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第二章 本当の戦い
第22話 ミオン降臨
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背中を見せ、退場するかと思いきや、ナミは帝斗のもとへと歩み寄ってきた。
「隠れて!」
「わっ!」
ドンと体を強く地面に押し付けられ、仰向けになるとその上にナミが乗っかかってきた。まだ、熟していない小学生の体をしんしと受け、帝斗は理性を失いそうになった。
「ナミちゃ……」
「しっ! 静かに!」
白い髪の毛が鼻にあたってこそばゆい。しかも、吐息と熱がかかってさらに困惑する中、空から白い羽がふわふわと落ちてきた。
「羽……?」
雨のように落ちてくる羽はまさしく、天使のよう。
「出てきたわね」
ナミがやや震えて呟いた。来た? 何が? ナミが見ている視線の先を思わずみるとそこには全身黒づくめした好青年が一人で突っ立っていた。でも、おかしい。
違和感を二つ抱いた。
一つはこの場所は間違いなく紅葉のエリアで森と林だったはず。それなのに、好青年が立っている場所は茶色と青のカラフルなレンガタイルが敷いてある広場。真ん中で作られた噴水なんて今まで一度も見かけた事ない。
二つ。全身黒の服を身に纏った奴なんて一度もない。ナミの様子からみると、これは恐らく最悪な事態。
すると、好青年のもとに蝶のように美しい羽の生えた金髪碧眼女が空から降りてきた。
見る者全てを恍惚しそうな眩しいオーラした女はこの地に足を置くと、好青年にニコリと笑みを浮かべた。
「久しぶりね。元気だったかしら」
涼風のように透き通った凛とした声。
それまで、生温かい風がヒンヤリと氷のように冷たくなり、鳥肌がざわざわとたってきた。二人の間に立ち込める雰囲気はどことなく第三者が触れられない。
キシキシと触れられないように重圧の鎖が二人を庇い被せてるみたい。一歩でも動けば、その鎖に心臓を穿かれそうだ。
「ミオン」
金髪碧眼女の名は〝ミオン〟そう、好青年が口走った。団子のようにふっくらとした唇を怪しげにあげ、ミオンは好青年へと歩み寄った。
「わたしが何しに来たかわかる? カミュ」
好青年の名はカミュ。誰もこの人物がゲームを催したとは思わないだろう。しかし、この場にそれを知っている人物が二人揃っている。
ナミとカイトだ。カイトも違和感を感じ、ナミと同じく物陰に隠れている。
「会いたかった……妻よ」
カミュが袖から色白の手の平を差し伸べてきた。ミオンはそれを見て軽蔑した視線に変わった。
「わたしがここに来た理由、わからないわけね」
深い溜息を零し、背中に生えた蝶のヒレをバサリと大きく広げた。突拍子に、大きな機械音が発動する奇妙な音がした。
ミオンの胸の前に歯車が現れ、ぐるぐると廻っていた。
「残念だけど、わたしがここに来た理由は貴方を止める為。その他はないわ」
「……っ!?」
驚きを隠せないカミュにミオンは躊躇もなく攻撃を仕掛けた。歯車からピシピシ軋む音をした途端、カミュの右肩から脇腹までが灰となった。溶ける、消える、そんなものではない。
ブラックホールの黒い禍々しい円の渦、それが背後から現れ、渦をまいたように体を吸い込み、肉と皮、骨までも白い灰とさせてみた。
その灰は風によって、辺りに散りばめ音もなく消えていった。
カミュ本人でも、なくなった体を気づくのに数秒経ったくらいだ。
「えっ! そんな」
声を抑え、挙動不審に首を前乗りしたり、ゆさゆさと揺れるナミ。丸い目を丸くし、飛び出しそうな程、驚いている。
洞察力の優れた帝斗から見れば、これは演技ではないとすぐに気づいた。恐らく、目先にいる好青年、カミュという人外の人物の正体もナミの口から言わずとかな、うすうす感づいた。
「……ミオン」
ナミが高貴の存在を眺めるような眼差しでミオンを凝視した。
「知り合い?」
「んなわけあるかい! でも、ずっとずっと前から捜し人だったの」
昔の記憶を振り返るように遠い目で静かに喋る。帝斗はふぅんと無関心の態度で視線を逸らすと、こことは違う物陰からカイトが現れた。
「よくも……カミュ様を!」
真紅の瞳を神々しく光らせ、何もない手元からふわりと何かが現れた。
「まさかあいつ、殺るき!?」
ナミが青い顔し、遠くからカイトとミオンを交互に目を見張る。そんな心配をよそにカミュが口を開いた。
「一緒にいたくないってどういうことだ」
「そのままの意味よ」
ミオンは両腕を横に広げ、目を閉じた。暗黙の静寂が流れる。
「わたしは魂ある者全ての人間が好き。たとえ、汚れてても淀んでも幾つもある魂に秤はない。けど、あなたは神という存在でありながらその力を使い、魂ある者の運命を歪めさせた。さぁ、選びなさい。ここでわたしに消されるか、天界の牢獄に入るか……二択しかない。今、ここで決めなさい」
透き通った凛とした声に威厳を感じ、辺りがピリピリと弾けそうだ。
「隠れて!」
「わっ!」
ドンと体を強く地面に押し付けられ、仰向けになるとその上にナミが乗っかかってきた。まだ、熟していない小学生の体をしんしと受け、帝斗は理性を失いそうになった。
「ナミちゃ……」
「しっ! 静かに!」
白い髪の毛が鼻にあたってこそばゆい。しかも、吐息と熱がかかってさらに困惑する中、空から白い羽がふわふわと落ちてきた。
「羽……?」
雨のように落ちてくる羽はまさしく、天使のよう。
「出てきたわね」
ナミがやや震えて呟いた。来た? 何が? ナミが見ている視線の先を思わずみるとそこには全身黒づくめした好青年が一人で突っ立っていた。でも、おかしい。
違和感を二つ抱いた。
一つはこの場所は間違いなく紅葉のエリアで森と林だったはず。それなのに、好青年が立っている場所は茶色と青のカラフルなレンガタイルが敷いてある広場。真ん中で作られた噴水なんて今まで一度も見かけた事ない。
二つ。全身黒の服を身に纏った奴なんて一度もない。ナミの様子からみると、これは恐らく最悪な事態。
すると、好青年のもとに蝶のように美しい羽の生えた金髪碧眼女が空から降りてきた。
見る者全てを恍惚しそうな眩しいオーラした女はこの地に足を置くと、好青年にニコリと笑みを浮かべた。
「久しぶりね。元気だったかしら」
涼風のように透き通った凛とした声。
それまで、生温かい風がヒンヤリと氷のように冷たくなり、鳥肌がざわざわとたってきた。二人の間に立ち込める雰囲気はどことなく第三者が触れられない。
キシキシと触れられないように重圧の鎖が二人を庇い被せてるみたい。一歩でも動けば、その鎖に心臓を穿かれそうだ。
「ミオン」
金髪碧眼女の名は〝ミオン〟そう、好青年が口走った。団子のようにふっくらとした唇を怪しげにあげ、ミオンは好青年へと歩み寄った。
「わたしが何しに来たかわかる? カミュ」
好青年の名はカミュ。誰もこの人物がゲームを催したとは思わないだろう。しかし、この場にそれを知っている人物が二人揃っている。
ナミとカイトだ。カイトも違和感を感じ、ナミと同じく物陰に隠れている。
「会いたかった……妻よ」
カミュが袖から色白の手の平を差し伸べてきた。ミオンはそれを見て軽蔑した視線に変わった。
「わたしがここに来た理由、わからないわけね」
深い溜息を零し、背中に生えた蝶のヒレをバサリと大きく広げた。突拍子に、大きな機械音が発動する奇妙な音がした。
ミオンの胸の前に歯車が現れ、ぐるぐると廻っていた。
「残念だけど、わたしがここに来た理由は貴方を止める為。その他はないわ」
「……っ!?」
驚きを隠せないカミュにミオンは躊躇もなく攻撃を仕掛けた。歯車からピシピシ軋む音をした途端、カミュの右肩から脇腹までが灰となった。溶ける、消える、そんなものではない。
ブラックホールの黒い禍々しい円の渦、それが背後から現れ、渦をまいたように体を吸い込み、肉と皮、骨までも白い灰とさせてみた。
その灰は風によって、辺りに散りばめ音もなく消えていった。
カミュ本人でも、なくなった体を気づくのに数秒経ったくらいだ。
「えっ! そんな」
声を抑え、挙動不審に首を前乗りしたり、ゆさゆさと揺れるナミ。丸い目を丸くし、飛び出しそうな程、驚いている。
洞察力の優れた帝斗から見れば、これは演技ではないとすぐに気づいた。恐らく、目先にいる好青年、カミュという人外の人物の正体もナミの口から言わずとかな、うすうす感づいた。
「……ミオン」
ナミが高貴の存在を眺めるような眼差しでミオンを凝視した。
「知り合い?」
「んなわけあるかい! でも、ずっとずっと前から捜し人だったの」
昔の記憶を振り返るように遠い目で静かに喋る。帝斗はふぅんと無関心の態度で視線を逸らすと、こことは違う物陰からカイトが現れた。
「よくも……カミュ様を!」
真紅の瞳を神々しく光らせ、何もない手元からふわりと何かが現れた。
「まさかあいつ、殺るき!?」
ナミが青い顔し、遠くからカイトとミオンを交互に目を見張る。そんな心配をよそにカミュが口を開いた。
「一緒にいたくないってどういうことだ」
「そのままの意味よ」
ミオンは両腕を横に広げ、目を閉じた。暗黙の静寂が流れる。
「わたしは魂ある者全ての人間が好き。たとえ、汚れてても淀んでも幾つもある魂に秤はない。けど、あなたは神という存在でありながらその力を使い、魂ある者の運命を歪めさせた。さぁ、選びなさい。ここでわたしに消されるか、天界の牢獄に入るか……二択しかない。今、ここで決めなさい」
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