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最初Ⅰ
第26話 妹
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深かった闇が終わりを告げるように光が空から降り注いだ。一筋の光が闇を絶え、消滅していきやがて、色や影が産まれてく。
早朝はいつもと違う。同じ席には姫がいるから。沈黙の空間、太陽国のコックが作った料理品を黙々と食し、挨拶してから別れる。そして、各自好きな時間だ。
「姫!」
バタバタと姫のいる部屋へ扉を叩いた。
「お声が大きいですわ!」
ガチャリと部屋を開けて姫が顔を覗かせる。でもすんなりと部屋に招き入れてくれた。
「すまん。姫の顔を見たくて、つい……」
「そんな興奮して、先程も顔を見たばかりじゃないですか」
姫はくすりと笑った。
いつ見てもかわいい。
「姫、今日は散策の続きをしないか?」
「ええ」
今日はジジイにも内緒で下町に行くことに。初めて、姫2人との秘密ごとだ。すると姫からある提案を持ち出された。
「フミさんも一緒に誘っていいですか?」
俺は一瞬固まった。なんせ姫と2人きりだと興奮して舞い上がっていたのだから。姫からの突然の提案にフミの存在を思い出す。確かにフミはこの城内から一歩も外に出たことない。俺が城下町で子どもたちと遊んでいる間にフミはベットで眠っているのを考えると兄だというのにフミのことを考えなかった。兄として失格だ。と震えだす。
姫は俺が一瞬黙ってそれからプルプル震えたのを見て怒っていると勘違いしたのか慌てだした。
「すみません。わたくしとあろう者が王子の威厳を損なうことあってはならない。どうかお許しを」
「え、姫、俺は怒ってない」
姫が深々と頭を下げた。
形のいいつむじまで見せる。
「怒ってない本当だ」
俺は姫の肩を掴んで止めさせた。姫はそれでも申し訳なさそうに俺から目をそらす。俺は正直に言った。
「俺は今までフミのこと考えなかった。俺が城下町で子供たちと遊んでいる間にフミはこの城でずっといるんだという頭がなかった。兄失格だ。それなのに姫はフミのことを気遣ってくれる。やはりあなたは素晴らしい人だ」
俺は肩からつぅ、とゆっくりと腕をおろし姫の手を握った。女性らしくて細く柔らかくて、力を加えれば折れてしまいそう。
姫は突然の告白に目を丸くした。
切れ長の目がそうなると少し優越感があって楽しくなる。
「ありがとうございます」
姫は顔ごと顔をそらした。俺たちはフミの部屋に向かう。フミがいる部屋の周りの通路の方は照明が落とされている。誰もいない空き部屋のように静まり返っている。
俺は扉をノックした。
「フミ、お兄ちゃんだ。実はこれから姫と街へ散歩するのだがフミもどうだ? 一緒に。姫がお前も連れていきたいと言っている」
扉の前で話しかけて数分。中から返事はなかった。眠っているのだろうか。それとも体調が悪いとか。中から返事がないのなら、立ち去るところだった。ガチャン、と重たい扉が開く音が。
開かずの間がギィと開き中から影がこちらを見てきた。2つの大きな目。
「フミ?」
問うてみると、その目は申し訳なさそうに俯いていた。フミは恐る恐る顔を出した。
「わた、し、もいっていい?」
舌足らずな声で聞いてきた。
「ええ。新参者ゆえわたしもこの街を知りたいのです。どうか案内してくれますか?」
姫がにこやかに言った。
「わたしも、まちのこと知らない。ごめんなさい」
フミは瞬きを何回も繰り返してぺこりと謝った。顔を上げるとはにかんだ。
「でも、いっしょに行きたい」
フミは目を光らせた。フミにとって生まれて初めて誘われたこと、この暗いところから出て外の世界を一歩踏み抜く。
「では、お着替えをしましょう!」
姫がぱぁと笑った。
今まで見たことない年頃の女の子がするものだ。フミは布1枚の寝間着だった。他の衣服は持ち合わせていない。なんと、この国の王族でありながらもこの仕打ち。兄である俺も知らなかった。
「すまない。兄である俺がもっと気を遣ってれば」
「いいの。おにいさま」
フミはあっけらかんと許してくれた。それよかこれから外の世界に行くことに期待と不安に胸をドキドキさせて俺に眼中にない。
月国から持ってきた服を縫い合わせて作られたものを着た。
「わっ! こんなかわいいの着たことない!」
フミは無邪気に喜んだ。
キラキラと目を輝かせくるくる回る。
「裁縫はいつも使用人がやってくれてるから、はじめてでして、こすれる箇所があったり痛いところがあったら言ってください。なおしますので」
「ううん‼ このままがいいありがとうお姫様っ‼」
フミはキラキラと笑った。
だが肩にいた痣が動いた。蛇のようにぬるりと動き頬に。その形はまさに黒い蛇。蛇が行かせないよと言ってるみたいだ。
「わっ。動いた」
フミは隠すように顔を覆う。その感触は本人にもあるようで、曰く、蛇が自身の体を這っているとのこと。
「大丈夫です。こちらを」
姫は黒い帽子をフミにかぶせた。
その服は姫が初めてこの国の散策時の服と酷似している。フミは「ありがとうございます」と言って照れている。
身支度を整え外へ。監視の目から外れるのに不安でしかなかったが一度や二度も潜るとくせになって、不安はどこか消し去って期待と高揚で胸がドキドキとワクワクに加速していく。
早朝はいつもと違う。同じ席には姫がいるから。沈黙の空間、太陽国のコックが作った料理品を黙々と食し、挨拶してから別れる。そして、各自好きな時間だ。
「姫!」
バタバタと姫のいる部屋へ扉を叩いた。
「お声が大きいですわ!」
ガチャリと部屋を開けて姫が顔を覗かせる。でもすんなりと部屋に招き入れてくれた。
「すまん。姫の顔を見たくて、つい……」
「そんな興奮して、先程も顔を見たばかりじゃないですか」
姫はくすりと笑った。
いつ見てもかわいい。
「姫、今日は散策の続きをしないか?」
「ええ」
今日はジジイにも内緒で下町に行くことに。初めて、姫2人との秘密ごとだ。すると姫からある提案を持ち出された。
「フミさんも一緒に誘っていいですか?」
俺は一瞬固まった。なんせ姫と2人きりだと興奮して舞い上がっていたのだから。姫からの突然の提案にフミの存在を思い出す。確かにフミはこの城内から一歩も外に出たことない。俺が城下町で子どもたちと遊んでいる間にフミはベットで眠っているのを考えると兄だというのにフミのことを考えなかった。兄として失格だ。と震えだす。
姫は俺が一瞬黙ってそれからプルプル震えたのを見て怒っていると勘違いしたのか慌てだした。
「すみません。わたくしとあろう者が王子の威厳を損なうことあってはならない。どうかお許しを」
「え、姫、俺は怒ってない」
姫が深々と頭を下げた。
形のいいつむじまで見せる。
「怒ってない本当だ」
俺は姫の肩を掴んで止めさせた。姫はそれでも申し訳なさそうに俺から目をそらす。俺は正直に言った。
「俺は今までフミのこと考えなかった。俺が城下町で子供たちと遊んでいる間にフミはこの城でずっといるんだという頭がなかった。兄失格だ。それなのに姫はフミのことを気遣ってくれる。やはりあなたは素晴らしい人だ」
俺は肩からつぅ、とゆっくりと腕をおろし姫の手を握った。女性らしくて細く柔らかくて、力を加えれば折れてしまいそう。
姫は突然の告白に目を丸くした。
切れ長の目がそうなると少し優越感があって楽しくなる。
「ありがとうございます」
姫は顔ごと顔をそらした。俺たちはフミの部屋に向かう。フミがいる部屋の周りの通路の方は照明が落とされている。誰もいない空き部屋のように静まり返っている。
俺は扉をノックした。
「フミ、お兄ちゃんだ。実はこれから姫と街へ散歩するのだがフミもどうだ? 一緒に。姫がお前も連れていきたいと言っている」
扉の前で話しかけて数分。中から返事はなかった。眠っているのだろうか。それとも体調が悪いとか。中から返事がないのなら、立ち去るところだった。ガチャン、と重たい扉が開く音が。
開かずの間がギィと開き中から影がこちらを見てきた。2つの大きな目。
「フミ?」
問うてみると、その目は申し訳なさそうに俯いていた。フミは恐る恐る顔を出した。
「わた、し、もいっていい?」
舌足らずな声で聞いてきた。
「ええ。新参者ゆえわたしもこの街を知りたいのです。どうか案内してくれますか?」
姫がにこやかに言った。
「わたしも、まちのこと知らない。ごめんなさい」
フミは瞬きを何回も繰り返してぺこりと謝った。顔を上げるとはにかんだ。
「でも、いっしょに行きたい」
フミは目を光らせた。フミにとって生まれて初めて誘われたこと、この暗いところから出て外の世界を一歩踏み抜く。
「では、お着替えをしましょう!」
姫がぱぁと笑った。
今まで見たことない年頃の女の子がするものだ。フミは布1枚の寝間着だった。他の衣服は持ち合わせていない。なんと、この国の王族でありながらもこの仕打ち。兄である俺も知らなかった。
「すまない。兄である俺がもっと気を遣ってれば」
「いいの。おにいさま」
フミはあっけらかんと許してくれた。それよかこれから外の世界に行くことに期待と不安に胸をドキドキさせて俺に眼中にない。
月国から持ってきた服を縫い合わせて作られたものを着た。
「わっ! こんなかわいいの着たことない!」
フミは無邪気に喜んだ。
キラキラと目を輝かせくるくる回る。
「裁縫はいつも使用人がやってくれてるから、はじめてでして、こすれる箇所があったり痛いところがあったら言ってください。なおしますので」
「ううん‼ このままがいいありがとうお姫様っ‼」
フミはキラキラと笑った。
だが肩にいた痣が動いた。蛇のようにぬるりと動き頬に。その形はまさに黒い蛇。蛇が行かせないよと言ってるみたいだ。
「わっ。動いた」
フミは隠すように顔を覆う。その感触は本人にもあるようで、曰く、蛇が自身の体を這っているとのこと。
「大丈夫です。こちらを」
姫は黒い帽子をフミにかぶせた。
その服は姫が初めてこの国の散策時の服と酷似している。フミは「ありがとうございます」と言って照れている。
身支度を整え外へ。監視の目から外れるのに不安でしかなかったが一度や二度も潜るとくせになって、不安はどこか消し去って期待と高揚で胸がドキドキとワクワクに加速していく。
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