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最初Ⅰ
第30話 仲
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異国の地で心休まる場所も相談する相手もいない。何処を探そうか城を探すより、街に降りてみた。壁に向かって石を投げているイレインを見つけた。小石を投げて跳ねてきたものを何度も投げて寂しそう。いつも二人組セットのルークがいない。声をかけてみることにした。
「イレイン、1人か?」
声を掛けると余程びっくりしたのかしょんぼりしてた肩があがった。
「びっくりしたぁ~なんだ、王子様か。姫様は一緒じゃないの?」
「あぁ、そうなんだが、喧嘩しちゃってな」
「仲直りできるといいね」
イレインはにっこり笑って言った。
「イレインこそ、いつも一緒のルークはどうしたんだ」
そう切り出すとイレインは肩をすくめ顔を暗くさせた。
「えっと、ルークのやつ王子様の妹にすっごい興味持っちゃって僕なんか遊ぶよりなんか難しい本ばっか読んでいる『僕がフミちゃんの病気を治すんだ』て。本読むより遊ぶのが大事なのにルークのやつ、おっかしいの!」
八つ当たり気味に小石を壁に叩きつける。
それはすまないことをした、ような気分だこっちも。友達にそっぽむいて俺の妹に夢中とはな。ルークのやつ、案外目がいいんじゃないか。兄者面するもここはイレインの気持ちを考えると中々許せないものだ。
「よし、それなら俺と遊ぼう」
「ほんと⁉」
顔を暗くさせていたのが一変、ばぁと花が咲いたように笑顔を見せた。
「実はなお姫様と喧嘩してるて言ったろ? それでかくれんぼしているところなんだ。一緒に探してくれるか?」
「もちろん!」
イレインは白い歯を見せてニカッと笑った。
子供を使うのはよくないと思っていてもこのまま放置するのも嫌だった。イレインは暇だったので遊んでくれることに俄然ヤル気を出してくれた。
街中の狭い場所や遠回り道を歩いてきたり、市場の人たちに姫を探しまわる。宿屋にいた老父が姫が歩いていったと教えてくれた。
「何やら悲しそうな顔してな。落ち込んで泣きそうな様子じゃったし、なんじゃ? 早々に喧嘩か?」
「実はそうなんだ。俺の招いた種で姫を悲しませた。今から仲直りだ。ありがとう」
俺は礼を言うと老父が示した姫の歩いていった場所を走る。イレインと老父は「いってらしゃい」と見送ってもらう。
たどり着いた場所に姫は確かにいた。
地ベタに腰をつけ、猫と戯れていた。ふふふといつもの屈託なく笑う声がこちらまで聞こえて荒ぶっていた心がスッと穏やかになっていく。
少しずつ近づいてみた。
姫はくすくす笑って楽しそう。
「姫」
声をかけてみた。
余程びっくりしたのか姫は飛び跳ねた。一緒にいた猫も飛び跳ねて何処かへ行く。
「すまない。驚かせて」
姫は恐る恐る顔を振り向き、顔を見るとすぐにプイとそらした。
「姫、俺が悪かった。許してくれ」
一歩一歩近づいてく。姫は縮こまり静止している。俺は遠からずの距離を保ち話を続ける。
「俺が間違っていたんだ。本当に愚かなのは自分の愚かさを姫に指摘されたこと。それまで気づかなかった自分の甘えだ。姫、すまなかった」
姫は振り向きもせずに微動だにしない。
「実を言うと昨夜ずっと我慢していたんだ。姫の体温と匂いに包まれて危うく獣のように姫を組み敷いていた。手を出せば姫に嫌われるんじゃないかと思って我慢していたんだ。どうか姫、こちらを見てくれ。振り向いてほしい。言ったろう。太陽と月は一心同体。俺がいて姫がいないなら、俺はこの世の果てまで姫を探し出す。どうか帰ってきてくれ。あなたがいないと寂しい」
どうしようもなく弱々しい声が出た。
姫は切れ長の目を大きく見開き、そしてこちらに歩んでく。俺の頬を両手で掴みその顔をじっと見る。
「王子、なんて顔しているんですか。情けない。分かりました。あなたがそんなにわたくしを求めるなら帰りましょう。地獄の果まで探しに来たらたまったもんじゃありませんから」
姫は両手を放すと顔を暗くさせた。
「それと、申し訳ございません。城を抜け出してこんなところまで探しに来たんですね。ごめんなさい。勝手に」
「いいや。一緒に帰ろう」
手を繋ぎ2人は満面に笑った。
その様子を建物の奥から四つの目がじっと覗いてた。イレインと三柱の側近である男。王子たちとは一度顔見知りの男である。喧嘩して一緒に探してる途中に遭遇した。2人とも、熱い愛を放出しているこの瞬間に立ち会ってしまった。
「どうしよう。出ていけねぇ」
「おじさん、姫様探してたの?」
「お兄さんな。姫様は探してねぇけど、たまたま歩いてたらだ」
「みつかったんだね!」
「あ、おいっ!」
イレインは奥から顔を覗かせ二人のところまで走っていく。一緒に隠れていた男もしぶしぶ顔を出す。イレインの他にこの現場に第三者がいたことに2人はようやく気がつく。
「これは殿下とお妃様、こんなところでお目にかかれて大変光栄です」
「お前はあのときの!」
「えぇ。覚えてもらい大変恐縮です。わたくしはアルトと申します。先日、お目にかかれても名を名乗らず去った無礼をお許しください」
アルトと名乗った男は目の前で膝をついた。
フミを目撃した第三者の一人。
そして三柱の側近で、式のときも城内にいた。式のときも今も妹の存在は街中に届いていない。この男は秘密を握って尚且つ黙秘している。何か裏があるかも。
「イレイン、1人か?」
声を掛けると余程びっくりしたのかしょんぼりしてた肩があがった。
「びっくりしたぁ~なんだ、王子様か。姫様は一緒じゃないの?」
「あぁ、そうなんだが、喧嘩しちゃってな」
「仲直りできるといいね」
イレインはにっこり笑って言った。
「イレインこそ、いつも一緒のルークはどうしたんだ」
そう切り出すとイレインは肩をすくめ顔を暗くさせた。
「えっと、ルークのやつ王子様の妹にすっごい興味持っちゃって僕なんか遊ぶよりなんか難しい本ばっか読んでいる『僕がフミちゃんの病気を治すんだ』て。本読むより遊ぶのが大事なのにルークのやつ、おっかしいの!」
八つ当たり気味に小石を壁に叩きつける。
それはすまないことをした、ような気分だこっちも。友達にそっぽむいて俺の妹に夢中とはな。ルークのやつ、案外目がいいんじゃないか。兄者面するもここはイレインの気持ちを考えると中々許せないものだ。
「よし、それなら俺と遊ぼう」
「ほんと⁉」
顔を暗くさせていたのが一変、ばぁと花が咲いたように笑顔を見せた。
「実はなお姫様と喧嘩してるて言ったろ? それでかくれんぼしているところなんだ。一緒に探してくれるか?」
「もちろん!」
イレインは白い歯を見せてニカッと笑った。
子供を使うのはよくないと思っていてもこのまま放置するのも嫌だった。イレインは暇だったので遊んでくれることに俄然ヤル気を出してくれた。
街中の狭い場所や遠回り道を歩いてきたり、市場の人たちに姫を探しまわる。宿屋にいた老父が姫が歩いていったと教えてくれた。
「何やら悲しそうな顔してな。落ち込んで泣きそうな様子じゃったし、なんじゃ? 早々に喧嘩か?」
「実はそうなんだ。俺の招いた種で姫を悲しませた。今から仲直りだ。ありがとう」
俺は礼を言うと老父が示した姫の歩いていった場所を走る。イレインと老父は「いってらしゃい」と見送ってもらう。
たどり着いた場所に姫は確かにいた。
地ベタに腰をつけ、猫と戯れていた。ふふふといつもの屈託なく笑う声がこちらまで聞こえて荒ぶっていた心がスッと穏やかになっていく。
少しずつ近づいてみた。
姫はくすくす笑って楽しそう。
「姫」
声をかけてみた。
余程びっくりしたのか姫は飛び跳ねた。一緒にいた猫も飛び跳ねて何処かへ行く。
「すまない。驚かせて」
姫は恐る恐る顔を振り向き、顔を見るとすぐにプイとそらした。
「姫、俺が悪かった。許してくれ」
一歩一歩近づいてく。姫は縮こまり静止している。俺は遠からずの距離を保ち話を続ける。
「俺が間違っていたんだ。本当に愚かなのは自分の愚かさを姫に指摘されたこと。それまで気づかなかった自分の甘えだ。姫、すまなかった」
姫は振り向きもせずに微動だにしない。
「実を言うと昨夜ずっと我慢していたんだ。姫の体温と匂いに包まれて危うく獣のように姫を組み敷いていた。手を出せば姫に嫌われるんじゃないかと思って我慢していたんだ。どうか姫、こちらを見てくれ。振り向いてほしい。言ったろう。太陽と月は一心同体。俺がいて姫がいないなら、俺はこの世の果てまで姫を探し出す。どうか帰ってきてくれ。あなたがいないと寂しい」
どうしようもなく弱々しい声が出た。
姫は切れ長の目を大きく見開き、そしてこちらに歩んでく。俺の頬を両手で掴みその顔をじっと見る。
「王子、なんて顔しているんですか。情けない。分かりました。あなたがそんなにわたくしを求めるなら帰りましょう。地獄の果まで探しに来たらたまったもんじゃありませんから」
姫は両手を放すと顔を暗くさせた。
「それと、申し訳ございません。城を抜け出してこんなところまで探しに来たんですね。ごめんなさい。勝手に」
「いいや。一緒に帰ろう」
手を繋ぎ2人は満面に笑った。
その様子を建物の奥から四つの目がじっと覗いてた。イレインと三柱の側近である男。王子たちとは一度顔見知りの男である。喧嘩して一緒に探してる途中に遭遇した。2人とも、熱い愛を放出しているこの瞬間に立ち会ってしまった。
「どうしよう。出ていけねぇ」
「おじさん、姫様探してたの?」
「お兄さんな。姫様は探してねぇけど、たまたま歩いてたらだ」
「みつかったんだね!」
「あ、おいっ!」
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「これは殿下とお妃様、こんなところでお目にかかれて大変光栄です」
「お前はあのときの!」
「えぇ。覚えてもらい大変恐縮です。わたくしはアルトと申します。先日、お目にかかれても名を名乗らず去った無礼をお許しください」
アルトと名乗った男は目の前で膝をついた。
フミを目撃した第三者の一人。
そして三柱の側近で、式のときも城内にいた。式のときも今も妹の存在は街中に届いていない。この男は秘密を握って尚且つ黙秘している。何か裏があるかも。
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