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伍 山神抗争決戦
第51話 認めて
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暴れ回る両者に待ったをかけた人物が現れた。天狗の娘と鬼の息子。両者の頭にあったはずの存在がいま瞬間にして思い出す。
「天花、良かった無事だな――」
お爺ちゃんが胸をなでおろす。
しかし――2人は仲睦まじく恋人繋ぎで繋がり合っていた。それを2人の親は面食らった。
「お義父様‼」
「お義父様ぁ⁉」
四鬼くんが天狗のお爺ちゃんに向かって「お義父さん」と呼んだことでさらに動揺しわなわな震える。四鬼くんは両者の親に向かって宣言。
「僕たちは付き合っています! 僕たちの出逢いは、そう――春の季節でした! 桜の舞い落ちる木の下で彼女に出逢いました‼ 一目惚れです‼ どうか、僕らの交際を認めてください!」
空気ががらりと変わった。
争っていた火花はどこか線香花火の最終のようにやがてポトリと落ちる。逆にピンクの色艶やかな花火がパンパンなる。お爺ちゃんはわなわな震えその花火を打ち消した。顔が青白い。
「お前の息子はどうなってるんだ!」
と睨みつける。
大嶽丸は腕組みして黙って息子を見守る。
「わたしは四鬼くんと結婚を前提にお付き合いさせて頂いてます! あの春の季節からずっと、彼のことが大好きです! 彼と何処な場所でも付いていくつもりです!」
天花ちゃんは顔を赤くさせ時折噛みながらも宣言した。
「ななな、何言とるんじゃこの、バカ娘!」
お爺ちゃんは青白くなったり吠えたりで忙しい。逆に大嶽丸は黙って腕組みしたままだ。ゆるゆると降りてきて2人と向き合った。大笑いした。山に響くほど。お腹を抑えて笑うほど。
誰も予想つかない態度に2人は不安な顔をする。天狗のお爺ちゃんもすっ、と降りてく。
「はははーはーっはーっ、笑った笑った……オメェら覚悟決めてんじゃねぇか」
大嶽丸は豪快に笑ったのだ。この展開はもしや……と2人の表情は不安から安堵に変わる。しかし、突きつけたのは条件つきだった。
「1年だ。1年、鬼の棲家に慣れ倅と仲良くなれるってんなら結婚もしていい。この件のことも目を瞑ろう。俺は天狗と違って寛大だからな」
大嶽丸は陽気に言った。
第一印象の恐い鬼と打って変わり、陽気なガタイの大きい鬼さんに。
「親父!」
「ありがとうございます‼」
2人は頭を下げ安堵した。しかし、納得いかないのがもう1人。もう片方の親である。
「何勝手に決めとんのじゃ! 鬼の棲家にわしの可愛い娘を行かせるか! 同棲を認めるようなもじゃ! 反対じゃ!」
ただをこねる子供のように反対だと突っぱねる。2人は顔を見合わせてどちらかというと天花ちゃんのほうから四鬼くんの顔に近づきその唇を重ねた。
親の目の前で。
可愛いと言い放った娘が強欲に男の唇を重ねている。大嶽丸はヒューと唇を吹いた。一方のお爺ちゃんは口をあんぐり。
親の目の前で女の喘ぎ声を漏らし、舌まで突付き合い、透明な糸がお互いの舌を繋がっていた。
「ぷあ、お父さん、わたしもうか弱くないから」
激しく求め合って娘に言われた一言。かなりのショッキングなものまで見せる。
「天花、わしの娘があぁ~わしが赤子から大切に育ててきた大切な娘が……」
膝をうちシクシク泣き出した。その背中を大嶽丸がさする。
「ジイさんショックなのも分かる。だがあいつらのハリケーンを止められることなんざ流石の天狗でもできやしねぇだろ」
お爺ちゃんは膝を丸めてわんわん大声で泣く。四鬼くんとの交際を認めざるを得なかった。
パチパチパチパチパチ
拍手でこの場に乱入してきたのは探偵。
「見ててアホみたいな告白宣言だったがこれは、四百年ぶりの快挙じゃないか? 素晴らしいな」
アハハと想いのない愛想笑いで笑う。丸まっているお爺ちゃんが「ボケェ」と鼻水混じりに罵声した。大嶽丸は目を細めた。「お前いたのか」「最初からいた」と喋る。
「天花ちゃん良かったね!」
続々とわたしたちが林の奥から身を出し、2人に寄り添う。2人は今まで見たことない幸せそうな笑顔。物陰でずっと隠れていたのだがやはり、大嶽丸のほうが認めたのが早いのは四鬼くんがお父さんのことを話してくれたから予想はしていた。
四鬼くんはお父さんのことを話してくれた。こんなに暴れるのは滅多にない。素行が荒く暴虐非道、そんなのはただの噂だ。本当の素面は優しくて陽気な父親だという。聞いたそのときは、第一印象が強すぎてイメージに合わなかったがあの瞬間、豪快に笑った瞬間に四鬼くんの話通りの父親だった。
そして、わたしが懐から2人につけるように足した苺味のリップクリームは役に立ったな。もしものとき、2人が認めなかったら強欲にキスすること、とわたしが前もって言ったのだ。
まぁ、終盤だったわけだがあんな熱烈なものをみせられるとは、お爺ちゃんがさらに気の毒だ。
「うんうん。これは報酬は二倍だな」
丸まっているお爺ちゃんに追い打ちをかける探偵。
「なんじゃと?」
顔を上げぎろりと睨む。鼻水と涙もダラダラ流したお爺ちゃんの面。探偵は意地悪く笑う。
「城の建設は完成できなかった。壊したのはお前たちだし、それに誰も四百年成しえなかった快挙が生まれた。その手伝いをしたのは?」
探偵がこちらに振り向き仰ぐ。ウインクまでしてくるのだからやれやれ、と肩をおろした。
「わたしたち、妖怪探偵事務所です。ついでに山火事を沈めたのも、我々です。あ、お城建設目的に一週間はここで働く約束は守りますよ。山がこ~んなになって大変ですものね。お任せください! それで報酬はざっと一週間の五人分の働きと、歴史的快挙で600万でしょうか?」
探偵がもっと、と手を上げる。「700万」「800万」と10万ずつあげる。お爺ちゃんはもういいと待ったをかけるもこの相場は探偵の小槌で決まる。
「900万」のところで小槌が打たれた。
「天花、良かった無事だな――」
お爺ちゃんが胸をなでおろす。
しかし――2人は仲睦まじく恋人繋ぎで繋がり合っていた。それを2人の親は面食らった。
「お義父様‼」
「お義父様ぁ⁉」
四鬼くんが天狗のお爺ちゃんに向かって「お義父さん」と呼んだことでさらに動揺しわなわな震える。四鬼くんは両者の親に向かって宣言。
「僕たちは付き合っています! 僕たちの出逢いは、そう――春の季節でした! 桜の舞い落ちる木の下で彼女に出逢いました‼ 一目惚れです‼ どうか、僕らの交際を認めてください!」
空気ががらりと変わった。
争っていた火花はどこか線香花火の最終のようにやがてポトリと落ちる。逆にピンクの色艶やかな花火がパンパンなる。お爺ちゃんはわなわな震えその花火を打ち消した。顔が青白い。
「お前の息子はどうなってるんだ!」
と睨みつける。
大嶽丸は腕組みして黙って息子を見守る。
「わたしは四鬼くんと結婚を前提にお付き合いさせて頂いてます! あの春の季節からずっと、彼のことが大好きです! 彼と何処な場所でも付いていくつもりです!」
天花ちゃんは顔を赤くさせ時折噛みながらも宣言した。
「ななな、何言とるんじゃこの、バカ娘!」
お爺ちゃんは青白くなったり吠えたりで忙しい。逆に大嶽丸は黙って腕組みしたままだ。ゆるゆると降りてきて2人と向き合った。大笑いした。山に響くほど。お腹を抑えて笑うほど。
誰も予想つかない態度に2人は不安な顔をする。天狗のお爺ちゃんもすっ、と降りてく。
「はははーはーっはーっ、笑った笑った……オメェら覚悟決めてんじゃねぇか」
大嶽丸は豪快に笑ったのだ。この展開はもしや……と2人の表情は不安から安堵に変わる。しかし、突きつけたのは条件つきだった。
「1年だ。1年、鬼の棲家に慣れ倅と仲良くなれるってんなら結婚もしていい。この件のことも目を瞑ろう。俺は天狗と違って寛大だからな」
大嶽丸は陽気に言った。
第一印象の恐い鬼と打って変わり、陽気なガタイの大きい鬼さんに。
「親父!」
「ありがとうございます‼」
2人は頭を下げ安堵した。しかし、納得いかないのがもう1人。もう片方の親である。
「何勝手に決めとんのじゃ! 鬼の棲家にわしの可愛い娘を行かせるか! 同棲を認めるようなもじゃ! 反対じゃ!」
ただをこねる子供のように反対だと突っぱねる。2人は顔を見合わせてどちらかというと天花ちゃんのほうから四鬼くんの顔に近づきその唇を重ねた。
親の目の前で。
可愛いと言い放った娘が強欲に男の唇を重ねている。大嶽丸はヒューと唇を吹いた。一方のお爺ちゃんは口をあんぐり。
親の目の前で女の喘ぎ声を漏らし、舌まで突付き合い、透明な糸がお互いの舌を繋がっていた。
「ぷあ、お父さん、わたしもうか弱くないから」
激しく求め合って娘に言われた一言。かなりのショッキングなものまで見せる。
「天花、わしの娘があぁ~わしが赤子から大切に育ててきた大切な娘が……」
膝をうちシクシク泣き出した。その背中を大嶽丸がさする。
「ジイさんショックなのも分かる。だがあいつらのハリケーンを止められることなんざ流石の天狗でもできやしねぇだろ」
お爺ちゃんは膝を丸めてわんわん大声で泣く。四鬼くんとの交際を認めざるを得なかった。
パチパチパチパチパチ
拍手でこの場に乱入してきたのは探偵。
「見ててアホみたいな告白宣言だったがこれは、四百年ぶりの快挙じゃないか? 素晴らしいな」
アハハと想いのない愛想笑いで笑う。丸まっているお爺ちゃんが「ボケェ」と鼻水混じりに罵声した。大嶽丸は目を細めた。「お前いたのか」「最初からいた」と喋る。
「天花ちゃん良かったね!」
続々とわたしたちが林の奥から身を出し、2人に寄り添う。2人は今まで見たことない幸せそうな笑顔。物陰でずっと隠れていたのだがやはり、大嶽丸のほうが認めたのが早いのは四鬼くんがお父さんのことを話してくれたから予想はしていた。
四鬼くんはお父さんのことを話してくれた。こんなに暴れるのは滅多にない。素行が荒く暴虐非道、そんなのはただの噂だ。本当の素面は優しくて陽気な父親だという。聞いたそのときは、第一印象が強すぎてイメージに合わなかったがあの瞬間、豪快に笑った瞬間に四鬼くんの話通りの父親だった。
そして、わたしが懐から2人につけるように足した苺味のリップクリームは役に立ったな。もしものとき、2人が認めなかったら強欲にキスすること、とわたしが前もって言ったのだ。
まぁ、終盤だったわけだがあんな熱烈なものをみせられるとは、お爺ちゃんがさらに気の毒だ。
「うんうん。これは報酬は二倍だな」
丸まっているお爺ちゃんに追い打ちをかける探偵。
「なんじゃと?」
顔を上げぎろりと睨む。鼻水と涙もダラダラ流したお爺ちゃんの面。探偵は意地悪く笑う。
「城の建設は完成できなかった。壊したのはお前たちだし、それに誰も四百年成しえなかった快挙が生まれた。その手伝いをしたのは?」
探偵がこちらに振り向き仰ぐ。ウインクまでしてくるのだからやれやれ、と肩をおろした。
「わたしたち、妖怪探偵事務所です。ついでに山火事を沈めたのも、我々です。あ、お城建設目的に一週間はここで働く約束は守りますよ。山がこ~んなになって大変ですものね。お任せください! それで報酬はざっと一週間の五人分の働きと、歴史的快挙で600万でしょうか?」
探偵がもっと、と手を上げる。「700万」「800万」と10万ずつあげる。お爺ちゃんはもういいと待ったをかけるもこの相場は探偵の小槌で決まる。
「900万」のところで小槌が打たれた。
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