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追う者と追われる者
1-2 智②
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友人がごほんと咳払いし、それまで高音で喋っていたのがいきなり、低い声で喋りはじめた。それだけで少し空気が冷たくなる。
『隣町にある廃墟になった児童水泳スクールに行ってみないか? 今俺たちもう、目の前にいるんだけど、一応お前も呼んだけど来るよな?』
なんだ、その一応って。なら、呼ぶな。しかし、智はこの話しを断る事はできなかった。
それは、智いわく、友人も高校時代ホラー部に所属しており、心霊スポットや廃墟など、霊がうろついている場所をいろいろと探索していたのだ。ホラー系やこの世のものではないものは、興味があるし特に心霊スポットは興味がある。
久し振りに子どもくすぐる好奇心と興奮に抑えがきかなく、友人の話しにのった。
「オッケ。んじゃ今すぐ行くから」
そう言って、身支度を整え、弟たちに任された食器をそのまんまで玄関をでた。
車を発進して約一時間。隣町の廃墟になった児童水泳スクール辿りついた。ここら一帯は全体的に霧がこもっていた。そのせいで薄暗い。
廃墟になった建物の奥には誰も管理されていない雑木林がのっぺりと佇まっている。
「おーい!!」
友人が大きく手を振り、こちらに手招きした。顔見知りの友人他に柄が悪い男と女一人がいた。
みため若い女は柄が悪い男の腕にずっと手を組んでいる。カップルなのだろうか。女も男と一緒に柄が悪いジャージを着ている。
この二人は大学時代で会ったことも、喋った事がない。友人の友達なのだろうか。だったら、こいつ、危ない道に進んでいるのではないか。ふと友人の顔を見てつい、心配になった。
「どうした?」
「いや…なんでも」
「そうだ! 紹介するよ。こいつは立花。こうみえても同僚なんだ」
にこやかに友人が男の素性を喋った。
おいおいまじかよ。こんな派手でグラサンかけて、いかにもチンピラ男が友人と同じサラリーマンだと!?
男のほうはペコッと頭を小さく下げただけで会話もしない。
「んで、そっちの可愛い子はおれらの後輩柚子ちゃん」
「柚子です!!」
おいおいまじかよ。こいつもか。今どきのサラリーマンって朝っぱから、こんな派手な格好してんのかよ。
「……初めまして、智といいます」
簡単な自己紹介をすませ、俺らは廃墟の建物に足を踏み入れる。
建物内は、使っていたものがそのままで、まるで、時間が過ぎ去っても物は忘れないっていわんばかりの雰囲気が立ち込めた。
元は白い棚が黒く煤になっており、競技で使うボールも風で吹き飛んだのか、あっちこっち置かれている。
智が持っている一本のライターを光に、廊下を進む。
「なんで、肝試し行くのに、蝋燭とかも準備してないんだよ」
「ハハッ、忘れてたわ」
陽気に応える友人をよそに、先一歩歩いている立花と柚子がふと、足を止めた。
こんな場所でも二人は腕を組み、抱き合っている感じだ。
「どうしたんだ?」
訊ねると、柚子が途切れ途切れに応える。
「聞こ…える」
「何をだ?」
柚子のもとに駆け寄って、顔を覗くと、顔面蒼白した柚子が呆然としていた。全身の血が吸血鬼に吸われたみたいに青くなっている。
その隣の立花も蒼白しきっていた。
二人とも、厳つい顔つきが今や何かに怯えだしている。
二人が目を見開き、凝らしているのは窓の奥の鬱蒼とした森林。
「ああああ……っ!」
今度は友人が叫びだした。
汚い地べたに尻をつき、窓の外を恐る恐る指差した。
おいおい、どうなっているんだ? 友人が指差した方向と二人が呆然と見ている方向は同じ。つられて、俺も恐る恐る目を見はった。
カキーン
カキーン
まるで、何かを討っている音が森の奥からした。でも、よく目と耳を凝らしてみると、全身白い生地の着物を羽織った女が杉の木に藁人形を打ちつけている。
「え?」
ズルリと片足が転げ落ちそうになった。その時、何かの拍子で割れ散った窓ガラスの破片等を踏んづけてしまった。
パリン グシャ
その音はやけに反響し、女がこちらを振り向いた。梅干しのように皺くちゃな顔した老婆。頭に乗せた、数本の火のついた蝋燭が動きと共にゆらりと揺れる。
「に、逃げるぞ!」
智は震える足を踏ん張り、友人と今だに呆然している二人に声をかけた。
女が奇声をあげ、斧を持って走ってくる。
俺らがいるのは一階の裏口玄関前。森からは若干、近い。鬼の血相で駆け寄ってくる女のスビードは測れしれない。
「う、うわあぁ!」
「いゃぁぁ!」
やっと、友人と二人が正気に戻り、一目散と外に向かっていく。
来た道を走るが、廊下が異常にも長い。面白話で進んできた道がこんなにも憎むなんて。
女が裏口玄関の戸をこじ開け、中に入ってきた。
「うおぉ! あぁぁ! 待てぇぇぇぇ!!」
まるで、地獄から帰ってきた生霊のような恐ろしい声が建物内に反響した。
俺らはそんな声を無視し、やっと外に出た。一目散と、車に戻る。
「シートベルト……!」
「そんな事より早く!」
「待て、鍵が!」
俺はポケットから鍵を取り出し、震える指先で鍵穴に刺す。その間、柚子は泣き出し、立花は呆然、友人は目の前にいるかのような悲鳴をあげて、車の中は混乱している。
鍵がやっとの事で鍵穴に刺した。ブルンと車のエンジン音がなる。
「良かった……これで」
安堵した束の間、車の前のガラスに女が張り付いた。
「貴様らの顔……覚えておく。あとで待ってろぉ!」
「ひぃ!」
「いゃぁぁぁ!!」
俺はついに怖くなり、そのまま車を発進させ、都会に向かって全速力で走った。
民家や明るい商店街など、それらを目にするとやっとの事で落ち着いた。
『隣町にある廃墟になった児童水泳スクールに行ってみないか? 今俺たちもう、目の前にいるんだけど、一応お前も呼んだけど来るよな?』
なんだ、その一応って。なら、呼ぶな。しかし、智はこの話しを断る事はできなかった。
それは、智いわく、友人も高校時代ホラー部に所属しており、心霊スポットや廃墟など、霊がうろついている場所をいろいろと探索していたのだ。ホラー系やこの世のものではないものは、興味があるし特に心霊スポットは興味がある。
久し振りに子どもくすぐる好奇心と興奮に抑えがきかなく、友人の話しにのった。
「オッケ。んじゃ今すぐ行くから」
そう言って、身支度を整え、弟たちに任された食器をそのまんまで玄関をでた。
車を発進して約一時間。隣町の廃墟になった児童水泳スクール辿りついた。ここら一帯は全体的に霧がこもっていた。そのせいで薄暗い。
廃墟になった建物の奥には誰も管理されていない雑木林がのっぺりと佇まっている。
「おーい!!」
友人が大きく手を振り、こちらに手招きした。顔見知りの友人他に柄が悪い男と女一人がいた。
みため若い女は柄が悪い男の腕にずっと手を組んでいる。カップルなのだろうか。女も男と一緒に柄が悪いジャージを着ている。
この二人は大学時代で会ったことも、喋った事がない。友人の友達なのだろうか。だったら、こいつ、危ない道に進んでいるのではないか。ふと友人の顔を見てつい、心配になった。
「どうした?」
「いや…なんでも」
「そうだ! 紹介するよ。こいつは立花。こうみえても同僚なんだ」
にこやかに友人が男の素性を喋った。
おいおいまじかよ。こんな派手でグラサンかけて、いかにもチンピラ男が友人と同じサラリーマンだと!?
男のほうはペコッと頭を小さく下げただけで会話もしない。
「んで、そっちの可愛い子はおれらの後輩柚子ちゃん」
「柚子です!!」
おいおいまじかよ。こいつもか。今どきのサラリーマンって朝っぱから、こんな派手な格好してんのかよ。
「……初めまして、智といいます」
簡単な自己紹介をすませ、俺らは廃墟の建物に足を踏み入れる。
建物内は、使っていたものがそのままで、まるで、時間が過ぎ去っても物は忘れないっていわんばかりの雰囲気が立ち込めた。
元は白い棚が黒く煤になっており、競技で使うボールも風で吹き飛んだのか、あっちこっち置かれている。
智が持っている一本のライターを光に、廊下を進む。
「なんで、肝試し行くのに、蝋燭とかも準備してないんだよ」
「ハハッ、忘れてたわ」
陽気に応える友人をよそに、先一歩歩いている立花と柚子がふと、足を止めた。
こんな場所でも二人は腕を組み、抱き合っている感じだ。
「どうしたんだ?」
訊ねると、柚子が途切れ途切れに応える。
「聞こ…える」
「何をだ?」
柚子のもとに駆け寄って、顔を覗くと、顔面蒼白した柚子が呆然としていた。全身の血が吸血鬼に吸われたみたいに青くなっている。
その隣の立花も蒼白しきっていた。
二人とも、厳つい顔つきが今や何かに怯えだしている。
二人が目を見開き、凝らしているのは窓の奥の鬱蒼とした森林。
「ああああ……っ!」
今度は友人が叫びだした。
汚い地べたに尻をつき、窓の外を恐る恐る指差した。
おいおい、どうなっているんだ? 友人が指差した方向と二人が呆然と見ている方向は同じ。つられて、俺も恐る恐る目を見はった。
カキーン
カキーン
まるで、何かを討っている音が森の奥からした。でも、よく目と耳を凝らしてみると、全身白い生地の着物を羽織った女が杉の木に藁人形を打ちつけている。
「え?」
ズルリと片足が転げ落ちそうになった。その時、何かの拍子で割れ散った窓ガラスの破片等を踏んづけてしまった。
パリン グシャ
その音はやけに反響し、女がこちらを振り向いた。梅干しのように皺くちゃな顔した老婆。頭に乗せた、数本の火のついた蝋燭が動きと共にゆらりと揺れる。
「に、逃げるぞ!」
智は震える足を踏ん張り、友人と今だに呆然している二人に声をかけた。
女が奇声をあげ、斧を持って走ってくる。
俺らがいるのは一階の裏口玄関前。森からは若干、近い。鬼の血相で駆け寄ってくる女のスビードは測れしれない。
「う、うわあぁ!」
「いゃぁぁ!」
やっと、友人と二人が正気に戻り、一目散と外に向かっていく。
来た道を走るが、廊下が異常にも長い。面白話で進んできた道がこんなにも憎むなんて。
女が裏口玄関の戸をこじ開け、中に入ってきた。
「うおぉ! あぁぁ! 待てぇぇぇぇ!!」
まるで、地獄から帰ってきた生霊のような恐ろしい声が建物内に反響した。
俺らはそんな声を無視し、やっと外に出た。一目散と、車に戻る。
「シートベルト……!」
「そんな事より早く!」
「待て、鍵が!」
俺はポケットから鍵を取り出し、震える指先で鍵穴に刺す。その間、柚子は泣き出し、立花は呆然、友人は目の前にいるかのような悲鳴をあげて、車の中は混乱している。
鍵がやっとの事で鍵穴に刺した。ブルンと車のエンジン音がなる。
「良かった……これで」
安堵した束の間、車の前のガラスに女が張り付いた。
「貴様らの顔……覚えておく。あとで待ってろぉ!」
「ひぃ!」
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俺はついに怖くなり、そのまま車を発進させ、都会に向かって全速力で走った。
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