は去ってソラちゃんの元へ寄る。2人は一言二言話すとこの部屋から出ていった。随分仲良くなったな。
「ふぅー。天気予報ガゼじゃん」
洗濯物を取り込んだ有斗先輩がバタバタと廊下を歩いてる。洗濯物を抱えながら。部屋を通り過ぎていく。その後ろから弟の進くんが洗濯物半分持って抱えていた。
「大雨ね。確か天気予報は先週から猛暑が続くて言ってたのに」
四葉さんはバックからスマホを取り出した。
スマホの画面の光がぼんやり光ってる。室内も暗くなってきた。元々暗い雰囲気が余計に風通しが悪い。雷が落ちたのか電気はつけられない。いくらスイッチを押しても照明のライトは答えてくれない。
「大規模な停電ですって」
スマホで情報を掴んだ四葉さんが言った。
窓の外は真っ暗闇だ。時間はまだ正午が過ぎた頃。まだ太陽は真上にあって昼で、夜ではない。にも関わらず闇が世界を包み込んだ。
大雨で光はない。まるで、誰かに閉じ込められた気分だ。こんな暗いと伊礼もそこまで遠くまで行かないだろうな。
とりあえず、スマホの電気を頼りにバックのなかに入ってた懐中電灯を取り出し、それを机の上に置きライトを照らす。持ってきてよかった。光を見ただけでホッとする。
「ふ、2人きりね」
急にピタリとくっついてきた。寂しいのか、寒いのか。
「大丈夫けろ? もしかして、怪我でもしたか?」
「ふふ、大丈夫。今はこうしていたい」
近くに頭が寄ってきてふわり、といい匂いが。急に体温が高くなる。落ち着け落ち着け落ち着くんだ自分! びっくりしたけど四葉さんだって怖くて寄ってきてんだ。もし、俺じゃなくても寄ってくるかも。
「なんだか、猫みたいすね」
「え?」
「あ、スリスリ寄ってくるの猫ぽいなって思って。もしかして不快すか? すいません」
「全然っ‼ 六路くんは猫好き?」
上目遣いで期待の眼差しを向けてきた。このとき、彼女の視線から目が離せなかった。
「犬と猫、どっちも好きっす」
「実家で飼ってるんだけ。わたしも、その、猫がいて今度、わたしの家でも……」
「いいっすね! 富美加をいれて!」
「うん。決まり。わたしとの約束、破らないで」
「もちろんっ!」
四葉さんはグリグリと頭を体を触ってきた。
スパン、と障子が勢い良く開いた。そこには、頬を膨らませた富美加が。
「お兄ちゃんから離れろ! この魔性女が!」
「こら富美加っ!」
「うげー、濡れた濡れた」
玄関から2人の声が。
2人はどうやら外に出ていて全身ビショビショで髪の毛からポタポタと水滴が滴り落ちていた。
「うわ! 上がんなよ。待ってろ」
その惨状を見た有斗先輩がすぐにタオルを2人に投げた。滝のような雨だ、と琉巧は愚痴る。外から聞こえる音は大きく、ガタガタ揺れている。外のものが飛ばされる音も。
「網戸もしないと」
げんなりと有斗先輩がため息つく。
「みんなのお家は平気? この雨だと、帰れるに帰れないね」
四葉さんが玄関に向かう。
「俺んち平気」「僕も」「富美加は帰れないな」「お兄ちゃんもじゃん」
俺はボロアパート心配だけど、窓の外子ら見えた闇を見て少しだけ不安になった。闇から何かが覗いているような気がして。
「とりあえず、一泊しとけ。2人はすぐに風呂! 進、風呂の準備してくれるか?」
有斗先輩がビシッと2人を指差す。進くんは言われた通り、風呂の準備をする。滝にも打たれたのか、伊礼は落ち着いていた。
2人が風呂に入り、有斗先輩は家中の網戸をして、その間、俺たちは食材の確認をした。冷蔵庫の中の食べ物は完全に駄目になっていた。
「持ってきたお菓子とあとは鯖缶かぁ」
気が遠くなる。
肩の力がどっと重く感じた。
「天から降りだし蛇よ。鎮たまえ」
「何言ってるの?」
「蛇がくる。ここにいたら危ない」
ソラちゃんは窓の外に向かって胸の前で拳を作って祈っている。
「ソラちゃんって、不思議ちゃんね。さっきのゲームも完全勝利だったし。超能力者? なんて」
あははと富美加が笑う。
「天空は超能力じゃなくて、予知能力なんだぜ。オレ様ほどでもねぇけど」
大地くんが自慢げに言った。
「予知能力⁉ すごーい!」
富美加が目をキラキラ輝く。
「逃げて。遠くに。ここは時期に危ない」
ソラちゃんは淡々と言うので危機感が沸かない。
「そうだよ。アル兄。オレも怖い」
大地くんが帰ってきた有斗先輩にしがみつく。
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