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創造Ⅱ
第15話 なぜ
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ソレとヤミは向き合った。向き合ったのはいつぶりだろう。二人きりで。ヒカリが現れる前ソレと二人きりだった。それからはヒカリといて、三人だった。正確に言えば、二人きりの時間は然程ない。
だがこの瞬間、それさえもできなかった時間を埋めるようにして向き合った。初めて向き合ったことに違和感を感じたのはヤミ。
変に挙動不審になった。
暫くしてから心を落ち着かせ、ヤミは口を開いた。
「どうして俺が誕生したんだ?」
「あなたはヤミ。宇宙が誕生したとき一緒に生まれた」
ソレは淡々と教えた。
「太陽神は地上に光を届ける役目、月は太陽が沈む代わりに光を差し込む役目。大地の神は豊穣、天空の神は風を操り、ヒカリは光の概念を創った。みんな、何らかの役割と役目を持っている。なのに俺にはない。俺はヤミで世界を黒くするもの。そんなの……嫌だ」
「役目がほしかったの?」
「人間の心がずさんだとき、闇に包まれた。神々でさえも畏怖していた。あの闇と似ていた。俺は宇宙の闇ではなく、人間の闇じゃないか?」
「だとしたら何?」
ソレは否定しなかった。ヤミの口はもう、止まらなかった。聞きたいことがありすぎて。
「太陽神のように信仰する人もいない。役割も役目もないのに、俺は存在していいのか? そもそもどうして〝太陽〟なんかつくった! あれがあるから人も神も光があるのを当たり前として、あれがなけりゃ、闇で生きていくこともできない。どうして……」
どうしてと、何回もつぶやく。腹の底がぐつぐつと煮えたぎって、空気や息が重い。ぐつぐつと煮えたぎったものが喉から口にでて、爆発しそうだ。初めての感情だ。なんだこれは。わけのわからない状態で困惑する。
ぐるぐると黒いものが心中をめぐり、まるで、あの大蛇みたいに渦巻いている。
ソレは黙ったまま。じっと無感情でヤミのことを眺めていた。答えが欲しかっただけに沈黙は余計にヤミの癪を障った。
「なんで、何も言ってくれねぇんだ」
悲しくて涙が出そうだ。
何が悲しくて涙なんか出るんだ。唇を噛み締めていると、もうすぐ泣き出しそうな顔を見たソレがヤミの顔を凝視した。
「どうして泣くの?」
「あ? 知らねぇよ」
つか泣いてねぇし。かろうじて涙がちょちょ切れそうだった。ソレは何でも聞く無垢な子供のような態度に打って変わってヤミは腹たちと底のない同情にあてられた。
怒りも悲しみも知ったばかりの形。ヤミがどうして泣き出しそうなのか、他者を思いやる心を持っていない。他者と触れ合った経験が足を立ち上がらせた赤ん坊並。
ソレは首を傾げていたが、苦悶することなく口を開いた。
「太陽や月を作った理由は形を知りたいから」
「はっ。自分の形もままならないのに?」
ヤミは鼻で笑った。ソレは全然気にしていない様子。話を淡々と続けた。
「太陽と月を造ったのは、それぞれに色が宿り影が浮くと存在され、認識する。形を知ることそれは即ち、他者を知ること。他者を見て己を知る。己を見られて他者も影響される。そういうこと」
形を認識すること、そこに在ること。
だがこの瞬間、それさえもできなかった時間を埋めるようにして向き合った。初めて向き合ったことに違和感を感じたのはヤミ。
変に挙動不審になった。
暫くしてから心を落ち着かせ、ヤミは口を開いた。
「どうして俺が誕生したんだ?」
「あなたはヤミ。宇宙が誕生したとき一緒に生まれた」
ソレは淡々と教えた。
「太陽神は地上に光を届ける役目、月は太陽が沈む代わりに光を差し込む役目。大地の神は豊穣、天空の神は風を操り、ヒカリは光の概念を創った。みんな、何らかの役割と役目を持っている。なのに俺にはない。俺はヤミで世界を黒くするもの。そんなの……嫌だ」
「役目がほしかったの?」
「人間の心がずさんだとき、闇に包まれた。神々でさえも畏怖していた。あの闇と似ていた。俺は宇宙の闇ではなく、人間の闇じゃないか?」
「だとしたら何?」
ソレは否定しなかった。ヤミの口はもう、止まらなかった。聞きたいことがありすぎて。
「太陽神のように信仰する人もいない。役割も役目もないのに、俺は存在していいのか? そもそもどうして〝太陽〟なんかつくった! あれがあるから人も神も光があるのを当たり前として、あれがなけりゃ、闇で生きていくこともできない。どうして……」
どうしてと、何回もつぶやく。腹の底がぐつぐつと煮えたぎって、空気や息が重い。ぐつぐつと煮えたぎったものが喉から口にでて、爆発しそうだ。初めての感情だ。なんだこれは。わけのわからない状態で困惑する。
ぐるぐると黒いものが心中をめぐり、まるで、あの大蛇みたいに渦巻いている。
ソレは黙ったまま。じっと無感情でヤミのことを眺めていた。答えが欲しかっただけに沈黙は余計にヤミの癪を障った。
「なんで、何も言ってくれねぇんだ」
悲しくて涙が出そうだ。
何が悲しくて涙なんか出るんだ。唇を噛み締めていると、もうすぐ泣き出しそうな顔を見たソレがヤミの顔を凝視した。
「どうして泣くの?」
「あ? 知らねぇよ」
つか泣いてねぇし。かろうじて涙がちょちょ切れそうだった。ソレは何でも聞く無垢な子供のような態度に打って変わってヤミは腹たちと底のない同情にあてられた。
怒りも悲しみも知ったばかりの形。ヤミがどうして泣き出しそうなのか、他者を思いやる心を持っていない。他者と触れ合った経験が足を立ち上がらせた赤ん坊並。
ソレは首を傾げていたが、苦悶することなく口を開いた。
「太陽や月を作った理由は形を知りたいから」
「はっ。自分の形もままならないのに?」
ヤミは鼻で笑った。ソレは全然気にしていない様子。話を淡々と続けた。
「太陽と月を造ったのは、それぞれに色が宿り影が浮くと存在され、認識する。形を知ることそれは即ち、他者を知ること。他者を見て己を知る。己を見られて他者も影響される。そういうこと」
形を認識すること、そこに在ること。
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