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再々
第56話 あと一人登場
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「夜道、気をつけて下さい」
「パイセン、じゃーねー!」
「ん。それじゃ」
四葉さんとバス停まで歩いて別れた。屍人が出ないように胸につけてあるバッチ型の懐中電灯を灯してあるから大丈夫だ。
俺たちもそれぞれ帰路につくことにした。
「ん? そういや今日バイトしてなくね?」
伊礼が俺に顔を向けた。
「休み」
「あ~」
あの人は生徒会の仕事もあって俺も生活費のためにバイトに明け暮れる。そんな中での部活動。さて、これからどうなるのか。
探求部に人が入ったのはたまたまではない。この時期、この年に、巡りあえた必然だったのかもしれない。
部活動に必要最低限な人数を確保されないとすぐに廃部にさせられる。そんな崖っぷちの俺たちにすぐに救世主が現れることをまだ俺たちは知らない。
放課後、部室には四人揃っていた。今日もバイトをいれていないからスケジュール的に時間に余裕がある。伊礼は毎日暇だし、逆に琉巧は興味なかったのに部室に来た。まぁ理由がしょうもない。女の子たちから唯一逃げられる場所だ、と。
胸につけてあるバッチが3つ暗闇の中光る。空気が冷たくなる。風がざぁ、と吹い樹木がざわめき踊りだす。屍人はいない。帰りにどこか寄って行こうとおもったが、もう暗い。おとなしく帰ろう。
二人と別れてアパートに帰った頃には屍人がぞろぞろと蠢いていた。黒い不透明な影のない物体。これが多いときは懐中電灯をつけてても近寄ってくる。屍人に触れれば屍人になる。ゾンビ映画でも見るゾンビに噛まれたらゾンビになる、のと同じ。窓を開けて外の様子を眺めると黒い不透明なものがうじゃうじゃと柱やゴミ捨て場、家屋の天井にまで張り付いてる。これゃ多いな。
すぐに窓を閉める。
さて、明日はどうするか。あと一人加入しないと部活動は廃止。そうなったら、折角入った高校で浮くのでは。だめだ。頭の中でマイナス思考がぐるぐると回っていてそれらしいアイディアは浮かばない。明日にするか。とダメ元で寝ることにした。
翌朝――
昼休み部室に行ってみるとそこには、思いもよらない人間がいた。もう1人はここでほぼ過ごしているような四葉さんともう1人――男子生徒が椅子に座っていた。
耳付近の髪の毛は刈り上げて両耳のピアスがえげつないほどつけている。ネクタイの色が青だから二年生だってすぐに気づいた。
部室に見たことない人間がいても四葉さんは平然と本を読書していた。男子生徒はまるで我が家のような寛ぎでスマホを眺め、ただただ窓から吹いてくる柔からな風だけが静寂な空間の中で音になっている。
「いや誰⁉」
流石に話を持ちかけた。
ツッコむところだろ。
「おっ」
声を荒げたことでその人物は気づいてスマホから俺へと顔を開けてこちらを向く。
「あん時この部を堂々と宣伝してた子じゃ~ん。ここ座ってごめんね。俺もここの部に入ろうかなて思っていたとこなんだ」
にこやかに笑った。
「え」
突然のことに上手く反応できなかったが、間をおいて反応できた。
「本っ当ですか⁉ 我が部はほぼ幽霊部員みたいなもんやがはいってくれたら歓迎するべ‼」
先輩の手を掴みぶんぶんと握手する。
先輩――藤宮有斗さんは一年上の先輩で入部した理由はあの日、俺が人目もはばからず堂々と部活の宣伝していた姿勢を見て興味が湧いたと。
「いや~中々ないよあんな宣伝、ね? 柴先輩」
「えぇそうね」
「いや~、そんな、そんっな、あはは!」
褒めちぎられて内心踊りだす。ニヤニヤが止まらない。早速、有斗先輩には入部届を出してもらった。入部届欄の中の自分の名前を書いているときにふと、有斗先輩はポツリと言った。
「幽霊部員て言ってたけど、他の子はココ、通わないの?」
「同じ一年の金髪の伊礼ていうんじゃが、そいつは多分毎日来ると思うんじゃが琉巧ていう真面目な面しといて女癖は悪い奴は恐らく定期的かと。俺も……バイトがあって通うだけべ」
「へー」
有斗先輩は自分の名前を書き終わるとペンを置き、部室の周りをキョロキョロした。ほぼ物置小屋と化している部屋を見てあまり部室とは言えないのだろう。それでもここに華があると感じるのは窓際に座っている彼女の存在のおかげだ。あそこだけキラキラと輝いて陽の光が神々しく映る。これがなかったらこ汚い部屋だ。
「俺も毎日ここ来るかな」
「あ、その、放課後の時間は多分、勉強時間かと」
「へぇ、まぁいいけど」
有斗先輩は笑みを崩さない。優しい先輩だべ。
これで正式的に探求部の存続危機の話はなくなった。そういえば、どうして昼休みに部室に行ったかというと四葉さんに今日シフトがあるから部室来れないというたったこれだけを伝えるためにわざわざ行ったんだ。
でも四葉さんは部室に来ない俺に対して不信感は持ってくれなさそう。さっきの有斗先輩が呑気に部室に居ても平然としていたし。伊礼に言伝を頼もうかと思ったけど、やっぱり直接言いたかったのは俺が、四葉さんに心配かけられたくないからだ。それは杞憂だったけどな。
「パイセン、じゃーねー!」
「ん。それじゃ」
四葉さんとバス停まで歩いて別れた。屍人が出ないように胸につけてあるバッチ型の懐中電灯を灯してあるから大丈夫だ。
俺たちもそれぞれ帰路につくことにした。
「ん? そういや今日バイトしてなくね?」
伊礼が俺に顔を向けた。
「休み」
「あ~」
あの人は生徒会の仕事もあって俺も生活費のためにバイトに明け暮れる。そんな中での部活動。さて、これからどうなるのか。
探求部に人が入ったのはたまたまではない。この時期、この年に、巡りあえた必然だったのかもしれない。
部活動に必要最低限な人数を確保されないとすぐに廃部にさせられる。そんな崖っぷちの俺たちにすぐに救世主が現れることをまだ俺たちは知らない。
放課後、部室には四人揃っていた。今日もバイトをいれていないからスケジュール的に時間に余裕がある。伊礼は毎日暇だし、逆に琉巧は興味なかったのに部室に来た。まぁ理由がしょうもない。女の子たちから唯一逃げられる場所だ、と。
胸につけてあるバッチが3つ暗闇の中光る。空気が冷たくなる。風がざぁ、と吹い樹木がざわめき踊りだす。屍人はいない。帰りにどこか寄って行こうとおもったが、もう暗い。おとなしく帰ろう。
二人と別れてアパートに帰った頃には屍人がぞろぞろと蠢いていた。黒い不透明な影のない物体。これが多いときは懐中電灯をつけてても近寄ってくる。屍人に触れれば屍人になる。ゾンビ映画でも見るゾンビに噛まれたらゾンビになる、のと同じ。窓を開けて外の様子を眺めると黒い不透明なものがうじゃうじゃと柱やゴミ捨て場、家屋の天井にまで張り付いてる。これゃ多いな。
すぐに窓を閉める。
さて、明日はどうするか。あと一人加入しないと部活動は廃止。そうなったら、折角入った高校で浮くのでは。だめだ。頭の中でマイナス思考がぐるぐると回っていてそれらしいアイディアは浮かばない。明日にするか。とダメ元で寝ることにした。
翌朝――
昼休み部室に行ってみるとそこには、思いもよらない人間がいた。もう1人はここでほぼ過ごしているような四葉さんともう1人――男子生徒が椅子に座っていた。
耳付近の髪の毛は刈り上げて両耳のピアスがえげつないほどつけている。ネクタイの色が青だから二年生だってすぐに気づいた。
部室に見たことない人間がいても四葉さんは平然と本を読書していた。男子生徒はまるで我が家のような寛ぎでスマホを眺め、ただただ窓から吹いてくる柔からな風だけが静寂な空間の中で音になっている。
「いや誰⁉」
流石に話を持ちかけた。
ツッコむところだろ。
「おっ」
声を荒げたことでその人物は気づいてスマホから俺へと顔を開けてこちらを向く。
「あん時この部を堂々と宣伝してた子じゃ~ん。ここ座ってごめんね。俺もここの部に入ろうかなて思っていたとこなんだ」
にこやかに笑った。
「え」
突然のことに上手く反応できなかったが、間をおいて反応できた。
「本っ当ですか⁉ 我が部はほぼ幽霊部員みたいなもんやがはいってくれたら歓迎するべ‼」
先輩の手を掴みぶんぶんと握手する。
先輩――藤宮有斗さんは一年上の先輩で入部した理由はあの日、俺が人目もはばからず堂々と部活の宣伝していた姿勢を見て興味が湧いたと。
「いや~中々ないよあんな宣伝、ね? 柴先輩」
「えぇそうね」
「いや~、そんな、そんっな、あはは!」
褒めちぎられて内心踊りだす。ニヤニヤが止まらない。早速、有斗先輩には入部届を出してもらった。入部届欄の中の自分の名前を書いているときにふと、有斗先輩はポツリと言った。
「幽霊部員て言ってたけど、他の子はココ、通わないの?」
「同じ一年の金髪の伊礼ていうんじゃが、そいつは多分毎日来ると思うんじゃが琉巧ていう真面目な面しといて女癖は悪い奴は恐らく定期的かと。俺も……バイトがあって通うだけべ」
「へー」
有斗先輩は自分の名前を書き終わるとペンを置き、部室の周りをキョロキョロした。ほぼ物置小屋と化している部屋を見てあまり部室とは言えないのだろう。それでもここに華があると感じるのは窓際に座っている彼女の存在のおかげだ。あそこだけキラキラと輝いて陽の光が神々しく映る。これがなかったらこ汚い部屋だ。
「俺も毎日ここ来るかな」
「あ、その、放課後の時間は多分、勉強時間かと」
「へぇ、まぁいいけど」
有斗先輩は笑みを崩さない。優しい先輩だべ。
これで正式的に探求部の存続危機の話はなくなった。そういえば、どうして昼休みに部室に行ったかというと四葉さんに今日シフトがあるから部室来れないというたったこれだけを伝えるためにわざわざ行ったんだ。
でも四葉さんは部室に来ない俺に対して不信感は持ってくれなさそう。さっきの有斗先輩が呑気に部室に居ても平然としていたし。伊礼に言伝を頼もうかと思ったけど、やっぱり直接言いたかったのは俺が、四葉さんに心配かけられたくないからだ。それは杞憂だったけどな。
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