折々再々

ハコニワ

文字の大きさ
上 下
30 / 78
最初Ⅰ

第30話 仲

しおりを挟む
 異国の地で心休まる場所も相談する相手もいない。何処を探そうか城を探すより、街に降りてみた。壁に向かって石を投げているイレインを見つけた。小石を投げて跳ねてきたものを何度も投げて寂しそう。いつも二人組セットのルークがいない。声をかけてみることにした。
「イレイン、1人か?」
 声を掛けると余程びっくりしたのかしょんぼりしてた肩があがった。
「びっくりしたぁ~なんだ、王子様か。姫様は一緒じゃないの?」
「あぁ、そうなんだが、喧嘩しちゃってな」
「仲直りできるといいね」
 イレインはにっこり笑って言った。
「イレインこそ、いつも一緒のルークはどうしたんだ」
 そう切り出すとイレインは肩をすくめ顔を暗くさせた。
「えっと、ルークのやつ王子様の妹にすっごい興味持っちゃって僕なんか遊ぶよりなんか難しい本ばっか読んでいる『僕がフミちゃんの病気を治すんだ』て。本読むより遊ぶのが大事なのにルークのやつ、おっかしいの!」
 八つ当たり気味に小石を壁に叩きつける。
 それはすまないことをした、ような気分だこっちも。友達にそっぽむいて俺の妹に夢中とはな。ルークのやつ、案外目がいいんじゃないか。兄者面するもここはイレインの気持ちを考えると中々許せないものだ。

「よし、それなら俺と遊ぼう」
「ほんと⁉」  
 顔を暗くさせていたのが一変、ばぁと花が咲いたように笑顔を見せた。
「実はなお姫様と喧嘩してるて言ったろ? それでかくれんぼしているところなんだ。一緒に探してくれるか?」
「もちろん!」
 イレインは白い歯を見せてニカッと笑った。
 子供を使うのはよくないと思っていてもこのまま放置するのも嫌だった。イレインは暇だったので遊んでくれることに俄然ヤル気を出してくれた。

 街中の狭い場所や遠回り道を歩いてきたり、市場の人たちに姫を探しまわる。宿屋にいた老父が姫が歩いていったと教えてくれた。
「何やら悲しそうな顔してな。落ち込んで泣きそうな様子じゃったし、なんじゃ? 早々に喧嘩か?」
「実はそうなんだ。俺の招いた種で姫を悲しませた。今から仲直りだ。ありがとう」
 俺は礼を言うと老父が示した姫の歩いていった場所を走る。イレインと老父は「いってらしゃい」と見送ってもらう。


 たどり着いた場所に姫は確かにいた。
 地ベタに腰をつけ、猫と戯れていた。ふふふといつもの屈託なく笑う声がこちらまで聞こえて荒ぶっていた心がスッと穏やかになっていく。
 少しずつ近づいてみた。
 姫はくすくす笑って楽しそう。
「姫」
 声をかけてみた。
 余程びっくりしたのか姫は飛び跳ねた。一緒にいた猫も飛び跳ねて何処かへ行く。
「すまない。驚かせて」  
 姫は恐る恐る顔を振り向き、顔を見るとすぐにプイとそらした。 
「姫、俺が悪かった。許してくれ」
 一歩一歩近づいてく。姫は縮こまり静止している。俺は遠からずの距離を保ち話を続ける。
「俺が間違っていたんだ。本当に愚かなのは自分の愚かさを姫に指摘されたこと。それまで気づかなかった自分の甘えだ。姫、すまなかった」
 姫は振り向きもせずに微動だにしない。
「実を言うと昨夜ずっと我慢していたんだ。姫の体温と匂いに包まれて危うく獣のように姫を組み敷いていた。手を出せば姫に嫌われるんじゃないかと思って我慢していたんだ。どうか姫、こちらを見てくれ。振り向いてほしい。言ったろう。太陽と月は一心同体。俺がいて姫がいないなら、俺はこの世の果てまで姫を探し出す。どうか帰ってきてくれ。あなたがいないと寂しい」
 どうしようもなく弱々しい声が出た。
 姫は切れ長の目を大きく見開き、そしてこちらに歩んでく。俺の頬を両手で掴みその顔をじっと見る。
「王子、なんて顔しているんですか。情けない。分かりました。あなたがそんなにわたくしを求めるなら帰りましょう。地獄の果まで探しに来たらたまったもんじゃありませんから」
 姫は両手を放すと顔を暗くさせた。
「それと、申し訳ございません。城を抜け出してこんなところまで探しに来たんですね。ごめんなさい。勝手に」
「いいや。一緒に帰ろう」
 手を繋ぎ2人は満面に笑った。 



 その様子を建物の奥から四つの目がじっと覗いてた。イレインと三柱の側近である男。王子たちとは一度顔見知りの男である。喧嘩して一緒に探してる途中に遭遇した。2人とも、熱い愛を放出しているこの瞬間に立ち会ってしまった。
「どうしよう。出ていけねぇ」
「おじさん、姫様探してたの?」
「お兄さんな。姫様は探してねぇけど、たまたま歩いてたらだ」
「みつかったんだね!」
「あ、おいっ!」
 イレインは奥から顔を覗かせ二人のところまで走っていく。一緒に隠れていた男もしぶしぶ顔を出す。イレインの他にこの現場に第三者がいたことに2人はようやく気がつく。
「これは殿下とお妃様、こんなところでお目にかかれて大変光栄です」
「お前はあのときの!」
「えぇ。覚えてもらい大変恐縮です。わたくしはアルトと申します。先日、お目にかかれても名を名乗らず去った無礼をお許しください」
 アルトと名乗った男は目の前で膝をついた。
 フミを目撃した第三者の一人。
 そして三柱の側近で、式のときも城内にいた。式のときも今も妹の存在は街中に届いていない。この男は秘密を握って尚且つ黙秘している。何か裏があるかも。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
※4話は2/25~投稿予定です。間が空いてしまってすみません…! 架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...