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潤い
6―1 牛乳
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四角い机の上には家族の人数分の朝食が綺麗に並べられていた。
「朝よー! 起きなさーい!」
母親が子どもと夫を起こす声が家中に轟いた。暫くしてから、長女の芋子が階段を降りてきた。
学校指定服をきちんと着用し、リビングルームにつくと、食卓に並んだ牛乳を見下ろす。
「今日は薄いね」
「ごめんね。このごろ、うまくだせなくて」
「おいおい、一家の水がどうなるんだよ」
同じく、降りてきた父が不満そうに言った。
「ごめんなさい、あなた、でも夕食ごろには完璧よ!」
ママの口癖、「完璧」が出ると、文句の一つもつけない。薄いと批判した牛乳を芋子はぐぴと一気飲みする。
「薄いけど、やっぱりママの味だ」
「残さず食べな。今日テストだろ?」
「うん」
新聞紙を片手にパパも牛乳をぐぴとお酒のように平らげる。喉こしからゴキュゴキュと渇いた喉を潤している。
「今日は早く帰ってやるか」
飲み干したコップを机に置き、パパはママに提案を持ちかけた。ママはパパを見て、嗤った。一瞬頬がとろりと溶けそう。
「濃ゆくなるかな?」
不安そうに芋子が言う。妖艶な笑みでママとパパが笑う。
「大丈夫。パパが濃ゆくさせてやる」
「帰ったら絶品に美味しいわよ」
期待と心配が心中の中、芋子は学校へと向かった。
§
不安も中ば期待がめいっぱいある心中で芋子は家に帰った。家に帰ると学校で起きた嫌な出来事がすっかり忘れてしまう。ただいま、といつものように元気に言った。
いつもはママが玄関まで出迎えてくるけど全然来ない。それよか、ベッドが軋む音とママの荒い息遣いが耳にやんわりと伝った。
いるはずのないパパの声も聞こえる。二人とも、普段出さない声。
音のするほうにゆっくりと向かった。パパとママの寝室。ソォと扉を小さく開け、片目だけで部屋を覗いた。
いつもの寝室部屋じゃない。クチュパンと卑猥な音と青臭い匂い、全裸になったパパとママ。
パパはママの上に乗っかって懸命に腰を振ってママは白いネバネバしたものを浴びて悦んでいる。
「あは、んふ! あぁお父さん出るいっぱいでるぅぅぅ!!」
ママが絶叫するや、たわわに膨らんだ2二つの乳房の先端から打ち上げ花火のようにミルクが飛び出した。
天井まで届き、パパは一滴残さず二㍑のペットボトルに入れる。生まれたてホカホカの白さ、孵化した卵のように温かそう。
今度は違う態勢になる。パパに尻を突き出す格好をしているママ。背後からまた、激しく腰を振るパパ。
私はソォと扉を閉めた。二人の邪魔したくないもん。なにより、頬が溶けてしまいそうに嬉しい。ママの味した水があんなにもあるんだ。今日はきっとご馳走だ。
ルンルンとスキップで自室へ向かう。
夜の九時になって、母が晩御飯の用意を済ませたらしく私の名前を呼んだ。やっと、晩御飯に手がつけると思って急いで下に向かうと、これまでにない豪華だった。
コップに入った牛乳を飲むと、朝より十倍濃ゆいし美味しい。やっぱり、母のつくる牛乳は美味しい。
翌日、友達のユカちゃんの家に遊びに行きました。中学からできた新しい友達で部活動が一緒になったのをきっかけに友達になったのです。
その子はどちらかというと好き嫌いがないほうなので、一家自慢の牛乳を腐敗してつくったチーズをもっていった。
場所はユカちゃん家。ちょうど、ユカちゃんのお母さんたちが牛乳を作っている最中だった。
「見苦しいときにごめんね」
「え? なんで? 私ん家だって普通にやるよ?」
そう言うとユカちゃんは苦しい表情をした。普段は明るい子だから辛気臭い一面初めてみてしまった。なにか悩みごとがあるのだろうか。
「……普通じゃないよ」
ボソとユカちゃんが喋った。か弱い声で。でも、それははっきりと聞こえた。
「普通じゃないって?」
訊ねるとユカちゃんは憐れむ眼差しで私の顔を見た。なぜそんな表情されなきゃならないのか全くわからない。
ユカちゃんがボソボソと話し始めた。まるで、別の世界を見てきたような口調。
「私たち、どうして牛乳以外飲めないの? 給食もコンビニもスーパーでも売ってあるのは牛乳ばっかり。牛乳以外の飲んだことない。しかも、どうして母親が牛なの? おかしいよ私たち人間だよね? 人と牛で人間生まれるわけないよね?」
「いいえ、おかしいのはあなたです」
突然現れたのはユカちゃんの母親。ユカちゃんに似て足が細くってスタイル抜群。ユカちゃんの母親はさっきまで水つくりしてたはずじゃ。ニコニコと愛想笑いを浮かべてきた。
「ユカ、母親のことを牛と呼ばないで。ごめんね芋子ちゃん今日はこれで帰ってくれる?」
私は一つ返事してユカちゃん家をあとにした。なにやらヤバそうな雰囲気あったけど大丈夫。明日もまた会えるよね、ユカちゃん。
その日からユカちゃんの存在が消えた。
―『潤い』完―
「朝よー! 起きなさーい!」
母親が子どもと夫を起こす声が家中に轟いた。暫くしてから、長女の芋子が階段を降りてきた。
学校指定服をきちんと着用し、リビングルームにつくと、食卓に並んだ牛乳を見下ろす。
「今日は薄いね」
「ごめんね。このごろ、うまくだせなくて」
「おいおい、一家の水がどうなるんだよ」
同じく、降りてきた父が不満そうに言った。
「ごめんなさい、あなた、でも夕食ごろには完璧よ!」
ママの口癖、「完璧」が出ると、文句の一つもつけない。薄いと批判した牛乳を芋子はぐぴと一気飲みする。
「薄いけど、やっぱりママの味だ」
「残さず食べな。今日テストだろ?」
「うん」
新聞紙を片手にパパも牛乳をぐぴとお酒のように平らげる。喉こしからゴキュゴキュと渇いた喉を潤している。
「今日は早く帰ってやるか」
飲み干したコップを机に置き、パパはママに提案を持ちかけた。ママはパパを見て、嗤った。一瞬頬がとろりと溶けそう。
「濃ゆくなるかな?」
不安そうに芋子が言う。妖艶な笑みでママとパパが笑う。
「大丈夫。パパが濃ゆくさせてやる」
「帰ったら絶品に美味しいわよ」
期待と心配が心中の中、芋子は学校へと向かった。
§
不安も中ば期待がめいっぱいある心中で芋子は家に帰った。家に帰ると学校で起きた嫌な出来事がすっかり忘れてしまう。ただいま、といつものように元気に言った。
いつもはママが玄関まで出迎えてくるけど全然来ない。それよか、ベッドが軋む音とママの荒い息遣いが耳にやんわりと伝った。
いるはずのないパパの声も聞こえる。二人とも、普段出さない声。
音のするほうにゆっくりと向かった。パパとママの寝室。ソォと扉を小さく開け、片目だけで部屋を覗いた。
いつもの寝室部屋じゃない。クチュパンと卑猥な音と青臭い匂い、全裸になったパパとママ。
パパはママの上に乗っかって懸命に腰を振ってママは白いネバネバしたものを浴びて悦んでいる。
「あは、んふ! あぁお父さん出るいっぱいでるぅぅぅ!!」
ママが絶叫するや、たわわに膨らんだ2二つの乳房の先端から打ち上げ花火のようにミルクが飛び出した。
天井まで届き、パパは一滴残さず二㍑のペットボトルに入れる。生まれたてホカホカの白さ、孵化した卵のように温かそう。
今度は違う態勢になる。パパに尻を突き出す格好をしているママ。背後からまた、激しく腰を振るパパ。
私はソォと扉を閉めた。二人の邪魔したくないもん。なにより、頬が溶けてしまいそうに嬉しい。ママの味した水があんなにもあるんだ。今日はきっとご馳走だ。
ルンルンとスキップで自室へ向かう。
夜の九時になって、母が晩御飯の用意を済ませたらしく私の名前を呼んだ。やっと、晩御飯に手がつけると思って急いで下に向かうと、これまでにない豪華だった。
コップに入った牛乳を飲むと、朝より十倍濃ゆいし美味しい。やっぱり、母のつくる牛乳は美味しい。
翌日、友達のユカちゃんの家に遊びに行きました。中学からできた新しい友達で部活動が一緒になったのをきっかけに友達になったのです。
その子はどちらかというと好き嫌いがないほうなので、一家自慢の牛乳を腐敗してつくったチーズをもっていった。
場所はユカちゃん家。ちょうど、ユカちゃんのお母さんたちが牛乳を作っている最中だった。
「見苦しいときにごめんね」
「え? なんで? 私ん家だって普通にやるよ?」
そう言うとユカちゃんは苦しい表情をした。普段は明るい子だから辛気臭い一面初めてみてしまった。なにか悩みごとがあるのだろうか。
「……普通じゃないよ」
ボソとユカちゃんが喋った。か弱い声で。でも、それははっきりと聞こえた。
「普通じゃないって?」
訊ねるとユカちゃんは憐れむ眼差しで私の顔を見た。なぜそんな表情されなきゃならないのか全くわからない。
ユカちゃんがボソボソと話し始めた。まるで、別の世界を見てきたような口調。
「私たち、どうして牛乳以外飲めないの? 給食もコンビニもスーパーでも売ってあるのは牛乳ばっかり。牛乳以外の飲んだことない。しかも、どうして母親が牛なの? おかしいよ私たち人間だよね? 人と牛で人間生まれるわけないよね?」
「いいえ、おかしいのはあなたです」
突然現れたのはユカちゃんの母親。ユカちゃんに似て足が細くってスタイル抜群。ユカちゃんの母親はさっきまで水つくりしてたはずじゃ。ニコニコと愛想笑いを浮かべてきた。
「ユカ、母親のことを牛と呼ばないで。ごめんね芋子ちゃん今日はこれで帰ってくれる?」
私は一つ返事してユカちゃん家をあとにした。なにやらヤバそうな雰囲気あったけど大丈夫。明日もまた会えるよね、ユカちゃん。
その日からユカちゃんの存在が消えた。
―『潤い』完―
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