折々再々

ハコニワ

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再々

第67話 洞窟

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 有斗先輩がまっさきに向かったのは大きな民家。壁が向こうまで続いてこの家がどれ程広いか物語っている。
 有斗先輩入ってもいいて言ったが、中々踏み込めれない。こんな立派な家に招待されたのは初めてだ。俺以外の三人はあっさりと侵入。この場所に踏み入れた瞬間ですでに躊躇いはもうないらしい。

 庭は大きかった。入って右に梅の木。鬼ごっこして遊べる空間。敷居に入れば格はあがる。天井は外から見た感じと中に入った瞬間とでは全然違う。天井が高く、そこから小さな提灯がぶら下がっていた。木造建築で大きな大黒柱はツヤがあって光沢していた。
 武家の偉いところだな。
 ひょっとしたらお金持ちのところかも。スゥと大きく息を吸ってお金持ちの家の生活空気を堪能した。


 ひょっこりと出迎えたのは弟さんだった。富美加と同じ小学生でくりくりした両の目、不健康だと心配するやせ細った体。確かみんなから「時空」と呼ばれ祀られている。有斗先輩の口からは「時空」じゃなくて「すすむ」と二つ名がある。

「兄ちゃんおかえり」

 玄関先にて出迎えてくれた。ゾロゾロと知らない人の顔ぶれを見て顔が強張った。
「なんだ、結局親父たちと一緒に行かなかったのか。勿体ねぇぞ。貴重な夏休み、何処か楽しいとこ行かないと」
 有斗先輩は靴を脱ぎポンと進くんの頭をなでて部屋の中を案内した。そうすると、中からおかしな声が聞こえた。微かに。でもだんだん近づいていくとそれは少女たちの声で身の毛がよだつ瞬間がまさにこのときとは。
「富美加っ!」
 声がする部屋の襖をスパンと開けると大きな目玉がこちらを睨んだ。富美加とそこにはソラちゃん。それともう一人の少年がいた。まるで秘密基地みたいに漫画本やお菓子が床に広がっていた。
「お兄ちゃん、なんでここに」
「富美加こそ、どうして、そういや友達の所に行ってくるてここだったのか」
「だってここ静かだし凄くいいよ」
 富美加はまんざらでもなくニコニコしている。騒動を聞きつけて有斗先輩がひょっこり顔を出すとピタリと止まった。
「有斗先輩、うちの妹がこんな散らかして面目ねぇで、すぐに片付けるだ!」
「あーいや、びっくりしたのは本当だけどそこじゃなくて、ソラちゃんも大地もいたのか、どうして三人とも残ったんだ。貴重な夏休みだぞ? いくら面倒くさい家族だからといって外の世界に行ける絶好の機会だっていうのにどうしてまた」
「その面倒くさい家族と四六時中いるのが嫌」
「右に同じく」「右に同じく」
 ソラちゃんがきっぱり告げた。有斗先輩は腰に手を当てため息ついた。


 広い部屋に案内されて、そこに荷物を置く。有斗先輩は青い顔をしてスマホ画面をずっと眺めていた。
「どうしたんすか?」 
「あぁ、あいつらの親が帰ってこないか不安なんだ。あいつらの意思でここに残るて言ったのか、それを聞いても旅行しに行く奴らとは思えんから、早めに帰ってくるかも」
「洞窟探検に支障があるの?」
 四葉さんが不安げに顔を覗く。
「あぁ、あそこは昔から立入禁止区域で親に内緒で肝試ししたときはぶん殴られたくらい。まずいなぁ。親がいない絶好の機会だったのに」
 有斗先輩はスマホから顔を上げた。
「今の所、着信もないし大丈夫な気が……してきた。部長、今なら行けれるぜ」
「分かった。みんな、準備して」
 四葉さんの掛け声でそれぞれスコップやら手に持つ。富美加たちは双六をやっていて他所のお宅の、特に、高価なものは絶対壊すなよと一言言って家を出た。

 洞窟というのはここから目と鼻の先にあった。然程離れていない距離に存在してた。普通だったら穴があってそこから覗くと何処までも続く闇と異様な雰囲気。それなのに、件の洞窟とやらは金属かなにかに蓋を厳重に閉められていた。
「ただの洞窟じゃなさそうね」
 探索部の部長として四葉さんはそう見えた。
「死体だったり」
「ウギャー‼」
 琉巧のボソリと呟いたそれが伊礼の恐怖心を煽る。騒いだ声は静寂な住宅街に響く。そういえば、人がいる気配がない。夏休み期間だから里帰りしているお宅もあるのだと思うけど、そういえば、歩いているとき人一人見ていない。静かなのは異様に感じ、背筋が凍る。

「大丈夫大丈夫。そんな物騒なもんは流石にないから」
 あはは、と笑って有斗先輩は軽く流した。その間も手は動かして金属製でてきた扉のセキュリティを開けている。シューと細かな音とともに扉が開いた。深く長く続く闇が覗いているかと思いきやランプの照明がポツンポツンと天井に吊るされて明るかった。
 足元は階段になっていた。
 最近作られたようなコンクリート製。
 古いものかと思いきや、新しいものだったりして。
 階段を降りると地上と違うと理解した。外と中の気温。猛暑で茹だる暑さだったのに、洞窟の中はエアコンが効いた室内だ。快適な空間。
 ランプの明かりはついていることは定期的に誰かが交換しているかも。



 
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