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第27話 外へ
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生まれて初めて外に出たフミは光の降り注ぐ大地、空を肌で感じて鳥肌を立たせた。
「これが、外?」
「ええ、ゆっくり行きましょうか」
姫とフミは手を握る。本当の姉妹のような姿だ。フミは初めて見るものに興味津々。あっち行ったりこっち行ったり人にぶつかったら大変だ、と注意したばかりなのに案の定人にぶつかった。
「これはすまない」
「ごめんなさい」
俺とフミはその人に謝った。その人のかっこうを見ると赤と白のデザインされた兵服。三柱に仕えるエリートだ。ドキリとした。こんなときに鉢合わせるなんて、王族としてしかも城から抜け出した身、正体がばれたら大事だ。
「すまない。こちらこそよく前を見てなかった」
男はあっさりとしてて、ペコリと頭を下げて去っていった。
その背中を小さくなるまで眺める。やがて人の群れに紛れて見失う。ざわざわと人々の活気がだんだんと賑わっていく。ひとの群れも多くなっていく。こんなに人がいるのに先程のやり取りは俺たちしか知らない。周りは他人事のように横を通り過ぎていく。
「良かったー」
ふみはほっと胸をなで下ろす。
「怪我はないですか?」
「うん!」
「ほら言ったばかりだろうが」
「……ごめんなさい」
「まぁまぁ。今度は手を繋いで歩きましょうか」
姫の提案によりフミを真ん中にして手をつなぎあった。
キラキラと眩く硝子細工、朝捕れたてのヤギを生肉にしている臭い、我が店を繁盛しようとどこからとも活気に満ちた声があふれかえる。
キラキラと輝く硝子細工を眺めるフミの横顔は太陽の光にて反射された硝子の光が当たって真っ白くなっている。
「綺麗ですね」
「月の国にはないのか?」
「ええ。こんなふうに賑やかし街ではありません。ジャングルが近く、獣がよく徘徊してきます。なのでこのようなキラキラしたものは、槍のような陶器に変えられています。わたくし、純粋な陶器、初めてお目にかかりました。フミさんとお揃いです」
姫は遠い眼差しをしてからふと、フミに顔を向けてニコリと笑った。フミはお揃い、と言われてパァと笑う。
繁華街を抜け静寂な住宅街が広がる街並みへ一変し、刻はそろそろ闇夜に染まるころ。赤い夕日が街並みを照らして真っ赤に血のようにベッタリ染まっている。夕日が堕ちると空の色も暗くなって相まって静かで少し風も冷たい。そろそろ城に帰らねば。
「帰ろう。いっぱい散策したな」
「ええ」
「した!」
三人手を繋いで帰る道中にルークとイレインとばったり遭遇した
「姫様と……誰?」
ルークは首を傾げる。フミはさっと隠れる。イレインが回り込んでくるのでフミも回る。俺の足元で。イレインはその素顔を拝めたい一心でバタバタと駆け回る。フミは同じ年頃の少年を初めて見た恐怖でまるで化物から逃げ回るように逃げる。その攻防は実に一分も繰り広げた。
先に根を上げたのはフミだった。
温室育ちの運動もまともにしたことないフミが一分以上の追いかけっ子は無理な話。
「なんだこいつ!」
素顔をみたイレインはわっと騒ぎ出した。
「騒がないで。お願い。怖がっているわ」
姫がイレインと同じ目線になって言った。フミを庇うように前に出て。同じ目線に立ってきたのは二度目だが一度目は涙も相まってよく見えなかったが今回は赤い夕日に照らされた美しい姫の顔を凝視してしまい、夕日よりもさらに顔が赤く。
フミは俺の妹だと紹介した。
イレインは目を合わすことはしなかったがルークは金色の目を大きくさせて興味を抱いてきた。
「妹がいたなんて、国中知らない」
「あぁ、存在ごと報せてないからな」
「すくーぷだ!」
「頼む! 黙っていてくれ」
俺はルークに何度も何度も頼み込んだ。ルークは親でもさえも知らない事実に当初興奮していたが、俺が何度も頼み込むとしゅん、と萎えていった。
「しょうがないなぁ。黙ってる代わりにフミちゃんのこと、知りたい」
矛先を向けられたフミはびっくりして固まる。
「フミとお友達になってくれるのか?」
「うん!」
フミに友達ができた。
嬉しさで舞い上がりそうだ。胸の高鳴りがドキドキして高揚している。当の本人は友達といわれて、少し困惑している。無理もないか。
ルークとイレインは黙ってくれる約束してくれた。しかも友達もできた。外に出てよかったかもしれない。
城に帰れば俺たちがいない、と騒いでいた。少し怒られたがフミを外出させたことに誰も気づいていない。ほっと胸をなでおろす。
「全く。王子、どうして我々に何も言わず姫と出かけたのですか! 刺客が来たらどうするのですか!」
「ジィジ、うるさいぞ。そもそも刺客など来ん。現に俺は生きているじゃないか」
俺の言葉にジィジはカッとなった。
「よくそんな脳天気なこと言ってられますね! あなたにもしものことがあれば、この国は壊滅! すぐに隣国から侵略され大地も奪われ国民は奴隷化されるでしょう。なのに一国の王子というあなたさまの考えは……申し訳にくいですが愚に直行」
ジィジは涙を流しながら額を柱にこすりつけた。
「悪かった。俺は王子としてまだ知識も足りなかった。ジィジ本当に悪かった」
「分かればよろしいのです」
ジィジはコホンと咳払いして席を出ていった。でもまた顔を出して「明日は漸く月の国の姫との結婚。大晴れ舞台を楽しみにしております」
「わかったわかったから」
「では」
と、今度こそ席を出た。
「これが、外?」
「ええ、ゆっくり行きましょうか」
姫とフミは手を握る。本当の姉妹のような姿だ。フミは初めて見るものに興味津々。あっち行ったりこっち行ったり人にぶつかったら大変だ、と注意したばかりなのに案の定人にぶつかった。
「これはすまない」
「ごめんなさい」
俺とフミはその人に謝った。その人のかっこうを見ると赤と白のデザインされた兵服。三柱に仕えるエリートだ。ドキリとした。こんなときに鉢合わせるなんて、王族としてしかも城から抜け出した身、正体がばれたら大事だ。
「すまない。こちらこそよく前を見てなかった」
男はあっさりとしてて、ペコリと頭を下げて去っていった。
その背中を小さくなるまで眺める。やがて人の群れに紛れて見失う。ざわざわと人々の活気がだんだんと賑わっていく。ひとの群れも多くなっていく。こんなに人がいるのに先程のやり取りは俺たちしか知らない。周りは他人事のように横を通り過ぎていく。
「良かったー」
ふみはほっと胸をなで下ろす。
「怪我はないですか?」
「うん!」
「ほら言ったばかりだろうが」
「……ごめんなさい」
「まぁまぁ。今度は手を繋いで歩きましょうか」
姫の提案によりフミを真ん中にして手をつなぎあった。
キラキラと眩く硝子細工、朝捕れたてのヤギを生肉にしている臭い、我が店を繁盛しようとどこからとも活気に満ちた声があふれかえる。
キラキラと輝く硝子細工を眺めるフミの横顔は太陽の光にて反射された硝子の光が当たって真っ白くなっている。
「綺麗ですね」
「月の国にはないのか?」
「ええ。こんなふうに賑やかし街ではありません。ジャングルが近く、獣がよく徘徊してきます。なのでこのようなキラキラしたものは、槍のような陶器に変えられています。わたくし、純粋な陶器、初めてお目にかかりました。フミさんとお揃いです」
姫は遠い眼差しをしてからふと、フミに顔を向けてニコリと笑った。フミはお揃い、と言われてパァと笑う。
繁華街を抜け静寂な住宅街が広がる街並みへ一変し、刻はそろそろ闇夜に染まるころ。赤い夕日が街並みを照らして真っ赤に血のようにベッタリ染まっている。夕日が堕ちると空の色も暗くなって相まって静かで少し風も冷たい。そろそろ城に帰らねば。
「帰ろう。いっぱい散策したな」
「ええ」
「した!」
三人手を繋いで帰る道中にルークとイレインとばったり遭遇した
「姫様と……誰?」
ルークは首を傾げる。フミはさっと隠れる。イレインが回り込んでくるのでフミも回る。俺の足元で。イレインはその素顔を拝めたい一心でバタバタと駆け回る。フミは同じ年頃の少年を初めて見た恐怖でまるで化物から逃げ回るように逃げる。その攻防は実に一分も繰り広げた。
先に根を上げたのはフミだった。
温室育ちの運動もまともにしたことないフミが一分以上の追いかけっ子は無理な話。
「なんだこいつ!」
素顔をみたイレインはわっと騒ぎ出した。
「騒がないで。お願い。怖がっているわ」
姫がイレインと同じ目線になって言った。フミを庇うように前に出て。同じ目線に立ってきたのは二度目だが一度目は涙も相まってよく見えなかったが今回は赤い夕日に照らされた美しい姫の顔を凝視してしまい、夕日よりもさらに顔が赤く。
フミは俺の妹だと紹介した。
イレインは目を合わすことはしなかったがルークは金色の目を大きくさせて興味を抱いてきた。
「妹がいたなんて、国中知らない」
「あぁ、存在ごと報せてないからな」
「すくーぷだ!」
「頼む! 黙っていてくれ」
俺はルークに何度も何度も頼み込んだ。ルークは親でもさえも知らない事実に当初興奮していたが、俺が何度も頼み込むとしゅん、と萎えていった。
「しょうがないなぁ。黙ってる代わりにフミちゃんのこと、知りたい」
矛先を向けられたフミはびっくりして固まる。
「フミとお友達になってくれるのか?」
「うん!」
フミに友達ができた。
嬉しさで舞い上がりそうだ。胸の高鳴りがドキドキして高揚している。当の本人は友達といわれて、少し困惑している。無理もないか。
ルークとイレインは黙ってくれる約束してくれた。しかも友達もできた。外に出てよかったかもしれない。
城に帰れば俺たちがいない、と騒いでいた。少し怒られたがフミを外出させたことに誰も気づいていない。ほっと胸をなでおろす。
「全く。王子、どうして我々に何も言わず姫と出かけたのですか! 刺客が来たらどうするのですか!」
「ジィジ、うるさいぞ。そもそも刺客など来ん。現に俺は生きているじゃないか」
俺の言葉にジィジはカッとなった。
「よくそんな脳天気なこと言ってられますね! あなたにもしものことがあれば、この国は壊滅! すぐに隣国から侵略され大地も奪われ国民は奴隷化されるでしょう。なのに一国の王子というあなたさまの考えは……申し訳にくいですが愚に直行」
ジィジは涙を流しながら額を柱にこすりつけた。
「悪かった。俺は王子としてまだ知識も足りなかった。ジィジ本当に悪かった」
「分かればよろしいのです」
ジィジはコホンと咳払いして席を出ていった。でもまた顔を出して「明日は漸く月の国の姫との結婚。大晴れ舞台を楽しみにしております」
「わかったわかったから」
「では」
と、今度こそ席を出た。
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