―ミオンを求めて―最後の世界

ハコニワ

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第一章 運命と死と想い

第7話 天使と魔道士

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 五分ごとにくるブロック解除制。
 これを機に、石段の数は減り、ことごとく人も落ちていく。人を蹴飛ばし、我先に前へと突き進んでいる。
 その光景を瞼の奥に焼き付けた。
 恐ろしく身震いする光景だった。まさしく、生きるに執着している。人がどれほど残酷な動物なのかをはっきりと写してくれる。上に登っている人の服を掴み、下に落とす。下にいる者を蹴飛ばし、さらに、その下にいた者まで一緒に落ちる。まさに、ドミノ倒し。滑稽な映像だ。
 いつまでも、眺めていたい。
 さて、かなり登ってそろそろゴールの兆しを見つけてもおかしくはない。が、全くそれさえも見えない。
 別の刺激がほしい。このゲームは延長線だ。レッスン何たらってほざいてたから、きっと、これは序章に過ぎない。
 まだ、刺激があるという事だ。だとしたら、これに先手を撃たなければいけない。てっとり早く糸のように操れるのはあの女、菜穂だ。あの女は、色々と動けるかもしれない。
 そんな解釈でひたすら前に進んだ。
『ブロック解除します。残り2時間20分』
 またきた。このシステム、時間がわかるのはいいが、石垣の数が減ってしまう。要約すれば、制限時間のあと1時間すれば、もはや、空洞だけになるのでは?
 そうなると、蟻地獄だ。今でも、蹴飛ばしている現状がますます、地獄と化す。空中に置いて、人だけが残されていると、登る為の支えがないとは頂上まで登れない。
「ちょっと! そこ、危ないわよ!」
 ふと、そんな考えに浸っていると、鋭く尖った口調が足元から。思わず、振り向く。少し離れた先に学校指定の体操服を身に纏い、髪を一つにまとめ、目つきが鋭い女子高生が心也を怪訝と、みてた。ぶっきらぼうに再度言う。
「そこ、危ないわよ。というか、何一人で笑ってんの?」
 怪しげに眉を潜め、心也の隣まで登ってくる。何処かで見た事がある顔だ。芸能人。いいや、何処かのバラエティで一度だけ晴々と出た事がある。

 心也はこうみえても、記憶力がズバ抜けているのだ。それは、サイコパスという人外なものを生まれつき持ったせいなのか、後天性で持ってしまった力だ。
 心也の隣まで登ってくると、少女はふぅ、と一息つく。少女は鋭く尖った目つきで心也をまじまじ見つめる。
「何? どうせ何処かで見た女だなって思っているでしょ」
 尖った口調で言う。
 訊ねる前に少女がご満悦に笑みを漂わせた。尖った口調と鋭い目つき、まさにぶっきらぼうなヤンキーかと思っていたが初めての笑みを見せた。まるで、捨てられた犬を黙って拾う、そんな捨てがたいヤンキーみたいではないか。
宇月 玲緒うつき れおよ! 覚えてなさい! たぶん、最後まで生き残れるから」
 まるで、見てきたかのように、さも、当たり前に言った。
 そうだ。宇月玲緒。確か、超有名占い師の家系の一族、としてテレビのバラエティで報道されたっけ。その時、まんざらでもないようにバラエティに出ている芸能人の質問に応えていたのをはっきり覚えている。
「…どうして、最後まで生き残っていると?」
「それは見たからよ。私の力でね」
 ニッコリと、怪しい笑みでものを言う。
 占い師、駒としては使いたい。
 たとえば、冒険ファンタジーのゲームに出てくる役職に喩えよう。まず、勇者は第一。勇者は俺でもないから、誰かに例えたとして、次は勇者と互角の戦闘員。傷を癒すヒール的存在。魔法を扱える魔道士。
 傷を癒すヒールは菜穂だとして、占いなど、未知のものを扱える、魔道士はこの女だ。こうなれば、冒険に行くのに必要な役職が一部、揃った。しかし、魔道士は捨てがたい駒だとして、手っ取り早く扱えるか。操り人形のように、糸を体と頭の髄に潜りつけ、ただ、言われるがまま自由と言動、思考力も支配される。
 その事に、この女は駒にできるのか。はっきり言う。無理だ。
「占い…だとしたら、ここから、最短で安全なルート…占える?」
 試しに訊ねてみた。別に早く頂上につき、安全な場所に行きたくはない。この悲鳴と滑稽な映像をもっと近くではっきりと瞼の奥に焼きつきたいのだ。だが、試しに、どういう応えが返って来るのかみものだ。
「最短で…安全なルート…」
 浮かない声で考えこむ。
 数秒間、眉間に皺を寄せ、ピタと瞼を強く閉じている。その間、悲鳴が辺りを轟かせていた。

§

 数分前。五分ごとに起きるシステム時。菜穂と颯負はプレートに、心也は石垣に登っていた。まだ、ほんの数歩登っただけだが、最初に起きたシステムの瞬間だった。
 何人もの人が落ちたにも関わらず、心也は薄っすら嗤っていた。それを目にしていたのは颯負だ。目を見開き、それを眼光に映していた。
 しかし、もう一人。それを目撃していた人物がいたのだ。それは随分前に石垣に登った奴。心也より頭上にいたにも関わらず、それがわかったらしい。それは、帝斗だった。
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