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最初Ⅰ
第33話 会話
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昨夜、部屋に戻る前に三柱と対面した。そのことを姫に打ち明けた。
「そうですか。お顔はわたくしもはっきりと見たことがないのです。どんなお顔でしたか?」
姫はその話題に乗ってくれた。
「昨夜は二人だった。『大地』と『天空』だ。二人して星を見ていたらしい。それで、三人とも共通して白い肌に赤い目だった」
「ほぉ。それは稀ですね」
「そうだろう。みんな共通している容姿なんだ」
三人を思い浮かべ、その容姿、姿勢、振る舞いを目裏にチラつかせる。姫がこの話題に乗ってきてくれたことに嬉しさと興奮で舌がより巻く。
「……王子、昼間のことは忘れましょう。三柱たちはわたくしたちには関係のないこと。三柱に関われば大きな災いが起こすと噂もあります。どうか、身を引いてください」
姫は上目遣いで懇願してきた。
体が密着しているからこそわかる、姫は少し怯えている。その噂は確かに存在する。耳にしたことがあったのだ。昔な。
どんな噂だったのか――確か、三柱の悪い噂を流した者がいてその者が翌朝処刑された、とのこと。
アルトに似ている。
姫は俺が殺されてしまうんじゃないかと恐れている。俺は姫の手を握る。
「大丈夫だ。案ずるな。姫の言うとおりこの件は身を引こう」
誓いのように頭にキスを落とした。
姫は真っ白な肌を真っ赤にさせて胸元に顔を埋める。グリグリ頭を押さえつけてかわいい。小動物みたいだ。
深く沈んでいた夜が明けて太陽が空に顔を出した。光が差し数多のものに命が宿る。部屋を出て一緒に朝食を整える。残念ながら一緒にいられたのは朝だけだ。
俺は公務で部屋にこもり、姫は俺の母、姫からみれば王妃であり姑から学びを教わるために少し遠い城へ行ってしまわれた。
別れる際、抱き合った体温は忘れない。離れ離れになるのははじめだ。無事に帰ってくるといいが。
「王子、お手が止まっていますよ」
ジィジに指摘された。
たんまりと溜まっている書類の山に囲まれているにも関わらず上の空でいた俺に嫌気が差したのか、少し怒った顔している。
「悪かったよ。でも姫が心配なんだ」
「姫様のご武運を祈るのは結構。貴方様は目の前のものを集中してください」
「分かっている」
ヤケになって再び手を動かした。
ジィジはそれでも怒った顔のままだ。その視線で睨まれると公務に妨害をきたす。
「なんだ? 何か用があるのか?」
問いてみるとジィジは静かに口を開いた。
「えぇ。ありますとも」
「手短に話せ」
「では王子、昨日は地下に足を運びましたね」
ピタリと手が止まった。
ジィジは話をを続けた。言い訳を言わせないように早口に。
「わたくしどもに黙っていかれては困ります。一言だけでも申してからと。ではないとわたくしたちは城をひっくり返すほど探し回るじゃありませんか。そのようなことさせないでいただきたい」
「ははは……肝に銘じる」
ジィジは鼻息を荒れて怒っている。
勝手に入ったことに関して、重く受け取っていないようだ。これが三柱の誰かに勘づかれば事大は重く受け取っている。
城の地下で保管されているが管轄は三柱だ。妙な話だがな。
「王子、そこは」
「ん? おっと、すまない」
いかんな、考え子としていると間違う。集中集中。机の上に置かれた書類に思考すべてを費やす。
暫く時間が経った頃。
もうだいぶ日が暮れ始めた頃だ。窓から差し込む光がオレンジ色で影がより濃く大きくなった。あんなに山のように積んでいた書類も片や少なくなり、どうやら、日中ここにこもっていたらしい。
どうりで肩が痛い。
体を伸ばす。
一筋の光が目にあたってチリチリ眩しい。
帰ってきた音もないし、姫はまだ母のところで頑張っているらしい。俺ももう少し頑張ってから帰るか。
トントン
戸を叩く音が静かな空間に反響した。ジィジか。使用人か。姫ではないのは感じる。帰ってきたら音があるはずだ。
「誰だ?」
警戒してうかがう。
「わたくしは三柱の『時空』であります。殿下にお伺いしたいことあり参りました」
三柱が何用? 考えるより先に客人を部屋に招いた。
「失礼します。殿下」
「かしこまるな。そこへ座れ」
少年は言われたとおりそばにあった椅子に座る。三柱とこうして対面したのは初めてだ。顔を見たのは式依頼。アルトの弟だと言われる『時空』様が目の前に。たった1人だ。他の『大地』と『天空』とは一緒にいないのか。セットのように思っていたのだが。
「何用だ?」
ジィジが入ってきて2カップ用意してくれた。
対面して座ると『時空』は静かに口を開いた。真っ白な肌に日光が当たると白銀のような眩さ。同じ人とは思えない美しさだ。ゾッとする。
「地下へ入りましたね? 言伝なしに。何を結論しましたか?」
早速バレてたか。凛とした姿勢のまま、俺は答えた。
「何も。あの石を読み解くには考古学者が必要だ。俺には理解できなかった」
『時空』は切れ長の目をさらに細くした。睨んでいるようだ。
「他の二人と一緒じゃないのだな」
「あの二人は特に仲いいので。あ、決してハブられていませんよ。僕が距離置いているので」
苦笑した顔がやはり、アルトに似ていると直感した。
「そうなのか。三人仲がいいと思っていた」
「そんなわけ無いです。だって、僕らは兄弟でもなんでもないですからね」
「そうですか。お顔はわたくしもはっきりと見たことがないのです。どんなお顔でしたか?」
姫はその話題に乗ってくれた。
「昨夜は二人だった。『大地』と『天空』だ。二人して星を見ていたらしい。それで、三人とも共通して白い肌に赤い目だった」
「ほぉ。それは稀ですね」
「そうだろう。みんな共通している容姿なんだ」
三人を思い浮かべ、その容姿、姿勢、振る舞いを目裏にチラつかせる。姫がこの話題に乗ってきてくれたことに嬉しさと興奮で舌がより巻く。
「……王子、昼間のことは忘れましょう。三柱たちはわたくしたちには関係のないこと。三柱に関われば大きな災いが起こすと噂もあります。どうか、身を引いてください」
姫は上目遣いで懇願してきた。
体が密着しているからこそわかる、姫は少し怯えている。その噂は確かに存在する。耳にしたことがあったのだ。昔な。
どんな噂だったのか――確か、三柱の悪い噂を流した者がいてその者が翌朝処刑された、とのこと。
アルトに似ている。
姫は俺が殺されてしまうんじゃないかと恐れている。俺は姫の手を握る。
「大丈夫だ。案ずるな。姫の言うとおりこの件は身を引こう」
誓いのように頭にキスを落とした。
姫は真っ白な肌を真っ赤にさせて胸元に顔を埋める。グリグリ頭を押さえつけてかわいい。小動物みたいだ。
深く沈んでいた夜が明けて太陽が空に顔を出した。光が差し数多のものに命が宿る。部屋を出て一緒に朝食を整える。残念ながら一緒にいられたのは朝だけだ。
俺は公務で部屋にこもり、姫は俺の母、姫からみれば王妃であり姑から学びを教わるために少し遠い城へ行ってしまわれた。
別れる際、抱き合った体温は忘れない。離れ離れになるのははじめだ。無事に帰ってくるといいが。
「王子、お手が止まっていますよ」
ジィジに指摘された。
たんまりと溜まっている書類の山に囲まれているにも関わらず上の空でいた俺に嫌気が差したのか、少し怒った顔している。
「悪かったよ。でも姫が心配なんだ」
「姫様のご武運を祈るのは結構。貴方様は目の前のものを集中してください」
「分かっている」
ヤケになって再び手を動かした。
ジィジはそれでも怒った顔のままだ。その視線で睨まれると公務に妨害をきたす。
「なんだ? 何か用があるのか?」
問いてみるとジィジは静かに口を開いた。
「えぇ。ありますとも」
「手短に話せ」
「では王子、昨日は地下に足を運びましたね」
ピタリと手が止まった。
ジィジは話をを続けた。言い訳を言わせないように早口に。
「わたくしどもに黙っていかれては困ります。一言だけでも申してからと。ではないとわたくしたちは城をひっくり返すほど探し回るじゃありませんか。そのようなことさせないでいただきたい」
「ははは……肝に銘じる」
ジィジは鼻息を荒れて怒っている。
勝手に入ったことに関して、重く受け取っていないようだ。これが三柱の誰かに勘づかれば事大は重く受け取っている。
城の地下で保管されているが管轄は三柱だ。妙な話だがな。
「王子、そこは」
「ん? おっと、すまない」
いかんな、考え子としていると間違う。集中集中。机の上に置かれた書類に思考すべてを費やす。
暫く時間が経った頃。
もうだいぶ日が暮れ始めた頃だ。窓から差し込む光がオレンジ色で影がより濃く大きくなった。あんなに山のように積んでいた書類も片や少なくなり、どうやら、日中ここにこもっていたらしい。
どうりで肩が痛い。
体を伸ばす。
一筋の光が目にあたってチリチリ眩しい。
帰ってきた音もないし、姫はまだ母のところで頑張っているらしい。俺ももう少し頑張ってから帰るか。
トントン
戸を叩く音が静かな空間に反響した。ジィジか。使用人か。姫ではないのは感じる。帰ってきたら音があるはずだ。
「誰だ?」
警戒してうかがう。
「わたくしは三柱の『時空』であります。殿下にお伺いしたいことあり参りました」
三柱が何用? 考えるより先に客人を部屋に招いた。
「失礼します。殿下」
「かしこまるな。そこへ座れ」
少年は言われたとおりそばにあった椅子に座る。三柱とこうして対面したのは初めてだ。顔を見たのは式依頼。アルトの弟だと言われる『時空』様が目の前に。たった1人だ。他の『大地』と『天空』とは一緒にいないのか。セットのように思っていたのだが。
「何用だ?」
ジィジが入ってきて2カップ用意してくれた。
対面して座ると『時空』は静かに口を開いた。真っ白な肌に日光が当たると白銀のような眩さ。同じ人とは思えない美しさだ。ゾッとする。
「地下へ入りましたね? 言伝なしに。何を結論しましたか?」
早速バレてたか。凛とした姿勢のまま、俺は答えた。
「何も。あの石を読み解くには考古学者が必要だ。俺には理解できなかった」
『時空』は切れ長の目をさらに細くした。睨んでいるようだ。
「他の二人と一緒じゃないのだな」
「あの二人は特に仲いいので。あ、決してハブられていませんよ。僕が距離置いているので」
苦笑した顔がやはり、アルトに似ていると直感した。
「そうなのか。三人仲がいいと思っていた」
「そんなわけ無いです。だって、僕らは兄弟でもなんでもないですからね」
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