折々再々

ハコニワ

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最初Ⅰ

第34話 関係

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 意外とおちゃめで年下ぽい甘えん坊の少年だった。地下へ勝手に入ったことに関してジィジと同じ、全く怒っている素振りはない。
 あれを見て、どう思った?
 意見を求める質問に対して、あの回答は少し雑だっただろうか。姫も一緒に見たんだ。姫の答えも聞いてみようと薦めるも『時空』様はその前に帰ると告げた。
 せっかく打ち明けたと思ったら、相手にも時間があるらしい。もうすぐ闇になる。三柱は門限がありそれは厳しいとのこと。
「闇は蛇の活動時間であり、死者のさまよう時間。あまり、出歩かないように」
 忠告を置き、去っていった。



 そのあと、追うようにして姫が帰ってきた。
 さっきまで『時空』様と対談してきたことを自慢話しのように繰り広げる。そうだ。姫にも一応聞いてみよう。
「姫、あの場所をどう思った?」
「あの場所……そうですね、わたくしは不気味でした。ですが、王子が隣りに居てくれたおかげで何も怖くありませんでしたよ」
 姫はふふふっと陽気に笑った。しまった。癒やされる時間が完全にノックアウトされ瀕死だ。可愛いすぎる姫よ。


§



 三柱宮殿に帰ると2人はまた、星を見上げてた。肩が触れ合う距離でまるで兄妹のように。
「好きだね。でも今夜はあまり見れないんじゃないかな?」
 話しかけると『大地』が振り向いた。
「いいんだよ。別に見れなくても」
「それじゃ、何見てるの?」
「あーあー! うるせぇな! 別に星以外でも見れんだろ。察しろ」
 『大地』は少し粗暴な言葉使いな人だ。それを知っているのは同じ三柱の僕らだけ。
「おかえり。どこ行ってたの?」
 『天空』が間をおいて話しかけてきた。
「殿下さ。あれを見たらしい。それで……どう思ったのか」
「いい答えが返ってきたかよ。期待しても無駄だろ。ちったあ考えろよ。期待するだけ損だ」
 『大地』はキレ気味ででも、その中に呆れと失望感が垣間見える。『天空』が天に手を伸ばす。星が見えない曇天の空へ。
「やがてくる。星が絶ち滅亡のとき。もうすぐだよ」
 普段笑わない彼女が踊りだすように笑った。この世の災いを先読みる力。三柱の中で一番特有に存在しているのが『天空』だ。
「えー。でもそれみんな死んじゃうよ?」
 僕は水を指すようなことを言った。
 『大地』がカッとなって顔を鬼のように歪ませた。
「こんな世界、なくなって当然だろ。俺たちを閉じ込めるこんな世界、一度なくなればいいんだ!」
「大地、落ち着いて」
 『大地』の言っていることは反論できなかった。僕もそうだから。この世界の滅亡を願っている。世界が僕らを閉じ込めるから世界を壊すしかない。でも罪のない人は――いいや、口を閉ざした。

 そして奥の屋敷へ、2人に背を向けて入っていく。
「大地、大丈夫。私がついている」
「あぁ。どんなことがあっても俺たちだけは生きよう」
 2人は手を繋ぎ、身を寄せ合った。



§



 王子の友達だと告げばこの国はたいていこの門を通してくれる。
「えー! またフミのとこかよ!」
 イレインが頬を膨らませて睨みつける。リスみたいで可愛いから怖くないけど。
「うん。この本、フミちゃんも面白かったて」
「たまには僕と遊ぼうよ!」
 イレインは前へ走って通せんぼ。
「だめだ。フミちゃんが待っている」
 僕はイレインに何回もごめんね、と告げるとイレインは寂しそうに道を譲ってくれた。たしかにこの頃、イレインと遊んでいない。城の中のフミちゃんと読書したり勉強したりだ。フミちゃんの病気は蛇病で毎日苦しそうでとても見ていられない。だから、誰かが常にいないと。
「僕より優先するの?」
 イレインは泣き出しそうな目だった。
 零れ落ちそうな雫が頬から垂れそう。僕は急いで駆け寄って抱きしめた。
「今日は早く帰ってくるから。そしたら一緒に遊ぼう」
 僕は嘘のない笑顔で言うと、イレインはぱぁと笑った。雫は乾いて頬には一滴の雫も垂れていない。体から出る水は貴重だっていうし、それに、イレインを泣かしたくない。
 イレインと約束して城の中にはいる。開かれた門ははすぐに閉められた。


 城の前の閉められた門にてイレインは呆然としていた。すぐに帰ってくるかもしれない。だからここで待っていようと思ったのだ。
 そうだ。あの壁際で隠れてルークをびっくりさせよう。最近かまってくれたなかった罰として当たり前だろ。
 コソコソと建物の壁まで行くと曲がり角で誰かとぶつかった。兵士か。またぶだれる可能性が。咄嗟に身を低くして縮こまると知っている声が頭上から降りてきた。
「こんなところで何してんだ? えーっとイレイン?」
 恐る恐る顔を上げるとこの前知り合ったアルト兄ちゃんだ。兵士は兵士でも優しい兵士だ。イレインはほっとして胸をなでおろす。事の経緯を説明するとアルト兄ちゃんは賛同してくれた。
「アルト兄ちゃんは兵士さんなのに優しいね!」
 僕は壁際に隠れてアルト兄ちゃんを隣に座らせる。アルト兄ちゃんは僕の頭を撫でてくれた。その眼差しは他の誰かを見るようで。
「弟はきっとこのくらいだろうからさ、いや、少し下かも。まぁでも、弟みたいに思ってんだ」
 わしゃわしゃと髪の毛を雑に撫でられた。
 その日、ルークが門から出てくるのはあれから2時間を過ぎた時刻だった。約束したのにルークのやつ、本当に嫌いだ。


  
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