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前篇
こわくない(2)*
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「膜は……ここか。聞いていた通り、女よりもかなり深いな」
「ひ……ぁ」
中にある何かを、ずりずりと弄られている。まるで紙やすりで擦られるような感覚にぞっとした。
「普通の女よりもひだが多いな。吸い付きもまあまあ、か」
「ぐ……」
「貧相な体付きだが、穴だけはそこそこ愉しめそうだ」
リョウヤはこんなに苦しんでいるというのに、淡々と中を観察してくる男が信じられない。太い親指と薬指で入口をぐにっと横に広げられ、ぐぽぐぽと執拗に掻き回される。優しさなんて微塵も感じられないその動きは、どこをどうすればうまく広がるのか、どこまでなら入るのかと、リョウヤの穴の具合をじっくりと検分しているかのようだった。男のセリフが蘇る──なら具合もいいか、と。
ひ、と背筋が凍り、脂汗がぷつぷつと額に盛り上がり目尻を濡らした。今、リョウヤの膣は、ただ使用するためだけに解されているのだ。3本目、4本目と躊躇なく指を増やされ、ぐりんと手のひらを返されてたまらず首を振った。
「……痛い、いた、ぁ……や、っめ、抜け……抜いて!」
指がいっぱいで、下腹部が苦しい。
そして、それよりもおぞましかったのは自分の体だ。苦痛に喘ぐリョウヤの媚肉が、掻き回してくる異物に合わせてゆっくりとうねっているのがわかるのだ。まるで、自ら異物を迎え入れようとしているかのようだ。
その変化にアレクシスも気付いたようだ。くつりと、アレクシスの喉が嘲笑に震えた。
「随分と中が動くな。いいのか……?」
「いいわ、け、ない、だろ」
「へえ、それにしては溢れてきたが」
「う……」
アレクシスの言葉通り、たっぷりと溢れた何かが男の指に絡みつきとろとろと零れていく。革越しの指でくるくると中を弄られるたびに、自分の意思とは関係なく、じゅわっと何かが染み出しているのだ。しかも、軽く前後に揺すられただけでじゅくじゅくと熟れたような音が響くほどに。
他者と性交をする際、相手の性欲を高めるため、リョウヤのような人種が出す分泌液。「蜜液」と呼ばれるそれを、今まさに自分も溢れさせてしまっているのだ。
「わかっただろう。おまえのような醜い生き物が、性玩具として重宝されている理由が」
「ちが、う」
「何が違う、こんなに濡らして……求めているんだろう、男を。いやしい体だな」
首を振る。中を弄られる感覚は快感には程遠く、ただただ苦しいだけだ。それでもリョウヤの体は明らかに、この男に突き入れられることを求めている。
いくら心で否定しても、覆しようのない事実を突きつけられたことが辛かった。
「違う、俺は……──ぁッ、く」
ずじゅんと指が一気に引き抜かれ、びりりっとした擦るような痛みにのけ反る。リョウヤの膣口からは、抜かれた指を追いかけるように糸を引いた蜜液が零れていた。まだちょっと弄られただけだというのに、シーツがぐちょぐちょになるほどの量だ。惨めさが増す。
一度上体を起こしたアレクシスに両足首を掴まれ、そのままぐいっと大きく割りさかれた。柔らかな体が災いし、赤ん坊のように膝が胸にくっ付くぐらいまで返されてしまった。
「ひ……ぁ……っ」
薄い茂みも、未だに蜜を零し続ける膣も全てが丸見えだ。痛みに縮こまり、ふにゃりと萎れている陰茎が、赤く膨れた双丘の間にぺたりと垂れている。自然と腰がずり上がるも、直ぐに引きずり戻された。
器用に片手でズボンのベルトを外したアレクシスが、膨らんだ昂ぶりを取り出した。自分と兄以外のそれを初めて見たが、男のそれは根本も太く、長く、ぬらぬらと赤黒く光り、裏筋に浮き出た血管がびくびくと脈打っている。
あまりの禍々しさに、口内に溜まった唾が喉の奥になだれ込んできた。
「……ぅ」
「どうした、急に静かになったな。先ほどまでの威勢はどこへ消えた……僕が怖いのか」
「こわく、ない」
覇気を失ったリョウヤをどうでもよさげに一瞥したアレクシスは、たらりと垂れたリョウヤの陰茎を、まるで煩わしいもののように指でどかした。挿入するところだけが使えればいいのだろう。ドクドクと早まっていく心臓の音が煩い。猛った切っ先をずぷりと膣口に押し付けられて、ドッと激しく鳴った。
「ひ……」
腰を前後に揺すられて、膣口をぷちゅぷちゅと押し開かれるおぞましさにひゅわっと肺が広がる。強く押さえつけられた脚が小刻みに震え、足枷がガチャガチャと絶望的な音をたてて軋んだ。緊張のあまり異物から目が逸らせない。ただでさえ先を押し当てられただけで痛むのに、これを全部突き入れられたらきっと裂けてしまう。
体も、心も。
決して言うまいと必死に堰き止めていた哀願が、舌の上から滑り落ちた。
「やめ、て……よ。壊れるよ……」
「だからなんだ」
アレクシスは、どこまでも無情だった。ふるふると首を振れば、乱れた黒髪が頬に張り付いた。
「……僕は別に、相手をいたぶり悦に浸るような加虐思考は持ちあわせてはいない。だが貴様は別だ。この僕がわざわざ選択肢を与えてやったというのに、全てを無駄にした」
トン、と、緊張のあまりひくひく凹む下腹部を爪先で叩かれて、びくんと腰が浮いた。
「ひとつ、いいことを教えてやろう。おまえらのような生き物は、雄をしっかりと咥え込むためにここが広がりうねる。出し入れしやすいように自然と蜜液を溢れさせ、奥へ奥へと雄を咥え込む。自分の意思とは関係なくな」
一言一言区切りながら、トン、トン、トン、と叩かれ続ける。
「おまえも例外ではない。言っている意味が、わかるか……?」
腿を高く持ち上げられ、本格的に大きな影が覆い被さってきた。
「おまえのここは、たとえ壊れたとしても使い続けることができるということだ」
「……や」
アレクシスはリョウヤを人間ではないと断言したが、リョウヤからして見れば、自分を組み敷くこの青年こそが、化け物のようにみえた。
添えられた昂ぶりがちょうどいい体勢を探るように上下左右に揺れ、ついにぴたりと静止した。ぐっと顔を近づけられ、見開かれた赤い目にのぞかれる。固まった首が動かせなくて、顔を背けることさえできなかった。
「──言っただろう、一切容赦はしないと」
アレクシスの笑みがすとんと落ち、かき消えたその瞬間。
残酷な凶器は、ためらいもなくリョウヤの中に突き立てられた。
「ッァ……ひぁああッ──……!」
「ひ……ぁ」
中にある何かを、ずりずりと弄られている。まるで紙やすりで擦られるような感覚にぞっとした。
「普通の女よりもひだが多いな。吸い付きもまあまあ、か」
「ぐ……」
「貧相な体付きだが、穴だけはそこそこ愉しめそうだ」
リョウヤはこんなに苦しんでいるというのに、淡々と中を観察してくる男が信じられない。太い親指と薬指で入口をぐにっと横に広げられ、ぐぽぐぽと執拗に掻き回される。優しさなんて微塵も感じられないその動きは、どこをどうすればうまく広がるのか、どこまでなら入るのかと、リョウヤの穴の具合をじっくりと検分しているかのようだった。男のセリフが蘇る──なら具合もいいか、と。
ひ、と背筋が凍り、脂汗がぷつぷつと額に盛り上がり目尻を濡らした。今、リョウヤの膣は、ただ使用するためだけに解されているのだ。3本目、4本目と躊躇なく指を増やされ、ぐりんと手のひらを返されてたまらず首を振った。
「……痛い、いた、ぁ……や、っめ、抜け……抜いて!」
指がいっぱいで、下腹部が苦しい。
そして、それよりもおぞましかったのは自分の体だ。苦痛に喘ぐリョウヤの媚肉が、掻き回してくる異物に合わせてゆっくりとうねっているのがわかるのだ。まるで、自ら異物を迎え入れようとしているかのようだ。
その変化にアレクシスも気付いたようだ。くつりと、アレクシスの喉が嘲笑に震えた。
「随分と中が動くな。いいのか……?」
「いいわ、け、ない、だろ」
「へえ、それにしては溢れてきたが」
「う……」
アレクシスの言葉通り、たっぷりと溢れた何かが男の指に絡みつきとろとろと零れていく。革越しの指でくるくると中を弄られるたびに、自分の意思とは関係なく、じゅわっと何かが染み出しているのだ。しかも、軽く前後に揺すられただけでじゅくじゅくと熟れたような音が響くほどに。
他者と性交をする際、相手の性欲を高めるため、リョウヤのような人種が出す分泌液。「蜜液」と呼ばれるそれを、今まさに自分も溢れさせてしまっているのだ。
「わかっただろう。おまえのような醜い生き物が、性玩具として重宝されている理由が」
「ちが、う」
「何が違う、こんなに濡らして……求めているんだろう、男を。いやしい体だな」
首を振る。中を弄られる感覚は快感には程遠く、ただただ苦しいだけだ。それでもリョウヤの体は明らかに、この男に突き入れられることを求めている。
いくら心で否定しても、覆しようのない事実を突きつけられたことが辛かった。
「違う、俺は……──ぁッ、く」
ずじゅんと指が一気に引き抜かれ、びりりっとした擦るような痛みにのけ反る。リョウヤの膣口からは、抜かれた指を追いかけるように糸を引いた蜜液が零れていた。まだちょっと弄られただけだというのに、シーツがぐちょぐちょになるほどの量だ。惨めさが増す。
一度上体を起こしたアレクシスに両足首を掴まれ、そのままぐいっと大きく割りさかれた。柔らかな体が災いし、赤ん坊のように膝が胸にくっ付くぐらいまで返されてしまった。
「ひ……ぁ……っ」
薄い茂みも、未だに蜜を零し続ける膣も全てが丸見えだ。痛みに縮こまり、ふにゃりと萎れている陰茎が、赤く膨れた双丘の間にぺたりと垂れている。自然と腰がずり上がるも、直ぐに引きずり戻された。
器用に片手でズボンのベルトを外したアレクシスが、膨らんだ昂ぶりを取り出した。自分と兄以外のそれを初めて見たが、男のそれは根本も太く、長く、ぬらぬらと赤黒く光り、裏筋に浮き出た血管がびくびくと脈打っている。
あまりの禍々しさに、口内に溜まった唾が喉の奥になだれ込んできた。
「……ぅ」
「どうした、急に静かになったな。先ほどまでの威勢はどこへ消えた……僕が怖いのか」
「こわく、ない」
覇気を失ったリョウヤをどうでもよさげに一瞥したアレクシスは、たらりと垂れたリョウヤの陰茎を、まるで煩わしいもののように指でどかした。挿入するところだけが使えればいいのだろう。ドクドクと早まっていく心臓の音が煩い。猛った切っ先をずぷりと膣口に押し付けられて、ドッと激しく鳴った。
「ひ……」
腰を前後に揺すられて、膣口をぷちゅぷちゅと押し開かれるおぞましさにひゅわっと肺が広がる。強く押さえつけられた脚が小刻みに震え、足枷がガチャガチャと絶望的な音をたてて軋んだ。緊張のあまり異物から目が逸らせない。ただでさえ先を押し当てられただけで痛むのに、これを全部突き入れられたらきっと裂けてしまう。
体も、心も。
決して言うまいと必死に堰き止めていた哀願が、舌の上から滑り落ちた。
「やめ、て……よ。壊れるよ……」
「だからなんだ」
アレクシスは、どこまでも無情だった。ふるふると首を振れば、乱れた黒髪が頬に張り付いた。
「……僕は別に、相手をいたぶり悦に浸るような加虐思考は持ちあわせてはいない。だが貴様は別だ。この僕がわざわざ選択肢を与えてやったというのに、全てを無駄にした」
トン、と、緊張のあまりひくひく凹む下腹部を爪先で叩かれて、びくんと腰が浮いた。
「ひとつ、いいことを教えてやろう。おまえらのような生き物は、雄をしっかりと咥え込むためにここが広がりうねる。出し入れしやすいように自然と蜜液を溢れさせ、奥へ奥へと雄を咥え込む。自分の意思とは関係なくな」
一言一言区切りながら、トン、トン、トン、と叩かれ続ける。
「おまえも例外ではない。言っている意味が、わかるか……?」
腿を高く持ち上げられ、本格的に大きな影が覆い被さってきた。
「おまえのここは、たとえ壊れたとしても使い続けることができるということだ」
「……や」
アレクシスはリョウヤを人間ではないと断言したが、リョウヤからして見れば、自分を組み敷くこの青年こそが、化け物のようにみえた。
添えられた昂ぶりがちょうどいい体勢を探るように上下左右に揺れ、ついにぴたりと静止した。ぐっと顔を近づけられ、見開かれた赤い目にのぞかれる。固まった首が動かせなくて、顔を背けることさえできなかった。
「──言っただろう、一切容赦はしないと」
アレクシスの笑みがすとんと落ち、かき消えたその瞬間。
残酷な凶器は、ためらいもなくリョウヤの中に突き立てられた。
「ッァ……ひぁああッ──……!」
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