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第二章 本当の戦い
第24話 現実世界へと
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長い夢を見ていたような心にぽっかりと穴があいた感覚になった。起きたばかりなのに、あの人に会いたい。菜穂は目を覚した直後、そう思った。
「……ん」
知らない天井が第一だった。次に知っている声がした。
「おはよう。目、覚めた?」
隣のベッド越しに玲緒が菜穂を心配そうに見つめていた。
「あれ……私」
「終わったんだよ。全て」
玲緒が気さくに笑い、そう言うが、菜穂の頭の中はまだ、混乱していた。上体を起きあがり、キョロキョロしてみる。病院だ。知らない病院。
窓からは生ぬるい風が頬を伝てくる。目を疑うのは窓の外の景色だった。道というコンクリートはひび割れ、瓦礫が散乱している。高いビルも国宝建物もぽっかりとどこかが砕け建物を維持しようと傾いている。
思い出した。あの日、あの時、全てが崩壊したんだ。一つのメールが送られてきてそこから……―。思い出したくない。あんな、血なまぐさい記憶なんて。
「あんた、丸二日寝てたんだよ」
玲緒が呆れた表情で言う。
「二日……そんなに」
頭を抱え、心の中を整理した。
「私も、目が覚めたら病院にいたの。ここは東京で一番でかい病院」
東京都心大附属大学病院。約百名を越える行方不明者を確保している。みな、目がさめたらこの病院のベッドだったらしい。
経緯はみな、口を揃えてわからないらしい。
「それよりも、私たち、行方不明者になってたんだ」
「やっぱそこよね」
菜穂と玲緒のベッドの間にある小さな本棚には、雑誌や漫画が置いておる。雑誌にはジャーナリストによる行方不明者の経緯や災害についての写真と現状が何冊もこれみよがしに載っていた。
「はぁ、見てよこれ。〝行方不明者は選ばれし人の子〟だって」
本棚から一冊の雑誌を拾い、玲緒は大きく見開いた見出し文字を口にして言う。菜穂は雑誌の大きく広げた見出し文字を見ると、複雑な気分になった。
「ぜんぜん、そんなんじゃないのに……」
死という名の恐怖と戦い、これまでも無残な死に際たちの光景が脳裏に浮かぶ。ずっと顔を俯いてると、玲緒がまた心配そうに訊ねてきた。
「手、大丈夫なの?」
菜穂は目を細め、微笑んだ。
「うん。大丈夫。ほら、このとおり!」
負傷した右手を玲緒の前に突き出した。ぐるぐると包帯が巻かれてて、見るからにはわからない。梓に躊躇なく腹を刺され、数十回幾度となく手の甲を刺してきた。その痛みはまだ、にわかに残っている。
窓の外から生ぬるい風が吹いた。室内の中に風が運ばれていく。すると、病室の扉がカラカラと乾いた音をだし、戸が開いた。そこから、白衣をきた男の人と看護師の女性が室内の中に入ってきた。
二人は一緒の病室にいる玲緒や他の人さえも目も留まらず、菜穂のほうへと一直線で向かってきた。
「原田さん、起きたのですね」
脂肪が溜まった体に白衣を纏った医者がにこやかに言った。
看護師さんが玲緒と菜穂の間にあるカーテンを速やかに閉め、菜穂の周りには医者と看護師だけとなった。
「はい……?」
戸惑いつつも返事をすると医者が早速だが……と前置きして語り始めた。
「四日前に起きた大災害。被害は世界中で一億を越える。日本でそんなお金持ちは多くにあるが……」
眉間に皺を寄せ困った顔で医者が言葉をつまらせた。菜穂はドクンドクンと心臓が速く脈うち、医者から言う言葉を待った。
「なにが言いたいのですか……?」
「つまり、あの大災害で復興しようにも資金が足りない。しかし……君のご両親は……――」
菜穂の鼓動が一瞬、氷つけにされたように止まった。ずっと医者から言う言葉が耳にやきつき、頭の中に反響している。
カーテンが開け、医者と看護師は足取りを重くして帰っていった。ベッドの上で寝転び雑誌を見ていた玲緒は背中を丸めた菜穂をみて心配した。
「何かされたの?」
菜穂はゆっくり首を横に振る。静かに玲緒の顔を見ると、寂しげに微笑んだ。
「そういえば、颯負と帝斗ってどこの病室なの?」
「え? あぁ、あの二人なら一番上の階じゃなかったっけ」
「今夜、そこに忍びこもう!!」
いきなり菜穂がベッドから降り抱きついた。
「え!? ちょっと! 本気!?」
「本気本気」
玲緒の驚いた反応を見て悪戯っ子のように無邪気に菜穂は笑った。菜穂がどうして忍びこもうと考えたのは、あの人に会いたい為。
「上の階ってどこらへんなんだろ」
夜、こっそりここを抜け出す事にショックを隠せない玲緒をよそに、勝手に話しをすすめる菜穂。病室の分厚い戸から顔を出し、キョロキョロする。
「でも、忍びこむったって警備とかが……」
「ふふん。そんときゃそんとき!」
パチリとウインクをし、悪戯っ子のように微笑んだ。その笑みを見て、なにも言えなかった玲緒はしぶしぶ口をとざした。
「わかった……とことん付き合ってあげる!!」
「……ん」
知らない天井が第一だった。次に知っている声がした。
「おはよう。目、覚めた?」
隣のベッド越しに玲緒が菜穂を心配そうに見つめていた。
「あれ……私」
「終わったんだよ。全て」
玲緒が気さくに笑い、そう言うが、菜穂の頭の中はまだ、混乱していた。上体を起きあがり、キョロキョロしてみる。病院だ。知らない病院。
窓からは生ぬるい風が頬を伝てくる。目を疑うのは窓の外の景色だった。道というコンクリートはひび割れ、瓦礫が散乱している。高いビルも国宝建物もぽっかりとどこかが砕け建物を維持しようと傾いている。
思い出した。あの日、あの時、全てが崩壊したんだ。一つのメールが送られてきてそこから……―。思い出したくない。あんな、血なまぐさい記憶なんて。
「あんた、丸二日寝てたんだよ」
玲緒が呆れた表情で言う。
「二日……そんなに」
頭を抱え、心の中を整理した。
「私も、目が覚めたら病院にいたの。ここは東京で一番でかい病院」
東京都心大附属大学病院。約百名を越える行方不明者を確保している。みな、目がさめたらこの病院のベッドだったらしい。
経緯はみな、口を揃えてわからないらしい。
「それよりも、私たち、行方不明者になってたんだ」
「やっぱそこよね」
菜穂と玲緒のベッドの間にある小さな本棚には、雑誌や漫画が置いておる。雑誌にはジャーナリストによる行方不明者の経緯や災害についての写真と現状が何冊もこれみよがしに載っていた。
「はぁ、見てよこれ。〝行方不明者は選ばれし人の子〟だって」
本棚から一冊の雑誌を拾い、玲緒は大きく見開いた見出し文字を口にして言う。菜穂は雑誌の大きく広げた見出し文字を見ると、複雑な気分になった。
「ぜんぜん、そんなんじゃないのに……」
死という名の恐怖と戦い、これまでも無残な死に際たちの光景が脳裏に浮かぶ。ずっと顔を俯いてると、玲緒がまた心配そうに訊ねてきた。
「手、大丈夫なの?」
菜穂は目を細め、微笑んだ。
「うん。大丈夫。ほら、このとおり!」
負傷した右手を玲緒の前に突き出した。ぐるぐると包帯が巻かれてて、見るからにはわからない。梓に躊躇なく腹を刺され、数十回幾度となく手の甲を刺してきた。その痛みはまだ、にわかに残っている。
窓の外から生ぬるい風が吹いた。室内の中に風が運ばれていく。すると、病室の扉がカラカラと乾いた音をだし、戸が開いた。そこから、白衣をきた男の人と看護師の女性が室内の中に入ってきた。
二人は一緒の病室にいる玲緒や他の人さえも目も留まらず、菜穂のほうへと一直線で向かってきた。
「原田さん、起きたのですね」
脂肪が溜まった体に白衣を纏った医者がにこやかに言った。
看護師さんが玲緒と菜穂の間にあるカーテンを速やかに閉め、菜穂の周りには医者と看護師だけとなった。
「はい……?」
戸惑いつつも返事をすると医者が早速だが……と前置きして語り始めた。
「四日前に起きた大災害。被害は世界中で一億を越える。日本でそんなお金持ちは多くにあるが……」
眉間に皺を寄せ困った顔で医者が言葉をつまらせた。菜穂はドクンドクンと心臓が速く脈うち、医者から言う言葉を待った。
「なにが言いたいのですか……?」
「つまり、あの大災害で復興しようにも資金が足りない。しかし……君のご両親は……――」
菜穂の鼓動が一瞬、氷つけにされたように止まった。ずっと医者から言う言葉が耳にやきつき、頭の中に反響している。
カーテンが開け、医者と看護師は足取りを重くして帰っていった。ベッドの上で寝転び雑誌を見ていた玲緒は背中を丸めた菜穂をみて心配した。
「何かされたの?」
菜穂はゆっくり首を横に振る。静かに玲緒の顔を見ると、寂しげに微笑んだ。
「そういえば、颯負と帝斗ってどこの病室なの?」
「え? あぁ、あの二人なら一番上の階じゃなかったっけ」
「今夜、そこに忍びこもう!!」
いきなり菜穂がベッドから降り抱きついた。
「え!? ちょっと! 本気!?」
「本気本気」
玲緒の驚いた反応を見て悪戯っ子のように無邪気に菜穂は笑った。菜穂がどうして忍びこもうと考えたのは、あの人に会いたい為。
「上の階ってどこらへんなんだろ」
夜、こっそりここを抜け出す事にショックを隠せない玲緒をよそに、勝手に話しをすすめる菜穂。病室の分厚い戸から顔を出し、キョロキョロする。
「でも、忍びこむったって警備とかが……」
「ふふん。そんときゃそんとき!」
パチリとウインクをし、悪戯っ子のように微笑んだ。その笑みを見て、なにも言えなかった玲緒はしぶしぶ口をとざした。
「わかった……とことん付き合ってあげる!!」
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