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狼の群れ
03.
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*
「おら、寝ろよ」
提灯の明かりも届かない、月明かりしかない暗い空間。
林の中の奥まったところの、そこそこ広い池の手前辺りで地面に転がされた。すぐに逃げようしたのだが、手と足が惨めに土を掻いただけだった。
それに、この震える足では逃げたとしてもすぐに捕まってしまう。
屈してたまるかと、睨みつけることしかできない。
「おー睨むねぇ、かーわい」
「この子、何歳?」
「お、学生証発見。大学生? じゃあ年上じゃん」
「やべ、敬語使わなきゃ」
「橘、透愛ちゃん……か。へえ~こういう漢字書くんだ。透き通る愛ってか、かわいー名前ですことねぇ」
「それ敬語じゃねーわ」
ゲラゲラと笑う男に、巾着の中の財布に入っていた学生証をひらりと抜き取られる。
年上って、こいつら高校生かよ。どーりでαのくせにやってることは雑魚そのもののわけだ。
なまじ力があるだけに質が悪い。
そんなこと、強張る唇じゃ言葉にはできないけれど。
「はは、黙っちゃったじゃん。俺たちが怖い? 怖いよねぇ、わかるわかる」
「橘せんぱーい、今からここにいる全員でレイプしていーですか?」
「──来んな」
やっと声が出せた。でも掠れている。
「にしてもこの子、ぱっと見Ωに見えないね」
「Ωだって隠してあの子と付き合ってんの?」
「うわ健気」
「つかマジで匂いするまでわかんなかったわ」
「擬態上手~」
「ざけん、な。来んな、って、言ってんだろ」
俺を取り囲む男たちは、じわじわといたぶるように距離を詰めてくる。
こいつら、愉しんでる。俺が恐怖に怯えていく様に、興奮している。
手のひらで土を掻いて、握りしめる。
「……おまえら、いつも、こんなことしてんのかよ」
なるべく時間を稼ぎたい。
せめて由奈から連絡を受けたみんなが、声を出して探しに来てくれれば。
懸命に震える声を振り絞り続ける俺を、男たちはせせら笑った。
「そんなびびんなって透愛ちゃん、ちゃんと気持ちよくしてやるから」
「言っとくけどいつもじゃないよ。だって普通の女だったら犯罪になっちゃうじゃん?」
でも、と一人がにっこりと笑った。
「Ωならいくらヤッても、無罪なんで」
「──ッ……!」
四方から手が伸びてきて、一気に地面に押し倒される。
「は、なせッ」
辛うじて残っている気力でじたばたと暴れるも、難なく固定されてしまう。
「足癖悪ぅっ、ちょいこっちの足持って」
「はいよ」
「イキいいな~、俺左足持つわ」
「っめろ、ざけんな……!」
両足を掴まれ、ぐいっと大きく割り裂かれた。
腕をバタつかせれば、右手と左腕をそれぞれ地面に押さえつけられる。
それでもまだ、抵抗は止めない。
「いたっ、いってぇんだよ、やめろよ!」
「お、まだ騒ぐ~?」
「ま、そこそこタッパあるから普段通りにはいかないねぇ」
「この手のタイプ新鮮だな。僕の番さぁ、いつもぷるぷる震えてて従順すぎてつまんないんだよね」
「どの番だよ、おまえ3人ぐらいいんじゃん」
「いーだろ全員可愛がってやってんだからさ。ほら、この前たっくんに貸してあげた子」
「あああれか、俺も食ったけど……確かにチワワみてーだったな」
「あれ、みんなで輪姦した子は?」
「それは別の子ー」
暴れ続ける俺などものともせず、男たちは浴衣を強引に脱がそうとしてくる。
和気あいあいと、ゲームの内容を語るようノリで。
「この子、具合良かったらどうする? なんか美味そうな予感するわ」
「ゆーちんのマンション連れてこ」
「しばらく監禁してやりまくれば大人しくなるべ」
「薬持ってきた?」
「いや家」
「残念、じゃあ飲ませられないかぁ……紐は?」
軽い会話の中に含まているおぞましさに、身体中が震えた。
こんな、こんな……ここまで露骨なαたちには、出会ったことがない。
「こ、んなことまでして、無罪なわけあるかよッ……おれは別にヒートでもなんでもねぇよ……!」
確かにヒート時におけるΩへの性的暴行は罪に問われない。けれどもそれ以外は別だ。
今、俺の身体からは相手の性欲を刺激してしまうフェロモンの匂いが漂ってはいるが、これは決して発情の香りではない。
身を守るためのものだ。だから非常に弱い。相手をラット状態にさせるようなフェロモンじゃない。
こいつらもαであるならば、そんなこと感じ取っているはずなのに。
「なぁにいってんの、こんな匂いさせてさぁ」
「むしろ俺ら被害者じゃね?」
「そうそう、おまえの匂いのせいでこんなんなってんの。むしろ逆レだろ、逆レ」
「逆レ! やめろ笑かすな」
「ね、だから俺らの心配は別にしなくてもいいよ?」
「3周目ぐらいすれば、透愛ちゃんの身体も勝手に発情するから」
3周目って……意味がわかった瞬間、ぞわっと身体中に鳥肌が立った。
「だから俺らは無罪。ね?」
「さすがあっくん、くわしー、プロじゃん」
「Ω輪姦しは俺に任せろ」
「いやそれ威張ることじゃねーわ」
「ゲスすぎ」
げらげらと、男たちが声を上げて笑う。
(こ……こいつらおかしい。正気じゃねぇ、絶対なんかヤバい薬やってんだろ……!)
「おら、寝ろよ」
提灯の明かりも届かない、月明かりしかない暗い空間。
林の中の奥まったところの、そこそこ広い池の手前辺りで地面に転がされた。すぐに逃げようしたのだが、手と足が惨めに土を掻いただけだった。
それに、この震える足では逃げたとしてもすぐに捕まってしまう。
屈してたまるかと、睨みつけることしかできない。
「おー睨むねぇ、かーわい」
「この子、何歳?」
「お、学生証発見。大学生? じゃあ年上じゃん」
「やべ、敬語使わなきゃ」
「橘、透愛ちゃん……か。へえ~こういう漢字書くんだ。透き通る愛ってか、かわいー名前ですことねぇ」
「それ敬語じゃねーわ」
ゲラゲラと笑う男に、巾着の中の財布に入っていた学生証をひらりと抜き取られる。
年上って、こいつら高校生かよ。どーりでαのくせにやってることは雑魚そのもののわけだ。
なまじ力があるだけに質が悪い。
そんなこと、強張る唇じゃ言葉にはできないけれど。
「はは、黙っちゃったじゃん。俺たちが怖い? 怖いよねぇ、わかるわかる」
「橘せんぱーい、今からここにいる全員でレイプしていーですか?」
「──来んな」
やっと声が出せた。でも掠れている。
「にしてもこの子、ぱっと見Ωに見えないね」
「Ωだって隠してあの子と付き合ってんの?」
「うわ健気」
「つかマジで匂いするまでわかんなかったわ」
「擬態上手~」
「ざけん、な。来んな、って、言ってんだろ」
俺を取り囲む男たちは、じわじわといたぶるように距離を詰めてくる。
こいつら、愉しんでる。俺が恐怖に怯えていく様に、興奮している。
手のひらで土を掻いて、握りしめる。
「……おまえら、いつも、こんなことしてんのかよ」
なるべく時間を稼ぎたい。
せめて由奈から連絡を受けたみんなが、声を出して探しに来てくれれば。
懸命に震える声を振り絞り続ける俺を、男たちはせせら笑った。
「そんなびびんなって透愛ちゃん、ちゃんと気持ちよくしてやるから」
「言っとくけどいつもじゃないよ。だって普通の女だったら犯罪になっちゃうじゃん?」
でも、と一人がにっこりと笑った。
「Ωならいくらヤッても、無罪なんで」
「──ッ……!」
四方から手が伸びてきて、一気に地面に押し倒される。
「は、なせッ」
辛うじて残っている気力でじたばたと暴れるも、難なく固定されてしまう。
「足癖悪ぅっ、ちょいこっちの足持って」
「はいよ」
「イキいいな~、俺左足持つわ」
「っめろ、ざけんな……!」
両足を掴まれ、ぐいっと大きく割り裂かれた。
腕をバタつかせれば、右手と左腕をそれぞれ地面に押さえつけられる。
それでもまだ、抵抗は止めない。
「いたっ、いってぇんだよ、やめろよ!」
「お、まだ騒ぐ~?」
「ま、そこそこタッパあるから普段通りにはいかないねぇ」
「この手のタイプ新鮮だな。僕の番さぁ、いつもぷるぷる震えてて従順すぎてつまんないんだよね」
「どの番だよ、おまえ3人ぐらいいんじゃん」
「いーだろ全員可愛がってやってんだからさ。ほら、この前たっくんに貸してあげた子」
「あああれか、俺も食ったけど……確かにチワワみてーだったな」
「あれ、みんなで輪姦した子は?」
「それは別の子ー」
暴れ続ける俺などものともせず、男たちは浴衣を強引に脱がそうとしてくる。
和気あいあいと、ゲームの内容を語るようノリで。
「この子、具合良かったらどうする? なんか美味そうな予感するわ」
「ゆーちんのマンション連れてこ」
「しばらく監禁してやりまくれば大人しくなるべ」
「薬持ってきた?」
「いや家」
「残念、じゃあ飲ませられないかぁ……紐は?」
軽い会話の中に含まているおぞましさに、身体中が震えた。
こんな、こんな……ここまで露骨なαたちには、出会ったことがない。
「こ、んなことまでして、無罪なわけあるかよッ……おれは別にヒートでもなんでもねぇよ……!」
確かにヒート時におけるΩへの性的暴行は罪に問われない。けれどもそれ以外は別だ。
今、俺の身体からは相手の性欲を刺激してしまうフェロモンの匂いが漂ってはいるが、これは決して発情の香りではない。
身を守るためのものだ。だから非常に弱い。相手をラット状態にさせるようなフェロモンじゃない。
こいつらもαであるならば、そんなこと感じ取っているはずなのに。
「なぁにいってんの、こんな匂いさせてさぁ」
「むしろ俺ら被害者じゃね?」
「そうそう、おまえの匂いのせいでこんなんなってんの。むしろ逆レだろ、逆レ」
「逆レ! やめろ笑かすな」
「ね、だから俺らの心配は別にしなくてもいいよ?」
「3周目ぐらいすれば、透愛ちゃんの身体も勝手に発情するから」
3周目って……意味がわかった瞬間、ぞわっと身体中に鳥肌が立った。
「だから俺らは無罪。ね?」
「さすがあっくん、くわしー、プロじゃん」
「Ω輪姦しは俺に任せろ」
「いやそれ威張ることじゃねーわ」
「ゲスすぎ」
げらげらと、男たちが声を上げて笑う。
(こ……こいつらおかしい。正気じゃねぇ、絶対なんかヤバい薬やってんだろ……!)
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