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第一章 運命と死と想い
第5話 サイコパスの理由①
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ずっと保留にしてあった『サイコパス』の理由をここで語ろう。あれは小学3年生の時…―
誰しもが絶対にいる嫌な奴っているだろう。3年生の時、そいつと偶然同じクラスになってしまった。そいつのアダ名は〝女王〟。名の通り、狭い教室を支配していた。女王の周りにはいつも我よ我よと同じ学年の女が群がっていた。
そいつらは廊下を真ん中で歩くわ、授業中、昼休みはうるさいのなんの。俺には関係ないと思って毎日、過ごしていた。
だけど、2学期早々注目を浴びる事件が起きた。
朝、いつも通りに退屈な学校に向かい、いつも通り机に向かった。そして、いつも通り引き出しを…。
引き出しを開けた途端、自分の物ではないデコデコにおかしく貼ったシールやキラキラジュエルが天井の蛍光灯に対し反射している財布があった。
驚愕した。息が過呼吸になる程。
自分の私物の中に他人のが紛れ込まれ、しかもこの財布の持ち主はあの女王の。一体誰が…
驚愕で動けない俺の元に引っかかったといわんばかりに女王と側近の女子が俺を囲いクラス全員が見てる前で血祭りに挙げられた。
授業中、先生が教壇に立っている中、丸く団子にした紙がポイッと投げられた事がある。まるで、ゴミ箱のように。四方八方から。その時、当時の女の先生と目があった。
しかし、見ていないかのように視線を逸らし、授業を進める。
その日の屈辱は捨てても捨てきれないものだった。
復讐する。血祭りにあげたい。
沢山の策を考えてあの女王、側近の奴らに目に毒を。策は広がった。広がるうち、毒以上の策が広がった。愉しいものだった。
策に必要な外来種を取りに行こうと夜、人気もない公園やあっちこっちを手当たりしだいに探した。
親をなんとか誤魔化して外に行くのは容易い事だった。
街頭はあっちこっちに建っており、真夜中でも昼間みたいな光が灯していた。
「くそっないか」
額にびっしりと張った汗を手の甲で拭く。滴り落ちた汗は着ていた着衣にスゥと吸い込まれる勢いで服に染み込んだ。
外来種を見つける為、汗をかいても泥沼になっても懸命になった。
今の俺では考えられないぐらいだな。街頭が幾つも建っている公園やアスファルト道を抜け、街頭が唯一建っていない「森の泉神社」に向かった。
石段を登り、赤い社を通る。目の前に広がってたのは真っ暗な視界だった。今まで街頭の光を当てていた為、真っ暗な闇は好奇心がそそる。
「なにしてんの?」
後ろから聞き覚えのある声が耳にした。思わず、振り向く。最後の石段を登った場所に小柄な女が立っていた。
同じクラスの確か、稲葉千尋だ。
今思い返すと少々、菜穂に似ている。髪の毛が茶髪だったからかな。
千尋は塾の帰りなのか大きなバックを背負い、黒い服に身に纏った心也を黒い目で見つめている。
「久保くん…だよね?」
千尋が恐る恐る心也に訊ねた。
「うん」
「なんでここにいるの?」
それはこっちが聞きたい。なぜこんな真夜中にお前なんかがいる。しかも、見られた。計画を中止するか。いいや、これも計算していただろ。誰かに見られたらまず…。
「稲葉さんも、なんでこんな時間に一人で?」
おずおずと千尋に近づいた。
「わたしは…そのほら! あれだよ! えぇーと、祈願?」
照れくさく笑う千尋にもとに一歩一歩歩んでく。見られたからには、死んでもらう。なんの躊躇いもなかった。千尋の一歩後ろでは闇に溶け込んだ何層もつくられた石段。物心つく頃から、人が高い所から落ちた衝撃と死際をこの目で見たかった。
好奇心という衝動で千尋に近づく。しかし、考えていなかったのは彼女の行動だった。
「久保くん。まさか自殺するつもり?」
逆に千尋のほうから心也にくっついてきた。
「は?」
心也は驚愕で千尋の目を見つめ、訊ねた。
「だって今、女子たちのターゲットって久保くんじゃん…。その、なんか、耐え切れなくて自殺とか」
「するわけないじゃん!!」
さも当たり前に心也は応えた。それを聞いた千尋はホッと胸を撫で下ろし、真正面にいる心也の横を通り抜けた。
「それは良かった!」
神社の真ん中で振り向き、微笑み返す。千尋はもう、石段から離れ、これでは、石段から突き飛ばす事ができない。
確か、千尋は女王にいつもくっついている女子モドキ共とは一緒じゃない。いつも、地味なグループにいる。その事をここで思い出す。
「ここで何を祈願するの?」
計画が1度失敗したにも関わらず彼女の起こした行動によりますます、苛立ちが芽生えた。
「両想い」
彼女が照れくさくそう言った。
「森の泉神社」は確か、恋心を応援する神社だったはず。しかも、それが絶大に叶うのは真夜中でたった一人で来る事だった。
千尋の顔はまだ赤く火照ていた。クラスには確かに1人や2人顔立ちが良いやつもいる。その中で地味な千尋が誰を好きになったのか、または両想いになりたいのか全く検討もつかない。
しかし、このあと、どうするか。突き飛ばす方法以外にもあるが、この手は使いたくなかった。
「稲葉さん、背中に虫が」
「え!? 嘘! とってとって!」
千尋は慌て、心也にがら空きになった背中を向けた。
その小さな背には虫一匹とまっていない。心也の嘘に騙されたのだ。
誰しもが絶対にいる嫌な奴っているだろう。3年生の時、そいつと偶然同じクラスになってしまった。そいつのアダ名は〝女王〟。名の通り、狭い教室を支配していた。女王の周りにはいつも我よ我よと同じ学年の女が群がっていた。
そいつらは廊下を真ん中で歩くわ、授業中、昼休みはうるさいのなんの。俺には関係ないと思って毎日、過ごしていた。
だけど、2学期早々注目を浴びる事件が起きた。
朝、いつも通りに退屈な学校に向かい、いつも通り机に向かった。そして、いつも通り引き出しを…。
引き出しを開けた途端、自分の物ではないデコデコにおかしく貼ったシールやキラキラジュエルが天井の蛍光灯に対し反射している財布があった。
驚愕した。息が過呼吸になる程。
自分の私物の中に他人のが紛れ込まれ、しかもこの財布の持ち主はあの女王の。一体誰が…
驚愕で動けない俺の元に引っかかったといわんばかりに女王と側近の女子が俺を囲いクラス全員が見てる前で血祭りに挙げられた。
授業中、先生が教壇に立っている中、丸く団子にした紙がポイッと投げられた事がある。まるで、ゴミ箱のように。四方八方から。その時、当時の女の先生と目があった。
しかし、見ていないかのように視線を逸らし、授業を進める。
その日の屈辱は捨てても捨てきれないものだった。
復讐する。血祭りにあげたい。
沢山の策を考えてあの女王、側近の奴らに目に毒を。策は広がった。広がるうち、毒以上の策が広がった。愉しいものだった。
策に必要な外来種を取りに行こうと夜、人気もない公園やあっちこっちを手当たりしだいに探した。
親をなんとか誤魔化して外に行くのは容易い事だった。
街頭はあっちこっちに建っており、真夜中でも昼間みたいな光が灯していた。
「くそっないか」
額にびっしりと張った汗を手の甲で拭く。滴り落ちた汗は着ていた着衣にスゥと吸い込まれる勢いで服に染み込んだ。
外来種を見つける為、汗をかいても泥沼になっても懸命になった。
今の俺では考えられないぐらいだな。街頭が幾つも建っている公園やアスファルト道を抜け、街頭が唯一建っていない「森の泉神社」に向かった。
石段を登り、赤い社を通る。目の前に広がってたのは真っ暗な視界だった。今まで街頭の光を当てていた為、真っ暗な闇は好奇心がそそる。
「なにしてんの?」
後ろから聞き覚えのある声が耳にした。思わず、振り向く。最後の石段を登った場所に小柄な女が立っていた。
同じクラスの確か、稲葉千尋だ。
今思い返すと少々、菜穂に似ている。髪の毛が茶髪だったからかな。
千尋は塾の帰りなのか大きなバックを背負い、黒い服に身に纏った心也を黒い目で見つめている。
「久保くん…だよね?」
千尋が恐る恐る心也に訊ねた。
「うん」
「なんでここにいるの?」
それはこっちが聞きたい。なぜこんな真夜中にお前なんかがいる。しかも、見られた。計画を中止するか。いいや、これも計算していただろ。誰かに見られたらまず…。
「稲葉さんも、なんでこんな時間に一人で?」
おずおずと千尋に近づいた。
「わたしは…そのほら! あれだよ! えぇーと、祈願?」
照れくさく笑う千尋にもとに一歩一歩歩んでく。見られたからには、死んでもらう。なんの躊躇いもなかった。千尋の一歩後ろでは闇に溶け込んだ何層もつくられた石段。物心つく頃から、人が高い所から落ちた衝撃と死際をこの目で見たかった。
好奇心という衝動で千尋に近づく。しかし、考えていなかったのは彼女の行動だった。
「久保くん。まさか自殺するつもり?」
逆に千尋のほうから心也にくっついてきた。
「は?」
心也は驚愕で千尋の目を見つめ、訊ねた。
「だって今、女子たちのターゲットって久保くんじゃん…。その、なんか、耐え切れなくて自殺とか」
「するわけないじゃん!!」
さも当たり前に心也は応えた。それを聞いた千尋はホッと胸を撫で下ろし、真正面にいる心也の横を通り抜けた。
「それは良かった!」
神社の真ん中で振り向き、微笑み返す。千尋はもう、石段から離れ、これでは、石段から突き飛ばす事ができない。
確か、千尋は女王にいつもくっついている女子モドキ共とは一緒じゃない。いつも、地味なグループにいる。その事をここで思い出す。
「ここで何を祈願するの?」
計画が1度失敗したにも関わらず彼女の起こした行動によりますます、苛立ちが芽生えた。
「両想い」
彼女が照れくさくそう言った。
「森の泉神社」は確か、恋心を応援する神社だったはず。しかも、それが絶大に叶うのは真夜中でたった一人で来る事だった。
千尋の顔はまだ赤く火照ていた。クラスには確かに1人や2人顔立ちが良いやつもいる。その中で地味な千尋が誰を好きになったのか、または両想いになりたいのか全く検討もつかない。
しかし、このあと、どうするか。突き飛ばす方法以外にもあるが、この手は使いたくなかった。
「稲葉さん、背中に虫が」
「え!? 嘘! とってとって!」
千尋は慌て、心也にがら空きになった背中を向けた。
その小さな背には虫一匹とまっていない。心也の嘘に騙されたのだ。
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