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再々
第69話 光に
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光を見るやみんな、固まってしまう。歩き続けて待ち受けていたものが得体のしれない眩い光だったなんて。
「埋蔵金や」
伊礼が呟いたと同時にその方向へ真っ先に走った。危険だとみんなから言われても無視するので俺たちも揃って駆け寄った。光はその一帯を包み込むように放出してる。
でもその光に温もりがなかった。酷く暑い外の日光と違ってその光から何も感じない。目くらまししかできない。伊礼がペラリとのれんをめくると叫び出しその場でへたり込んだ。
「伊礼! 大丈夫か⁉」
「何を見た⁉」
すぐに駆けつける。のれん越しでも眩い光で目が開けれないほど。目がぱちぱちする。ナニかを見た伊礼の表情はひどく怯えてて唇はプルプル震えていた。
有斗先輩が意を決しのれんをめくると、そこに見えたのは台の上に横たわっている頭の潰れた人だった。ヒッと小さく悲鳴をあげた。
光のせいではっきりと見えなかったがそれは確かに人の形をしていた。祭壇のように周りに花やおもちゃが置いてあった。
アレはなんだ?
なんでこんなところに。もう一度確認できる勇気を持っている人はここにいなかった。いや、むしろそんなことできるわけがない。恐ろしいものをみてしまった。足が竦んで力が出ない。一刻も早くここを退散しないと。それだけが頭をよぎった。
震える足でなんとか立ち上がる。そのときだった。
『誰?』
声がした。光が差す方向。
死体から声がしたと思って、みんな、一目散に走った。無我夢中で走って走って、地上へ。息が切れるほど走って走って地上へ出れたときはみんな、汗を全身かき地獄から漸く脱出できた脱力しきっていた。
『久しぶりだな。人が来たのは。その中に太陽と月がいた。この時代に再び出逢うなんて』
ヨロヨロとその体を起こして帰路についた。それ程距離もないのに何キロも歩いた感じに足が重くなる。道中、口数はなかった。この道を嬉々と歩いていた頃に比べて大きな違いだ。
「兄ちゃんおかえり」
出迎えてくれたのは進くん。
有斗先輩、お兄ちゃんの帰りをずっと待っていたかのようにそこにいた。ぱぁと笑う。
「何処行ってたの?」
その問いかけに誰も答えられない。
「あー‼ また一マスしか進めない⁉」
「あはは!」
奥から富美加たちの声が玄関先まできこえて内心、ほっと安堵した。帰ってきたんだ、と分かって心の底から安堵する。青白い顔を見て「どうしたの?」と心配そうに進くんが顔を覗く。
「何でもない何でもない。兄ちゃんたち、走りぱなしで腹空いてんだ。進たちも、まだ食ってないだろ?」
「うん!」
有斗先輩は靴を脱いで進くんの頭を撫でた。進くんはお兄さんのあとをトコトコ歩く。
有斗先輩の手料理、冷やし麺をみんなでご馳走になった。富美加たち子供は美味しそうにもぐもぐ食べていたが、俺たちはだんまり。見た目は美味しそうに、麺がテカテカ光っていた。でも、食べれる気力はなかった。食欲がわかない。それは洞窟に進んだ全員。箸は持っているのに一口もすすれない。
「お兄ちゃん食わないの?」
富美加が覗いてきた。
「あぁ、ちょっと食欲わかなくて」
「洞窟探検で何かあったの?」
富美加はさらに覗きこんできた。
何も知らない無垢な表情で聞いてくる。何も言えない。あそこに死体があったなんて、思い出すだけでムクムクと胃から口に逆流して吐きそう。気持ち悪い。
「なぁ、結局何があったんだ?」
八重歯が特徴的な子が聞いてきた。
有斗先輩から「大地」と呼ばれてた子。
「お前らは知らなくていい」
「えぇー‼」「ずるい!」
有斗先輩が大地の頭をガシガシ乱暴に撫で告げた。納得いかないといわんばかりに三人は食いつく。甲高い声が室内に響いて時間が過ぎ去っていく。
時間が過ぎ去っても思考はまだあの洞窟の中にいて取り残された気分。
「よーし、そんな言うならヒントをやろう!」
有斗先輩は食いつく三人に諦めて腰に手を当てた。
「いいか? 親父たちには秘密だぞ。洞窟の中には……なんと……がおー‼ 虎さんがいましたー!」
有斗先輩は体を大きくさせて子供たちをびっくりさせた。子供たちは高い声で笑い会う。
有斗先輩が子供たちの関心を引いている間に洞窟の中のことを漸く話し合える。ようやく落ち着いた頃。四葉さんから話題が出た。
「アレをはっきり見た?」
「光っててまともには……」
「……死体だった」
琉巧は視覚のせいで何も見えなかった。周囲を覆うまばゆい光に包まれていたのに、その先に見えたのは死体だと判別できたのはこの中で三人。俺と伊礼と有斗先輩。
死体、と聞いて四葉さんは怪訝な顔をした。
見えなかったのならば当然の反応だろう。四葉さんは「もう一度、あそこに入るのは遠慮するわね」とぼやいた。
「死体だった、もしかしたら殺された人かも。俺たちも殺されるんだ! 武器……武器を探さないと!」
伊礼は顔面蒼白でユラユラと立ち上がり急にどこかへ消えていった。心配した琉巧がその背を追う。アレの第一発見者だった伊礼はまともに会話できそうにない。
「埋蔵金や」
伊礼が呟いたと同時にその方向へ真っ先に走った。危険だとみんなから言われても無視するので俺たちも揃って駆け寄った。光はその一帯を包み込むように放出してる。
でもその光に温もりがなかった。酷く暑い外の日光と違ってその光から何も感じない。目くらまししかできない。伊礼がペラリとのれんをめくると叫び出しその場でへたり込んだ。
「伊礼! 大丈夫か⁉」
「何を見た⁉」
すぐに駆けつける。のれん越しでも眩い光で目が開けれないほど。目がぱちぱちする。ナニかを見た伊礼の表情はひどく怯えてて唇はプルプル震えていた。
有斗先輩が意を決しのれんをめくると、そこに見えたのは台の上に横たわっている頭の潰れた人だった。ヒッと小さく悲鳴をあげた。
光のせいではっきりと見えなかったがそれは確かに人の形をしていた。祭壇のように周りに花やおもちゃが置いてあった。
アレはなんだ?
なんでこんなところに。もう一度確認できる勇気を持っている人はここにいなかった。いや、むしろそんなことできるわけがない。恐ろしいものをみてしまった。足が竦んで力が出ない。一刻も早くここを退散しないと。それだけが頭をよぎった。
震える足でなんとか立ち上がる。そのときだった。
『誰?』
声がした。光が差す方向。
死体から声がしたと思って、みんな、一目散に走った。無我夢中で走って走って、地上へ。息が切れるほど走って走って地上へ出れたときはみんな、汗を全身かき地獄から漸く脱出できた脱力しきっていた。
『久しぶりだな。人が来たのは。その中に太陽と月がいた。この時代に再び出逢うなんて』
ヨロヨロとその体を起こして帰路についた。それ程距離もないのに何キロも歩いた感じに足が重くなる。道中、口数はなかった。この道を嬉々と歩いていた頃に比べて大きな違いだ。
「兄ちゃんおかえり」
出迎えてくれたのは進くん。
有斗先輩、お兄ちゃんの帰りをずっと待っていたかのようにそこにいた。ぱぁと笑う。
「何処行ってたの?」
その問いかけに誰も答えられない。
「あー‼ また一マスしか進めない⁉」
「あはは!」
奥から富美加たちの声が玄関先まできこえて内心、ほっと安堵した。帰ってきたんだ、と分かって心の底から安堵する。青白い顔を見て「どうしたの?」と心配そうに進くんが顔を覗く。
「何でもない何でもない。兄ちゃんたち、走りぱなしで腹空いてんだ。進たちも、まだ食ってないだろ?」
「うん!」
有斗先輩は靴を脱いで進くんの頭を撫でた。進くんはお兄さんのあとをトコトコ歩く。
有斗先輩の手料理、冷やし麺をみんなでご馳走になった。富美加たち子供は美味しそうにもぐもぐ食べていたが、俺たちはだんまり。見た目は美味しそうに、麺がテカテカ光っていた。でも、食べれる気力はなかった。食欲がわかない。それは洞窟に進んだ全員。箸は持っているのに一口もすすれない。
「お兄ちゃん食わないの?」
富美加が覗いてきた。
「あぁ、ちょっと食欲わかなくて」
「洞窟探検で何かあったの?」
富美加はさらに覗きこんできた。
何も知らない無垢な表情で聞いてくる。何も言えない。あそこに死体があったなんて、思い出すだけでムクムクと胃から口に逆流して吐きそう。気持ち悪い。
「なぁ、結局何があったんだ?」
八重歯が特徴的な子が聞いてきた。
有斗先輩から「大地」と呼ばれてた子。
「お前らは知らなくていい」
「えぇー‼」「ずるい!」
有斗先輩が大地の頭をガシガシ乱暴に撫で告げた。納得いかないといわんばかりに三人は食いつく。甲高い声が室内に響いて時間が過ぎ去っていく。
時間が過ぎ去っても思考はまだあの洞窟の中にいて取り残された気分。
「よーし、そんな言うならヒントをやろう!」
有斗先輩は食いつく三人に諦めて腰に手を当てた。
「いいか? 親父たちには秘密だぞ。洞窟の中には……なんと……がおー‼ 虎さんがいましたー!」
有斗先輩は体を大きくさせて子供たちをびっくりさせた。子供たちは高い声で笑い会う。
有斗先輩が子供たちの関心を引いている間に洞窟の中のことを漸く話し合える。ようやく落ち着いた頃。四葉さんから話題が出た。
「アレをはっきり見た?」
「光っててまともには……」
「……死体だった」
琉巧は視覚のせいで何も見えなかった。周囲を覆うまばゆい光に包まれていたのに、その先に見えたのは死体だと判別できたのはこの中で三人。俺と伊礼と有斗先輩。
死体、と聞いて四葉さんは怪訝な顔をした。
見えなかったのならば当然の反応だろう。四葉さんは「もう一度、あそこに入るのは遠慮するわね」とぼやいた。
「死体だった、もしかしたら殺された人かも。俺たちも殺されるんだ! 武器……武器を探さないと!」
伊礼は顔面蒼白でユラユラと立ち上がり急にどこかへ消えていった。心配した琉巧がその背を追う。アレの第一発見者だった伊礼はまともに会話できそうにない。
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