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ふたつの嵐
14.
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「運命なんてものは存在しないよ」
「そんなのわかんねーじゃん……っ、存在するかもじゃん!」
それに、こんなに噂として囁かれているのだから。
運命の番に関する創作物が、大量に出回っているのだから。
俺はずっと、よく見かける「運命の番」というやつに憧れていた。心から想い合える関係っていいなって思っていた。
あんな風に、なんの取り柄もなくったって、たとえ理由がなくたってαにただただ愛される存在になれたらいいのにって。
姫宮とはそんな関係にはなれないと思っていたから、余計に。
だから、怖くて怖くてたまらなかった。
「そうなったら、俺は……」
「変なことをいうね。仮にそんな人がいたとしても、僕は君以外を好きにはならないよ」
「なに言ってんだよっ、Ωの俺は一人しか無理だけど、αのおまえは相手なんて選び放題じゃん! それに運命だぞ、運命って、すげェんだぞ……」
「どこがすごいんだ、そんなもの」
「だって……目があった瞬間、発情して相手のこと好きになっちまうんだ……」
語尾が、どうしても震えてしまう。
運命の前では好きだとか嫌いだとか、そういった自分の意志すらも無意味だ。さっきのドラマのヒロインだって、発情した途端元カレのタカシとの間で揺れ動いていた心が、ぴったりと定まってしまった。
──運命という、見えざる強制力によって。
『サクト! 貴方が私の運命の人だったのね…!』
『ああ、おまえが俺の探し求めていた女だ──やっと見つけた、俺の運命の番。もう二度と離さねぇ』
『サクト……お願いよ、二度と私を離さないで。私だけの運命の人……もう貴方しか見えないの』
『離すかよ。それに、おまえの筋肉に打ち勝てるのは俺だけ……だろ?』
『やだぁもうっ』
バチィーン!!
『ぐっ!』
『きゃー! サクトごめんなさいっ、私ったらまたやっちゃったのね!』
『い、いい……おまえは俺の、運命の番なんだからな……こんな痛みっ』
……と、あのドラマでもヒーローは、ヒロインから与えられた痛みにすらも耐え忍んでいた。
運命というのは、それほどのものなのだ。
こいつの俺への好意を疑っているわけじゃない。でも姫宮もいつかこうなってしまったらと思うと、胸が痛くてたまらなくなる。「君なんかいらないよ」って、「触るな、虫唾が走る」って言われたら。
追いすがる俺を冷たく見下ろしてくる姫宮に、この手をまた、振り払われてしまったら。
──君なんて大嫌いだよって、吐き捨てられてしまったら。
「大丈夫さ、何の問題もない」
「なんでそう言い切れるんだよ……」
「だって僕が始末するもの」
──うん??
「そんなのわかんねーじゃん……っ、存在するかもじゃん!」
それに、こんなに噂として囁かれているのだから。
運命の番に関する創作物が、大量に出回っているのだから。
俺はずっと、よく見かける「運命の番」というやつに憧れていた。心から想い合える関係っていいなって思っていた。
あんな風に、なんの取り柄もなくったって、たとえ理由がなくたってαにただただ愛される存在になれたらいいのにって。
姫宮とはそんな関係にはなれないと思っていたから、余計に。
だから、怖くて怖くてたまらなかった。
「そうなったら、俺は……」
「変なことをいうね。仮にそんな人がいたとしても、僕は君以外を好きにはならないよ」
「なに言ってんだよっ、Ωの俺は一人しか無理だけど、αのおまえは相手なんて選び放題じゃん! それに運命だぞ、運命って、すげェんだぞ……」
「どこがすごいんだ、そんなもの」
「だって……目があった瞬間、発情して相手のこと好きになっちまうんだ……」
語尾が、どうしても震えてしまう。
運命の前では好きだとか嫌いだとか、そういった自分の意志すらも無意味だ。さっきのドラマのヒロインだって、発情した途端元カレのタカシとの間で揺れ動いていた心が、ぴったりと定まってしまった。
──運命という、見えざる強制力によって。
『サクト! 貴方が私の運命の人だったのね…!』
『ああ、おまえが俺の探し求めていた女だ──やっと見つけた、俺の運命の番。もう二度と離さねぇ』
『サクト……お願いよ、二度と私を離さないで。私だけの運命の人……もう貴方しか見えないの』
『離すかよ。それに、おまえの筋肉に打ち勝てるのは俺だけ……だろ?』
『やだぁもうっ』
バチィーン!!
『ぐっ!』
『きゃー! サクトごめんなさいっ、私ったらまたやっちゃったのね!』
『い、いい……おまえは俺の、運命の番なんだからな……こんな痛みっ』
……と、あのドラマでもヒーローは、ヒロインから与えられた痛みにすらも耐え忍んでいた。
運命というのは、それほどのものなのだ。
こいつの俺への好意を疑っているわけじゃない。でも姫宮もいつかこうなってしまったらと思うと、胸が痛くてたまらなくなる。「君なんかいらないよ」って、「触るな、虫唾が走る」って言われたら。
追いすがる俺を冷たく見下ろしてくる姫宮に、この手をまた、振り払われてしまったら。
──君なんて大嫌いだよって、吐き捨てられてしまったら。
「大丈夫さ、何の問題もない」
「なんでそう言い切れるんだよ……」
「だって僕が始末するもの」
──うん??
37
【代表作】(BL)
・完結
「トイの青空」
・連載中
「月に泣く」
・番外編連載中
「ヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年に懐かれた結果、立派なヤンデレ美青年へと成長した彼に迫られ食べられたが早まったかもしれない件について。」
更新情報&登場人物等の小話・未投稿作品(番外編など)情報はtwitter記載のプロフカードにて。
宝楓カチカ(twitter)
・完結
「トイの青空」
・連載中
「月に泣く」
・番外編連載中
「ヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年に懐かれた結果、立派なヤンデレ美青年へと成長した彼に迫られ食べられたが早まったかもしれない件について。」
更新情報&登場人物等の小話・未投稿作品(番外編など)情報はtwitter記載のプロフカードにて。
宝楓カチカ(twitter)
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