213 / 227
ふたつの嵐
09.
しおりを挟む
*
「階段を上りたいんだけど、いい?」
「えー、エレベーターでよくね?」
「運動しろと言ったのは君だよね」
「言ったけどさ、あとちょっとで地味逃げ始まっちゃうぜ?」
「……あんなものを観たがるのは君だけだ」
「なんだよぅ、1話面白かったじゃん! 俺カンドーしたんだけど、カナコがセクハラ上司にいびられてさ、自分の筋肉を封じないとって葛藤してるシーン」
「どうしてあそこで感動できるのか理解しかねるな……」
瀬戸たちと別れて(姫宮の勃……起もなんとか治まった)、さぁ病室に戻ろうという時に姫宮がそんなことを言いだした。
みんなからもらったお見舞いの品や売店で購入したものもあるし、早く部屋に戻って2人きりになりたいとか言われると思っていたので、なんだろうとは思った。
それに、今から例のドラマの第2話が始まるのだ。
無料で見れる1話とは別に、見逃し配信アプリで地上波で流れた一挙放送を配信するらしい。
でもまぁ、姫宮がそう言うのならと2人で階段を上る。
適度に運動するのはいいことだ。
大して重くはないが、荷物は半分こした。「へーきだって」と俺が拒否ったけど、姫宮が自分も持つと言って聞かなかった。
病室は病棟最上階の11階なので、結構段数がある。だからこそエレベーターの数も多い病院だ。この時間帯に階段を使う人などあまりいないので、すれ違う人は少ない。
ガサゴソと袋を揺らしながら、無理はしないように、休み休みゆっくりと。
「姫宮、大丈夫か?」
「ああ、問題ないよ」
「無理すんなよ? っと。ここで7階か……結構つかれんなー、こっからエレベーター乗るか?」
「……いや」
やけに階段にこだわるなとは、思っていた。
そしてあと一階だけ上れば11階にたどり着くという時に、同じペースで上っていた姫宮の姿が隣から消えたことで、理由を知ることになる。
「ん、どした?」
振り向けば、姫宮は段差の前の踊り場で止まっていた。
「疲れたか? あと一階だけだから頑張れよ。ほら、手ぇ伸ばせ。引っ張ってやるから」
3段上から手を伸ばす。すぐに届く距離だが、姫宮は下を向いたままだ。しかも、持っていた荷物を床に置いてしまった。
なんだよ、やっぱり疲れてんじゃん。
「あ、それともおんぶするか?」
「……いらないよ」
「はは、お姫さま抱っこでもいーぜ?」
ふざければ、姫宮が顔を上げた。てっきり、「どうして僕が抱っこされる側なんだよ」なんてジト目で睨まれるかと思っていたのに。
「橘──君は、キレイだ」
あまりにも唐突過ぎて、ぱちぱちと瞬きが止まらなかった。
「キレイだ。とても、とても。眩しいくらいに」
「な……んだよ、急に」
「僕は、君とは友達にはなれなかったから」
「姫宮?」
「君と、サッカーだってできやしなかった。難しい本を読んで、僕に群がるクラスメイトに笑顔を振りまいてばかりで、君の友人とわいわい遊ぶことも、君が……星の砂を集めるのが得意だと言っていたデビルズハンターも、結局やれずじまいだった」
「……なんの話だ?」
つーかデビハンとかなっつかし。
「階段を上りたいんだけど、いい?」
「えー、エレベーターでよくね?」
「運動しろと言ったのは君だよね」
「言ったけどさ、あとちょっとで地味逃げ始まっちゃうぜ?」
「……あんなものを観たがるのは君だけだ」
「なんだよぅ、1話面白かったじゃん! 俺カンドーしたんだけど、カナコがセクハラ上司にいびられてさ、自分の筋肉を封じないとって葛藤してるシーン」
「どうしてあそこで感動できるのか理解しかねるな……」
瀬戸たちと別れて(姫宮の勃……起もなんとか治まった)、さぁ病室に戻ろうという時に姫宮がそんなことを言いだした。
みんなからもらったお見舞いの品や売店で購入したものもあるし、早く部屋に戻って2人きりになりたいとか言われると思っていたので、なんだろうとは思った。
それに、今から例のドラマの第2話が始まるのだ。
無料で見れる1話とは別に、見逃し配信アプリで地上波で流れた一挙放送を配信するらしい。
でもまぁ、姫宮がそう言うのならと2人で階段を上る。
適度に運動するのはいいことだ。
大して重くはないが、荷物は半分こした。「へーきだって」と俺が拒否ったけど、姫宮が自分も持つと言って聞かなかった。
病室は病棟最上階の11階なので、結構段数がある。だからこそエレベーターの数も多い病院だ。この時間帯に階段を使う人などあまりいないので、すれ違う人は少ない。
ガサゴソと袋を揺らしながら、無理はしないように、休み休みゆっくりと。
「姫宮、大丈夫か?」
「ああ、問題ないよ」
「無理すんなよ? っと。ここで7階か……結構つかれんなー、こっからエレベーター乗るか?」
「……いや」
やけに階段にこだわるなとは、思っていた。
そしてあと一階だけ上れば11階にたどり着くという時に、同じペースで上っていた姫宮の姿が隣から消えたことで、理由を知ることになる。
「ん、どした?」
振り向けば、姫宮は段差の前の踊り場で止まっていた。
「疲れたか? あと一階だけだから頑張れよ。ほら、手ぇ伸ばせ。引っ張ってやるから」
3段上から手を伸ばす。すぐに届く距離だが、姫宮は下を向いたままだ。しかも、持っていた荷物を床に置いてしまった。
なんだよ、やっぱり疲れてんじゃん。
「あ、それともおんぶするか?」
「……いらないよ」
「はは、お姫さま抱っこでもいーぜ?」
ふざければ、姫宮が顔を上げた。てっきり、「どうして僕が抱っこされる側なんだよ」なんてジト目で睨まれるかと思っていたのに。
「橘──君は、キレイだ」
あまりにも唐突過ぎて、ぱちぱちと瞬きが止まらなかった。
「キレイだ。とても、とても。眩しいくらいに」
「な……んだよ、急に」
「僕は、君とは友達にはなれなかったから」
「姫宮?」
「君と、サッカーだってできやしなかった。難しい本を読んで、僕に群がるクラスメイトに笑顔を振りまいてばかりで、君の友人とわいわい遊ぶことも、君が……星の砂を集めるのが得意だと言っていたデビルズハンターも、結局やれずじまいだった」
「……なんの話だ?」
つーかデビハンとかなっつかし。
26
お気に入りに追加
1,317
あなたにおすすめの小説
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
イケメン幼馴染に執着されるSub
ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの…
支配されたくない 俺がSubなんかじゃない
逃げたい 愛されたくない
こんなの俺じゃない。
(作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる