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再々
第53話 接近
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長くて艶のある黒い髪の毛、スカートから覗く白肌は黒いストッキングに覆われてスラリとしてて長い。スレンダーな体型で身長も高く、モデルのよう。あまつさえ、この学校の生徒会長ともなる座に座り成績優秀。今季のテストで国内入を果たしたらしい。素直にすごい。ただ、この学校でこの人と親しい人はあまり見かけない。
いつも1人。歩いているときも、食べているときも。1人だけど、それらの孤独も感じさせない程あの人は光っている。
俺の知っている柴四葉という人はそういう人。入学してから気になって目にかけ続く事、2ヶ月。
俺の知っていることといえばそれだけ。
早2ヶ月を過ぎたころには学業とバイト生活に明け暮れて、もうギブアップ状態。親には「東京さ1人行ってなんができるが」とか、ばかにされたけど「一人暮らしなんて楽勝、楽勝~」とダブルピースして笑ってたあの頃の俺をぶん殴りたい。
拝啓、お母様お父様。一人暮らしを舐めてました。この東京さ、とにかくすごい所なんで! 人は多いし通勤にお金かけたくないからと自電車はいいものの、こっから学校離れてるし、朝は自分で起きて自分の弁当を作らないといけない。体力と根気が必要。拝啓、お母様お父様、助けてくだい。こんなの、憧れたもんじゃねぇ、地獄だ。
高校生活、部活は入りたかったんだが。これじゃあ無理じゃ。そう諦めてた矢先――。
昼休み、偶々提出物を担任の男性教師の所へ持っていった時だった。ある一声がかけられた。
「お前、部活しないのか? この学校、進学校だからほぼ全員部活に入るぞ」
「マジすか」
「マジマジ。見学したろ? どこ入るか今週中に決めとけ~」
心の中でマジか、を二回繰り返して途方にくれた。職員室を出てどうするか足が動けずにいた。すると、そこに忍び寄る影が。
「君、部活を探しているの?」
「あ、はい」
若い女性教師。
見たことないから一年の学年教師じゃない。短髪で化粧を少ししているおしゃれ気のない女性教師で、くりくりとした目はまだ子どもらしさを見せる童顔。姿形が大人なものでそれはアンバランスだ。
「わたし、三年の担任やってる長谷川なんだけどね。ちょうど君みたいな子を探していたの」
長谷川先生の話によると『探求部』という部活があって今年卒業した生徒たちが去ってしまったばかりに現在校生は一人。このままだと廃止になるんだと。
長谷川先生に部室を案内されたが、正直言って困惑した。1階の図書館の隣にある狭い部室だったのだ。しかも、空き部屋かと思ったら部室だったとは。こんなところで何をするのやら。正直言って俺は文化系よりも運動部なんだよね。
田舎の学校でも弓道部だったし。
その扉を長谷川先生が開けた。窓の外の風がふわりと優しくなびかせた。
「おっいたいた」
長谷川先生はルンルンで部室に入る。
俺は口を開けたまま突っ立っていた。なんたってその部屋にいたのは生徒会長でもある柴四葉だったからだ。小さな机に自身の作ったかもしれない弁当を広げながら読書をしていた。
彼女の髪の毛がユラユラと揺れて艷やかだ。
「四葉、この子、部活入らないからこの部にいれてあげたら?」
先生何を言っちょる。俺は部活入らないのではなく、その余裕がないんじゃ。
「別に構いません」
彼女は淡々と言った。
「ここ、殆ど幽霊部みたいなもんだから! あ、でも文化祭のときだけ発表会があるけど、大丈夫! 四葉いるしさ!」
先生は笑って部室をあとにした。
部室は静まり返っている。彼女は黙々と本を読みながら弁当を食べている。殆ど読書に夢中だ。俺はきごちなさに部室をぐるりと見回してた。
本棚には本以外に箱や古びたぐるぐる巻きにされた資料など、人体模型や地球儀、運動部の使わなくなったボールまである。ほぼ物置小屋じゃん。
この部屋何使うんだ。
「あ、俺、1年の戸村六路です。ここ、進学校なの知らなくて彷徨ってたら捕まりました」
自己紹介すると、風の音だけが響く。ガン無視された。
「食べた?」
びっくりした。彼女が本から顔をこちらに向けて俺に話しかけてきた。
「え?」
曖昧な返事を返すと彼女は一言添えて「昼食、食べた?」と質疑した。
「え、あぁもう済ませました」
「そう」
会話終了。
自分の頬を自分の拳で思い切り殴り倒したい。何やってだ俺! もっと努力するんだ!
ふわりと春の風が窓の外から。
髪の毛がなびき、春の暖かな陽光が彼女の姿を神々しく照らす。頭の毛からつま先まで姿勢正しくて、あのいつも遠目から見てた人がこんなにも間近に。感慨深くて目眩がしそう。
「こ、この部は普段何を?」
裏返った声が出た。めっちゃ恥ずかしい。
「歴史を探ってみたり、埋蔵金を掘り起こしたり、わたしは普段からここにいるけど、部の活動は基本的に気が向いたら。わたしは生徒会の仕事もあるから、途中で放り投げるかもしれない」
「埋蔵金掘り起こしたことあるんすか⁉」
思わずその話に乗った。
「去年の三年生が。でも失敗だった」
「ですよねー」
そんなホイホイ見つかるわけねぇべ。ふと、あることに着目した。
「この部、まだ二人だけ?」
そう、探求部に元々残っているのはこの人とあたらしく入った俺……部活動を続けるためにはあと最低三人必要だ。このままじゃ、部の存続危機。
「おどげでね~~! 今からでも人数だ集めちゃ!」
いつも1人。歩いているときも、食べているときも。1人だけど、それらの孤独も感じさせない程あの人は光っている。
俺の知っている柴四葉という人はそういう人。入学してから気になって目にかけ続く事、2ヶ月。
俺の知っていることといえばそれだけ。
早2ヶ月を過ぎたころには学業とバイト生活に明け暮れて、もうギブアップ状態。親には「東京さ1人行ってなんができるが」とか、ばかにされたけど「一人暮らしなんて楽勝、楽勝~」とダブルピースして笑ってたあの頃の俺をぶん殴りたい。
拝啓、お母様お父様。一人暮らしを舐めてました。この東京さ、とにかくすごい所なんで! 人は多いし通勤にお金かけたくないからと自電車はいいものの、こっから学校離れてるし、朝は自分で起きて自分の弁当を作らないといけない。体力と根気が必要。拝啓、お母様お父様、助けてくだい。こんなの、憧れたもんじゃねぇ、地獄だ。
高校生活、部活は入りたかったんだが。これじゃあ無理じゃ。そう諦めてた矢先――。
昼休み、偶々提出物を担任の男性教師の所へ持っていった時だった。ある一声がかけられた。
「お前、部活しないのか? この学校、進学校だからほぼ全員部活に入るぞ」
「マジすか」
「マジマジ。見学したろ? どこ入るか今週中に決めとけ~」
心の中でマジか、を二回繰り返して途方にくれた。職員室を出てどうするか足が動けずにいた。すると、そこに忍び寄る影が。
「君、部活を探しているの?」
「あ、はい」
若い女性教師。
見たことないから一年の学年教師じゃない。短髪で化粧を少ししているおしゃれ気のない女性教師で、くりくりとした目はまだ子どもらしさを見せる童顔。姿形が大人なものでそれはアンバランスだ。
「わたし、三年の担任やってる長谷川なんだけどね。ちょうど君みたいな子を探していたの」
長谷川先生の話によると『探求部』という部活があって今年卒業した生徒たちが去ってしまったばかりに現在校生は一人。このままだと廃止になるんだと。
長谷川先生に部室を案内されたが、正直言って困惑した。1階の図書館の隣にある狭い部室だったのだ。しかも、空き部屋かと思ったら部室だったとは。こんなところで何をするのやら。正直言って俺は文化系よりも運動部なんだよね。
田舎の学校でも弓道部だったし。
その扉を長谷川先生が開けた。窓の外の風がふわりと優しくなびかせた。
「おっいたいた」
長谷川先生はルンルンで部室に入る。
俺は口を開けたまま突っ立っていた。なんたってその部屋にいたのは生徒会長でもある柴四葉だったからだ。小さな机に自身の作ったかもしれない弁当を広げながら読書をしていた。
彼女の髪の毛がユラユラと揺れて艷やかだ。
「四葉、この子、部活入らないからこの部にいれてあげたら?」
先生何を言っちょる。俺は部活入らないのではなく、その余裕がないんじゃ。
「別に構いません」
彼女は淡々と言った。
「ここ、殆ど幽霊部みたいなもんだから! あ、でも文化祭のときだけ発表会があるけど、大丈夫! 四葉いるしさ!」
先生は笑って部室をあとにした。
部室は静まり返っている。彼女は黙々と本を読みながら弁当を食べている。殆ど読書に夢中だ。俺はきごちなさに部室をぐるりと見回してた。
本棚には本以外に箱や古びたぐるぐる巻きにされた資料など、人体模型や地球儀、運動部の使わなくなったボールまである。ほぼ物置小屋じゃん。
この部屋何使うんだ。
「あ、俺、1年の戸村六路です。ここ、進学校なの知らなくて彷徨ってたら捕まりました」
自己紹介すると、風の音だけが響く。ガン無視された。
「食べた?」
びっくりした。彼女が本から顔をこちらに向けて俺に話しかけてきた。
「え?」
曖昧な返事を返すと彼女は一言添えて「昼食、食べた?」と質疑した。
「え、あぁもう済ませました」
「そう」
会話終了。
自分の頬を自分の拳で思い切り殴り倒したい。何やってだ俺! もっと努力するんだ!
ふわりと春の風が窓の外から。
髪の毛がなびき、春の暖かな陽光が彼女の姿を神々しく照らす。頭の毛からつま先まで姿勢正しくて、あのいつも遠目から見てた人がこんなにも間近に。感慨深くて目眩がしそう。
「こ、この部は普段何を?」
裏返った声が出た。めっちゃ恥ずかしい。
「歴史を探ってみたり、埋蔵金を掘り起こしたり、わたしは普段からここにいるけど、部の活動は基本的に気が向いたら。わたしは生徒会の仕事もあるから、途中で放り投げるかもしれない」
「埋蔵金掘り起こしたことあるんすか⁉」
思わずその話に乗った。
「去年の三年生が。でも失敗だった」
「ですよねー」
そんなホイホイ見つかるわけねぇべ。ふと、あることに着目した。
「この部、まだ二人だけ?」
そう、探求部に元々残っているのはこの人とあたらしく入った俺……部活動を続けるためにはあと最低三人必要だ。このままじゃ、部の存続危機。
「おどげでね~~! 今からでも人数だ集めちゃ!」
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