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五章 侵略者と戦争
第59話 共闘
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昨日見たやつはシュレックみたいな奴だった。今回はマトリョーシカか。大きい女性や米粒みたいに小さい女性もいる。合わせて計二十体近くいた。
「離れないで」
上からそんな声が聞こえた。
マトリョーシカが声をあげ、近づいてきた。「ぐっ!」笑うたびに声が二重に聞こえて頭が割れる。近づいてくるマトリョーシカをコスモが倒していく。普通の腕なのに、刀のようにマトリョーシカが斬られていく。
俺のそばにいて、なおかつ、守るスタイルはコスモには不利だった。あらゆる角度から攻めてくる敵に、コスモは普段かかない汗を流していた。
ひときわ大きなマトリョーシカが猛スピードで近づいてきた。米粒のマトリョーシカを相手にしていたコスモは、猛スピードで向かってくる敵に対処できない。
すぐにバリアを貼ったが、スターほどの頑丈はなく、すぐにヒビがついた。
その時――マトリョーシカとバリアの間に一本の矢がザクッと刺した。
透明な液体の矢だ。
マトリョーシカが驚いて身を引く。矢はコポコポと氷のように解け、路面を濡らした。矢が向かってきた方向に視線がいった。
遠くのほうで三人の人影が。最近知った顔ぶれだ。新しくなったガーディアン機関。ソレイユとコメットとウォーター。
矢を放ったのは、ウォーターぽい。水で出きた弓を持っている。
「加瀬は必要か? それとも同族同士で殺し合うか」
千枝ちゃんが怪しく笑った。
「千枝ちゃん!」
「その名で呼ぶなっ!」
千枝ちゃんはコホン、と咳払いして態勢を戻し、また怪しく笑った。
「どうした? 本来の力が発揮出来ていないようだが、まさか、こいつが弱点だったとはな」
マトリョーシカがソレイユたちにも寄ってきた。水で出来た矢を何発も放つ。最初見たときよりも圧倒的に数が増えている。今数えたら五十近くいる。
帰り道で何もなかった道端に、生物がうじゃうじゃ動き回っている。コスモの貼ったバリヤもそろそろ危うい。ヒビが入って、マトリョーシカの頭が強引に入ってきた。
割れる。
ウォーターが舌打ちして、マトリョーシカの顔面に大きな水溜まりを作った。水でできたヘルメットみたいな形で、首まで水に浸かり、息ができない。
水の中で口を必死にパクパク動かしている。強引に入ってきた頭を引いて、ジタバタと暴れ回る。宇宙人でも息できなければ核を破壊されずとも、一度死ぬだろう。
ジタバタと暴れ回っていた腕がポトリと落ち、それからピクリとも動かなかった。顔面を覆っていた水はコポコポと音を出して、溶けていく。ウォーターは満足げに笑った。瞳の奥がギラついている。
「にしても、この数はやばいよねぇ」
コメットが片手で長い剣を振りかぶった。まるで、生きているかのように動く。しなやかで、マトリョーシカたちをなぎ払っていく。
「一体ずつ相手している暇はない。あの空いた空間を閉じればいいだけ」
ソレイユがマトリョーシカたちの動きを封じ、空いた空間に近づいた。
マトリョーシカが続々とわいてくるのは、空いた空間からこの世界に入ってくる。それを閉めればマトリョーシカはわいてこない。
幹を倒すなら根本から。
根本の根源である空間を閉じればいい。問題はどうやって止められるか。
「ある別世界と繋がっている。それは出口。入り口を封じないとだめ。千枝ちゃん」
「だからその名で呼ばないで」
コスモが千枝ちゃんに近づく。空いた空間からわいてくるマトリョーシカを、なぎ払っていく。
入り口の居場所を考えるとすれば、狭い路地かこの道端と同じ風景。
「それを突き止めるのがわたしの出番ね!」
何処から沸いてきたのか、スターがふんぞり返って言った。
「どっから沸いてきた」
「虫みたいに言わないで。生命体の反応があったから駆けつけてやったの」
スターとダスクが駆けつけてきた。ガーディアンと一緒に戦うのは、これが初めてだ。
「共闘ということか?」
千枝ちゃんが眉間にシワを寄せた。
共闘と聞いて、コメットもウォーターも眉間にシワを寄せた。
「勘違いしないで、暴れ回る宇宙人を止めたいだけ。そっちも、この連中を止めたいでしょ」
「敵は同じ。この数、協力しないとガーディアンもきついんじゃない!?」
スターとダスクが俺の前に。ダスクはサバンナの槍を持っている。ウォーターが怪しげにくすりと笑った。指先で眼鏡を押し上げる。
「利用する価値は高い」
太陽の光が反射して、眼鏡が光っている。目の奥が見えずとも、怪しく光っているのが分かった。
「わたしは断固反対!」
「そう言わずに~」
「あふん! て揉むな!」
スターが挨拶代わりみたいにコメットのおっぱいを揉んでく。コメットは甲高い叫び声をあげている。
近くに寄ってきたマトリョーシカをウォーターとダスクで食い止める。
千枝ちゃんも最終的にウォーターと同じ考えにたどり着いた。あくまでもこの敵を倒すための「共闘」利用価値が高いだけ。
スターの〈探索〉でその入り口を見つける。入り口はこの場所から遥か三百m先もある場所。確かに風景が重なるが、入り口らしきものは見当たらない。
何もない空間にぱかりと入り口が現れた。
また不気味な声が響く。「あはは」と甲高くて嫌に耳に残る。呪い殺すようなおぞましい声。
服のファスナーを開けるかのように開いた。
「来る」
コスモが前に乗り出した。暗闇からいち早く気配を感じ、攻撃態勢に入る。暗闇から顔を覗かせたのは、マトリョーシカ。
出口で見たマトリョーシカじゃない。全体的に大きい。ビル六階建ての大きさくらいあるぞ。入り口から異様に冷たい風が吹いた。
雪のようにちりちりする。マトリョーシカが湧いてくるのを防ぐため、湧いてきた敵を払っていく。
出口付近は、ダスクとウォーターが狩っている。その数も合わせると、マトリョーシカは無限大に増殖している。一体ずつ相手しないといけないことに、千枝ちゃんが舌打ちした。
「こんなにわいて、入り口を封じることができない!」
千枝ちゃんの背後から忍び寄ってきたマトリョーシカをコスモが倒していく。溢れ出るマトリョーシカを倒していくために、入り口を封じないと、でもその入り口が勝手に開いている。
封じる策は、無理やりにでも閉じる。コメットが入り口をザッと斬った。一瞬だったけど、微かに閉じた気がする。斬られたらぱちぱちして、すぐに再生する。
入り口がまるで、瞳孔の動きと同じだ。真っ黒で底の見えない瞳が覗いている。
「一か八か」
千枝ちゃんのマインドコントロールで、真っ暗な入り口に暗示をかける。
すると、そこからもうマトリョーシカは一切現れなかった。相手の心を無理やりコントロールしているので、千枝ちゃんは瞳をずっと見続け身動きができない。
「斬るなり何なり早くしろ!」
「千枝ちゃんナイス!」
コスモが腕を振りかぶり、コメットが鋭い刃を斬りかかったのが同時。二つの鋭い刃により、入り口は横に真っ二つになり、霧のように消えていった。
マトリョーシカも霧のように消えていき、残されたのは、その場で立ち尽くす俺たち。
「倒した?」
俺は呆然と辺りをキョロキョロした。周囲はいつもと変わらない道端。赤い夕焼けが差して俺たちの肌が妖艶に映る。
黒い影が伸び切って、地面にへたり込んだ人影が一つ。千枝ちゃんが目を抑えて。コメットがそばにいて支えてくれた。目から夥しい出血している。マインドコントロールにも負担がかかる。相手が強ければ強いほど。
血を垂れ流す千枝ちゃんにコスモがバスタオルを差し出した。当然千枝ちゃんは見えない。コメットに支えてもらい、肩で息をし、少しながらその小さな背は震えているように見えた。
「結構です。もう、敵は倒した。わたしたちの共闘はここまで」
コメットが千枝ちゃんの腕を肩に回し、立ち上がった。耳につけているイヤホンにウォーターに連絡する。
全て片付けた、と。
千枝ちゃんを抱え、コメットは去っていった。一緒に戦ってたときは、ほんとに心強かったのに。あの敵対心丸出しの鋭い瞳。割と戦ってたときは、スターとも協力し合って一瞬の「共闘」だった。
誰も誘拐、拉致されなかったのでこの一連は報道されなかった。一般人でもあの生命体が見えるのかというと、実は見えるのである。
コスモたちはペット化すれば認識できる。べスリジア星人もそのままの姿で認識される。あのとき偶然誰も通りかからなかったのがキセキだ。
他の惑星の侵略者がいることに、ガーディアン機関も動いているのは明白。一ヶ月の間で拉致された子は世界合わせて約百名。
この事をサターン様にお伝えするかどうか、ダスクは迷っていたが、ここまで好き勝手に暴れ回ると報告しなければならない。
サターン様はべスリジア星と会談を申し込んだ。拉致した地球人を解放させるように。その会談に、俺たちもついて来てほしいと。
べスリジアは中々交渉してくれないと鼻からわかっている。その前提で俺たちは拉致された地球人を救い出す作戦だ。
またあの土星みたいな形の宇宙船に乗る。今回はなぜか、委員長もついてきて。
「離れないで」
上からそんな声が聞こえた。
マトリョーシカが声をあげ、近づいてきた。「ぐっ!」笑うたびに声が二重に聞こえて頭が割れる。近づいてくるマトリョーシカをコスモが倒していく。普通の腕なのに、刀のようにマトリョーシカが斬られていく。
俺のそばにいて、なおかつ、守るスタイルはコスモには不利だった。あらゆる角度から攻めてくる敵に、コスモは普段かかない汗を流していた。
ひときわ大きなマトリョーシカが猛スピードで近づいてきた。米粒のマトリョーシカを相手にしていたコスモは、猛スピードで向かってくる敵に対処できない。
すぐにバリアを貼ったが、スターほどの頑丈はなく、すぐにヒビがついた。
その時――マトリョーシカとバリアの間に一本の矢がザクッと刺した。
透明な液体の矢だ。
マトリョーシカが驚いて身を引く。矢はコポコポと氷のように解け、路面を濡らした。矢が向かってきた方向に視線がいった。
遠くのほうで三人の人影が。最近知った顔ぶれだ。新しくなったガーディアン機関。ソレイユとコメットとウォーター。
矢を放ったのは、ウォーターぽい。水で出きた弓を持っている。
「加瀬は必要か? それとも同族同士で殺し合うか」
千枝ちゃんが怪しく笑った。
「千枝ちゃん!」
「その名で呼ぶなっ!」
千枝ちゃんはコホン、と咳払いして態勢を戻し、また怪しく笑った。
「どうした? 本来の力が発揮出来ていないようだが、まさか、こいつが弱点だったとはな」
マトリョーシカがソレイユたちにも寄ってきた。水で出来た矢を何発も放つ。最初見たときよりも圧倒的に数が増えている。今数えたら五十近くいる。
帰り道で何もなかった道端に、生物がうじゃうじゃ動き回っている。コスモの貼ったバリヤもそろそろ危うい。ヒビが入って、マトリョーシカの頭が強引に入ってきた。
割れる。
ウォーターが舌打ちして、マトリョーシカの顔面に大きな水溜まりを作った。水でできたヘルメットみたいな形で、首まで水に浸かり、息ができない。
水の中で口を必死にパクパク動かしている。強引に入ってきた頭を引いて、ジタバタと暴れ回る。宇宙人でも息できなければ核を破壊されずとも、一度死ぬだろう。
ジタバタと暴れ回っていた腕がポトリと落ち、それからピクリとも動かなかった。顔面を覆っていた水はコポコポと音を出して、溶けていく。ウォーターは満足げに笑った。瞳の奥がギラついている。
「にしても、この数はやばいよねぇ」
コメットが片手で長い剣を振りかぶった。まるで、生きているかのように動く。しなやかで、マトリョーシカたちをなぎ払っていく。
「一体ずつ相手している暇はない。あの空いた空間を閉じればいいだけ」
ソレイユがマトリョーシカたちの動きを封じ、空いた空間に近づいた。
マトリョーシカが続々とわいてくるのは、空いた空間からこの世界に入ってくる。それを閉めればマトリョーシカはわいてこない。
幹を倒すなら根本から。
根本の根源である空間を閉じればいい。問題はどうやって止められるか。
「ある別世界と繋がっている。それは出口。入り口を封じないとだめ。千枝ちゃん」
「だからその名で呼ばないで」
コスモが千枝ちゃんに近づく。空いた空間からわいてくるマトリョーシカを、なぎ払っていく。
入り口の居場所を考えるとすれば、狭い路地かこの道端と同じ風景。
「それを突き止めるのがわたしの出番ね!」
何処から沸いてきたのか、スターがふんぞり返って言った。
「どっから沸いてきた」
「虫みたいに言わないで。生命体の反応があったから駆けつけてやったの」
スターとダスクが駆けつけてきた。ガーディアンと一緒に戦うのは、これが初めてだ。
「共闘ということか?」
千枝ちゃんが眉間にシワを寄せた。
共闘と聞いて、コメットもウォーターも眉間にシワを寄せた。
「勘違いしないで、暴れ回る宇宙人を止めたいだけ。そっちも、この連中を止めたいでしょ」
「敵は同じ。この数、協力しないとガーディアンもきついんじゃない!?」
スターとダスクが俺の前に。ダスクはサバンナの槍を持っている。ウォーターが怪しげにくすりと笑った。指先で眼鏡を押し上げる。
「利用する価値は高い」
太陽の光が反射して、眼鏡が光っている。目の奥が見えずとも、怪しく光っているのが分かった。
「わたしは断固反対!」
「そう言わずに~」
「あふん! て揉むな!」
スターが挨拶代わりみたいにコメットのおっぱいを揉んでく。コメットは甲高い叫び声をあげている。
近くに寄ってきたマトリョーシカをウォーターとダスクで食い止める。
千枝ちゃんも最終的にウォーターと同じ考えにたどり着いた。あくまでもこの敵を倒すための「共闘」利用価値が高いだけ。
スターの〈探索〉でその入り口を見つける。入り口はこの場所から遥か三百m先もある場所。確かに風景が重なるが、入り口らしきものは見当たらない。
何もない空間にぱかりと入り口が現れた。
また不気味な声が響く。「あはは」と甲高くて嫌に耳に残る。呪い殺すようなおぞましい声。
服のファスナーを開けるかのように開いた。
「来る」
コスモが前に乗り出した。暗闇からいち早く気配を感じ、攻撃態勢に入る。暗闇から顔を覗かせたのは、マトリョーシカ。
出口で見たマトリョーシカじゃない。全体的に大きい。ビル六階建ての大きさくらいあるぞ。入り口から異様に冷たい風が吹いた。
雪のようにちりちりする。マトリョーシカが湧いてくるのを防ぐため、湧いてきた敵を払っていく。
出口付近は、ダスクとウォーターが狩っている。その数も合わせると、マトリョーシカは無限大に増殖している。一体ずつ相手しないといけないことに、千枝ちゃんが舌打ちした。
「こんなにわいて、入り口を封じることができない!」
千枝ちゃんの背後から忍び寄ってきたマトリョーシカをコスモが倒していく。溢れ出るマトリョーシカを倒していくために、入り口を封じないと、でもその入り口が勝手に開いている。
封じる策は、無理やりにでも閉じる。コメットが入り口をザッと斬った。一瞬だったけど、微かに閉じた気がする。斬られたらぱちぱちして、すぐに再生する。
入り口がまるで、瞳孔の動きと同じだ。真っ黒で底の見えない瞳が覗いている。
「一か八か」
千枝ちゃんのマインドコントロールで、真っ暗な入り口に暗示をかける。
すると、そこからもうマトリョーシカは一切現れなかった。相手の心を無理やりコントロールしているので、千枝ちゃんは瞳をずっと見続け身動きができない。
「斬るなり何なり早くしろ!」
「千枝ちゃんナイス!」
コスモが腕を振りかぶり、コメットが鋭い刃を斬りかかったのが同時。二つの鋭い刃により、入り口は横に真っ二つになり、霧のように消えていった。
マトリョーシカも霧のように消えていき、残されたのは、その場で立ち尽くす俺たち。
「倒した?」
俺は呆然と辺りをキョロキョロした。周囲はいつもと変わらない道端。赤い夕焼けが差して俺たちの肌が妖艶に映る。
黒い影が伸び切って、地面にへたり込んだ人影が一つ。千枝ちゃんが目を抑えて。コメットがそばにいて支えてくれた。目から夥しい出血している。マインドコントロールにも負担がかかる。相手が強ければ強いほど。
血を垂れ流す千枝ちゃんにコスモがバスタオルを差し出した。当然千枝ちゃんは見えない。コメットに支えてもらい、肩で息をし、少しながらその小さな背は震えているように見えた。
「結構です。もう、敵は倒した。わたしたちの共闘はここまで」
コメットが千枝ちゃんの腕を肩に回し、立ち上がった。耳につけているイヤホンにウォーターに連絡する。
全て片付けた、と。
千枝ちゃんを抱え、コメットは去っていった。一緒に戦ってたときは、ほんとに心強かったのに。あの敵対心丸出しの鋭い瞳。割と戦ってたときは、スターとも協力し合って一瞬の「共闘」だった。
誰も誘拐、拉致されなかったのでこの一連は報道されなかった。一般人でもあの生命体が見えるのかというと、実は見えるのである。
コスモたちはペット化すれば認識できる。べスリジア星人もそのままの姿で認識される。あのとき偶然誰も通りかからなかったのがキセキだ。
他の惑星の侵略者がいることに、ガーディアン機関も動いているのは明白。一ヶ月の間で拉致された子は世界合わせて約百名。
この事をサターン様にお伝えするかどうか、ダスクは迷っていたが、ここまで好き勝手に暴れ回ると報告しなければならない。
サターン様はべスリジア星と会談を申し込んだ。拉致した地球人を解放させるように。その会談に、俺たちもついて来てほしいと。
べスリジアは中々交渉してくれないと鼻からわかっている。その前提で俺たちは拉致された地球人を救い出す作戦だ。
またあの土星みたいな形の宇宙船に乗る。今回はなぜか、委員長もついてきて。
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