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参 狗神家呪術事件
第23話 心臓
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酒呑童子の力を借りて探偵は鬼族の集落から出る。酒呑童子とその奥さんはまた明日ここに出向いて話をすると。また明日ここに来る約束をしている。
「あの」
「なんだ」
再びタクシーの中で会話する。
「鬼の力を借りたかったなら電話で対談でも良かったのでは? わざわざ出向いてお金の出費もかかるし大変ですよ」
わたしは冷静に探偵に言うと探偵は視線を外に向けた。鬼族の集落を抜け人間界の集落へとなり、ネオンが光る街並みは変わらない。眩しい街の光が通り過ぎていく。探偵の横顔をてらしてこちら側では影が生まれてよく探偵の顔が見れない。
「そうだな。だが戦友の顔を久しぶりに見たいとおもったことはないか?」
「戦友はいませんけど、まぁ、長年の友達で離れ離れになった友達には会いたいなって思います。多少無理しても顔を見て話をしたい、ですよね。そうですよね」
わたしは探偵に顔を向けた。探偵の顔は光で見えない。でも口先がつり上がっているから笑っていると解釈する。
「あの」
「なんだ」
まだ聞きたいことがある。酒呑童子が偶に言ってたあの言葉の謎。
「心臓を隠されたとは?」
それを聞くと探偵はびくりと見動いた。酒呑童子が煽りのように言ってたので気になった。探偵ははぁとため息ついて窓の外のネオンが光る街並みから視線を逸した。
「聞きたいか」
「はい」
わたしの顔を見て探偵は暫く考えてから口を開いた。遠い記憶を思い出すようにポツリポツリと。
「昔、安倍晴明と酒を飲むほど仲良くてなある日アイツを怒らせちまったんだ。それで腹いせにアイツは我の心臓を奪ってそのまんまだ。アイツはもう……この世にいない。心臓を何処に隠したのか聞くこと出来なくてそれであの城を築いたのだ」
探偵は再び窓の外に目を向けた。
探偵はそれから探し続けている。自分の心臓を。
「安倍晴明て、土御門家の先祖ですよね。そんなすごい人を怒らせたて何したんですか」
「うーん。酒代をケチったか式神を半殺しにしたか、心当たりが多すぎてな」
「あなた一体何してるんですか」
まさか探偵がかの有名な安倍晴明と繋がっていたなんて。あの事務所相当古いんじゃ。確かに建物内にヒビが入っているしそれを隠すようにポスターや変な麺が飾ってある。
探偵の心臓がないことにショックは抱かなかった。他人だからともあるけど、探偵には薄々秘密を抱えているて理解してたし、自分のこと全然話してくれないから、その秘密を紐解いてそれを晒しただけで、受け入れる覚悟も準備もしていたからトントンと受け入れた。探偵の秘密を知れて何より喜んでいる。
そんな自分がいておかしい。
狗神家に突撃訪問した雪香さんたちから連絡が入った。事件の加害者である狗神家はもうそこの土地に住んでいない。何処かに引っ越していったと。狗神家は一つじゃない。探せば割と見つかる。だがあの事件を発端に鬼族と同じように集落を作り過ごしている。
そこで雪香さんたちは集落を知っている市長へと足を運ばせ、情報を入手。伊達に探偵柄をやっていない。市長がこれをペラペラと話し情報網は根源は市長から来ている。
その市長からの情報によれば狗神家の集落はここから南西。四国のほうだ。雪香さんたちは一旦事務所に帰らずにそのまま解散。わたしもこのままタクシーで自宅に寄ってもらうことに。
「狗神家と戦うんですか?」
「だからアイツのところに迎えたじゃないか」
探偵は窓を開けて煙管に火をつけた。煙管から煙が出て口に咥える。煙の臭いがタクシー内に広がる。タクシーの運転手にすいませんと謝る。
「どうやって戦うんですか?」
戦争や爆弾を思い描いて不安にかられる。そのことを察知したのか探偵は煙管を口から放し穏やかに笑った。
「何、案ずることはない。自身が想像しているものの喧騒じゃないさ。狗神の放った呪いを解くためには狗神に何かを生贄として引き換えに試練を与えられそれを成功させたのちに呪いを解ける誓約をつける。さすれば大丈夫だろう」
探偵は自信満々だが、わたしはどうも引っかかる。〝生贄〟という言葉と酒呑童子と手を組んだこと。探偵の普段持っているものは割と高価なもので物資には困っていない。だが人材には困り果てている。酒呑童子と手を組んだのはまさか……。
「アイツを贄にするものか」
「えっ! てっきり!」
心を読まれた。探偵はフッと笑う。
「物資でも良かろう。狗神相手なんぞ人一人くれてやるものか」
探偵は聞いたこともない低い声で言った。その声にびっくりする。タクシーはもうとっくに自分の住む地域に進んでいる。窓から風が入ってきてぶるりと震えた。いくら昼間が温かいといっても夜になるとその脅威が曝け出し寒くて冷える風で襲ってくる。
服をもっと厚めにすれば良かった。
体を縮こまってその場をしのいだ。
それから、ようやくタクシーが我が家に。鬼族からここまで走ってきたからかなりの出費。割り勘にしよう。探偵は赤字続きの探偵事務所の希望だと泣きながら言われた。絡みつかれると面倒だな。
タクシーを出てお礼を言いその場をあとにしようとしたとき、探偵から呼び止められた。
「乙子くん。深い闇へ」
「はい。おやすみなさい。また探偵事務所で!」
わたしは玄関まで足を運び笑顔で別れた。
翌日、休日の1日目。今日は狗神家に行く日だ。それで事務所内の社員は殆ど眠れなかったり眠れたり。等の言い出しっぺは煙管を吹きながら好きな着物雑誌を読んでいた。ある意味休日の過ごし方と変わらない姿でホッとする。
「まさか全員で行くの?」
雪香さんが探偵に訊く。
「当たり前だ。1人はみんなのためにみんなは1人のためにはなんのための言葉だ」
「巻き添えでしょそれ」
雪香さんは首を解すマッサージをしながら深く椅子に背持たれる。真那ちゃんも反論するかと思いきや案外素直に従順した。それは、事が終わったら欲しいものを与えてやるという褒美があるから。真那ちゃんはこれですっかり元気で部屋の外でウロウロ。
物で釣って大丈夫だろうか。
「あの」
「なんだ」
再びタクシーの中で会話する。
「鬼の力を借りたかったなら電話で対談でも良かったのでは? わざわざ出向いてお金の出費もかかるし大変ですよ」
わたしは冷静に探偵に言うと探偵は視線を外に向けた。鬼族の集落を抜け人間界の集落へとなり、ネオンが光る街並みは変わらない。眩しい街の光が通り過ぎていく。探偵の横顔をてらしてこちら側では影が生まれてよく探偵の顔が見れない。
「そうだな。だが戦友の顔を久しぶりに見たいとおもったことはないか?」
「戦友はいませんけど、まぁ、長年の友達で離れ離れになった友達には会いたいなって思います。多少無理しても顔を見て話をしたい、ですよね。そうですよね」
わたしは探偵に顔を向けた。探偵の顔は光で見えない。でも口先がつり上がっているから笑っていると解釈する。
「あの」
「なんだ」
まだ聞きたいことがある。酒呑童子が偶に言ってたあの言葉の謎。
「心臓を隠されたとは?」
それを聞くと探偵はびくりと見動いた。酒呑童子が煽りのように言ってたので気になった。探偵ははぁとため息ついて窓の外のネオンが光る街並みから視線を逸した。
「聞きたいか」
「はい」
わたしの顔を見て探偵は暫く考えてから口を開いた。遠い記憶を思い出すようにポツリポツリと。
「昔、安倍晴明と酒を飲むほど仲良くてなある日アイツを怒らせちまったんだ。それで腹いせにアイツは我の心臓を奪ってそのまんまだ。アイツはもう……この世にいない。心臓を何処に隠したのか聞くこと出来なくてそれであの城を築いたのだ」
探偵は再び窓の外に目を向けた。
探偵はそれから探し続けている。自分の心臓を。
「安倍晴明て、土御門家の先祖ですよね。そんなすごい人を怒らせたて何したんですか」
「うーん。酒代をケチったか式神を半殺しにしたか、心当たりが多すぎてな」
「あなた一体何してるんですか」
まさか探偵がかの有名な安倍晴明と繋がっていたなんて。あの事務所相当古いんじゃ。確かに建物内にヒビが入っているしそれを隠すようにポスターや変な麺が飾ってある。
探偵の心臓がないことにショックは抱かなかった。他人だからともあるけど、探偵には薄々秘密を抱えているて理解してたし、自分のこと全然話してくれないから、その秘密を紐解いてそれを晒しただけで、受け入れる覚悟も準備もしていたからトントンと受け入れた。探偵の秘密を知れて何より喜んでいる。
そんな自分がいておかしい。
狗神家に突撃訪問した雪香さんたちから連絡が入った。事件の加害者である狗神家はもうそこの土地に住んでいない。何処かに引っ越していったと。狗神家は一つじゃない。探せば割と見つかる。だがあの事件を発端に鬼族と同じように集落を作り過ごしている。
そこで雪香さんたちは集落を知っている市長へと足を運ばせ、情報を入手。伊達に探偵柄をやっていない。市長がこれをペラペラと話し情報網は根源は市長から来ている。
その市長からの情報によれば狗神家の集落はここから南西。四国のほうだ。雪香さんたちは一旦事務所に帰らずにそのまま解散。わたしもこのままタクシーで自宅に寄ってもらうことに。
「狗神家と戦うんですか?」
「だからアイツのところに迎えたじゃないか」
探偵は窓を開けて煙管に火をつけた。煙管から煙が出て口に咥える。煙の臭いがタクシー内に広がる。タクシーの運転手にすいませんと謝る。
「どうやって戦うんですか?」
戦争や爆弾を思い描いて不安にかられる。そのことを察知したのか探偵は煙管を口から放し穏やかに笑った。
「何、案ずることはない。自身が想像しているものの喧騒じゃないさ。狗神の放った呪いを解くためには狗神に何かを生贄として引き換えに試練を与えられそれを成功させたのちに呪いを解ける誓約をつける。さすれば大丈夫だろう」
探偵は自信満々だが、わたしはどうも引っかかる。〝生贄〟という言葉と酒呑童子と手を組んだこと。探偵の普段持っているものは割と高価なもので物資には困っていない。だが人材には困り果てている。酒呑童子と手を組んだのはまさか……。
「アイツを贄にするものか」
「えっ! てっきり!」
心を読まれた。探偵はフッと笑う。
「物資でも良かろう。狗神相手なんぞ人一人くれてやるものか」
探偵は聞いたこともない低い声で言った。その声にびっくりする。タクシーはもうとっくに自分の住む地域に進んでいる。窓から風が入ってきてぶるりと震えた。いくら昼間が温かいといっても夜になるとその脅威が曝け出し寒くて冷える風で襲ってくる。
服をもっと厚めにすれば良かった。
体を縮こまってその場をしのいだ。
それから、ようやくタクシーが我が家に。鬼族からここまで走ってきたからかなりの出費。割り勘にしよう。探偵は赤字続きの探偵事務所の希望だと泣きながら言われた。絡みつかれると面倒だな。
タクシーを出てお礼を言いその場をあとにしようとしたとき、探偵から呼び止められた。
「乙子くん。深い闇へ」
「はい。おやすみなさい。また探偵事務所で!」
わたしは玄関まで足を運び笑顔で別れた。
翌日、休日の1日目。今日は狗神家に行く日だ。それで事務所内の社員は殆ど眠れなかったり眠れたり。等の言い出しっぺは煙管を吹きながら好きな着物雑誌を読んでいた。ある意味休日の過ごし方と変わらない姿でホッとする。
「まさか全員で行くの?」
雪香さんが探偵に訊く。
「当たり前だ。1人はみんなのためにみんなは1人のためにはなんのための言葉だ」
「巻き添えでしょそれ」
雪香さんは首を解すマッサージをしながら深く椅子に背持たれる。真那ちゃんも反論するかと思いきや案外素直に従順した。それは、事が終わったら欲しいものを与えてやるという褒美があるから。真那ちゃんはこれですっかり元気で部屋の外でウロウロ。
物で釣って大丈夫だろうか。
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