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二章 白崎聖人の世界
第22話 作戦成功
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ご飯も食べて、お風呂にも入って、布団に潜る前にまた他愛もない会話をして、就寝。
「何もなかったね」
愛姫がボソリと言った。
部屋の中は真っ暗で、静まり返っている。二人用のベットがあって、天和と愛姫は同じベットで寝ていた。
隣では、既に寝息をたてて寝ている朝霧の姿が。疲れたのか、すぐに眠った。その寝顔は、穏やかに満ちていた。
「そのようですね」
ホッとして言った。
朝霧が助かったことに、ホッとしている自分がいる。朝霧はただの人間。大勢いる魂の一つにすぎない。天使だったとき、こんな感情は芽生えなかった。
わたくしもまた、神様の首輪から離れようとしているのか。天音みたいに束縛や定めも引きちぎって、檻の中から出るか。できない。わたくしには、そんなの……。
「天和姉」
ふいに愛姫に話しかけられた。
びっくりして肩が縮こまった。愛姫は目と鼻の先にいる。そりゃ、同じベットで寝ていたら、距離は近くなる。愛姫は、ふっと笑っていた。
「こういうお泊まり会、愛姫も初めてなんだ。友達とか、いなかったから。ふふっ。凄い嬉しい」
「……そうですか。それは良かった」
「そういえば、どうしてこんなことを?」
「唐突ですね。今までよく疑問に思わなかったですね」
正直すごいドン引きだ。愛姫はくもりなき眼で見つめてくる。その眼差しだけは、弱いんだよな。
対象である朝霧も眠っている。天和はそれを目で確認して、全て言った。強姦犯を倒すべく始まったこと。強姦犯が朝霧の彼氏であり、朝霧がそのせいで自さつすること。それを止めるために、ここにいると。
愛姫はなるほどと理解した。
まぁ流石に、何度もタイムリープを繰り返しているとは言えない。その時、ベットがきしむ音がした。隣でベットで寝ていた朝霧が起きていたのだ。
「そう。そんな理由で……」
乾いた声。
寝ていたふりをして、全て聞いていた。
朝霧はじっとこちらを睨んでいた。暗くても分かる。その眼光は、青白く光り鋭利な刃物みたいだった。
「朝霧さん、これは違うんです!」
「何が違うの? そもそも、彼が強姦なんてやるわけないじゃない。嘘つかないで。みんなして、彼が悪者だって言ってくるけどあたしは信じない! おかしいと思ったんだよ。接点のない天和さんがお泊まり会なんて、それにコソコソしてたし、彼を悪く言う人許さない。仲良くなったけど、今回だけだね」
朝霧はベットから起き上がり、スタスタと何処かに向かった。まさか、彼がほんとにやってないと確証えるために外に向かうつもりなのか。
「朝霧さん、待ってください!」
天和もベットから起き上がり、呼びとめた。でも、彼女は聞く耳すらない。無視をして、玄関に向かう。玄関のほうは少量だけ塗った。
強い力で押せば、扉は開く。もう、どうしても外に行くのであればこれしかない。天和は自分の携帯を操作して、男に頼んどいたボイスレコーダーを流した。
最初ははっきりと声は聞こえなかったが、だんだん聞こえるようになってきた。そこから漏れ出すのは、朝霧の彼氏の声。
突然、彼氏の声がして朝霧も振り返った。瞳の中が潤っている。漏れ出す声は、とても落ち着いていた声だった。これは恐らく、捕まったあとに録ったものでしょうね。
強姦で逮捕されたと、自ら言っている。それを聞いた朝霧は、潤った瞳が限界になり爆発した。それでも、声は続く。『それでも待っていてくれるか?』という最後の願いだった。朝霧は、途中泣き喚いてたが、最後の声を聞くと涙が止まっていた。
天和は朝霧に携帯を託し、愛姫とともにこの家を出た。愛姫は、少し怯えていた。さっきの険悪な空気に怖じ気ついていたのだ。出て行った最後、朝霧は床で丸くなり携帯を握りしめていた。
「大丈夫かな」
「大丈夫です。人間は、しぶとい生き物なので」
心配する愛姫に、そう言い聞かせた。そして犯人逮捕、朝霧救出、この2つがやっと作戦成功になった。僕ら四人の粘り勝ちだ。
5月1日、必ず誰かが死ぬ。そんな絶対的なルールを僕らが止めて、5月2日を迎えた。奇跡的だと、神様が言うかもしれない。でもこれは奇跡じゃ足りない。
長い戦いが終わった。ルールに抗い、戦い勝った。
朝起きると、毎回日時を確認する。5月2日。ちゃんと表示してある。それだけで感無量だ。
長い戦いが終わり、僕はやっと天音さんを探すことができる。念願の。僕が何度もタイムリープしていること、僕が見つけてくれないこと、怒っているだろうか。あぁ早く顔がみたい。
僕の部屋では、仲間が集っていた。強姦犯を捕まえるための仲間だったけど、今や親友の域にいる。一仕事を終え、パーティーみたいな会場になっている。
強姦犯を捕まえて、今や警察からも感謝状が送られ、近隣住民からも声をかけられる仕舞い。僕らは正義の味方みたいな感じ。
「へぇ。遠距離恋愛しているのか」
お茶を飲んでいた和也くんが、喉を潤して言った。愛姫が距離を縮めてきた。
「愛姫そんなの聞いてない! 愛姫のお兄なのに、彼女なんて作らないで」
そんな無茶な。
天音さんのことは、遠距離恋愛している彼女として説明している。そして、その遠い親戚が天和お姉さん。遠距離恋愛中の彼女と連絡が取れなくなったから、一緒に探してほしいとお願いした。
「それ、振られたんじゃ?」
「そうだよ! 振られたんだよお兄は!」
和也くんに同情され、愛姫は変なテンションで高まっている。確かにこの説明だと、振られたことになっている。いや、実際振られてないし、ちゃんと恋人同士だよ。
ずっと手首に巻いているバンダナがそれを証明している。これは、彼女が最後に結ってくれた。約束をして、口づけを交わす。
これは、あのとき彼女の残した魂みたいなものだ。これがある限り、繋がっている。だから、僕は探す。なんとしてでも。そして見つけたら、これを返す。そのために、天音さんはこれを僕に托したんだろう。
和也くんは天音さん探しに協力してくれた。僕の彼女に興味津々なのか、または、盟友だからなのか。それでも、一人増えて嬉しい。一人じゃない。天音さんの言ったとおりだ。
愛姫は妙なテンションで彼女のことを、しつこく聞いてくる。彼女を知るのは妹の特権とか、なんとか。愛姫には、そりゃ手に届かない天使みたいだと、説明すると愛姫は信じない。
この近くにもう一人、本物の現役の天使がいるのに「天使なんかいない」と言い切る。
なんやかんや、二人も天音さん探しに協力してくれた。天音さんの最大の特徴は、サラサラヘアーの長い黒髪。
人間になったら、堕天前の姿かそれとも別の姿か、分からないがここだけは、変わっていないと思う。というか、変わってほしくない。別の姿だったら、まるっきり分からないし見つけられない。
天使の天和お姉さんでも、天音が人間になった、ただこれだけを知っている。あとは、何処にいるかどんな姿なのか、今何しているかは分かっていない。割と頼みの綱だったのに。
そして、パーティーも終わり和也くんは帰っていった。というか、愛姫がしつこくつきまとうせいで、和也くんは出ていく流れに。愛姫はストーカーみたいに、和也くんの後を追う。全く。兄ちゃんとしては悲しいな。
部屋は僕と天和お姉さんだけになった。静かな空間だ。あれから、朝霧とはどうなったのかと聞くと毎回沈んでいる。他愛もない話をかわした仲だったのに、ほんの一瞬で決別した。
お姉さんの立ち位置として考えると、人間一人に過ぎない。なのに、落ち込んでいる姿をみると、やっぱり〝寂しい〟とかそんな感情があるんだ。
天和お姉さんはさっきから、じっと僕のバンダナを見つめている。無表情で。なんだ。一体どういう気持ちしているんだ。
「それは、姉の形見です」
すると、静かに口を開いた。
怒りも悲しみも感情を抑制した、無表情で。話を続ける。
「わたくし天使は、神様の想像上から作られました。それ故に、天使は神様の所有物です。言うことを聞かなかったら、廃棄されます。だから、恐れ従うか、コントロールされるか、それを持っていたのは、唯一その中で、自我が強く神様の束縛から逃げた姉のものです。わたくしたちから見れば、母になりますが。良くしてくれました。だから、天音はそれを持っていたのでしょう。自分と同じ、檻から抜け出した姉のものを」
天音さんのこのバンダナは、首輪のあとを隠すためであった。そうか。確かに大事なものだな。それを人間界に落としたきっかけで、今こうなっている。
全てはここから始まったのか。二人のお姉さん感謝。
「その、檻から出た天使はどうなったんです?」
訊くと、天和お姉さんは苦しい表情をした。
「翼をもがれ、地獄に突き落とされました。どんなに高く飛べる翼があっても、もがれたら、もう自由じゃない」
天音さんは、どうだっただろう。自らその翼をもげ、自ら檻に入った。
「何もなかったね」
愛姫がボソリと言った。
部屋の中は真っ暗で、静まり返っている。二人用のベットがあって、天和と愛姫は同じベットで寝ていた。
隣では、既に寝息をたてて寝ている朝霧の姿が。疲れたのか、すぐに眠った。その寝顔は、穏やかに満ちていた。
「そのようですね」
ホッとして言った。
朝霧が助かったことに、ホッとしている自分がいる。朝霧はただの人間。大勢いる魂の一つにすぎない。天使だったとき、こんな感情は芽生えなかった。
わたくしもまた、神様の首輪から離れようとしているのか。天音みたいに束縛や定めも引きちぎって、檻の中から出るか。できない。わたくしには、そんなの……。
「天和姉」
ふいに愛姫に話しかけられた。
びっくりして肩が縮こまった。愛姫は目と鼻の先にいる。そりゃ、同じベットで寝ていたら、距離は近くなる。愛姫は、ふっと笑っていた。
「こういうお泊まり会、愛姫も初めてなんだ。友達とか、いなかったから。ふふっ。凄い嬉しい」
「……そうですか。それは良かった」
「そういえば、どうしてこんなことを?」
「唐突ですね。今までよく疑問に思わなかったですね」
正直すごいドン引きだ。愛姫はくもりなき眼で見つめてくる。その眼差しだけは、弱いんだよな。
対象である朝霧も眠っている。天和はそれを目で確認して、全て言った。強姦犯を倒すべく始まったこと。強姦犯が朝霧の彼氏であり、朝霧がそのせいで自さつすること。それを止めるために、ここにいると。
愛姫はなるほどと理解した。
まぁ流石に、何度もタイムリープを繰り返しているとは言えない。その時、ベットがきしむ音がした。隣でベットで寝ていた朝霧が起きていたのだ。
「そう。そんな理由で……」
乾いた声。
寝ていたふりをして、全て聞いていた。
朝霧はじっとこちらを睨んでいた。暗くても分かる。その眼光は、青白く光り鋭利な刃物みたいだった。
「朝霧さん、これは違うんです!」
「何が違うの? そもそも、彼が強姦なんてやるわけないじゃない。嘘つかないで。みんなして、彼が悪者だって言ってくるけどあたしは信じない! おかしいと思ったんだよ。接点のない天和さんがお泊まり会なんて、それにコソコソしてたし、彼を悪く言う人許さない。仲良くなったけど、今回だけだね」
朝霧はベットから起き上がり、スタスタと何処かに向かった。まさか、彼がほんとにやってないと確証えるために外に向かうつもりなのか。
「朝霧さん、待ってください!」
天和もベットから起き上がり、呼びとめた。でも、彼女は聞く耳すらない。無視をして、玄関に向かう。玄関のほうは少量だけ塗った。
強い力で押せば、扉は開く。もう、どうしても外に行くのであればこれしかない。天和は自分の携帯を操作して、男に頼んどいたボイスレコーダーを流した。
最初ははっきりと声は聞こえなかったが、だんだん聞こえるようになってきた。そこから漏れ出すのは、朝霧の彼氏の声。
突然、彼氏の声がして朝霧も振り返った。瞳の中が潤っている。漏れ出す声は、とても落ち着いていた声だった。これは恐らく、捕まったあとに録ったものでしょうね。
強姦で逮捕されたと、自ら言っている。それを聞いた朝霧は、潤った瞳が限界になり爆発した。それでも、声は続く。『それでも待っていてくれるか?』という最後の願いだった。朝霧は、途中泣き喚いてたが、最後の声を聞くと涙が止まっていた。
天和は朝霧に携帯を託し、愛姫とともにこの家を出た。愛姫は、少し怯えていた。さっきの険悪な空気に怖じ気ついていたのだ。出て行った最後、朝霧は床で丸くなり携帯を握りしめていた。
「大丈夫かな」
「大丈夫です。人間は、しぶとい生き物なので」
心配する愛姫に、そう言い聞かせた。そして犯人逮捕、朝霧救出、この2つがやっと作戦成功になった。僕ら四人の粘り勝ちだ。
5月1日、必ず誰かが死ぬ。そんな絶対的なルールを僕らが止めて、5月2日を迎えた。奇跡的だと、神様が言うかもしれない。でもこれは奇跡じゃ足りない。
長い戦いが終わった。ルールに抗い、戦い勝った。
朝起きると、毎回日時を確認する。5月2日。ちゃんと表示してある。それだけで感無量だ。
長い戦いが終わり、僕はやっと天音さんを探すことができる。念願の。僕が何度もタイムリープしていること、僕が見つけてくれないこと、怒っているだろうか。あぁ早く顔がみたい。
僕の部屋では、仲間が集っていた。強姦犯を捕まえるための仲間だったけど、今や親友の域にいる。一仕事を終え、パーティーみたいな会場になっている。
強姦犯を捕まえて、今や警察からも感謝状が送られ、近隣住民からも声をかけられる仕舞い。僕らは正義の味方みたいな感じ。
「へぇ。遠距離恋愛しているのか」
お茶を飲んでいた和也くんが、喉を潤して言った。愛姫が距離を縮めてきた。
「愛姫そんなの聞いてない! 愛姫のお兄なのに、彼女なんて作らないで」
そんな無茶な。
天音さんのことは、遠距離恋愛している彼女として説明している。そして、その遠い親戚が天和お姉さん。遠距離恋愛中の彼女と連絡が取れなくなったから、一緒に探してほしいとお願いした。
「それ、振られたんじゃ?」
「そうだよ! 振られたんだよお兄は!」
和也くんに同情され、愛姫は変なテンションで高まっている。確かにこの説明だと、振られたことになっている。いや、実際振られてないし、ちゃんと恋人同士だよ。
ずっと手首に巻いているバンダナがそれを証明している。これは、彼女が最後に結ってくれた。約束をして、口づけを交わす。
これは、あのとき彼女の残した魂みたいなものだ。これがある限り、繋がっている。だから、僕は探す。なんとしてでも。そして見つけたら、これを返す。そのために、天音さんはこれを僕に托したんだろう。
和也くんは天音さん探しに協力してくれた。僕の彼女に興味津々なのか、または、盟友だからなのか。それでも、一人増えて嬉しい。一人じゃない。天音さんの言ったとおりだ。
愛姫は妙なテンションで彼女のことを、しつこく聞いてくる。彼女を知るのは妹の特権とか、なんとか。愛姫には、そりゃ手に届かない天使みたいだと、説明すると愛姫は信じない。
この近くにもう一人、本物の現役の天使がいるのに「天使なんかいない」と言い切る。
なんやかんや、二人も天音さん探しに協力してくれた。天音さんの最大の特徴は、サラサラヘアーの長い黒髪。
人間になったら、堕天前の姿かそれとも別の姿か、分からないがここだけは、変わっていないと思う。というか、変わってほしくない。別の姿だったら、まるっきり分からないし見つけられない。
天使の天和お姉さんでも、天音が人間になった、ただこれだけを知っている。あとは、何処にいるかどんな姿なのか、今何しているかは分かっていない。割と頼みの綱だったのに。
そして、パーティーも終わり和也くんは帰っていった。というか、愛姫がしつこくつきまとうせいで、和也くんは出ていく流れに。愛姫はストーカーみたいに、和也くんの後を追う。全く。兄ちゃんとしては悲しいな。
部屋は僕と天和お姉さんだけになった。静かな空間だ。あれから、朝霧とはどうなったのかと聞くと毎回沈んでいる。他愛もない話をかわした仲だったのに、ほんの一瞬で決別した。
お姉さんの立ち位置として考えると、人間一人に過ぎない。なのに、落ち込んでいる姿をみると、やっぱり〝寂しい〟とかそんな感情があるんだ。
天和お姉さんはさっきから、じっと僕のバンダナを見つめている。無表情で。なんだ。一体どういう気持ちしているんだ。
「それは、姉の形見です」
すると、静かに口を開いた。
怒りも悲しみも感情を抑制した、無表情で。話を続ける。
「わたくし天使は、神様の想像上から作られました。それ故に、天使は神様の所有物です。言うことを聞かなかったら、廃棄されます。だから、恐れ従うか、コントロールされるか、それを持っていたのは、唯一その中で、自我が強く神様の束縛から逃げた姉のものです。わたくしたちから見れば、母になりますが。良くしてくれました。だから、天音はそれを持っていたのでしょう。自分と同じ、檻から抜け出した姉のものを」
天音さんのこのバンダナは、首輪のあとを隠すためであった。そうか。確かに大事なものだな。それを人間界に落としたきっかけで、今こうなっている。
全てはここから始まったのか。二人のお姉さん感謝。
「その、檻から出た天使はどうなったんです?」
訊くと、天和お姉さんは苦しい表情をした。
「翼をもがれ、地獄に突き落とされました。どんなに高く飛べる翼があっても、もがれたら、もう自由じゃない」
天音さんは、どうだっただろう。自らその翼をもげ、自ら檻に入った。
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