うちのペットはもしかしたら地球を侵略するかもしれない。

ハコニワ

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九章 侵略者と未来人

第87話 50世紀から

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 一階のリビングルームに集った。未来人は姉貴に強制的に風呂に入っている。
「これ、どんな構造しているのかしら」
 ダスクが机の上に置いた未来人が持っていた銃を触った。
「危険だわ。あまり触らないほうが」
 スターがダスクの腕を掴んだ。
「これは、食べられる?」
 コスモが小型ロボットを指差した。
 小型ロボットはバイブのように震えて台所に隠れている。丸くて球体、そして、白くてマルボールのような形態から、コスモにロックオンされている。
「美味しくないに決まっている」
 俺はコスモを引っ張り戻す。
 台所に隠れている小型ロボットは、ぶるぶると震えて目の色が青に点滅している。奥の方からぎゃあと声と慌ただしい足音が。バスタブ一枚で少年がお風呂から居間に顔を出した。まだ髪の毛が濡れている。
「このっ、この鬼畜共が! こんの屈辱を受けて機関が黙ってるわけないからなぁ!! 覚悟しておけ!」
「もぅ~まだ髪の毛乾かしてないでしょ!」
 姉貴が少年を再び連れ出した。確かに髪の毛はびしょ濡れで床面にポタポタと滴り落ちている。

 暫くしてから、少年が顔を出してきた。姉貴に全身を洗われて髪の毛も綺麗にツヤツヤだ。なのに顔色は悪い。髪の毛は元々白髪だったのだろうか、最初のころは濁った灰色の髪の毛だった。 
 体は小さく見た目は10~12歳。女の子みたいに顔が小さく、小柄で、小枝のように細い手足。服は小さい頃姉貴が着ていたもので、それでもダボダボだ。
 姉貴はこれから出掛ける予定で、すぐに準備をして出て行った。姉貴がいなくなった途端に小型ロボットが少年に近づいて、目の色が黄色になった。

 すると、服が前に戻った。制服に似た服でワンピースのような形。そして髪の毛もツインテールに。一瞬で早着替え。机に置いてある自分の持ち物を見下ろした。
「それ、返して」
「言われなくても」
 ダスクがそれを持って、ゆっくりとした足取りで少年に近づいた。少年は腕を伸ばした。ダスクに止めるように静止かける。ダスクは腕の前で止まってその手のひらに銃を置いた。

 受け取ると少年は廊下まで後退りした。がその背後にはいつの間にかコスモが回っていた。そして玄関にはスターが先回りしていた。逃げられないように前後、横にも。
 少年は苦しい表情をして舌打ちした。一歩前に近づいたのは、ダスク。
「さぁあなたのことを教えてくれる?」
 少年は顔を俯いて銃がシュンと消えた。やがて居間に再び集った。殺気のような空気が漂っている。

 普段ゲームをしたり遊び回っている場所が険悪な空気になっている。肌がピリピリする。少年を囲うようにコスモたちが周りにいる。少年は武器をおさえて自分の身を語りだした。


「僕はトト機関。歴史の裏に隠れている機関で、50世紀からやってきた。今から未来は宇宙人の侵略により、殺戮、戦争が起きた。人口は3分の1まで減少し、宇宙人が当たり前に地球で殺戮の限りを尽している。本来地球を守るために存在するガーディアン機関は侵略者によって半壊し、僕らトト機関が暗躍している。僕らは宇宙人が許せない。その未来を食い止めるためにこの時代にやってきた」
 ぎろりと宇宙人たちを睨みつけた。
 にわかには信じ難いが信じるしかない。嘘をついているような顔じゃなかった。状況でもないし。

 随分前にコスモたちが話していた。もう一つの機関。歴史の裏にいて、歴史の書を書くガーディアン機関より永く続いている機関。それがトト機関。ほんとに実在していたなんて。
 俺がびっくりしたのは、未来についてだ。ほんとに宇宙人が地球を侵略し、殺戮の限りを尽しているという光景が思い浮かばない。

 だって、目の前にいる宇宙人は一つも侵略をしていないからだ。のんきにお菓子ばかり食べて昼まで寝て、筋トレのときは邪魔してくるし、そんな奴らが侵略を成功したとは思えない。
「わたしたち、地球侵略成功できたの?」
 スターがわなわな驚いた。
「あたしたちじゃない」
 ダスクが冷静に冷たく言った。言い切った。 
「私たち、さつりくはしない」
 コスモも自分たちじゃないと判断した。スターは「分かってるわよ」と顔を赤らめて顔を逸らした。
「お前たちじゃなくても、僕はお前らを許さない。この時代にもいると言ってたが、まさか早くにお目にかかるとは思わなかった」
 にやりと少年は笑った。
 横にいた小型ロボットも黄色やら緑やら明るい色に点滅する。笑っている、のだろうか。宇宙人と未来人が話すと事態が悪くなるとみて、俺は間に入った。
「君の、話が本当なら未来は最悪だ……でもこいつらは何もやっていない」
「それ言い切れる? というか、地球人のくせに宇宙人の肩を持つわけ? 信じらんない。洗脳されてるてんじゃないの?」
 少年ははっと鼻で笑った。
 言い切れる。こいつらのことは本当に分かっているし、信じている。洗脳なんかされていない。自分の心からそうだって、言い切れる。すると、お腹がぐるぐる鳴った。

 殺気のような空気に似合わない音。音の元は少年だった。顔を赤く染め微動だにしない。
『昨夜から食べていない。よって約八時間食べていない。カロリー摂取タンパク質無限大』
 機械じみた甲高い声。
「おまっ! 喋れんのか!?」
 小型ロボットが突然喋りだした。目の色が白に変化。何処で喋っているのかわからないが、喋れるのは初耳だ。
「ちょっとアイス! 黙ってて!」
 アイスと呼ばれる小型ロボットを懐しまった少年。俺はくすりと笑って台所に向かった。
「洋食と和食、どっちがいい?」
 訊かれた少年は目をぱちくりしていた。小型ロボットを離してすっとキョンな声をあげる。
「は? 餌付けするつもり? 言っとくけどそんなのに引っかからないから」
 と強気な態度をとるが、お腹の虫は抑えられない。ぐるぐると鳴っている。
「中間」
「わたしは和食」
「あたしは洋食で」
 コスモとスターとダスクが答えた。さっきまでの険悪も忘れて、昼飯だ。俺は台所から少年に顔を向けた。少年は少したじろいたあと「ハンバーグ」と小さく答えた。

 台所で作っている間に、愛犬たちは少年に寄ってきた。少年はたじろいていると、コスモが撫でかたを教えている。
 ペットたちもやがて少年に懐いてきたころには、三匹の分と少年の分が出来上がった。ハンバーグを見せると少年の目が大きく見開いた。
「これが……『ハンバーグ』」
「食べないなら私が……」
「誰が食べないって言った!」
 コスモが少年のハンバーグに手を付けようと腕を伸ばしたが、少年がコスモを押しのけた。 
 少年は箸を持って、ハンバーグをゆっくり口に運んだ。途端、大きく目を見開き口が飴細工のようにとろりと溶けた。
「おいひい! なにこれ!? 今までこんな美味しいもの食べたことない! これがハンバーグ」
 少年はよほどお腹空いていたのかガツガツ食べてご飯を二杯食べた。その食べっぷりはコスモに負け劣らない。その当の本人は四杯目をいっているが。
 小型ロボットがゆるゆると近づいてきた。頭の高さと同じくらいに飛行している。
『アイス、アイス』
「アイス?」
「あ、その子アイスが大好物なの」
 少年が答えた。
「機械なのに?」
 俺は怪訝に顔を顰めた。ロボットは目の色を黄色にさせている。他のみんなが昼飯で、自分も摂取する気満々だ。
「電子機器が日中熱いから、冷たいものを求めるの」
 少年がやけに優しい口調で答えた。あぁなる程と理解してしまう俺の頭もおかしいのかもしれない。台所の冷蔵庫にあるアイスを与えると、頭と思わしき頂点の部分がパカリと別れた。頭から部品が覗ける。黒くてはっきり見えない。
 
 その空洞の場所にアイスを放り投げた。普通は消化しきれないし、食べれない。アイスを放り投げたら頭をもとに戻し、あたかも食べたようにゲップをならす。
『ありがとありがと。命の恩人感謝する。食べ物を与える人、良い人良い人』
 目の色がピンクになった。しかもハートつき。

「こいつらの話をもっと聞きたいし、あんたら、行く場所あるの? ないなら、この家が泊めてくれるわよ」
 ダスクが口周りをふいて、少年に提案をもちかけた。少年は真面目な表情で少し考えている。
「行くあてはない。でも宇宙人たちと同じ寝床は嫌。僕らには乗ってきた宇宙船があるからそこで寝る」
 ポツリポツリ喋った。
 乗ってきた宇宙船は、コスモたちが透過してくれている。触角が見れる俺でもその宇宙船は認識できない。庭にあるのに。

 行くあてもなく彷徨って知らない人たちに声かけられて事件になったら、俺も目覚めが悪いしほっとけない。
「仕方ない。ここに泊まらせる。がここの主は俺だからな。覚悟しろ。俺は一樹だ。相原一樹。よろしくな」
 俺は少年に手を伸ばした。少年は腕と俺の顔を凝視して、恐る恐るその腕を掴んだ。
「僕は鹿室かなむ。よろしく、お兄さん」
   

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