月に泣く

宝楓カチカ🌹

文字の大きさ
上 下
107 / 142
前篇

 交わる(3)*

しおりを挟む

「……っ」

 なんだこれは。なんだ、これは。
 つるっとした割れ目に唇と鼻を押し付けられ、すんと鼻を鳴らしてくる仕草が信じられない。
 たしかに、だ。そこは、マティアスにも指と舌で散々嬲られた。しかし相手がこの男となれば話は別だ。
 アレクシスにそんなところを触れられたことなど、これまで一度もなかったのだから。
 羞恥どころではない、あらゆる意味で、もはや恐怖に近い。
 アレクシスがちらりとリョウヤに視線を向け、指で双丘をくっと押し開き、そのまま舌を伸ばしてきた。
 真っ赤な舌先が、熱のこもった入口をぺろりと舐め、そのままにゅるん、と押し入ってくる。

「は、ぁ……ッ」

 たまらず、吐息が鼻から抜けた。
 頭上のシーツが破けそうになるくらい強く強く掴み、濡らされていく感覚に首を振る。痛みはない。ただただ柔らかかった。埋められているアレクシスの、舌の形までわかりそうなほどに。
 
「あ……あぁ、んん」

 ぐにっと膣口をさらに広げられ、アレクシスが顔の角度をかえてさらに深く舌を這わせてきた。執拗な愛撫によって、泡立つ液がぐちゅりと弾ける。じゅわっと、中から蜜液が溢れてきたのが自分でもわかる。
 しとどに溢れる体液を一滴残らず舐め尽くすように、じゅるりと溢れるそれを吸われ、舐められ、また唇全体で吸われて──まるで、食らい尽くされているみたいだった。

「んッ……ぁっ、んッ……ぅ」

 じわじわと、腰の奥から広がってくるゆるやかな快感に、ふるりと背筋が仰け反る。
 粘つく糸を引く唇までも、ぺろりと舐めとる厚めの舌。アレクシスの唇の端にはリョウヤの血がべったりと付着していた。鼻の、横にも。
 その血をくいと指で拭ったアレクシスは、それすらもぺろりと舐め取った──とんでもない。
 今、リョウヤはとんでもないことをされている。
 本当に、とんでもない。
 しかも、アレクシスはあろうことか。

「……甘い」

 なんて、思わず溢れたみたいにそんなことを呟いてくるものだから、もはやパニックに陥った。

「……っ、う」

 びくんと伸びたつま先でシーツを蹴り飛ばしてしまい、勢い余ってアレクシスの腰に当たる。結構な勢いだったらしく、アレクシスが痛みに唸った。

「あっ、ご、ごめ……お、俺、足……」

 わざとではなかったが、蹴ってしまった事実に変わりはない。手が伸びてくる。殴られると思ってびくりと横を向く。しかし予想していた衝撃は襲ってこない。殴打の代わりに左頬に押し付けられたのは、ざらついた感触。
 アレクシスの、指だ。

「邪魔だ、な」

 頬に触れていた指が離れる。ぽすんと、遠くにものが放り投げられた音。
 再度、頬に何かを、添えられた。
 つう、と頬を撫でてくるそれに違和感を覚える。やけにしっとりとしていて、慣れない感触だった。それになんだか、ぎこちなさが伝わってくる。
 手袋越しの指ではない。
 これはどちらかと言うと、生身の──手?

「……やけに熱いな」

 こわごわと視線を向ければ、視界の隅に生白い手が見えた。
 頬に添えられていたのは、アレクシスの右手だった。驚いた。こんなに至近距離から、手袋に覆われていないアレクシスの手が、見れるとは。
 そう。今リョウヤは、素手で頬に触れられていた、らしい。
 ベッドの端に、彼が愛用していた手袋が2つ落ちているのも見えた。もしかしなくとも、アレクシスが邪魔だと言って放り投げたものは、あれか?
 どうして、わざわざ外したのか。アレクシスにとっての手袋は、リョウヤに触れる際の必需品だったというのに。
 アレクシスは何も言わず、じっとリョウヤを見つめてくるだけだ。
 何か、訴えたいことがあるみたいに。
 添えられていた指が手のひらへと変わり、こわごわと、頬を包み込まれた。
 まるで、壊れものを扱うような繊細さだ。こういう触れ方をする人だとは、知らなかった。
 そのまま互いに、沈黙が降りる。
 呆けたまま見上げたアレクシスの瞳は、赤と紫が混ざり合ったような色をしていた。不思議だ。今まではどろっとくすんだ血の色にしか見えなかったのに。
 彼を多い隠していた分厚い層が晴れ、星明りが瞬く前の、夕暮れの色を閉じ込めた宝石みたいだと、思った。
 頬から手が外され、そろりと顎に指先がかかる。

 光のような白銀をまとった美しい顔が、近づいてきた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の番が変態で狂愛過ぎる

moca
BL
御曹司鬼畜ドS‪なα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!! ほぼエロです!!気をつけてください!! ※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!! ※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️ 初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 20歳の俺、男達のペットになる

ねねこ
BL
20歳の男がご主人様に飼われペットとなり、体を開発されまくって、複数の男達に調教される話です。 複数表現あり

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

ご主人様に調教される僕

猫又ササ
BL
借金のカタに買われた男の子がご主人様に調教されます。 調教 玩具 排泄管理 射精管理 等 なんでも許せる人向け

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる

KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。 ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。 ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。 性欲悪魔(8人攻め)×人間 エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』

処理中です...