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最初Ⅰ
第28話 結婚
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街は朝から活気に満ちている。
いつもの景色と同じような風景だが民は興奮し踊りだすやつもいる。それほど熱狂的な1日が始まった。
月の姫と結婚式だ。
今日は民も嬉しくて国中がそれを歓迎してくれる。
朝起きて朝食を済ませるのだが、姫の姿はない。晴れ舞台というのに、姫の顔を今日一度も見ていない。
「姫は?」
ジィジに訊くとジィジは淡々と答えた。
「別室にて朝食をとっております。心配なさらず、王子は式でのことをお考えを」
そわそわしていたことに気づかれてた。ジィジには気づかれているかもしれない。平然としていても今まで相談事を持ちかけたせいでカンが鋭い。
姫に会えないのは残念だ。だが、お互い忙しい。式の準備に城中は昨夜からバタバタしていた。姫と交流して深く知るにつれて好きになっていく。姫のほうはどうなのだろうか。俺が一方的に好きすぎて姫は俺のこと重い、と感じただろうか。姫はそんな素振り一切見せない。不安が徐々に募っていく。
「姫は俺のこと、好き、だろうか?」
不安を口にした。
「何をおっしゃいますか。姫様も王子と同じ想いでございます。王子は自信を持って民の前へ威厳を見せてください」
ジィジが当たり前のように淡々と返した。
城の外から聞こえる民たちの賑やかな声。結婚式をまちに待った民たちが大勢集まって押し寄せてきている。大勢の民たちの前で結婚式が披露される。祭りのようなパレードだ。
まだ始まっていないのに緊張する。手がプルプル震えて朝食がとれない。いかん、威厳と誇りを見せねば。
「王子、大丈夫です。我々はあなたがどれ程立派な方か承知しています。あなたが弱さと向き合っているとき、我々も一緒に戦います。我々はあなた様の味方です」
ジィジは優しい顔で言った。慈しむ目。
じん、と胸が温かくなった。俺は1人ではないことを確信した。式が始まる。
太陽の国の民、月の者が大勢集まる中、雲一つない快晴の空、青空はペンキを塗ったように広がっている。植物も穏やかな風に揺られて踊っている。空も太陽も大地も何もかもが俺たちの結婚を祝っている。
白いドレスを着た姫。太陽の光に当てられ衣装も肌も装飾品も何もかもが光っていた。呆然とする美しさだ。口からぽろりと「美しい」と呟く。姫はそれを聞こえたのかクスリと笑った。
そこにいるだけで何もかもを支配できる。太陽の光も、青く透き通った雲一つない空も、ドレスのレースをなびかせる穏やかな風も、何もかも支配しているのではなかろうか、この女性は存在しているだけで何もかも操れるような、そんなオーラを感じた。
国民たちが見守る中、式が披露。
国中がお祭り騒ぎだ。あっちこっち飲んで踊って、今日は何もかもが許される日。
三柱が我々の前で挨拶を交えた。
三人の少年少女たちだった。
「国が一つになる今日この日を我々は目の当たりにし、歴史的な一人になった。国民総出で目に焼き付けよう。偉大なる二カ国の王となる者よ」
少年一人が祝った。
黒い髪に白い肌、異様に目立つ赤い瞳の、美形な少年。ルークたちより少し上くらいの青年だ。この方が一番歳上なのか他の2人は祝言を申すことなく立ち去った。
見覚えのある人物を見かけた。街でバッタリあった青年。こちらと目が合うとニコリと会釈してくれた。黙っておいてくれるだろうか。いやしかし、こんなところで再会するとは。
国民は踊りまくってもはや、結婚を祝うことなど忘れてるかのようにはしゃぐ。俺たちは早々に奥に控える。普段スピーチも終えた頃奥に控えるものだが、国民の歓喜に満ち溢れた姿を一瞥していた。
「終わりましたね」
姫がホッとした様子で肩を下ろす。
「緊張した」
「ふふ。あんな大勢で祝われることは光栄です。まさに、歴史的瞬間ですね」
「あぁ、そうだが。俺は民の前で祝われるよりも姫の隣にいることが一番緊張したんだ」
照れくさくて顔を背けると、姫は口をあんぐりした。
「何を。今までもわたくしの隣にいたじゃないですか。何をそんなに恥ずかしがっているのですか⁉」
姫はかっ、と声を上げた。信じられないものを見るを目で俺を見上げる。わなわな震えて。
「恥ずかしがっでなどいない。単に姫の美しさに気を取られて国民の前でとんでもない顔を晒すところを防いでいたんだ」
「わたくしのせいにするのですか?」
「ち、違うんだ!」
結婚式を終えたばかりなのに険悪な空気。このままでは姫に愛想を尽かされて国に帰ってしまわれる。そんなの嫌だ。俺は必死に言葉を選んで考えて絞り出した言葉で紡いだ。
「今日、姫とこうして契り合うのは光栄なことだ。俺は姫を愛している。だから姫がこれから俺とずっと一緒になることがどれ程喜ばしいものか」
姫はカァと顔を真っ赤にさせた。
さっきはムスッとした顔だったのに、スピーチでも言わなかった俺の本音に目を白黒させた。飄々とした表情だが、よく見れば表情がコロコロ変わる分かりやすい性格だ。
「き、急にそんなことおっしゃってもわたくしは怒ってますからね!」
プン、顔をそらさす。
可愛いな。
「姫は俺のこと、嫌いか?」
「何を! 嫌いなわけが……」
肩を下ろす俺を見て、姫はしどろもどろになった。暫く沈黙に。そして上目遣いで姫は話を続ける。
「あなたのこと、嫌いになるわけありません。それは立場的でもなく、人として、あなたに好意があります。わたくしもあなたのことが……愛しています」
お互い引き合うように抱擁した。
太陽の国と月の国がこの瞬間、結ばれた。
いつもの景色と同じような風景だが民は興奮し踊りだすやつもいる。それほど熱狂的な1日が始まった。
月の姫と結婚式だ。
今日は民も嬉しくて国中がそれを歓迎してくれる。
朝起きて朝食を済ませるのだが、姫の姿はない。晴れ舞台というのに、姫の顔を今日一度も見ていない。
「姫は?」
ジィジに訊くとジィジは淡々と答えた。
「別室にて朝食をとっております。心配なさらず、王子は式でのことをお考えを」
そわそわしていたことに気づかれてた。ジィジには気づかれているかもしれない。平然としていても今まで相談事を持ちかけたせいでカンが鋭い。
姫に会えないのは残念だ。だが、お互い忙しい。式の準備に城中は昨夜からバタバタしていた。姫と交流して深く知るにつれて好きになっていく。姫のほうはどうなのだろうか。俺が一方的に好きすぎて姫は俺のこと重い、と感じただろうか。姫はそんな素振り一切見せない。不安が徐々に募っていく。
「姫は俺のこと、好き、だろうか?」
不安を口にした。
「何をおっしゃいますか。姫様も王子と同じ想いでございます。王子は自信を持って民の前へ威厳を見せてください」
ジィジが当たり前のように淡々と返した。
城の外から聞こえる民たちの賑やかな声。結婚式をまちに待った民たちが大勢集まって押し寄せてきている。大勢の民たちの前で結婚式が披露される。祭りのようなパレードだ。
まだ始まっていないのに緊張する。手がプルプル震えて朝食がとれない。いかん、威厳と誇りを見せねば。
「王子、大丈夫です。我々はあなたがどれ程立派な方か承知しています。あなたが弱さと向き合っているとき、我々も一緒に戦います。我々はあなた様の味方です」
ジィジは優しい顔で言った。慈しむ目。
じん、と胸が温かくなった。俺は1人ではないことを確信した。式が始まる。
太陽の国の民、月の者が大勢集まる中、雲一つない快晴の空、青空はペンキを塗ったように広がっている。植物も穏やかな風に揺られて踊っている。空も太陽も大地も何もかもが俺たちの結婚を祝っている。
白いドレスを着た姫。太陽の光に当てられ衣装も肌も装飾品も何もかもが光っていた。呆然とする美しさだ。口からぽろりと「美しい」と呟く。姫はそれを聞こえたのかクスリと笑った。
そこにいるだけで何もかもを支配できる。太陽の光も、青く透き通った雲一つない空も、ドレスのレースをなびかせる穏やかな風も、何もかも支配しているのではなかろうか、この女性は存在しているだけで何もかも操れるような、そんなオーラを感じた。
国民たちが見守る中、式が披露。
国中がお祭り騒ぎだ。あっちこっち飲んで踊って、今日は何もかもが許される日。
三柱が我々の前で挨拶を交えた。
三人の少年少女たちだった。
「国が一つになる今日この日を我々は目の当たりにし、歴史的な一人になった。国民総出で目に焼き付けよう。偉大なる二カ国の王となる者よ」
少年一人が祝った。
黒い髪に白い肌、異様に目立つ赤い瞳の、美形な少年。ルークたちより少し上くらいの青年だ。この方が一番歳上なのか他の2人は祝言を申すことなく立ち去った。
見覚えのある人物を見かけた。街でバッタリあった青年。こちらと目が合うとニコリと会釈してくれた。黙っておいてくれるだろうか。いやしかし、こんなところで再会するとは。
国民は踊りまくってもはや、結婚を祝うことなど忘れてるかのようにはしゃぐ。俺たちは早々に奥に控える。普段スピーチも終えた頃奥に控えるものだが、国民の歓喜に満ち溢れた姿を一瞥していた。
「終わりましたね」
姫がホッとした様子で肩を下ろす。
「緊張した」
「ふふ。あんな大勢で祝われることは光栄です。まさに、歴史的瞬間ですね」
「あぁ、そうだが。俺は民の前で祝われるよりも姫の隣にいることが一番緊張したんだ」
照れくさくて顔を背けると、姫は口をあんぐりした。
「何を。今までもわたくしの隣にいたじゃないですか。何をそんなに恥ずかしがっているのですか⁉」
姫はかっ、と声を上げた。信じられないものを見るを目で俺を見上げる。わなわな震えて。
「恥ずかしがっでなどいない。単に姫の美しさに気を取られて国民の前でとんでもない顔を晒すところを防いでいたんだ」
「わたくしのせいにするのですか?」
「ち、違うんだ!」
結婚式を終えたばかりなのに険悪な空気。このままでは姫に愛想を尽かされて国に帰ってしまわれる。そんなの嫌だ。俺は必死に言葉を選んで考えて絞り出した言葉で紡いだ。
「今日、姫とこうして契り合うのは光栄なことだ。俺は姫を愛している。だから姫がこれから俺とずっと一緒になることがどれ程喜ばしいものか」
姫はカァと顔を真っ赤にさせた。
さっきはムスッとした顔だったのに、スピーチでも言わなかった俺の本音に目を白黒させた。飄々とした表情だが、よく見れば表情がコロコロ変わる分かりやすい性格だ。
「き、急にそんなことおっしゃってもわたくしは怒ってますからね!」
プン、顔をそらさす。
可愛いな。
「姫は俺のこと、嫌いか?」
「何を! 嫌いなわけが……」
肩を下ろす俺を見て、姫はしどろもどろになった。暫く沈黙に。そして上目遣いで姫は話を続ける。
「あなたのこと、嫌いになるわけありません。それは立場的でもなく、人として、あなたに好意があります。わたくしもあなたのことが……愛しています」
お互い引き合うように抱擁した。
太陽の国と月の国がこの瞬間、結ばれた。
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