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キレイな人
03.*
しおりを挟む橘を見ているのは僕と月しかいない。
その月さえも僕の頭で覆い隠してしまえば、橘は完全に僕だけのモノになる。
今だけは、この人は僕のだ。誰にもあげない。
*
廃神社の中で、するりと引き抜いた帯を遠くに放る。
橘の視線が、不安そうに帯を追いかけた。
大丈夫だからと、震える目尻に一度唇を押し付けて、橘があの男どもに触られたと気にしている部分を、丹念に、丁寧に舐める。
すると、次第に橘の強張っていた身体も弛緩していった。
同時にすぐに上がり始める、これから与えられる快感を期待するような、掠れた声。
僕のじっくりとした愛撫に合わせて、橘は徐々に徐々に、板をかかとで擦って両脚を開いてくれた。
浴衣の合わせを左右にずらし、現れた細くしなやかな足にそっと手を添える。
ぴくんと、橘の腰が疼いた。
柔らかでほどよい弾力の太ももを辿り、下着をずらし、行きついた窄まりをくり、と押しつぶす。
『ン……』
「痛い?」
橘がきゅっと唇を引き結んで、恥ずかしそうにふるふると首を振った。言葉通り痛くはないのだろう。だって、指の第一関節も、吸い寄せられるかのようにくちゅん……と入ってしまった。
柔らかくなるまで、唇と指と舌で時間をかけてほぐそうと思っていたのに。
Ω性の人間として、橘は発情しているわけではない。けれども橘の中のうるおいは十分で、既に溢れた蜜でしとどに濡れていた。
僕の口の中も、お預けを喰らった犬のように涎が溜まる。
早くここに入りたい。この男のありとあらゆる奥を突いて、心臓の下まで僕でいっぱいにしたい。まだ第二性にも、何にも乱されていない素のままの橘を喰らいたい、繋がりたい。
今から、それができるなんて。
本格的に、橘の下着を脱がしていく。
彼も、そろそろと腰を持ち上げて脱がしやすいよう協力してくれた。
ことセックスに関しては、強情を張るところのある彼にしては本当に珍しい。
片足に下着をひっかけた状態で、橘のいいところに上手く当たるよう配慮しながら、指でたっぷりとほぐしていく。
長い指で、二本目、三本目と、ずいぶんとへこみやすい襞の一筋一筋をぬらぬらと擦り上げる。
くぷ、と横に押し広げて、指の腹でこすこすと入口の裏を撫でる。
指を縦に挿入して、くぷくぷと膣奥と内壁から溢れる蜜を、かき回す。
第一関節の根本までを埋め込んだ手のひらを上に向けて、マッサージをする感覚で押し込みながら、バラバラにかきまわす。
くちくちと緩かった水音が、ぐちゃぐちゃと泡を立てて弾けるようになるまで、そう時間はかからなかった。
『ぁ……ぁン、ぅん……ッ』
時折、ぴくぴくと左右に跳ねる足をやんわりと押さえてやれば、橘は指から与えられる快感を発散したいがためにか、小ぶりな尻を小刻みに揺らし始めた。
手のひらにすっぽりとはまるぐらいの桃のように可愛いお尻が、右に、左に、上に、下に、くねくねと、僕の愛撫に合わせて動いている。
橘の股の間で上を向いて斜めにそそり立っている陰茎までもが、たらたら蜜を零しながらぴくんぴくんと、風にそよぐ花のように揺れている。
──それはあまりにも煽情的な光景だった。
橘の性器は、長さも太さも形も色も、全てがキレイだと、思う。大きさは一般的……平均かもしれないけれど、反り方も堂々としている。
『な、ぁ、ひめ……み、や』
「……うん?」
まずい、涎が垂れた。
橘にバレないように拭い、ごくりと、それでも出続けている唾を飲み込む。
『も、い……から、お、おと、変になって、る……から』
「まだだよ」
このくぱくぱと開閉している鈴口に、大きく口を開けてむしゃぶりつきたい。根本まで一気にほおばって、吸い付いて、じゅうじゅう啜りながら口の中でめちゃくちゃに舐めまわしたい。
橘の陰茎のその下では、膨れた果実みたいな双丘が、風船のように揺れている。
大きさも、ふくふくしていて可愛らしい。シワのない、みずみずしささえ感じる皮を指で伸ばして、舌で舐って、頬ずりしたい。
感度のいい橘のことだ、きっと可愛い声で鳴いてくれる。
でも今、そういうのをされるのは嫌だろう。
『いい、って、もう……だいじょ、うぁ……っ』
「まだ……まだだ」
もう少しここから、へにょへにょと髪を振り乱す君を見ていたい。
ヒートでなく、僕に乱れる君が見たい。
橘が身をよじるたび、縦に細い彼のヘソにどんどんと汗がたまっていく。もう片方の手で入口を広げ、ぐぽっと隙間から親指までもを入れた瞬間、『ひゃ、ぁ』と橘が後頭部を床に擦り付けた。
瞬間的に腹に力を入れてしまったらしく、ぶちゅちゅ……っと空気を含む音が零れて、蜜が散った。
『……~~っ、め、みや……っも、いい、ってぇ』
ついに羞恥心に負けた橘に、ぐい、と強めに浴衣の袖を引かれて止められてしまった。仕方がないが、これ以上しつこくしてやっぱりやらないと言われたら僕が辛い。
最後のあがきとして、橘の中からゆっくりと、ねっとりと、一本ずつ指を抜き取る。
『ふ……う、ゥ、んっ……ン~~ッ……!』
ずる、ぬる、ちゅぽ……と、てろてろに濡れた指の先に、新鮮で透明な蜜液が引っかかって垂れた。指に付着したそれをくちゅくちゅと擦ってみせると、思いのほかねばついていた。
粘度が濃い。膣口から溢れたものも混じっている。橘が興奮してる証拠だ。
橘がうぅ……と唸り、腕で顔を隠してしまった。はふはふと赤い唇でか細く息を繰り返しながら、僕に窄まりぐちゃぐちゃにされて耳まで真っ赤だ。
恍惚と、目を細める。
ああ、可愛い。
橘、愛らしい。
火照ったこの身体のどこもかしこもが、ただ愛おしい。
35
【代表作】(BL)
・完結
「トイの青空」
・連載中
「月に泣く」
・番外編連載中
「ヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年に懐かれた結果、立派なヤンデレ美青年へと成長した彼に迫られ食べられたが早まったかもしれない件について。」
更新情報&登場人物等の小話・未投稿作品(番外編など)情報はtwitter記載のプロフカードにて。
宝楓カチカ(twitter)
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