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創造Ⅱ
第17話 漆黒
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会議は責任転嫁ばかりで、前に進むこともできない。それを呆然と退屈に見下ろしていた。いつ終わるのだろう、早く終わってほしいと他人事で眺める。
「すっかり僕ら蚊帳の外だね」
懐かしい声が注いだ。
声のした方向を見やるとヒカリが柱に隠れるように立っていた。あれからヒカリとは顔も見てないし会話もしていない。
同じ空間にいたのにいつからか、別々になりそれをお互いどうしてか、と問い出すことも抗議することもしなかった。いわば自然消滅。
ヒカリは柱の後ろに隠れて顔も見えない。ヤミは会議の場から離れた影のある場所に居座っている。ヒカリは会議の照明に照らされた場所に立っていた。
唐突に言葉には表現できない腹立たしさが、腹の底からグツグツとめばえた。
ヤミは影のある場所を昔から好んでいた。影が落ち着くし、ヒカリある場所にいけば自分がたちまち消滅されるのではないかという恐怖が滲んでなかなか行けない。
でもヒカリは光ある場所にいける。それはヤミが今まで欲していたものだ。
「あぁ……そうだな」
ヤミの中で再び得体のしれない感情が芽を這い、体から浮き彫るようになると、ぐるぐると大蛇のようになっていく。その感情の名前をヤミ自身まだ知らない。ヒカリは話しかけて答えてくれたことにより、安堵した息をついた。
「僕ねまたみんなと旅したいな」
「無理だろ」
「無理じゃないよ。だってソレがいたじゃないか。あの頃はまだ何もなくてただ彷徨って、それでも僕、あの頃のこと楽しかった、て言い切れるんだ。何故かって? ヤミ、君が隣にいてくれたおかげだよ。何もなかったわけじゃない。僕にはヤミがいたから、何もなかったわけない。ただ、ただ隣にいるだけでそれだけでいいんだ」
ヒカリはゆっくりと振り向いた。
その時、ヒカリの姿は会議の照明をバックにしていたことにより、更に輝きを増していた。
「あ、あ、あ、あああああああああああ‼」
腹の底に芽生えていた黒いモノが、一気に消滅していく。その過程でヤミの体が熱く、太陽の光を直接浴びように燃え、体から黒い煙を出した。ヤミの慄いた叫びが天高くこだまする。
「ヤミ⁉ どうしたの⁉」
ヒカリは慌てて駆け寄ってきた。
「来るな‼」
ヤミがその一歩を歩み寄るのを静止した。騒ぎを聞きつけてバタバタと足音が聞こえる。他の連中がくる。逃げないと、ヤミが苦しみもがく頭の中で冷静に判断。
熱を帯び、体が溶けていく。ポタポタと自分の体から黒い液体が出てきて水たまりのようになってきた。信じられない。自分の一部がドロドロに溶けていく。
「なんだこれ、なんで……」
「ヤミ落ち着いて!」
ヒカリが叫んだ。あれから一歩も動いていない。下の階から神々が登ってくるのを阻止する。ここにいるのはヤミとヒカリのみ。
「自分を保って。大丈夫。ヤミには僕がいるから――」
「うざっったいんだよっ‼」
プスプスと自分の一部が消えていく。消えて灰となって何もない。何も残らない。まるで〝自分〟という存在が何も残らない、形もない存在のようだ。
いやだ。自分がいた形を残したい。認識されたい。存在していたのに何も残らないなんて、そんなの――――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
「すっかり僕ら蚊帳の外だね」
懐かしい声が注いだ。
声のした方向を見やるとヒカリが柱に隠れるように立っていた。あれからヒカリとは顔も見てないし会話もしていない。
同じ空間にいたのにいつからか、別々になりそれをお互いどうしてか、と問い出すことも抗議することもしなかった。いわば自然消滅。
ヒカリは柱の後ろに隠れて顔も見えない。ヤミは会議の場から離れた影のある場所に居座っている。ヒカリは会議の照明に照らされた場所に立っていた。
唐突に言葉には表現できない腹立たしさが、腹の底からグツグツとめばえた。
ヤミは影のある場所を昔から好んでいた。影が落ち着くし、ヒカリある場所にいけば自分がたちまち消滅されるのではないかという恐怖が滲んでなかなか行けない。
でもヒカリは光ある場所にいける。それはヤミが今まで欲していたものだ。
「あぁ……そうだな」
ヤミの中で再び得体のしれない感情が芽を這い、体から浮き彫るようになると、ぐるぐると大蛇のようになっていく。その感情の名前をヤミ自身まだ知らない。ヒカリは話しかけて答えてくれたことにより、安堵した息をついた。
「僕ねまたみんなと旅したいな」
「無理だろ」
「無理じゃないよ。だってソレがいたじゃないか。あの頃はまだ何もなくてただ彷徨って、それでも僕、あの頃のこと楽しかった、て言い切れるんだ。何故かって? ヤミ、君が隣にいてくれたおかげだよ。何もなかったわけじゃない。僕にはヤミがいたから、何もなかったわけない。ただ、ただ隣にいるだけでそれだけでいいんだ」
ヒカリはゆっくりと振り向いた。
その時、ヒカリの姿は会議の照明をバックにしていたことにより、更に輝きを増していた。
「あ、あ、あ、あああああああああああ‼」
腹の底に芽生えていた黒いモノが、一気に消滅していく。その過程でヤミの体が熱く、太陽の光を直接浴びように燃え、体から黒い煙を出した。ヤミの慄いた叫びが天高くこだまする。
「ヤミ⁉ どうしたの⁉」
ヒカリは慌てて駆け寄ってきた。
「来るな‼」
ヤミがその一歩を歩み寄るのを静止した。騒ぎを聞きつけてバタバタと足音が聞こえる。他の連中がくる。逃げないと、ヤミが苦しみもがく頭の中で冷静に判断。
熱を帯び、体が溶けていく。ポタポタと自分の体から黒い液体が出てきて水たまりのようになってきた。信じられない。自分の一部がドロドロに溶けていく。
「なんだこれ、なんで……」
「ヤミ落ち着いて!」
ヒカリが叫んだ。あれから一歩も動いていない。下の階から神々が登ってくるのを阻止する。ここにいるのはヤミとヒカリのみ。
「自分を保って。大丈夫。ヤミには僕がいるから――」
「うざっったいんだよっ‼」
プスプスと自分の一部が消えていく。消えて灰となって何もない。何も残らない。まるで〝自分〟という存在が何も残らない、形もない存在のようだ。
いやだ。自分がいた形を残したい。認識されたい。存在していたのに何も残らないなんて、そんなの――――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
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