―ミオンを求めて―最後の世界

ハコニワ

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第三章 リリハの過去  心也たちは一切現れません! ごめんなさい!!

第36話 終わらない過去⑥

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 何が言いたいの? あんたのせいで、あの場所に戻されたのに、よく平気で顔合せるわね。ふつふつと怒りが込上がってきた。
「魔女狩りを…見たのは初めてじゃない、けど自分のせいで捕まった君を見て…酷く…申し訳なく思ってる…」
 ぷつんと頭の中で何かが切れた。俯いてる男の頬を思いっきり叩いた。
「あんたが申し訳なく思ってるならリリハは馬鹿じゃない! 申し訳ないとか要らないから! そ・れ・と! その喋り方、やめてくれる? ポツポツ小さい声で聞き取れないつぅの!」
 男を押し退け、自分の部屋で眠りについた。まだ、沸騰してる。眠れ眠れと暗示をかけその日は眠った。最後に見たあの男の顔は忘れられない。

 レッスン3『キングの首を打ち取る』というゲームが始まった。リリハ以外の二人のキングは貴族と商人の娘だった。間違いなく魔女として疑われてるリリハを狙う。別に怖くはない。
 平和を願ってた日もあった。こんなゲームが始まるなら、さっさと闘技場で負けたら良かったのに。今さら、平和とか夢とかそんなの…もうないのかもしれない。ううん、本当に先を見ると、真っ暗だ。リリハの周りには真っ暗でしかない。

「馬鹿はどっちだ…リリハ、本当に馬鹿じゃない…平和ってあほくさ」

 貴族のキングの配下たちが城を攻めたてて来た。側近である男がリリハの前に立つ。
「もう、守ってもらわなくても結構よ」
「…え」
 困惑顔する男の横を通り、外に向かった。男のダメおしが背から聞こえる。しかし、それを無視し、荒れている戦場に向かった。
 城内の外はリリハの配下の人たちと何処かの配下が戦ってた。リリハを魔女として攻撃してきた奴らも自分の命が掛かると必死な光景だった。

 ある一人の男が駆け寄ってくる。化物にも似た恐ろしい血相で鉄の棒を持って、リリハに駆け寄ってきた。
 この男も必死なのだ。死にたくない、ならば殺せ。単純にかんがえればこの事だ。
 平和を願ってた日も誰かが希望になってくれるんじゃないかと淡い期待もしてた。けど、そんな日はこの先、永遠に来ない。もっと早くに気付けば良かった。
 リリハも人であり、この人たちも人間でもある。感情がある。恐怖、妬み、優越感、疎外感それらの感情がある。
 人は誰かが下に成り下がらないと優越感が得られない。死を間際として恐怖を得る。これらのように、人は同じ感情があるにしてもそれを同じ時に思う事はない。

 男が棒を投げ飛ばしてきた。
 リリハは目を瞑り、両手を横に広げた。向かってくる棒を抱擁する形。皆の声が聞こえる。ごめん、勝手な判断で先行くね。

「何してんだ?」
 あれ? アムの声が聞こえる。まさか、幻聴?そろそろヤバイわね。
「ここで死ぬのか?」
 えぇ、死にますとも。ここで死んだ方が後は楽よ。ってか、今いい所だから話しかけてこないで。チラッと声のする方向見た。なんと、幻聴でもなく幻でもなくアムがいた。
 死ぬ心が一気に冷めた。久し振りに見る顔は変わっていない。辺りを見渡した。何と、あの日と同じ、時間が止まってる。荒れ狂う皆も埃も。この期に及んで驚きはしない。
「このゲームの目的はカイトが話しただろう」
「……確か、一人を決める」
「貴様と出会った日、愛しい想い人と似てると思ったんだ」
 あぁ、だから助けたのね。リリハを見るその目も今もその人物に重ねてるのかな。
「けど、ここで死ぬのなら思い過ごしだな」
「そうね、リリハはリリハだから、最後の一人になるまでこのゲームはしたくない」
 クスっと笑み宿し、再度、両手を広げた。顔を上に向け、目を瞑った。真っ暗な視界。ポツリ呟いた。
「あの日、話した夢物語…素敵だった。今ね、平和を考えてみたの」

 荒れ狂う皆と鬼の血相で躊躇もなく人を刺してる人たち。

「人間には感情やプライドがあるの。自分の国と他の国、線は引いてるけど何処か競争心がある…嫉妬や強欲、優越感、恐怖、そんな感情がある限り、平和なんてやってこない…人が生きてる限り、感情がある限り! 平和なんてやってこないの!」

 しんと静まり返った。それは当然、リリハとアムしかいないのだから。

「……アム…いいえ、カミュ、よね? リリハね貴方に助けられたあの日、ここで死ぬんじゃないかと思ったの。まだ夢があった時。貴方に出会えて助けられて本当に良かった」

 時が進む音がした。魔法が解けたのかも。皆の動きが微かに、ややスローモーション。棒もスローモーションでやってくる。アムがまだ横にいる気配がした。
「アム…こんな死に場所を与えてくれてどうも…っ」
 スローモーションだったのが、一気に時間が元に。上空で浮かんでた太いパイプのような棒が喉元に。真中で突き刺さった。血管と肉を貫通し裂け、ぶちぶちいう。
 言いかけてたのにクソが…崩れるように膝をうち倒れた。
 噴水のように血が溢れ、血の池ができた。

 これで、リリハは死んだ。リリハの国だった皆は悪くないのに私刑にされた。

 ごめんなさい。本当に……。

§

 ゆっくりと目が覚めた。
真っ白な空間。リリハ、死んだんだと直感した。ここは天国かな? キョロキョロ見渡した。真っ白、壁と天井が何処にあるのかさえ分からない。
「起きたか」
 後ろを振り返った。アムがいた。ゲームが終わったという。結果は世界中の皆、死んだ。驚く事はなかった。何故か見えてたのだから。不意にリリハの前にアムの手が差し伸べてきた。キョトンとする。
「一緒に来ないか?」
 問われた言葉を考えた。それは即ち、ゲームをする主催者側に回るという事。

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