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捌 陰陽師家系問題
第57話 陰陽師
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探偵がムッとした表情でコックリさんを睨みつける。自分の城に無断で入ってきた怒りかそれとも、自分よりも可愛がられてるコックリさんに嫉妬か、どちらか読めない。
「こらこら! 諸君何をしているのだ! 聞こえなかったのか? そいつは狗神家と同格する呪い屋だぞ」
探偵はカッとなって叫ぶ。
「うるさいのぉー」
コックリさんがムッとする。
「そもそも何故こんなところに来た。我の結界を破ってきてまで何用だ?」
探偵はわたしたちの手からコックリさんを奪い取りプラーンと持ち上げる。尻尾を鷲掴みして逆さ吊りだ。わたしたちが抗議しても探偵はガン無視。
「お前、よく見たら何だその首に繋がっているやつ」
確かによく見るとコックリさんに首輪が。犬猫が普段つけているような首輪に御札が貼ってある。五芒星の赤いインクがついたもの。
「あれ、これ」
見たことある。
どこかでみたような。ないような。思い出せない。
「これは土御門家の紋様。貴様、土御門家から脱出した妖だな」
探偵が急に冷たい声に。
薄々思っていたが探偵は蛟やコックリなどと神聖視されている類いには容赦はない。むしろ嫌悪感を抱いている。かつてその地位にいたからこその欺瞞か、それとも、いいや、今は考えない。
「ほんとだ。これ駆除家のあれじゃん」
真那ちゃんが珍しそうにはしゃぎ触ろうと腕を伸ばすと探偵が防いだ。振り払ったに近い。
「真那くん、土御門家を甘く見るな。駆除家と呼ばれても実際は数多の妖を殺す集団だ。千年以上歴史と力があり、名前だけじゃない集団だ。その集団の紋様をつけた妖など、碌なものではない」
探偵はゴミを見るような眼差しをコックリさんに。コックリさんは恐怖でわなわな震えて両足がピクピクしている。土御門家から逃げてきたのは明白であり図星。
「とりあえずおろしましょう」
とわたしが言うと探偵はやれやれとコックリさんをおろす。コックリさんは解放されて足をバタつかせながらゴミ箱の後ろまで走って隠れる。ひょっこり顔を小さく出す。
「何があったか話してくれますか?」
わたしは寄り添うに話しかけるとコックリさんは怯えながらもポツリポツリ語ってくれた。
コックリさんはある学校の女子生徒によって呼ばれた。いつものように「コックリさんコックリさんおいでください」と。そして現れた瞬間、土御門家に捕まった。土御門家の罠に嵌まったのだ。そして気がついたら籠の中に入れられてた。
土御門家の中ではある議題が出されている。
コックリさんを払えば土御門家の次期後継者になれるという。土御門家の派閥争いに巻き込まれた。
コックリさんは死にものぐるいで籠から出てここまでやってきたという。その分、力を使いすぎて今や小物妖怪とほぼ同じ。
「まぁ、逃げることは恥ではない」
探偵は頷きながら言っただが、しかし、と探偵は次に否定文を口にした。
「しかし、コックリというものが逃げ切るのにまだ余力はあるじゃないか。家を破壊するなりできたのではないか?」
「そんにゃことできるかぁー‼」
コックリさんは激昂して顔を赤らめる。
わたしはまぁまぁと押さえ込むも、探偵は素知らぬ顔。コックリさんは尻尾をビタンビタンと振り回し今にも食らいつきそう。
「なぁ、それまずいんじゃ」
真那ちゃんが顔を暗くする。
ここにいる全員分かった。
土御門家が追っているであろうコックリさんがここに来たこと、それは即ち――わたしたちは共犯者にさせられる。
「早く出ていけ」
探偵が圧をかけるもコックリさんはぐったりとしていた。
「ごめんなのじゃ、それが力がでなくて」
ピクピクと震えて地面にうつ伏せて倒れている。寒さでも畏怖でもなく力が根こそぎ失っていく虚無感の恐怖に震えていた。それはやがて痙攣のように不規則になっていく。
「それじゃ投げるのみ」
探偵はひょいと持ち上げて窓のほうに向かっていく。コックリさんは甲高い悲鳴をあげる。舌足らずな声は室内をキンキンと震わせた。
「ちょっと~何の騒ぎよ~」
雪香さんが入ってきた。
片耳を抑えて顔を顰めてる。わたしたちの姿を見るやしかめっ面がぱぁと花が咲いたように顔色を変える。
「何その可愛い子ぉ~‼」
探偵の腕から掻っ攫いぬいぐるみのように抱きついた。
「ちょっとどこから買ってきたのよこれ! やだぁ~モフモフかわいいあら? この子首輪なんかしてかわいそうに。ほらこれで」
「馬鹿者! それを外したら――」
探偵の静止を聞かずに雪香さんはコックリさんの首輪をシュルリと外した。その途端、コックリさんの体が閃光しバチバチと火花が散っていく。ヒュンヒュンと花火のように火薬が飛んでくる。
「きゃ!」
「わっ!」
火花は事務所のソファーや本棚を燃やす。
咄嗟に身を竦め無事だが事務所は無事ではない。一瞬で火の手がまわり辺りが赤く染まっていく。
「諸君煙を吸うな!」
探偵が叫び、雪香さんが息を吹きかけ火の手を抑える。毒々しい真っ赤な炎が老朽化してる建物を燃やし、崩れる音が頭上から音を出している。
「乙子くんは逃げろ!」と探偵から言われ流石に種族人であり、この場でどう考えても役に立たないわたしは探偵の言われたとおり事務所の外に出ようと踵を返す。しかし、炎の暑さによってドアノブがフライパンのように熱く指先が当たったらジュワと煙が出た。
漸く炎が鎮火したところで事務所内は惨状だ。
本棚やポスターも燃え、黒いススが天井、壁までついている。拭いても消して取れないような禍々しい漆黒のスス。
「乙子くん、大丈夫か?」
「まぁ、大丈夫です。それより酷いですね」
指先は今でも熱が残っててそこから体全体にじんじん痛みが広がっていく。雪香さんが指を見てふぅ、と息を吹きかけたらさっきまで熱かった箇所がだんだん冷えていく。
「こらこら! 諸君何をしているのだ! 聞こえなかったのか? そいつは狗神家と同格する呪い屋だぞ」
探偵はカッとなって叫ぶ。
「うるさいのぉー」
コックリさんがムッとする。
「そもそも何故こんなところに来た。我の結界を破ってきてまで何用だ?」
探偵はわたしたちの手からコックリさんを奪い取りプラーンと持ち上げる。尻尾を鷲掴みして逆さ吊りだ。わたしたちが抗議しても探偵はガン無視。
「お前、よく見たら何だその首に繋がっているやつ」
確かによく見るとコックリさんに首輪が。犬猫が普段つけているような首輪に御札が貼ってある。五芒星の赤いインクがついたもの。
「あれ、これ」
見たことある。
どこかでみたような。ないような。思い出せない。
「これは土御門家の紋様。貴様、土御門家から脱出した妖だな」
探偵が急に冷たい声に。
薄々思っていたが探偵は蛟やコックリなどと神聖視されている類いには容赦はない。むしろ嫌悪感を抱いている。かつてその地位にいたからこその欺瞞か、それとも、いいや、今は考えない。
「ほんとだ。これ駆除家のあれじゃん」
真那ちゃんが珍しそうにはしゃぎ触ろうと腕を伸ばすと探偵が防いだ。振り払ったに近い。
「真那くん、土御門家を甘く見るな。駆除家と呼ばれても実際は数多の妖を殺す集団だ。千年以上歴史と力があり、名前だけじゃない集団だ。その集団の紋様をつけた妖など、碌なものではない」
探偵はゴミを見るような眼差しをコックリさんに。コックリさんは恐怖でわなわな震えて両足がピクピクしている。土御門家から逃げてきたのは明白であり図星。
「とりあえずおろしましょう」
とわたしが言うと探偵はやれやれとコックリさんをおろす。コックリさんは解放されて足をバタつかせながらゴミ箱の後ろまで走って隠れる。ひょっこり顔を小さく出す。
「何があったか話してくれますか?」
わたしは寄り添うに話しかけるとコックリさんは怯えながらもポツリポツリ語ってくれた。
コックリさんはある学校の女子生徒によって呼ばれた。いつものように「コックリさんコックリさんおいでください」と。そして現れた瞬間、土御門家に捕まった。土御門家の罠に嵌まったのだ。そして気がついたら籠の中に入れられてた。
土御門家の中ではある議題が出されている。
コックリさんを払えば土御門家の次期後継者になれるという。土御門家の派閥争いに巻き込まれた。
コックリさんは死にものぐるいで籠から出てここまでやってきたという。その分、力を使いすぎて今や小物妖怪とほぼ同じ。
「まぁ、逃げることは恥ではない」
探偵は頷きながら言っただが、しかし、と探偵は次に否定文を口にした。
「しかし、コックリというものが逃げ切るのにまだ余力はあるじゃないか。家を破壊するなりできたのではないか?」
「そんにゃことできるかぁー‼」
コックリさんは激昂して顔を赤らめる。
わたしはまぁまぁと押さえ込むも、探偵は素知らぬ顔。コックリさんは尻尾をビタンビタンと振り回し今にも食らいつきそう。
「なぁ、それまずいんじゃ」
真那ちゃんが顔を暗くする。
ここにいる全員分かった。
土御門家が追っているであろうコックリさんがここに来たこと、それは即ち――わたしたちは共犯者にさせられる。
「早く出ていけ」
探偵が圧をかけるもコックリさんはぐったりとしていた。
「ごめんなのじゃ、それが力がでなくて」
ピクピクと震えて地面にうつ伏せて倒れている。寒さでも畏怖でもなく力が根こそぎ失っていく虚無感の恐怖に震えていた。それはやがて痙攣のように不規則になっていく。
「それじゃ投げるのみ」
探偵はひょいと持ち上げて窓のほうに向かっていく。コックリさんは甲高い悲鳴をあげる。舌足らずな声は室内をキンキンと震わせた。
「ちょっと~何の騒ぎよ~」
雪香さんが入ってきた。
片耳を抑えて顔を顰めてる。わたしたちの姿を見るやしかめっ面がぱぁと花が咲いたように顔色を変える。
「何その可愛い子ぉ~‼」
探偵の腕から掻っ攫いぬいぐるみのように抱きついた。
「ちょっとどこから買ってきたのよこれ! やだぁ~モフモフかわいいあら? この子首輪なんかしてかわいそうに。ほらこれで」
「馬鹿者! それを外したら――」
探偵の静止を聞かずに雪香さんはコックリさんの首輪をシュルリと外した。その途端、コックリさんの体が閃光しバチバチと火花が散っていく。ヒュンヒュンと花火のように火薬が飛んでくる。
「きゃ!」
「わっ!」
火花は事務所のソファーや本棚を燃やす。
咄嗟に身を竦め無事だが事務所は無事ではない。一瞬で火の手がまわり辺りが赤く染まっていく。
「諸君煙を吸うな!」
探偵が叫び、雪香さんが息を吹きかけ火の手を抑える。毒々しい真っ赤な炎が老朽化してる建物を燃やし、崩れる音が頭上から音を出している。
「乙子くんは逃げろ!」と探偵から言われ流石に種族人であり、この場でどう考えても役に立たないわたしは探偵の言われたとおり事務所の外に出ようと踵を返す。しかし、炎の暑さによってドアノブがフライパンのように熱く指先が当たったらジュワと煙が出た。
漸く炎が鎮火したところで事務所内は惨状だ。
本棚やポスターも燃え、黒いススが天井、壁までついている。拭いても消して取れないような禍々しい漆黒のスス。
「乙子くん、大丈夫か?」
「まぁ、大丈夫です。それより酷いですね」
指先は今でも熱が残っててそこから体全体にじんじん痛みが広がっていく。雪香さんが指を見てふぅ、と息を吹きかけたらさっきまで熱かった箇所がだんだん冷えていく。
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