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前篇
触れる(5)*
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体がぬるりと残酷に裂け、鉄の臭いが鼻を掠めた。
「ぅ……ぁあ゛ッァ、──くッ」
ずぶぶっと、根本深くまで埋められた。
あまりにも性急な、かつ久々の性交渉だったので、もちろん膣も閉じ切っている。それなのに一気に押し込まれたものだから、荒々しさも相まって苦痛はいつもの倍だ。
肺が圧迫されて、物理的に苦しい。
今から中をめちゃくちゃにかき回され、ただ痛くて苦しいだけの時間が過ぎていくのだろう。嫌だ。でも、しょうがない。
キスは拒んでしまったんだから、それ以外は従わなければ。そういう約束だ。
歯を食いしばり、覚悟を決めぎゅうっと目を閉じる。閉じたの、だが。
ぴたりと、アレクシスの動きが止まった。訪れた静寂に響き渡るのは、リョウヤ自身の苦悶に満ちた呼吸だけ。しかも、そこからかなり不自然な間が空いた。
さっさと突っ込んできたアレクシスは、腰を揺らすこともなく黙したままだ。
「……?」
苦痛のあまり瞑ってしまっていた片目を、おそるおそる開く。
「おまえは……なぜ、そうなんだ」
リョウヤの中をみっちりと埋めた肉の塊が、内壁を押し上げ、どくどくと波打っている。突き入れられている部分は激痛を訴えてくるが、確かに、アレクシスの生を感じられる。生きているからこそ、こんなにも痛いのだ。
だというのに、リョウヤをじっと見下ろしてくるその瞳にはやはり、光がない。
「そんなに僕が、嫌いか……?」
「……、お、れを、嫌ってんのはあんたの、方だろ……」
声を出しただけで、懸命に押し開いた視界が狭まるほど苦しい。
けれどもそれ以上に。
「僕が……?」
そんな、何を問われているのかわからない、みたいな。何も知らない無垢な子どものような顔をされてしまったら。
これ以上強くは、当たれないじゃないか。
「そう、だろ。俺のことが、嫌いなんだろ……だからいっつも、俺に、強く当たるんだろ……?」
整えられた形の良い眉が、怪訝そうに寄せられた。自身の感情を把握しかねているようなその表情は、思っていた反応とあまりにも違いすぎて、リョウヤの方が戸惑った。
「僕は、おまえのこと、を」
ぽつぽつと呟いたアレクシスは、急に口を大きく開き。
「──ああ、ああ、そうだ嫌いだ。稀人は卑しく汚らわしい存在だ。人間に媚びを売るおまえらはこの世に害しか与えん。貴様なんて……」
しかし、堰を切ったようにあふれ出したそれもふつりと途切れる。まるで誰かにインプットされた罵倒を、口先だけでなぞるような口調だった。
ゆっくりと持ち上げられていく手を眺める。アレクシスはきゅっと引き結んだ唇を自らの手で押え、続く言葉を完全に止めてしまった。
再び沈黙が降りる。それは無意識の行動のように、見えた。
「アレク……」
今のリョウヤには、目の前の青年の複雑な心情を察することはできない。わかってあげられるほど、アレクシス・チェンバレーという男を知らない。
繋がるのはいつも、体ばかりで。
けれども1つだけ、確信していることは、ある。
「あんた、なんでそんなに俺を、忌人を……ううん。違う……稀人を、憎んでるんだ?」
目を丸くさせた男の銀の髪が一房、頬に流れてきた。
窓から差し込む、日の光に照らされて。
透ける青白い頬に、アレクシスという男の片鱗を見た。
────────────────────────
明日からの数日間は、更新は時間を分けずに17時に一気にupとなります。
申し訳ありません。
「ぅ……ぁあ゛ッァ、──くッ」
ずぶぶっと、根本深くまで埋められた。
あまりにも性急な、かつ久々の性交渉だったので、もちろん膣も閉じ切っている。それなのに一気に押し込まれたものだから、荒々しさも相まって苦痛はいつもの倍だ。
肺が圧迫されて、物理的に苦しい。
今から中をめちゃくちゃにかき回され、ただ痛くて苦しいだけの時間が過ぎていくのだろう。嫌だ。でも、しょうがない。
キスは拒んでしまったんだから、それ以外は従わなければ。そういう約束だ。
歯を食いしばり、覚悟を決めぎゅうっと目を閉じる。閉じたの、だが。
ぴたりと、アレクシスの動きが止まった。訪れた静寂に響き渡るのは、リョウヤ自身の苦悶に満ちた呼吸だけ。しかも、そこからかなり不自然な間が空いた。
さっさと突っ込んできたアレクシスは、腰を揺らすこともなく黙したままだ。
「……?」
苦痛のあまり瞑ってしまっていた片目を、おそるおそる開く。
「おまえは……なぜ、そうなんだ」
リョウヤの中をみっちりと埋めた肉の塊が、内壁を押し上げ、どくどくと波打っている。突き入れられている部分は激痛を訴えてくるが、確かに、アレクシスの生を感じられる。生きているからこそ、こんなにも痛いのだ。
だというのに、リョウヤをじっと見下ろしてくるその瞳にはやはり、光がない。
「そんなに僕が、嫌いか……?」
「……、お、れを、嫌ってんのはあんたの、方だろ……」
声を出しただけで、懸命に押し開いた視界が狭まるほど苦しい。
けれどもそれ以上に。
「僕が……?」
そんな、何を問われているのかわからない、みたいな。何も知らない無垢な子どものような顔をされてしまったら。
これ以上強くは、当たれないじゃないか。
「そう、だろ。俺のことが、嫌いなんだろ……だからいっつも、俺に、強く当たるんだろ……?」
整えられた形の良い眉が、怪訝そうに寄せられた。自身の感情を把握しかねているようなその表情は、思っていた反応とあまりにも違いすぎて、リョウヤの方が戸惑った。
「僕は、おまえのこと、を」
ぽつぽつと呟いたアレクシスは、急に口を大きく開き。
「──ああ、ああ、そうだ嫌いだ。稀人は卑しく汚らわしい存在だ。人間に媚びを売るおまえらはこの世に害しか与えん。貴様なんて……」
しかし、堰を切ったようにあふれ出したそれもふつりと途切れる。まるで誰かにインプットされた罵倒を、口先だけでなぞるような口調だった。
ゆっくりと持ち上げられていく手を眺める。アレクシスはきゅっと引き結んだ唇を自らの手で押え、続く言葉を完全に止めてしまった。
再び沈黙が降りる。それは無意識の行動のように、見えた。
「アレク……」
今のリョウヤには、目の前の青年の複雑な心情を察することはできない。わかってあげられるほど、アレクシス・チェンバレーという男を知らない。
繋がるのはいつも、体ばかりで。
けれども1つだけ、確信していることは、ある。
「あんた、なんでそんなに俺を、忌人を……ううん。違う……稀人を、憎んでるんだ?」
目を丸くさせた男の銀の髪が一房、頬に流れてきた。
窓から差し込む、日の光に照らされて。
透ける青白い頬に、アレクシスという男の片鱗を見た。
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明日からの数日間は、更新は時間を分けずに17時に一気にupとなります。
申し訳ありません。
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