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第三章 リリハの過去 心也たちは一切現れません! ごめんなさい!!
第37話 終わらない過去⑦
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アムに出会い助けられた。リリハの空想上の夢物語と平和に文句もつけず、聞いてくれた。そんな人は残虐なゲームを主催するひとだった。あの花畑で世間話や楽しい話、いろんなお喋りを交した情景が浮かんだ。
今でもあそこの花畑の新鮮な空気や花の蜜の香りが鼻をくすぐる。
アムからの話しは簡単だ。
「リリハがここまで生きてこれたのは貴女のおかげ。だから、この借りは必ず返す。リリハも連れてって」
差し出された手のひらをすくうように手を握った。
ミオンという最愛の妻を捜してる為、パワレルワールドを使って幾つの世界を旅してる事。
ゲームに残った一人はそのミオンの器になる事。
アムやカイトはこの世のものではない事。
全てを知った。
死んだ尚、知るなんて寂しいけど。
巨大な舟ともいえる大型の舟にのるように勧められた。これに乗り、旅するんだと。久しぶりに胸が高鳴った。不安も押し寄せる。
「ねぇ、カミュ……リリハちゃんとやれるかな?」
「……大丈夫だ」
トンと優しく背中を叩かれた。束の間、舟から見知った少年が降りてくる。カイトだ。
「えぇ!? 仲間にするんですかぁ!?」
カイトがこの上なく動揺してる。リリハだってあんたとはなりたくないわよ。と内心フツフツと怒りが篭ったが表情では見透かされないようにカイトから顔をそむけた。
すると、カミュがポンと背中を叩いた。
「確かに、この姿では舟には乗せられんな」
「お任せ下さい! では僕の好きな漫画の女の子にさせますね!」
カイトが満面の笑みで持っていたスケッチを広げ、パッパッと筆を動かした。
姿? 乗せられない? 分からない。リリハをよそに話しが勝手に進められてる。困惑してると、少年がどうでしょう! とスケッチをカミュに見せた。
カミュはスケッチを見るとリリハを見た。困惑したる最中、自分の身体がこうごうしく光に纏った。
まるで、戦隊ものの変身シーンを再現したかたち。
「え、ちょ何これ!?」
「人間の身体はすぐ腐る、この舟に乗る為にはその身体と名前を捨てなければ」
光がすぅと溶けるようにやみ、自分の身体を隈なく触った。なんだか……違和感半端ない。
視線が低い。目の前の少年より下。足がなんか、自分じゃないみたい。髪の色も。自慢の胸もない。
「む、胸が…ない……」
「当たり前です! 僕の好きな漫画の〝ナミちゃん〟はそんな脂肪なんて…っ」
少年の顔面を思いっきり殴った。
「胸は脂肪なんかじゃない! 夢が詰まってるってるの!」
あーだごーだ文句を言う。
すると、文句を言ってるリリハの横に気配が。思わず、視線を配らせると、そこには白装束の長身な若い女が。
「マネ……よ……ろ……しく……ナミ」
「な、ナミ…!? ナミってもしかして…」
確かめるように自分を指差した。
コクリと頷かれる。身体と名前を捨てるってこんな事だったんだ……と呆気に囚われた。
マネという女がポケットから何かを取り出した。簪だ。花畑で別れ、そのあと、少年が届けてくれて金色の簪。
捕まって奪われたまま。あのまま、簪は兵士や商人、貴族らにたらい回しされたのかと思いきや、ちゃっかり、戻ってくれた。
慌てて受け取る。女の表情は帽子で見えない。けど、涙が出るほど嬉しい。
改めて鏡で見ると、髪が蛇のように滑らかでサラサラした、白い髪の毛で瞳が赤。幼少に見える幼い顔立ち。どう足掻いても成長できなさそうな体。
挙句に名前が少年が好きな漫画の登場人物。〝ナミ〟まぁ、良しとしとこう。
カミュがミオンを捜し求める為、リリハもその船に同行した。
§
ゆっくりと瞼が開いた。深く重い眠りにやっと目が覚める。
「夢…? なんて懐かしい夢…」
目元に指先を持っていくと、大量の水が溢れてた。夢で泣くなんて惨めね。ゴシゴシ溢れ返る水を腕で払った。
冷たい、何も味がしない。あの頃の涙の味って…塩辛かったなぁ。
今頃になってあの時の記憶が降ってくるなんて、こんな記憶、残ってても悲しくなるだけ。なのに、全然捨てきれない。
手元にある蒼い線がチカチカと点滅した。それに触れてみる。触れた直後、その世界の情景が頭や耳、触感までを刺激した。見えたのは〝戦争〟この世の惨めで残酷な情景だった。
次に一本の線が途中から抜けてる線を触れてみた。見えたのは全宇宙の人が地上にいて愛溢れた世界。そこには人種も国籍も違えど周りは笑顔で溢れていた。こんなの、全然見たことない。
今でもあそこの花畑の新鮮な空気や花の蜜の香りが鼻をくすぐる。
アムからの話しは簡単だ。
「リリハがここまで生きてこれたのは貴女のおかげ。だから、この借りは必ず返す。リリハも連れてって」
差し出された手のひらをすくうように手を握った。
ミオンという最愛の妻を捜してる為、パワレルワールドを使って幾つの世界を旅してる事。
ゲームに残った一人はそのミオンの器になる事。
アムやカイトはこの世のものではない事。
全てを知った。
死んだ尚、知るなんて寂しいけど。
巨大な舟ともいえる大型の舟にのるように勧められた。これに乗り、旅するんだと。久しぶりに胸が高鳴った。不安も押し寄せる。
「ねぇ、カミュ……リリハちゃんとやれるかな?」
「……大丈夫だ」
トンと優しく背中を叩かれた。束の間、舟から見知った少年が降りてくる。カイトだ。
「えぇ!? 仲間にするんですかぁ!?」
カイトがこの上なく動揺してる。リリハだってあんたとはなりたくないわよ。と内心フツフツと怒りが篭ったが表情では見透かされないようにカイトから顔をそむけた。
すると、カミュがポンと背中を叩いた。
「確かに、この姿では舟には乗せられんな」
「お任せ下さい! では僕の好きな漫画の女の子にさせますね!」
カイトが満面の笑みで持っていたスケッチを広げ、パッパッと筆を動かした。
姿? 乗せられない? 分からない。リリハをよそに話しが勝手に進められてる。困惑してると、少年がどうでしょう! とスケッチをカミュに見せた。
カミュはスケッチを見るとリリハを見た。困惑したる最中、自分の身体がこうごうしく光に纏った。
まるで、戦隊ものの変身シーンを再現したかたち。
「え、ちょ何これ!?」
「人間の身体はすぐ腐る、この舟に乗る為にはその身体と名前を捨てなければ」
光がすぅと溶けるようにやみ、自分の身体を隈なく触った。なんだか……違和感半端ない。
視線が低い。目の前の少年より下。足がなんか、自分じゃないみたい。髪の色も。自慢の胸もない。
「む、胸が…ない……」
「当たり前です! 僕の好きな漫画の〝ナミちゃん〟はそんな脂肪なんて…っ」
少年の顔面を思いっきり殴った。
「胸は脂肪なんかじゃない! 夢が詰まってるってるの!」
あーだごーだ文句を言う。
すると、文句を言ってるリリハの横に気配が。思わず、視線を配らせると、そこには白装束の長身な若い女が。
「マネ……よ……ろ……しく……ナミ」
「な、ナミ…!? ナミってもしかして…」
確かめるように自分を指差した。
コクリと頷かれる。身体と名前を捨てるってこんな事だったんだ……と呆気に囚われた。
マネという女がポケットから何かを取り出した。簪だ。花畑で別れ、そのあと、少年が届けてくれて金色の簪。
捕まって奪われたまま。あのまま、簪は兵士や商人、貴族らにたらい回しされたのかと思いきや、ちゃっかり、戻ってくれた。
慌てて受け取る。女の表情は帽子で見えない。けど、涙が出るほど嬉しい。
改めて鏡で見ると、髪が蛇のように滑らかでサラサラした、白い髪の毛で瞳が赤。幼少に見える幼い顔立ち。どう足掻いても成長できなさそうな体。
挙句に名前が少年が好きな漫画の登場人物。〝ナミ〟まぁ、良しとしとこう。
カミュがミオンを捜し求める為、リリハもその船に同行した。
§
ゆっくりと瞼が開いた。深く重い眠りにやっと目が覚める。
「夢…? なんて懐かしい夢…」
目元に指先を持っていくと、大量の水が溢れてた。夢で泣くなんて惨めね。ゴシゴシ溢れ返る水を腕で払った。
冷たい、何も味がしない。あの頃の涙の味って…塩辛かったなぁ。
今頃になってあの時の記憶が降ってくるなんて、こんな記憶、残ってても悲しくなるだけ。なのに、全然捨てきれない。
手元にある蒼い線がチカチカと点滅した。それに触れてみる。触れた直後、その世界の情景が頭や耳、触感までを刺激した。見えたのは〝戦争〟この世の惨めで残酷な情景だった。
次に一本の線が途中から抜けてる線を触れてみた。見えたのは全宇宙の人が地上にいて愛溢れた世界。そこには人種も国籍も違えど周りは笑顔で溢れていた。こんなの、全然見たことない。
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