―ミオンを求めて―最後の世界

ハコニワ

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第三章 リリハの過去  心也たちは一切現れません! ごめんなさい!!

第35話 終わらない過去⑤

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 取り出したのは何の変哲もない、ただの少年の手のひら。真っ白で生きてる人間の色とは思えない白さ。リリハは困惑した。少年は鉄の柵の間を通り越して手を差し伸べてる。一体、何なのだ…。握れ、という事か? 恐る恐る手をとってみた。
 すると、そこからボワッと青い火の玉が。
「……っ!」
「完了でーす」
 ニコッと笑みを宿し、手を戻した。火の玉は既にない。リリハはこれまで以上に困惑した。あの火の玉は魔女同然。もしや、少年の正体は魔女…? 両足がズキズキ痛むので身体を捻りながら、少年に問いた。
「貴女は……魔女…なの?」
「言う義理はないですね。代々、人間なんかと話すと虫唾が走るのに…カミュ様ってば、僕の事考えてくれない!」
 とプンスカ。
 ぷっくりと膨れてた顔を戻し、リリハを恍惚した目で見下ろしてきた。
「今の貴方…凄く魅力を感じます…その絶望の色、会った時はとても合わない女性でしたが今の貴方の絶望の色、僕好みです。あ、足治しましょうか?」
 ゾッと今日初めての血の気が引いた。絶望? 色? 何をふざけた事を言ってんの? 少年がクスと笑う根源を探した。結果、この子は人の絶望してる様を見るのが好きなんだ。
 今のリリハもそう。あの日、リリハが血の毛が引いた時もあの子は笑っていた。

「触んないで…離れて」

 ギラリと睨んだ。少なくとも怯えて逃げていってもいい程。しかし、少年は機械のように無表情で効いていない。
「明日、今宵の宴が始まる楽しみにして下さいね」
 ニコッと笑うと姿が闇に溶け込んだ。もう、声も影も見当たらない。

§

 また兵士に水をぶっかけられ、起きた。昨日は疲れてた筈なのに、全然、眠りに入れなかった。
 貴族、子ども、老人、それらが集まっている広場には多くの観客たちが揃っていた。みな、輪を囲むように高い台を囲んでいる。
 その台の上にリリハは乗った。同じく台の上に用意されてたのは『ファラリスの雄牛』だった。
 牛の形した金属の塊。火炙りの刑よりも重い拷問。
 周りを見渡した。ウズウズしている表情で台の上にいるリリハを眺めている。悔しい。涙がでるほど悔しい。
 ドンと背中を叩かれた。兵士に無理やり引っ張られ、中の空洞に無理矢理入る。扉が閉まりそうになった。

 その時、街の中央で爆発が起こった。

 ここで民衆の歓声が悲鳴に変わる。爆発は時同じくして、至る所から大爆発。それと、地を割く地鳴りと地震。今まで類をみない震災。リリハは地震の際、台から滑り落ちそうに―…。
 突如、青い火の玉が現れる。奇跡なのか、その下に何枚も重なって折り畳んだ布が置いてあった。
 混乱は続いてる。街中、地震、地鳴り、爆発が一気に襲った。
 最初の爆発から約10分を過ぎた時刻、上空に四角い枠が浮かび上がった。内容は文字だった。

『あなたはどちらですか? アネorカイト』

 悲鳴を上げてる者はそれどころじゃない。リリハも。だか、何故かその文字から目が離れなかった。

〝明日始める〟

〝今宵の宴が始まる、楽しみにして下さいね〟

 少年が言ってたのはこの事だったのか。アムも関連づいてる。街中が悲鳴に轟いた。この日、世界の終焉がやってきた。この爆発も全てアムと少年がやってるのなら問い詰めないと気が済まない。いいや、全てをぶちまけてもらおう。何者なのか。何処から来たのか。まずは、少年を問い詰めないと、心の中で少年の名を呟いた。

 その時、目の前の情景が変わった。耳をつんざく程の悲鳴もない。瓦礫や爆発、崩壊された建物や黒い煙が見渡すばかりない。白い巨大な物に立っている。
 冷たい風が傷だらけの身体にあたる。上空に浮かんでいるのだ。何の支えもなしに、周りの面々が「魔女の仕業だ!」「神の怒りに触れた!」とおかしな根源をつけてきた。
 リリハは爆発させる力や上空に文字を浮かべる力なんてもうとうない。
 ただ、魔女としてこの場にいるリリハを攻撃したいだけ。
『おっはよぅございまぁす! 皆さん選択で僕を選んでくださりありがとうございます!』
 上空にまた変なのが浮かんでる。少年はいつもと変わらぬ真顔で元気よく喋ってる。ここで会ったが百年目!
「ちょっと、貴方これはどういう…―」
『無駄話はあとで、さっさと始めますね。レッスン1は空中崖です。制限時間は3時間』
 少年が指をパチンとならした。
 すると、空中から絶壁とも似た山が浮き出た。それは天高く、雲の上まである。とてもや命綱や足場を置けるロープがないと登れない。しかし、あの天辺に少年がいると思うといてもたってもいられず夢中になるほど登った。


 登れば登るほど冷たい風が身体に押される。踏ん張らなかったら即、落ちる。が、リリハは持っていた体力には自信があった。
 何人の者が悲鳴をあげ落ちていく。それを目のあたりにして、死の恐怖や絶望感が芽生えなかった。
 だって、落ちていった者たちは全員、リリハを魔女として攻撃してきた奴らだったから。けど、本当に酷いのは落ちる際、リリハに助けを求めてきた事。ざまぁみろと思った。
 皆の目に宿る絶望の目が好ましくなった。酷い感情だ。こんなのはあの少年と同じじゃないか。

 レッスン1を通り越し、2に進んだ。レッスン2は選別。あの時、いなければ捕まることなかったあの兵士がいた。兵士にしては小柄。しかも、同じ配下となった。男はリリハを見ると見て見ぬふりして逸らした。

 レッスン3でリリハはキングになった。側近役はあの兵士の男がなった。その日の夜、あの男がわざわざ部屋まで尋ねてきた。曇った表情でリリハを見つめてる。
 何? もしかして、魔女がここまで生きてはいけないの? それとも、この死のゲームが怖くなったの?
 リリハは物言わず、男から喋るのを待った。男は微かに震え、口を噤んでる。
「……あの日」
 やっと喋った。
 ポツリポツリ聞き取れない声で喋る。
「君が捕まったあの日…僕は仲間とはぐれて森を彷徨ってたんだ…僕のお陰で捕らえられたって皆、喜んで…」
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